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馬渕睦夫・著“ウクライナ紛争 歴史は繰り返す―戦争と革命を仕組んだのは誰だ”を読んで

今週もまた、やらねばならぬことを置き去りにして、迫って来た予定のみ消化して週末を過ごしている。残念ながら、その繰り返しだ。このブログ投稿は、その迫って来た予定の一つで、何とかそのネタとなるものは入手したのだが・・・。

そんな中で、夏の参院選はスタートした。
“決断と実行。日本を守る。未来を創る。”、“日本を、前へ。”、“生活安全保障”、“改革。そして成長。”、“給料上がる経済”、“平和でも、くらしでも、希望がもてる日本に”、“がんこに平和!くらしが一番!”これが政策?それは誰もが賛成する当たり前の目標ではないか。そのために何をどうするかが、政治家が公約として掲げる政策ではないのか。当たり前のことを選挙の争点、政策だと考えている日本の政治家のレベルの低さに、ドイツもコイツも呆れるばかりだ!
この生ぬるさに苛立つのは、私だけなのだろうか。何だか、選挙に行きたくなくなってきた!アホラシ!

先週後半、ワイドショウを見ていたら、“日本人の賃金が何故上がらないか”の説明に、日本人経済学者ではなく外国人(英人)が出て来て、再び呆れ返った!
また、その外人へのネットでの風当たりがオバカそのもの。反論にすらなっていない、感情的なだけ。
日本人の平均賃金が下がり続けるのは何故なのか、知りたくないのか?これぞ反知性主義!アホの極み!
日本の数ある大学の経済学部教授やその周囲の経済学研究者達よ!何とか反論できるのか?反論できるのなら、マスコミに登場して、一般大衆に研究成果の“御説”を垂れる気概はおありか?
否、否、一連のアホアホ政権の下で“学問の自由”がなくなってしまったことが、こうなっている原因なのではあるまいか。モノ言えば唇寒し、の国になっているのだ。ある種、専制主義国家の仲間入りしているのかも知れない。

元財務官でみずほリサーチ&テクノロジーズの中尾武彦理事長は「(日本にとって最悪のシナリオは)円が売られ、株が売られ、国債が売られ、金利が急上昇して、国債が売れなくなってロールオーバー(借り換え)ができなくなる状況だ」と述べた。やっとホンネがでてきた!!
“国債が売れなくなってロールオーバー(借り換え)ができなくなる状況”になれば、どうなるか御存知か?反知性主義のアホの極みでは、分かるまい!

どうやら今、この国は“本当のことを言ってはならない”国になってしまっている。それが、実は存亡の危機にあることすら分からない人々を多く生み出してしまっている原因になっているのだ。自分の危機が分からない!それは危機そのものなのだ。
外人にしか本当のことは言えない国なのだ。だが、実は知る人は知っている!黙っているだけなのだ!


さて、今回は久しぶりの読後感想、馬渕睦夫・著“ウクライナ紛争 歴史は繰り返す―戦争と革命を仕組んだのは誰だ” を読んだので、紹介したい。今、世界の耳目を集める“ウクライナ紛争”の背景について、詳しく解説しているものと思い込み、信じ込んで買ったものだった。それは、次にある著者プロフィールに“05年、駐ウクライナ兼モルドバ大使を経て・・・”とあったので、当然のことにロシア-ウクライナ関係史の深い中からの記述であろうと思ったからだ。

書店店頭で手に取った時に、先ず目に入ったのは“売らんかな”の帯のキャッチ・コピーにある“ウクライナ紛争の背景にいた勢力は、日本を真珠湾攻撃に至らしめたのと同じ勢力だった”も気になった。太平洋戦争で日本を嵌めた勢力とは誰で、それが四分の三世紀も経った今日も生き残っていて、ウクライナ若しくはロシアを嵌めているのか、是非とも知りたくなるではないか。
この帯のセンセーショナルなPRのあり方に胡散臭さを感じはするが、一方では、著者経歴は京都大学在学中に外務公務員採用上級試験に合格し、イギリス・ケンブリッジ大学経済学部卒業し、日本を代表する外交官にもなった。知性も教養もあると思われる人物がいい加減なことは書くまい、とも思いつつ、真実の裏面史があるのではないかとの期待も込めつつ、買ってしまったのだった。

【帯のコメント】
プーチンを追い詰めた「戦争の仕掛け人」とは?
アメリカの社会主義者が日米戦争を仕組んだ!
ウクライナ紛争の背景にいた勢力は、日本を真珠湾攻撃に至らしめたのと同じ勢力だった
本書では、今回のロシアのウクライナ侵攻の背景を理解するため、紛争の背後にいた勢力について歴史的視点から詳細に論じました。実はその同じ勢力が日本を挑発して1941年の真珠湾攻撃に至らしめたのです。
今、プーチン大統領は世界の悪者にされていますが、かつてわが国も世界に害毒をもたらす国として「隔離されなければならない」とルーズベルト大統領から難詰されたことは、記憶に新しいところです。彼らの戦術は同じパターンです……

【著者プロフィール】
1946年、京都府生まれ。京都大学法学部3年在学中に外務公務員採用上級試験に合格し、68年、外務省入省。71年、研修先のイギリス・ケンブリッジ大学経済学部卒業。2000年、駐キューバ大使、05年、駐ウクライナ兼モルドバ大使を経て、08年に外務省退官。同年防衛大学校教授に就任し、11年、退職。『馬渕睦夫が読み解く2022年世界の真実』『ディープステート 世界を操るのは誰か』(ワック)、『道標 日本人として生きる』(ワニブックス)、『知ってはいけない現代史の正体』(SBクリエイティブ)、『日本を蝕む 新・共産主義 ポリティカル・コレクトネスの欺瞞を見破る精神再武装』(徳間書店)など著書多数。

【目次】
まえがき 歴史は再び繰り返す
序章 [ディープステートの大戦略]プーチンを悪者にした戦争仕掛人
第一部 【ウィルソン大統領時代のアメリカ】アメリカはなぜ日本を「敵国」としたのか
 Ⅰ 「日米関係」の歴史
 Ⅱ アメリカの社会主義者たち
 Ⅲ 日米対立へ
 Ⅳ 「共産ロシア」に対する日米の相違
 Ⅴ 人種差別撤廃と民族自決
 Ⅵ 運命の「ワシントン会議」
第二部 【「支那事変」の真実】アメリカはなぜ日本より中国を支援したのか
 Ⅰ 狙われた中国と満洲
 Ⅱ 「西安事件」の世界史的意義
 Ⅲ 中国に肩入れするアメリカ
第三部 【ルーズベルト大統領時代のアメリカ】アメリカはなぜ日本に戦争を仕掛けたのか
 Ⅰ ルーズベルト政権秘話
 Ⅱ 仕組まれた真珠湾攻撃
 Ⅲ 日本を戦争へ導く「マッカラム覚書」
最終章 【これからの日米関係】「グローバリズム」は㉑世紀の「国際主義」である

この“まえがき”において、プーチンをヒトラーにたとえて、またウクライナをポーランドにたとえて解説してはいて、これが一般的見方と一致する部分ではある。しかし、著者が多少ヒトラーに肩入れする部分があるのは気懸りだ。たとえば、ポーランド回廊(旧プロイセンの都市ダンチッヒとベルサイユ体制下のドイツとの間のドイツ系住民のいる地帯)のドイツ系住民に対し、ポーランドが1939年に6万人を迫害・虐殺した、という“事実”があっさり語られている。真相はどうなのだろうか。見方によれば、やっぱりヒトラーの陰謀かも知れない。ヒトラーにもプーチンにも一分の理があるとするのは、迷蒙的ではないか。

“ウクライナ紛争”については序章において語られているのみで、この本の後には出てこない。これについて結論的感想を言えば、どっちもどっち。米英・EUとプーチン一派とのせめぎ合い、という見方がフラットな立場であろう。しかしこの本のように、米英の背後には実は米ネオコンがいてマニプレートしているという見方が必要かもしれない。現在の世界の一致した見方は、“米英が「民主主義の善」であり、プーチン一派が「専制主義の悪」”というもののようだが、それは少し違うというのが真実の客観的な立場なのだろう。

実際に読んでみて感じたのは、著者の一方的な判断が書かれている箇所が多いのだが、そこにその判断に至る客観的な情報が参照されている場合とそうでない場合があり、そうでない場合の記述の信頼性がどの程度のモノなのか、読み手としては苦しむ場合が多いのも事実であった。また、参照された情報があっても、それを直ちに手許で確認できるものではないので信頼性に問題がある・・・との留保条件を付与しながら読み続けなければならないシンドサがあった。特に、人物評で“彼は共産主義者である”と断じている場合に、その根拠となる情報が提示されていないのが多い。要するに一般に知られていない情報がこの本には多すぎるのだ。

戦間期の日本の歴史に関わる記述が大半であり、それは一般に日本の中で知られている歴史とは様相を異にする内容が多いのだ。それはどういうことかと言えば、従来の日本の戦間期歴史観は国内情報、或いはせいぜいで中国側の情報、或いは欧米の知られた情報によって、解釈し構成されたものであるのが一般的だが、この本では米国側の内部的情報で構成されていることが多いという特徴がある。
確かに日本の近代史を明らかにするために、日本の表裏の情報を渉猟し、そこに中国側の情報、出来れば裏情報も集めてそれだけで事足れり、としてしまうのは、不十分だというのは納得できる。日中の間には、実際にはイギリスもドイツもロシア=ソ連も介在し関与していたのは表のことで、裏には米国の影が大きくあったことは、誰もが知ることなのだが、そうした欧米の裏情報まで確かめての歴史観構成をなしたものは、現状の日本では少ない、というより殆ど無いのではないかと、気付かされたのは確かである。その点で、この本は意義があるものだと感じさせてくれた。
特に、米国の影響は戦後の日本政治・社会を決定的なものとしていて、日本の統治形態及び政治・外交の矛盾の多くは、そのことに起因しているが、それが何故なのかは未だにタブーにして不可触の領域とされているような雰囲気がある。それも意外にも多くの日本人の“忖度”や同調性圧力によって、闇と化しているように感じるのだ。
こうしたことを、戦間期の米国の闇から解き明かしていく必要はあるのではないかとも感じる。そして読み終わって、一方では表題にあった“ウクライナ紛争”は何処へ行った?との疑問も抱いてしまう。だが興味は、ウクライナから戦間期をめぐる国際裏面史に移ってしまった。

著者・馬渕氏の表現に問題個所が結構あることは感じるのだが、真実と思える部分も結構あった。その点で、この本の主張には留保しつつ解釈するべきで、そのまま真実と信じれば危ういところがあるように思う。
“米大資本家は社会主義者である”という断定は、そのままではあまり肯定できない。米大統領のウィルソンやセオドア・ルーズベルト、フランクリン・ルーズベルトの周囲には社会主義者が大勢いて、ソヴィエト革命や中国革命を側面から暗に支援していた、という主張だ。それが、ネオコンとして今も続いているというのがこの本の主張と理解するが、これはあまりにも支離滅裂なのは言うまでもあるまい。

第一次大戦中の日本のシベリア出兵はロシア革命でロシア内に孤立したチェコ軍救出という国際協力の下で、止むを得ず実施したが、それが戦後一般的となった日本軍の拡張主義だという見方には、著者は大いに反発している。こういう事例も真相の客観的追究が必要だろう。ところがその後、国際連盟の外交舞台で何故か等以外関係のないチェコが反日的になったことも、些細なことかもしれないが、その理由と真相を知っておくことは大切なような気がした。
国連というある種集団安全保障の枠組みの中で、当事者でない第三者が介入して問題を複雑化させるのか、好意の第三者として問題を解決させるのかの、分水嶺を客観的に知ることは、今後の国際政治において大切なことだ。
また現在の国連が機能不全にあるのは、価値観の異なる国がメンバーとして、しかも理事国がと入っていることが、原因となっている。そういう意味では“法と自由の下での民主主義”を信条とする国々で構成される集団安保の枠組みが大切であり、そうした集団安保を構成することが、今後の国際政治の焦点となるのではないかと考えるのだ。

或いはフランクリン・D・ルーズベルトは一般的に偉大な大統領とされるが、この大統領の裏面をあらわにしたR・B・スティネット・著“ルーズベルト 欺瞞の日々‐真珠湾の真実”という本を紹介している。(本書P189)日本では2001年に翻訳して出ているようだ。これには、“卑劣な騙し討ちと罵られた真珠湾攻撃。だが、騙したのはアメリカ側なのだ。”という衝撃の真実が明らかにされているという。

そこの第4項(D項)で示された“ポップアップ作戦”については私は全く知らず、衝撃であった。“ポップアップ作戦”とは“巡洋艦1個戦隊の東洋、フィリピン、シンガポールへの派遣”であり、目的は日本への軍事的挑発であった。ルーズベルト大統領の指示に対し、“当時の太平洋艦隊司令官キンメル大将は「ポップアップ作戦は戦争を招く結果となる」として反対”した、という。だが結局作戦は1941年に行われ、2隻の巡洋艦が豊後水道に侵入し、日本側の駆逐艦が対応すると黒い艦隊は夜の闇に消えたという。“ルーズベルトは、このような挑発行動の結果アメリカ巡洋艦を1隻か2隻失っても構わないと考えていた”という。米国はその後も、同じようにベトナムでトンキン湾事件(1964年)を引き起こして、ベトナム戦争を拡大させている。
“ポップアップ作戦”は事実のようなのだが、かつての米国は今の中国と全く同じことを日本に仕掛けていたことになるのだ。今や米国は中国に対し“法の下の自由で開かれたインド太平洋戦略”とか“航行の自由作戦”と称して様々なマヌーバーを実施しているが、それと反対のことをやっていたとも言えるのだ。こうしたことは中国側から見れば挑発となり、中国の主張の正当性が出てくる・・・どっちもどっち?!

このスティネットの第8項(H項)にある“日本との全面的な通商禁止”は対日ABCD包囲網の大きな手段であって、実施されたことは事実で、軍事行動に重要な石油や兵器生産のために日本が最も必要する鉄屑の禁輸を実施した。しかし、それが実はパリ不戦条約で既に禁止されていた行為で、条約では“経済的封鎖を侵略行為と認めていた”というのだ。そうなれば、不意打ちの実力行使だった真珠湾攻撃以前に、既に日本は法的には米英に侵略されていたことになり、宣戦布告されていたことになる。
これはルーズベルトが日本艦隊がハワイ攻撃することを事前に把握していて、ハワイの現地軍司令官キンメルに伝えなかったことよりも、国際的には法を無視した不善ではないのか。

或いはこの本は、次のような主張もしている。“アメリカは支那事変*注1)が始まると国民党の蒋介石政権に借款2500万ドルを供与し、また、武器を売却して蒋介石の対日戦闘を実質上支援していた。1940年初めにはクレア・シェンノート少将を指揮官とする義勇航空隊(フライイング・タイガーズ)*注2)を派遣し、日本の海軍航空隊と交戦させた。・・・これらのアメリカの行為は、支那事変の局外者で中立であるべきアメリカがわが国の戦闘相手方の蒋介石軍を軍事支援した行為であり、明らかに国際法違反である。”
しかしながら今日のウクライナへの支援も“局外者で中立であるべきアメリカの軍事支援行為”である。違うのは、ゼレンスキー政権が国際承認された政権であり、蒋介石政権は必ずしもそうとは言えない点だ。

*注1)盧溝橋事件以降の一連の日中紛争の呼称。“支那事変”は定まった歴史用語ではないようだ。
*注2)『フライング・タイガー』(原題:Flying Tigers1942年)というジョン・ウェイン主演の米国映画がある。この映画は筆者は未だ見ていない。こういった映画で米国では反日感情が醸成されたというが、背後には蒋介石の巧みな米国を主とする国際世論への宣伝があったとは知っていた。蒋介石の妻・宋美齢の美人姉妹(宋靄齢、宋慶齢)を使ったPRも有名。

このようにすべて“米国は正義”と考えるのは禁物なのだ。彼らもone of them の人間からなる国家であり、中には偽善者の顔をした悪い奴も大勢いるという事実をわきまえる必要がある。世界は全て、“御都合主義”なのだ。
しばらく以前には、日中戦争の実相を体験し、参加もした人々が私の身辺に居たのは事実で、彼らの話を聞いていたという実体験があるが、その語り口にあまり卑屈さを感じなかったのは、“歴史”として私達に示されていたモノよりは、正当性のあるものだったのではないか、という気持ちにすら今なりかけている。

とにかく、米国の闇に迫った上での歴史観は日本人にとっては非常に大切ではないかと思う。その点では最近出た“教科書に書けないグローバリストの近現代史” も重要な示唆を与えてくれるのかも知れない。
特に、ニューディール政策や炉辺談話で有名なフランクリン・ルーズベルトの裏面や、その周囲の人々及び資本主義のメッカ・経済界のことをもっと知るは重要なことだと思い知った次第だ。また、ある点ではルーズベルトをリードした英国のチャーチルについても知ることは重要なのだ。何故ならば、今や日本に接近しつつある英国の動向・意向には注意するべきだからだ。“利用されつつも、利用する”狡猾さが日本には求められるのだ。それにはしっかりした国家観と国家戦略が必要なのだ。

“国益を第一と考えること自体が悪”という思想は、この本が言う“国際主義”による洗脳の結果なのかもしれない。“国際主義”の名の下に世界の一部の勢力に利用されることになるのだろう。米国サマサマは決して真の国際主義ではないことは明らかだろう。
或いは“民族自決の原則”と“国際主義”の間にはある種の矛盾が存在するのだが、この点もよくわきまえる必要があると、今更ながら気付いた次第だ。その上での、しっかりした国家観と国家戦略が必要なのだ。

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