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本当に“品質保証”は“品質マネジメントの一部”?

これまで述べてきました 私の解釈「品質保証は十分な信頼感を供するための活動」は正しいのでしょうか。
以前にご紹介した手引き書 “中小企業のためのISO9001何をなすべきか―ISO/TC176からの助言”では、“顧客は、効果的な品質マネジメントシステムを保有している組織から与えられる信頼感を期待している。”とあり、“このような期待に応えることが、品質マネジメントを構築する理由の一つである”と書かれています。“理由の一つ”という一言が気に入らないが、一応 納得です。
ところが、そのはるか前に“品質保証システムというよりは、品質マネジメントシステムに関する要求事項に重きが置かれるようになった。”とありました。エッ!?エェーッ!?
http://www.webstore.jsa.or.jp/lib/lib.asp?fn=/iso/iso05_08.htm

そう、迂闊にもISO9001序文を読み落としていた?序文の次の部分です。
“この規格の表題は変更され、もはや品質保証という言葉を含んでいない。このことは、この規格で規定された品質マネジメントシステム要求事項は、製品の品質保証に加えて、顧客満足の向上をも目指そうとしていることを反映している。”とあります。ISO9001は 品質保証の規格ではなくなったのでしょうか?

ところが、加藤重信著“規格執筆者による解説・ISO9001はこう使う”には“タイトルには品質保証という語を含んでいないと書いたのであって、品質保証の規格ではないと言っているわけではありません。・・・「品質保証に加えて」と書かれていることに留意しておきたい”と書いています。
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0001000996

それでは、付け加わった“顧客満足”の“満足”とは、何なのでしょう。加藤重信氏は同じ本で“「不満足でないこと」、言い換えれば優、良、可、不可の区別では不可ではないこと”と書いています。そうだとすれば、ここにある“顧客満足の向上”という言葉も ずいぶんと軽いものの印象で、それと並列の“製品の品質保証”も 若干軽い印象です。これではISOマネジメントの規格全体で言う“品質保証”という言葉は 私がイメージするよりも随分 軽いように感じます。やはり、“品質保証は品質マネジメントの一部”と考えているため、こうなったのでしょうか。

ところが、先の“ISO/TC176からの助言”での指摘は、その訳注では 逆に “「品質保証に加えて」で理解できるように、あくまでもISO9001の中心的性格は「品質保証」にある”と 加藤氏と同じことを書いています。さらに“1994年版までは、規格の表題にもあったように品質保証の規格であった。2000年版になって加わったのは、顧客満足と継続的改善だけであり、要求事項の中心は品質保証であることに変わりない。”としています。これには 私としてもかなり了解できます。
しかし、今度は逆に ISO9000での“品質保証”の定義 “品質要求事項が満たされるという確信を与えることに焦点を合わせた品質マネジメントの一部”という概念の 大小、包含関係から 類推される “「品質保証」より「品質マネジメントシステム」の概念上の優位性” と矛盾するのではないでしょうか。まして、“ISO9001の中心的性格は「品質保証」にある”と言うなら、それがどうして“品質マネジメントの一部”となるのでしょうか。

翻って、“品質マネジメントの一部”である“品質保証”の具体的活動はどうすることなのでしょう。“品質保証”以外の品質マネジメントの活動の構成要素を確認してみましょう。(図中QMは品質マネジメントのこと。)

これを見ると、これらすべての活動の中に“品質保証”の精神が 含まれているように思うのですが いかがでしょう。わざわざ“品質保証”を 一つの活動として、これらの要素に付け加える必要があるのでしょうか?“品質保証”を わざわざ“品質マネジメントシステム”の下位概念とする必然性が 見当たりません。

また“ISO/TC176からの助言”での訳注は、実は日本人で構成された“中小企業のためのISO9001翻訳委員会”*の“勝手な解釈”(ISOとしては非公式?)ではないのかと思うのです。でも この“翻訳委員会”の解釈は 私としては 好ましいと考えます。この考えが、ISO/TC176での公式見解になるように祈りますし、ISO9000での“品質保証”の定義にある“品質マネジメントの一部”の文言も見直すべきと考えます。

*ISO/TC176はISOの公式の委員会組織で “ISO/TC176からの助言”はISOの公式見解と考えてよいガイドラインですが、その日本語版への翻訳には、日本人で構成された“中小企業のためのISO9001翻訳委員会”が当たったようです。どうも日本向けのLocalな解釈があるのかも知れません。つまり、ISOの日本人委員と 外国委員との間に 若干の解釈の溝があるとの疑いがある。もしそうであれば、日本人委員は もう少し頑張って見解の差を埋めるべきであったと思われます。別にISO/TC176“国内対策”委員会というのもあるようですし・・・。

こうした混乱は、2000年版のISOでの定義が あまりにも“品質マネジメントシステム”の概念構築に一生懸命になりすぎて、それを何のためにするのか、目的を忘れてしまったことが 原因のように思われます。「十分な信頼感を供するための活動」をやりやすくするために“品質マネジメントシステム”を構築するのが目的だと思うのです。つまり、ISO9001はISOマネジメントシステムの要求事項ではあっても、“その目的が品質保証にある” という風にするべきでは ないでしょうか。そうしなければ、他のマネジメントシステムとの違いが 不明になってしまうのではないか。また、“品質保証”の意義も 分からなくなるような気がするのです。
つまり 私は“品質保証は品質マネジメントの一部”だ、とは思っておらず、“その目的である”と信じています。
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