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京都市立美術館観覧―マルモッタン・モネ美術館所蔵展 「印象、日の出」から「睡蓮」まで

3月は年度末で、審査が目白押しだった。それは年度初めに審査登録を決意し、何とか年度末に審査を受ける組織が多いからだ。先週、先々週と毎週3件の審査だった。全て主審の任であれば、潰れてしまっていたかもしれないが、幸いにも約半分は副審であったので、何とか切り抜けられた。

その上、中旬までに確定申告を行わなければならなかったので、中々のヘヴィー・コンディションであった。しかも、今年最初に税務署で“指導”してくれた係官が少々変なことを言ってくれたので、それを違う役人に確認するために税務署に通う回数が増えてしまった。次の係官は、“エッ!ウチがそんなこと言ったのですか?”と思わず言ったので、やっぱり変な説明だったのだ。残念ながら最近は税務署にも そんな係官がいるのだ。そんなことはあったが、今回は審査報酬を“給与”に計上して65万円の控除を獲得できた。これまでは雑費で処理して必要経費計上のための領収書をかき集めなければならなかったが、その手間が省けて控除額も大きくなることが分かった。審査員仲間のベテランから教わったのだが、また別の大先輩審査員に確認してみると、“ホンマか、上手いコト行ったら連絡くれ!”というので、ヤブヘビで手間が増えてしまった。 そんな面倒があったが、何とか15日までに無事完了。

てな訳で、先週末はホッとして京都での審査員研修に出かけることができた。例によって折角の京都、午後の研修前に何かを見聞きしたいと、調べると市立美術館でマルモッタン・モネ美術館所蔵展をやっている。これを午前中鑑賞することとした。ということでブログ・ネタに困った時のエンタメ紹介である。

出かける時、つい慌てて予定より20分早目に出てしまった。まぁ早目の予定消化は、後の調整はどのようにでも可能なので問題ない。しかし、阪急・河原町駅から市バス46系に乗り換える時に、出口6番を5番と間違えて、おかしいとは思いつつもいずれ方向転換すると思い込んでそのままバスに乗って、バス路線地図を見てようやくダメだと知り、烏丸で直ぐに下車。これで20分早目のスケジュールは帳消しとなり、バカバカしい限り。



美術館には10時過ぎに到着。約2時間あれば全て鑑賞できると思っていたので、ギリギリ予定をこなせるハズ。
先日はこの近くの細見美術館での春画展であったが、その時とは違い、鑑賞客もいつもの普通のマナーで、押すな押すなではなかった。やはり春画展では特に絵の鑑賞の経験の少ないエロ御仁が大勢であったため、また大勢の観衆の扱いに慣れない美術館側の対応に不快感があったが、この度は快適に鑑賞できた。

マルモッタン・モネ美術館は、モネが自作品を手放さず、しかも別途に他画家作品も収集していたのを継承したモネの子息がその全てをマルモッタン美術館に贈与して、モネ美術館となったという。冒頭、その経緯を小さなブースで映像説明していた。
展示室に入ると先ずは、ルノアールとの交友を象徴するようにルノアール筆のモネとモネ夫人の肖像が印象的だ。モネ夫人の肖像画は見覚えがあった。引き続いて、モネ子息の肖像画が複数続く。

その後は、モネの若い時の作品も展示されている。特に、モネは子供の頃、ノートにカリカチュア(漫画)を描いていたといい、作品の幾つかが展示されている。モネは、学校の教師達を描いて次第に腕を上げ、ル・アーヴルでは有名になったという。10~20フランで売れ、売上は画家を目指しパリへ行くための費用になったという。

“トゥルーヴィルの海辺にて”に出会ってようやくモネらしい作品となり、少々安心感を得る。
モネはよく旅をし、旅先の風景を描くモネを“風景の狩人”だと呼ぶ人が居たという。最初の旅行は、1870年の普仏戦争を避けるべく亡命したロンドンだった。そこでは風景そのものだけではなく、ターナーの作品からも大きく影響を受けたという。オランダ経由で帰国後、ジヴェルニーへ移り住んだという。その後、ノルマンディーの海岸を定期的に訪れ、朝や夕暮れの太陽による自然の変化を捉えていった。さらにその後も各地に旅に出かけ、多くの風景画を描いたとのこと。
“雪の効果、日没”はモネの雪のアルジャントゥイユを描いた作品のうちの1点で、家々の屋根や地面にうっすらと雪が残る夕暮れの情景を描いている。町並の煙突は産業革命時代の急速に変化していく様を象徴しているのだという。雪景色は、モネだけではなく印象派の画家たちが好んで描いた主題の一つだったようだ。雪景色を単調な白だけで表現するのではなく、微妙な色合いで繊細な光を表現しようとした。

“オランダのチューリップ畑”は、モネのオランダ旅行で描かれた風景画。普通は空なども水平に筆を滑らせるのだろうが、斜めの筆致はゴッホを思わせるものがあり、当時の印象派の特徴だろうか。透明な川と濃く鮮やかな色彩のチューリップ畑、風車のオランダの風景で、起伏のないどこまでも続く地平線が広がりを感じさせる。解説によれば、この斜めの筆致は、風に揺れる世界の一瞬を見事に捉えているとのこと。

いよいよ圧巻の特別室にしつらえられた“印象、日の出”の展示だ。最前列で見たい人と、後方からゆっくり見たい人に仕分けられる。最近、このように見る人を仕分ける展示が増えている。以前見たフェルメールの“真珠の耳飾りの小女”でもこのようにして見た。この展示では、照明はどうなっているのか良く分からなかったが、あたかも絵の背後から光が出ているかのように感じた。複製画よりも太陽の赤みは微妙に白で抑制され、全体にブルーがかった印象だったように思う。この絵では、前景には小舟が浮かんでいるが、非常に簡単な筆致で描かれている。この絵を巧みに描くためであろうか、大昔習作を見たことがあった。当時は、その絵がこの作品そのものと思い込んだものだった。
この絵は早朝のル・アーヴルの港に昇る太陽と、朝もやの中でその光で染められる空と海をホテルの窓から描いたもの。展示場の解説掲示板では、この絵を描いた日時を港湾施設と太陽の位置から割り出して特定していたが、メモをしなかったのでここで示すことはできない。描いた年は1872年だが、その都市の半年の時間差で2日を特定していた。
湿気の多い空気の中で昇り始めた太陽の光の一瞬の印象そのものを留めた作品であるが、このように筆跡が残る画面は、当時は未完成の作品であると受け取られ、評価されなかったという。しかし、このモネ等の印象派の絵には、キャンバスの地の白を残したものが多く見られる。この絵画展の睡蓮や庭の絵にも、そのような作品は展示されている。しかし この絵の標題が、一瞬の光を捉える画風の“印象派”の語源になったとのこと。
この絵には、会場出口で“ここから出ると戻ることはできません”との意味の表示に出会って、流れに逆らってもう一度見に行くことができた。その日は、幸運にもそれが出来る程度の混み具合だった。

それ以降は、睡蓮の絵やモネの庭園の風景を描いた晩年の作品の展示である。
気に入ったのは、やはり大作、この展示会の作品番号63と69、70の“睡蓮”。70はしかし、赤い花が強すぎて少々気に入らない。
最晩年の絵は白内障の見た風景であるためか輪郭が明確でない。特に、日本の太鼓橋は構造が良く分からない。実物は一体どのようなものであったのだろう。解説でどのような橋だったのか示して欲しい。しかし“薔薇の小道、ジヴェルニー”は雰囲気が良く出ているように感じた。
また、使用していたメガネとパレットも展示されていた。パレットは上に反っていたが、何故なのだろう。それが使い易いのだろうか。

思っていた2時間より早く展示鑑賞は終わって、11時半。午後の研修会は1時半スタートなので、これでゆっくり行ける。
平安神宮の鳥居の下から、京都文教学園の西側へ出て、地下鉄・東山駅のそばを経て、東大路を南下。途中で喫茶店・六花に入って昼食。コーヒーとフレンチ・トーストをオーダー。フレトーをメニューにしている喫茶店は少ないようなので、予め“食べログ”で調べた上での店舗選択。フレトーは自分で作ってみてはいるが、どうも気に入らないので、プロのレシピはどうなのか食べてみたかった。最近は、昼食は丼物からカフェ・ランチに趣向が変化してきている。これは先月、上六のシェラトン・ホテルのカフェでの食事からの傾向だ。
当然のことだが、激甘の連続。大きな食パン1枚分であろうか。しかし、いささか甘味が単調なので、少々飽きが来るのでクリームの塗り方を変えて、夢中で食べ続けた。甘さが好きな人は飽きないのかもしれないが、せめて違うジャム等で風味を変える工夫もあって然るべきか。単調さがあって、フレトーをメニューにしない店が多いのかも知れない。食べたくて食べたのだが、年齢を考えると血糖の異常な超過上昇が体内であって、それによって変調を来すことはないだろうかと心配になる。それにしても、時々は食べてみたくなるのではないか。



その後、散歩がてら四条通りまで歩く。気が付くと、水路のほとりの並木道に出ていた。四条通りの北側、後から地図で確認すると、白川北通という街路のようだ。白川は美術館南側を流れる琵琶湖疏水の支流で、鴨川に流れ込んでいる。中々風情があって良い。四条通の直ぐ北に、こういう一画があるとは知らなかった。桜が植わっているようだが、未だつぼみは硬い。さぞや満開時は盛況であろう。

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