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山田詠美・著“A2Z(エイトゥズイ)”を読んで

今回は山田詠美・作の小説“A2Z(エイトゥズイ)”の紹介である。“無銭優雅”の次に読んだ山田詠美の恋愛小説。 書き出しが面白い。“たった、26文字で、関係のすべてを描ける言語がある。それを思うと気が楽になる。人と関わりながら、時折、私は呆然とする。・・・”何だか分かったような理解できないような、不思議な気分のまま物語に浸かって行く。 著者の描いた世界には不幸がない。いずれの登場人物も“爽快感を感じる憎めないキャラクター”なのだ。主人公夫婦は二人とも文学を生み出す出版社の編集者。互いに競合する出版社に所属。そして主人公の女性も、そのダンナも互いに、年下の男性、女性と不倫する。いずれの登場人物もあっけらかんと素直で、じめじめしない性格。出版社の上司も同僚も商売敵すらも、主人公夫婦とは適度な距離を保ってサラッとしている。勿論、恋の相手の男女も同じ。だから、実生活へのダメージは固より、精神的ダメージも負わずに終わっている。そんな理想的な“不倫の世界”は現実にはあり得ないだろう。好条件がそろった現代の隙間。結局のところ、悪い言葉で言えば、夫婦生活の惰性に飽きて、横でする“つまみ食い”がテーマ。それを女性作家目線で軽快に描いた、というところだろうか。 . . . 本文を読む
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