◆『世界でいちばんユニークなニッポンだからできること 〜僕らの文化外交宣言〜』
著者・櫻井孝昌氏の何冊かの本についてはこれまでたびたび取り上げてきた。
☆『日本はアニメで再興する』(1)
☆『日本はアニメで再興する』(2)
☆アニメ文化外交 (ちくま新書):YouTubeでのJapan熱を裏付ける本(1)
☆アニメ文化外交 (ちくま新書):YouTubeでのJapan熱を裏付ける本(2)
☆「カワイイ」文化について
☆世界カワイイ革命 (1)
☆世界カワイイ革命(2)
☆マンガ・アニメの発信力:「かわいい」文化の威力
出版される度に取り上げるのは、アニメ・マンガが世界にどのように広がっているか、その現場からのなまのレポートとして貴重だからだ。今回取り上げる上の本も、その最新のレポートとしての意味合いもある。今回は、著者の単著ではなく、声優・上坂すみれとの共著である。
彼女のことは、この本ではじめて知ったが、櫻井氏との因縁浅からざるものがあるようだ。というよりも、日本のマンガやアニメがロシアで熱狂的に受け入れられる今、声優・上坂すみれの出現はたんなる偶然とも思えない。なぜなら彼女は、高校生の頃からのソ連・ロシアおたくで、現在上智大学のロシア語学科に在籍する学生でもあるからだ。11月23日・24日にはモスクワの日本フェスティバルで熱唱したばかりだ。ツイッターでその記事を紹介しておいたので参照されたい。
彼女へのインタビューのいくつかを紹介しよう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―ライブを終えた手応えは。
私の拙いロシア語を聞いてくれて、すごい歓声をくれて、とにかく「うれしい」としか言えない。そもそも歌が日本語だし、歌も私も知らない人もたくさんいるだろうから、本当にみんな聞いてくれるかどうかけっこう不安だった。でも、日本から来たファンがペンライトを配ってくれてうれしくて、ロシア人が楽しそうに振っているのを見ると、これからロシアでペンライトが人気になるんじゃないかなと。いつかモスクワ「赤の広場」で歌い、ロシア人がペンライトを振ってくれたらいいな。いけますかね(笑)。それが夢になりました。
―ロシア各地からファンが来ていた。
ライブ後に写真を撮ったり、サインを書いたり。モスクワから離れた都市から来た人もいて、私のサインで喜んでくれたり、「ツイッターを見ています」「写真を見ています」「歌を聞いています」と言ってくれたりするのに本当にびっくりした。
―自分を一言で説明すると?
私はロシアも好きだし、そうじゃない要素も入っているので、一つの形容詞には決め難い。でも強いて言えば、ロシア、ソ連、ロリータ・ファッション、サブカルチャー、ミリタリーなど。きっと日本の声優の中では、ロシアが一番好きなのは私だと思う。これから日本にロシアの良さを広め、ロシア人が日本を待っているということを広め、自分もロシア語を勉強していく。大学卒業後もロシア語を勉強して、今度はロシア語だけでトークを展開するライブができるよう頑張りたい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さて、紹介した上の本は、彼女と櫻井氏が交互に各章を書く構成になっており、当然ロシアのマンガ・アニメファンの現況を語る部分も多い。ロシアの若者の、日本のアニメやマンガに対する知識量が半端でないことは、彼女も強く実感しているようだ。櫻井氏は、極端に言えば、日本とロシアの関係が、モスクワの若者からの日本への片思いのような状況になっているという。
2010年にモスクワで行われた「ジャパン・ポップカルチャー・フェスティバル」(今回、上坂すみれが出演したJ-FESTの前身)では、ロシアで初上映になった『エヴァンゲリオン新劇場版:破』を見るため、氷点下の中、最前列は5時間も前から若者達が並んでいた様子は、以前の本でも紹介されていた。他にも、オーディションで選ばれた一般のロシア人女子が、原宿ファッションの人気ブランドを着こなす「原宿ファッションショー」の熱狂ぶりや、劇場版『涼宮ハルヒの消失』上映後の、絶賛の声の嵐など。この映画の複雑な世界観もすんなり受け入れて楽しめるほど、ロシアの若者も日本のアニメで育ってきたのだ。
初音ミクも間違いなくロシアに浸透しているといいう。ロシアだけでなく世界中のコスプレやアニメのイベントに行くと、現在もっとも多いのは、初音ミクなどボーカロイドのキャラクターのコスプレイヤーだという。初音ミクは日本語だからよいという膨大な数の若者が世界中で増えている事実があるようだ。櫻井氏は、「アニメが日本語を世界に広めたように、初音ミクの存在が日本の歌全体に対する関心の先がけになっている可能性はきわめて高い」という。
海外で、日本に関心の高い女子たちに人気の高いジャンルは「ビジュアル系」だという。モスクワのある女子は、男のものだったロックの魅力を女子に教えてくれたのが日本のビジュアル系だと語った。ともあれ日本語を話せないロシアの女の子が、日本語で歌える歌がいくつもあるというのだ。ロシアの女子が日本の歌を日本語で歌うのは、いわば「日常」になっているという。ロシアの若者にとって日本がどれほど特別な国になっているか、多くの日本人は知らない。
そんな中で上坂すみれが出現し、櫻井氏との協力のもと先月、モスクワに乗り込んだ。そしてロシア語で語りかけながら日本のアニメソングを歌った。彼女のアニメやロリータファッションへの愛は半端ではないが、ロシアへの愛も半端ではない。それがロシア人に伝わらないはずはない。この二つの要素が、彼女とロシアの間でどんなケミストリーを生み出すか、今後が楽しみだ。ロシアの若者たちからの、日本のポップカルチャーへの一方的な愛が、上坂すみれの出現を触媒にしてどんな新たな反応を示していくか、今後じっくり見守っていきたいと思う。
ちなみに下の動画でも、私が読めないロシア語のコメントがかなり多い。
上坂すみれ「七つの海よりキミの海」
著者・櫻井孝昌氏の何冊かの本についてはこれまでたびたび取り上げてきた。
☆『日本はアニメで再興する』(1)
☆『日本はアニメで再興する』(2)
☆アニメ文化外交 (ちくま新書):YouTubeでのJapan熱を裏付ける本(1)
☆アニメ文化外交 (ちくま新書):YouTubeでのJapan熱を裏付ける本(2)
☆「カワイイ」文化について
☆世界カワイイ革命 (1)
☆世界カワイイ革命(2)
☆マンガ・アニメの発信力:「かわいい」文化の威力
出版される度に取り上げるのは、アニメ・マンガが世界にどのように広がっているか、その現場からのなまのレポートとして貴重だからだ。今回取り上げる上の本も、その最新のレポートとしての意味合いもある。今回は、著者の単著ではなく、声優・上坂すみれとの共著である。
彼女のことは、この本ではじめて知ったが、櫻井氏との因縁浅からざるものがあるようだ。というよりも、日本のマンガやアニメがロシアで熱狂的に受け入れられる今、声優・上坂すみれの出現はたんなる偶然とも思えない。なぜなら彼女は、高校生の頃からのソ連・ロシアおたくで、現在上智大学のロシア語学科に在籍する学生でもあるからだ。11月23日・24日にはモスクワの日本フェスティバルで熱唱したばかりだ。ツイッターでその記事を紹介しておいたので参照されたい。
声優にロシアっ子熱狂=上坂すみれ、公演&インタビュー http://t.co/vE2OvlhfuQ 彼女のことは最近知った。ソ連・ロシアおたくで大学ロシア語学科に学び、声優として人気上昇中の彼女は、11月下旬にモスクワで行われた日本フェスティバルで熱唱。今、出るべくして出た人。
— Noboru Ishii (@ishiinb) 2013, 12月 1
彼女へのインタビューのいくつかを紹介しよう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―ライブを終えた手応えは。
私の拙いロシア語を聞いてくれて、すごい歓声をくれて、とにかく「うれしい」としか言えない。そもそも歌が日本語だし、歌も私も知らない人もたくさんいるだろうから、本当にみんな聞いてくれるかどうかけっこう不安だった。でも、日本から来たファンがペンライトを配ってくれてうれしくて、ロシア人が楽しそうに振っているのを見ると、これからロシアでペンライトが人気になるんじゃないかなと。いつかモスクワ「赤の広場」で歌い、ロシア人がペンライトを振ってくれたらいいな。いけますかね(笑)。それが夢になりました。
―ロシア各地からファンが来ていた。
ライブ後に写真を撮ったり、サインを書いたり。モスクワから離れた都市から来た人もいて、私のサインで喜んでくれたり、「ツイッターを見ています」「写真を見ています」「歌を聞いています」と言ってくれたりするのに本当にびっくりした。
―自分を一言で説明すると?
私はロシアも好きだし、そうじゃない要素も入っているので、一つの形容詞には決め難い。でも強いて言えば、ロシア、ソ連、ロリータ・ファッション、サブカルチャー、ミリタリーなど。きっと日本の声優の中では、ロシアが一番好きなのは私だと思う。これから日本にロシアの良さを広め、ロシア人が日本を待っているということを広め、自分もロシア語を勉強していく。大学卒業後もロシア語を勉強して、今度はロシア語だけでトークを展開するライブができるよう頑張りたい。
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さて、紹介した上の本は、彼女と櫻井氏が交互に各章を書く構成になっており、当然ロシアのマンガ・アニメファンの現況を語る部分も多い。ロシアの若者の、日本のアニメやマンガに対する知識量が半端でないことは、彼女も強く実感しているようだ。櫻井氏は、極端に言えば、日本とロシアの関係が、モスクワの若者からの日本への片思いのような状況になっているという。
2010年にモスクワで行われた「ジャパン・ポップカルチャー・フェスティバル」(今回、上坂すみれが出演したJ-FESTの前身)では、ロシアで初上映になった『エヴァンゲリオン新劇場版:破』を見るため、氷点下の中、最前列は5時間も前から若者達が並んでいた様子は、以前の本でも紹介されていた。他にも、オーディションで選ばれた一般のロシア人女子が、原宿ファッションの人気ブランドを着こなす「原宿ファッションショー」の熱狂ぶりや、劇場版『涼宮ハルヒの消失』上映後の、絶賛の声の嵐など。この映画の複雑な世界観もすんなり受け入れて楽しめるほど、ロシアの若者も日本のアニメで育ってきたのだ。
初音ミクも間違いなくロシアに浸透しているといいう。ロシアだけでなく世界中のコスプレやアニメのイベントに行くと、現在もっとも多いのは、初音ミクなどボーカロイドのキャラクターのコスプレイヤーだという。初音ミクは日本語だからよいという膨大な数の若者が世界中で増えている事実があるようだ。櫻井氏は、「アニメが日本語を世界に広めたように、初音ミクの存在が日本の歌全体に対する関心の先がけになっている可能性はきわめて高い」という。
海外で、日本に関心の高い女子たちに人気の高いジャンルは「ビジュアル系」だという。モスクワのある女子は、男のものだったロックの魅力を女子に教えてくれたのが日本のビジュアル系だと語った。ともあれ日本語を話せないロシアの女の子が、日本語で歌える歌がいくつもあるというのだ。ロシアの女子が日本の歌を日本語で歌うのは、いわば「日常」になっているという。ロシアの若者にとって日本がどれほど特別な国になっているか、多くの日本人は知らない。
そんな中で上坂すみれが出現し、櫻井氏との協力のもと先月、モスクワに乗り込んだ。そしてロシア語で語りかけながら日本のアニメソングを歌った。彼女のアニメやロリータファッションへの愛は半端ではないが、ロシアへの愛も半端ではない。それがロシア人に伝わらないはずはない。この二つの要素が、彼女とロシアの間でどんなケミストリーを生み出すか、今後が楽しみだ。ロシアの若者たちからの、日本のポップカルチャーへの一方的な愛が、上坂すみれの出現を触媒にしてどんな新たな反応を示していくか、今後じっくり見守っていきたいと思う。
ちなみに下の動画でも、私が読めないロシア語のコメントがかなり多い。
上坂すみれ「七つの海よりキミの海」