一昨日のブログで、防衛局の辺野古・設計変更申請に対して、沖縄県が5次質問を行うことを説明した。そのため、知事の最終判断は10月末か、あるいは年内となると言われている。
5次質問を行うのであれば、どうしても含めなければならない質問項目がある。
設計変更申請では、沖縄南部地区から埋立土砂を大量に調達する計画となっている。しかし、先の大戦で多くの人たちが亡くなった南部地区の土砂には、戦没者の血が染みこみ、今も多くの遺骨が残されている。そのような南部地区の土砂を軍事基地建設のために使うことは、戦没者を冒瀆するものであり人道的にも許されない。そのため知事は、設計変更申請の不承認の理由の中に、遺骨混りの南部地区の土砂を辺野古埋立に使用してはならないということを明記するべきだという声が高まっている。
しかし、現状では知事がこの問題を不承認の理由の一つにする動きは見えない。設計変更申請の審査にあたって、県は防衛局に今までに4回に渡って質問を繰り返している。南部地区からの土砂調達問題については次のような質問にとどまり、遺骨問題には触れていない。
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<1次質問(2020.12.21)>
「岩ズリの調達可能量のうち約7割が南部地区(糸満市・八重瀬町)となっており、搬出経路が那覇の港及び中城港が示されている。
その場合、搬出港付近に多数の搬出車両が集中することになり、生活環境への悪化が懸念される。搬出港付近において想定される車両台数及び、騒音、振動、粉塵等への影響について示していただきたい。
また、南部地区は、平和祈念公園や沖縄戦跡国定公園があり、観光客等も多数訪れており、それらの影響についても示していただきたい。」
<2次質問(2021.2.22)>
「『具体的な調達先は、工事の実施段階で確定されるものであり、現時点で確定しておりません』というが、変更の内容が大きく、土砂調達量の大部分が南部地区から搬出された場合、搬出港付近や搬出元における生活環境の悪化が懸念される。
ついては、南部地域からの土砂の搬出による生活環境への悪化が想定されることに関して、どのように対応するのか?」
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すなわち沖縄県は、南部地区からの大量の土砂調達によるダンプトラックの粉じん等の公害問題、観光への影響等は問題にしているが、南部地区の土砂には遺骨が混じる可能性があるということについては今まで質問項目に入れていないのだ。
県の質問に対して防衛局は次のような回答を繰り返している。
・「具体的な土砂調達先は、工事の実施段階で確定されるものであり、現時点で確定していない」
・「計画変更に伴う環境影響の予測にあたり、埋立材の陸上運搬車両については、他の資機材の車両と同様に、事業実施区域及びその周辺で行う」((注)ダンプトラックの影響評価は辺野古周辺に限り行うということ)
・「南部地区の採石場から調達される場合は、採石業者において粉じん対策や道路清掃、運搬時間帯の調整が適切に実施されるものと考えている」
すなわち防衛局は、「南部地区からの土砂運搬のダンプトラックによる粉じん等の公害問題については調査の対象外、それは採石業者の責任」という無責任な回答に終始している。
あまりにひどい回答であるから、知事は設計変更申請への最終判断の中に、南部地区からの土砂調達によるダンプトラックの粉じん等の公害問題を指摘すると思われる。しかし現状では、戦没者の遺骨の問題についてはスルーする可能性が高いといわざるを得ない。
今からでも遅くない。知事は5次質問で遺骨の問題を質問し、設計変更申請の最終判断の中に、「遺骨混りの土砂を埋立てに使用することは人道上、許されない」と明記しなければならない。