チョイさんの沖縄日記

辺野古や高江の問題等に関する日々の備忘録
 

与那国町長が政府に要請している比川港湾建設計画に関する文書の不存在決定に対して、行政不服審査法に基づく審査請求。与那国町の全国で最も進んだ情報公開条例の趣旨が無視されている

2024年05月30日 | 南西諸島軍事強化問題
 5月23日の本ブログでも説明したように、現在、与那国町長は、島南部の樽舞湿原一帯を掘削し、全長約1.2km、幅約300mもの巨大な新港(比川港湾)建設を政府・県に要請している。「有事」に備え、自衛隊等が使用するためのものだが、当然、米軍の使用も想定されているのだろう。この樽舞湿原は、保全配慮が必要な環境省の「重要湿地」にも選定されている貴重な湿原であり、このような巨大な港湾建設は許されない。
 そこで本年4月、与那国町長に対して、「樽舞湿原で予定されている新たな港湾計画に関する全ての文書(但し、国に提出した文書や、国との協議録、--- 等を含む)の情報公開請求を行ったところ、与那国町長は、昨年11月14日の糸数町長の国土交通大臣宛の要請書と計画平面図だけを公開し、他の「計画文書、設計図書、国との協議議事録、要請先へのアポイントのための文書」等は全て「不存在」として、「請求を拒否する」と通知してきた。

 しかし、町長が公務出張した要請行動の議事録等の記録を作成していないというのは信じがたいことだ。町長が、何時、誰と会い、どのような要請をしたのかという記録が何故、ないのか?

 与那国町の情報公開条例は、国の情報公開法、沖縄県や多くの都道府県の条例とは異なった素晴らしい規定がある。次のような条文だ。
 
第10条 実施機関は、公開請求に係る公文書を保有していないときは、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
(1) 公開請求に係る公文書を作成し、又は拾得することが可能であり、かつ、そのことが町の利益に資すると認められるときは、新たに文書を作成し、又は取得して当該文書等を公開する旨の決定をする。
⑵  公開請求に係る公文書を作成し、若しくは取得することが不可能であるとき、又は新たに文書等を作成し、若しくは取得することに合理的理由がないときは、不存在であることを理由として公開しない旨の決定をする。

 国の情報公開法や他の都道府県の条例は、請求に係る文書がない場合は「不存在」ということで終わりだが、与那国町の条例では、「不存在の場合、その文書を作成する」ことが原則になっているのだ。住民のための素晴らしい条例である。
 今回、与那国町長は、この10条2項を適用して、「請求を拒否する」としたが、町長の要請の際の記録等は、今からでも作成が可能であり、町政に資するという合理的理由があるから、10条1項に基づき、新たにそれらの文書を作成しなければならない。

 そこで今日(5月30日)、与那国町長に対して、行政不服審査法に基づき、審査請求書を送付した。町役場の担当者に聞くと、「与那国町の情報公開請求では初めての審査請求」という。

 今回の審査請求の「審査請求の趣旨」は次の2点である。
 1.本件文書は存在しているはずであり、開示を求める。
 2.もし、不存在というのであれば、条例第10条に基づき、新たに作成して開示すること。
 「審査請求の理由」は、下に添付する。


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<別紙>審査請求の理由


1.実施機関(町長)は昨年11月14日の国土交通大臣への要請書・計画平面図のみを公開したが、町長は2022年以降、政府、自民党関係者、県庁等への要請行動を続けているにもかかわらず、それらの関係文書は公開されていない。
 これらの要請行動は公務で行われており、町政にもきわめて重要な問題であるから、その内容を記録した文書等が存在しないことなどあり得ない。

2.比川港湾の計画平面図は開示されたが、この平面図がどのようにして作成されたのか、又、その内容の説明文書がないこともあり得ない。 

3.要請行動の内容を記録した文書、比川港湾の説明文書等があくまでも不存在というのであれば、実施機関は、与那国町情報公開条例(以下、「条例」)第10条に基づき、これらの文書等を作成し、開示しなければならない。

 その理由は以下のとおりである。
 条例第10条は次のように定めている。
「実施機関は、公開請求に係る公文書を保有していないときは、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
(1) 公開請求に係る公文書を作成し、又は拾得することが可能であり、かつ、そのことが町の利益に資すると認められるときは、新たに文書等を作成し、又は取得して当該文書等を公開する旨の決定をし、公開請求者に対し、その旨及び公開の実施に関し規則で定める事項を書面により通知すること。
⑵ 公開請求に係る公文書を作成し、若しくは取得することが不可能であるとき、又は新たに文書等を作成し、若しくは取得することに合理的理由がないときは、不存在であることを理由として公開しない旨の決定をし、公開請求者に対し、その旨を書面により通知すること。」

 今回、実施機関は、請求のあった公文書について、「実施機関で保有したことがない」ので、「公文書が存在しないため、条例第10条第2項の規定により、請求を拒否する」として、「公文書不存在による請求拒否決定」処分を行った。
 しかし、要請行動のために政府関係者等と面談した際の記録等は、新たに作成することが可能であり、町政にも資するという合理的理由があることから、条例第10条2項を適用することはできず、同条第1項に基づき、新たに作成して開示しなければならないことは明らかである。


<付記>
 そもそも、与那国町の情報公開条例は、国や他の自治体にはない素晴らしいものである。
 国の情報公開法は、「知る権利」には全く触れていない。沖縄県の情報公開条例も、「県民の知る権利」に言及しているものの、それが憲法に基づくものとはしていない。しかし、与那国町の情報公開条例は、第1条(目的)で、「憲法の基本的人権としての知る権利を保障」と明確に位置づけている。
 条例第10条の、「不存在の場合に新たに作成する」という条文も、国の情報公開法や他の自治体の情報公開条例にはほとんどないものである与那国町の情報公開条例は2010年、全国でも最後に制定されたと言われている。その際、第10条の規程は竹富町の条例を参考にしたものであろう)。まさに、住民の「憲法の基本的人権としての知る権利」を保障し、「町の諸活動を町民に説明する責務を全うする」(条例第1条)ための素晴らしいものである。
 こうした全国でも最も進んだ情報公開条例を制定された町当局と町議会に敬意を表したい。そして、町当局には条例の趣旨に沿った運用をされるよう要請したい。

       与那国町長の「不存在による請求拒否決定通知書」





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