辺野古新基地建設事業では、辺野古ダムから大浦湾の埋立予定地に流れこんでいる美謝川の切替をどうするのかが大きな問題となってきた。
埋立承認願書では、辺野古ダムの支流からキャンプシュワブの第2ゲート付近で国道329号線を暗渠で横断し、K9護岸の奥に流すルートに切り替えるとされていた(下図の「青ルート」)。
ところが防衛局は、2014年9月、仲井眞知事(当時)に対してこの「青ルート」を止め、現在の美謝川の下流部分を延長1000mの暗渠にしてK9護岸の奥に流すという設計変更申請を提出した(下図の「赤ルート」)。
(国道下の美謝川)
当時は仲井眞県政だったが、県はこの「赤ルート」に難色を示したため、防衛局は2014年12月、この設計変更申請を取り下げざるを得なくなった。しかし防衛局はその後の2015年6月の第5回環境監視等委員会でも、この「赤ルート」の一部変更案(水理模型実験まで実施している)を環境監視等委員会に諮るなど、「赤ルート」に固執してきた。
ところが防衛局は本年4月21日、県に設計変更申請を提出した。そこでは美謝川は当初計画どおりの「青ルート」とされている。それまで環境監視等委員会には「赤ルート」で説明してきたのに、環境監視等委員会に諮ることなく、当初の「青ルート」に戻して県に申請したのだ。環境監視等委員会を無視したものと言わざるを得ない。
そして防衛局は、本年7月28日の第27回環境監視等委員会に「美謝川整備における環境配慮事項」を提案した。そこでは「環境への影響を低減できる」として、当初の埋立承認願書どおりの「青ルート」である。以前、「赤ルート」に変更申請し、取り下げた後も「赤ルート」の一部変更と説明してきたことには全く触れていない。
このように美謝川の切替を巡る経過はきわめて不可解である。
また、当初の「青ルート」から「赤ルート」に変更した「設計変更申請書」(2014.9.3)では、「変更前の計画で予定されていた洪水吐工事、護岸工及び水路の国道横断工事等の複雑な工事がほとんどなく、より効率的かつ着実に工事を進めることができる」とされていた。それを今回、元の「青ルート」に戻したのであるから、それは「効率的、着実」に進めることはできない工事を敢えてやるということになる。防衛局は、この「設計変更申請書」との矛盾をどう説明するのか?
この美謝川の切替えは、当初の埋立承認願書どおりの「青ルート」であれば、設計変更申請の県の審査を待たずに着手することができる。まもなく、切替水路の詳細設計や、辺野古ダム周辺でのボーリング調査も始まるようだ(2020.8.1 沖縄タイムス等)。
ただ、美謝川の切替や、辺野古ダム周辺からの土砂搬送のためにダム上部にベルトコンベアを設置するためには、名護市法定外公共物管理条例第5条により名護市長との協議が必要となる。防衛局は、2014年4月11日、名護市に協議書を提出したが、同年9月3日、協議書を取り下げてしまった(この日、防衛局は県に設計変更申請書を提出)。
したがって、今後、この「青ルート」を進めるためには、名護市長との協議が必要となる。
今回の設計変更申請に対しても、名護市長は県から意見書の提出を求められる。さらに法定外公共物管理条例の協議も始まる。今まで渡具知市長は、辺野古新基地建設事業について、「国と県の問題であり、裁判の行方を注目したい」という第3者のような態度を続けてきたが、これからはそうはいかない。今後、名護市長への申入れ等を検討しなければならない。