チョイさんの沖縄日記

辺野古や高江の問題等に関する日々の備忘録
 

<検証>那覇空港埋立での県外からの石材搬入手続きにみる土砂規制条例の問題点

2016年06月28日 | 沖縄日記・辺野古

 昨年、与党県議団の努力により、県外からの土砂持込に伴い外来生物が侵入することを防ぐために土砂規制条例が制定された。那覇空港第2滑走路増設のための埋立で当初の予定が変更され、奄美大島から石材を搬入することとなり、この条例に伴う手続きが行われた。現在、石材の搬入、投下が始まっている。那覇空港埋立事業の土砂規制条例に関して公文書公開請求で入手した資料をもとに、この条例の問題点をいくつか指摘する。辺野古の埋立が始まる前に、なんとか土砂規制条例が実効力を持つよう改正することを提案したい。

 奄美大島で発見されたハイイロゴケグモ(那覇空港埋立に伴う県の立入り調査報告書より)

 

1.事業者の杜撰な事前調査沖縄総合事務局からの「埋立用材搬入届出書」では特定外来生物は確認されていないとされていたが、その後の県の立入り調査では、採石地、仮置場の全てでハイイロゴケグモが確認された)

 沖縄総合事務局からの届出書(2015.12.22)には、「業者(国場組)が、採石場ごとに目視にて特定外来生物の付着又は混入がないことを確認」と記載され、さらに各採石場の社長らの「これまで特定外来生物の付着等が確認されたことはございません」という念書がつけられていた。

 しかし県が条例に基づき現地立入調査を行ったところ(2016.3.1~3.4)、採石場3ケ所、仮置場(搬出港)3ケ所の全てで特定外来生物(ハイイロゴケグモ(6ケ所全て)、オオキンケイギク(1ケ所))が確認された。

 事業者は、「調査にあたり専門家等の助言は受けていない」という。業者の杜撰な調査だけでは特定外来生物が発見されなかったのだ。事業者が届出書を提出するにあたって、専門家等の調査を義務付けることは難しいだろうか?

 事業者の事前調査が杜撰な場合、県が現地立入り調査を実施する他ない。しかし辺野古埋立の場合は、土砂量が1700万㎥ときわめて大量で、県が全ての箇所に現地立入調査を行なえるかどうかも難しい。条例では、届出は搬入の90日前までということになっているが、90日間で全てを調査することは困難であり、この90日という期間を延長することも必要であろう。

 

2.除去対策が完全に実施されているかの確認を!---完全に業者任せの防除策

 那覇空港埋立のための県外からの石材持込についての事業者の届出書では、特定外来生物の付着又は混入があったときの防除策として次のように記載している。

⑴ 採石場での対応(石材の洗浄)

「ダンプトラックに石材を乗せ、シャワーで水をかけて洗浄し、石材に付着した土砂等を洗い流す」、「洗浄後の水のSSが洗浄水と同濁度になるまで洗浄する。もしくは予めSSが同等となる洗浄時間を確認し、設定しておく。奄美大島からの石材調達の場合、洗浄後の水のSSが30mg/Lとなるよう、洗浄時間を120秒以上、洗浄水量を600~800Lと設定する」

 しかし最大の問題は、このような業者が説明する対策がそのとおりに実施されるのかということである。全ては業者に任せられており、これらの対策が本当に実施されているかどうかをチェックする体制が全くない。那覇空港の場合も、県が3月1日~4日に現地立入り調査を実施し、3月30日から7月末まで石材の投入が行われているが、県は今のところ再度の立入り調査の予定はないという。

 少なくとも県が事前連絡せずに立入り調査を行い、こうした対策がそのとおりに実施されているかどうかをチェックすることが必要であろう。

 なお、那覇空港埋立で対象となっているのは石材である。辺野古の埋立では土砂(岩ズリ)が搬入される。石材の場合は土砂の付着等も少ないが、土砂(岩ズリ)の場合、洗浄後の水の濁度が洗浄水と同程度になるためには相当の時間を要するであろう。1700万㎥もの大量の土砂がきちんと洗浄されるとはとても考えられない。

⑵ 搬出港での対応(目視確認)

 那覇空港の事業者の届出書では、石材を港の仮置場に降ろした際、運搬船に積み込む際、さらに仮置き場では1日に一回、特定外来生物の付着がないかどうか、また土砂や植物等の付着がないかを目視確認するとされている。しかし、ハイイロゴケグモは体長わずか15mm、セアカゴケグモは体長10mm、アルゼンチンアリはわずか体長2.5mmほどにすぎず、1人がわずか5分程度の目視確認で発見することはきわめて困難である(洗浄と同じく、目視も実際に行われているかどうか、誰もチェックできない)。

 また、那覇空港の場合は、専門委員へのヒヤリングでも、「海への直接投入であるから特定外来生物の侵入の恐れは少ない」とされてきた。しかし、辺野古では土砂は海に直接投入されるのではない。造成された岩壁にいったん仮置きされ、そこから大型ダンプで埋立地まで運搬される。仮置き場にシートや覆いをすることも難しい。那覇空港の事例よりははるかに条件が悪いのだ。

 

3.「勧告」ではなく「命令」に。また、罰則規定の追加を!

 また、特に問題となるのはこの条例の実効力である。条例では、県の立入り調査の結果、埋立用材に特定外来生物が付着していた場合、知事は、「防除の実施又は搬入若しくは使用の中止を勧告することができる」とされているにすぎない。また罰則規定もない。

 条例の実効力を担保するために、この「勧告」の規定を「命令」に変え、罰則規定を付け加えることが必要であろう。

 

 特定外来生物の侵入を防ぎ、本県の尊い自然環境を保全するためにも(条例第1条)、県議会が土砂規制条例の改正に向けて検討を始められるよう要請したい。

 

<参考資料>

・沖縄総合事務局から県に提出された埋立用材搬入届出書(2015.12.22)

・上記届出書に係る埋立用材搬入届出書に関する視聴(2016.2.3)

・外来生物侵入防止に係る立入調査業務報告書(2016.3.31  沖縄県自然保護課)

 

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