敷石をつかずはなれず春の鳥
遊歩道の歩みを阻む雪解水
ケーキ屋の幟揺れゐる桃の花
蒼天に息吹く畑面と斑雪
春眠や電車の揺れに擽られ
春の野に杖突く妻のふと見えし
膝小僧の出て仕舞湯日の永し
小刻みに土手駆けあがる春の鳥
今朝の予報違ひて厚着春浅し
察の順巡りくる日永かな
淡雪に平靴の女子高校生
逆よりの数を唱へて青き踏む
すれ違ふランナー無言や春浅し
襟立てて話しの尽きぬ春寒し
彫像の指差しそれる春の雲
昼中の不意の目覚まし猫の恋
妻のなお棲むや鏡の春の闇
現には妻のをらざる桃の花(現代俳句)
喪にあれば出づることなき雛かな
もういいかいいいよと返す遅日かな
傘に手をかけて躊躇の花の雨
散りやうを急ぎてをるや闇の花
宴終へ友を見送る春夜かな
腹ばいの子の唇に着く花片かな
欄春や覚むる昼寝の夕間暮れ
花の下笑まふ幼の仁王立
宵桜那須の辺りか新幹線
桜しべ降る頃となる家族旅
公園の彫塑の尻の艶めけり
翳す手にまた一つ見ゆ梅の花
黄昏の庭の草萌え朧なる
住職と会釈を交わす春めけり
重湯から全粥となる桜まじ
ふるさとの祖父の墓参や山笑ふ
終点の案内にさざめく桜バス
読みかけの頁をめくる春の風
シャンソンとコーヒーの香の春暖炉
指先の風に応える紙鳶かな
上空を斜ひにしていかのぼり
地を走る花片追いぬく春疾風
オペ終へて残る片目の大つつじ
諸脚の足裏の痺れ青き踏む
湯曇りを一筋拭ひて春の山
速足に曳かるるチワワ春の昼
ため口の幼児数ふる土筆かな
珈琲店の小窓の外の春時雨
大の字に一人仰向く花筵
葉桜も途切るることなき女声
ガラス浮きの中にいびつな春の湖
春暁や蠢きてゐる影の街
春果つる御堂の絵馬のゆるき音
木の芽風翁二人の立ち話
春一番天女の衣も奪わるる
春の野に稚追ふ母のもろてかな
見つめ合ふ母子の銅像春の昼
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