脚立(きゃたつ)に上って
作業をしていると、
「今日は、何をしてるんですか?」
と下を通る人達から声を掛けられる。
その度に、作業を中断し
説明を繰り返すのだが、
「あぁそうですか、頑張って下さいね」
とか、「楽しみにしていますから、
気を付けて下さいね」
と言って、
向こうに行ってくれれば
作業は順調に進むものを、
中には立ち止まって
作業を眺める人までいる。
黙って見ているだけならまだしも、
話し掛けられれば、
聞かれたことに応えるのは、
サービス精神旺盛が故(ゆえ)の災い。
内心では
「見て分からん奴には、
聞かせても分からん。
こっちは大切な目的のために
頑張っているのに、
物見遊山で眺めている人は
どうか御願いだから、
作業の邪魔をしないで下さい」
と思いながら
土曜日の午後から取り掛かり、
日曜日は午前中の雨で中断し、
午後から晴れて再開した作業が
やっと夕刻に終えた。
丁度その時、スージィーが
一泊二日のリトルから帰ってきた。
約一日を要した今度の作業も、
一人作業の一苦労。
作業は、それぞれに長さの異なる
6本のイルミネーションライトの
取り付け。
苦労したのは
雨どいの取付金具から垂らす
イルミネーションの高さ調整。
「もう少し高く、もうちょっと低く」
誰か指示する人がいれば楽なものを
取り付けるイルミネーション毎に
何度も繰り返した脚立の上り下り。
テーブルの上のランプシェードから
垂らす際には、揺らぐテーブルの怖さ。
風呂から上がる頃には
すっかり日も暮れて、
「待ってました」と
喜び勇んでグラス片手に外へ出る。
大小色とりどりのイルミネーションが、
煌(きらめ)きながら揺れている。
その煌きは、眺める人の心を
ある時は温かく優しく、
ある時はセンチメンタルに包み込む。
(上手く撮れずに、至極残念・・)
「なんだこの程度か」と
言われそうだが、
「お金さえあれば、もっと多くの
イルミネーションを飾れるのに」と
くたびれた足をさすりながら
悔やみもするが、
それでもこの界隈で
イルミネーションが煌くのは
我が家一軒だけ。
出来上がりを一人眺めて、
「よーし、これなら今年も
ご近所の人達に喜んで貰えるぞ!」
一人作業の一苦労の末に
ひとなすりの自信を掴んだのは、
クリスマスまであとひと月の
24日の夜だった。
「In a Sentimental Mood」
センチメンタルな気分の中で
唄:ビリー・ジョエル