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ロダミン(カプロスタチン改良薬)-フォークマン抗血管新生の新経口薬剤

2008-09-25 | 癌全般
本年1月に急逝した血管新生の父ジューダ・フォークマンのボストン子供病院の研究室では、さらに新たな抗血管新生剤の開発が続けられている。Lodamin(ロダミン)カプロスタチン(caplostatin)の改良薬で、経口の合成抗血管新生剤である。詳細

Nature Biotechnology誌2008年6月号によると、ナノテクノロジーを合わせた初の広域抗血管新生剤の有効性がマウスにおいて確認された。ロダミンは、フォークマン研究室のフェローであったIngbur医師が20年前に発見し、初めて抗血管新生阻害剤として臨床試験を行ったTNP-470という薬剤を持続放出剤に改良したものである。当時、幅広い癌種に有効性が認められたが、この種の薬剤に珍しくない神経系副作用により1990年代に中断された。

ロダミンは、TNP-470の効力を保持し、神経毒性は認められない、経口の薬剤である。アバスチンなどの血管新生阻害剤は、VEGFなどの単一の血管新生因子を標的とし、わずかな癌種にのみ効果がある。これに対し、ロダミンはテストされた全ての血管新生刺激因子に反応する毛細血管の成長を妨げる。さらに、ロダミンは動物実験で、多くの癌の致命的合併症で、適切な治療がない肝転移を減少させた。

TNP-470はフォークマンの研究室で数年前初めて改良された。血管脳関門を通過しないように大きなポリマーを結合させた(Cancer Cell, March 2005)ものがこのカプロスタチンであり、神経毒性がなくなったが、静注であった。開発者の同研究室ベニー医師はこれを2つの短いポリマー(PEGとPLA)に結合させてロダミンを成功させた。このポリマーはすでに商業的にも汎用されているもので胃酸環境でも保護されるため、経口摂取可能となった。

ロダミンはまた、半減期が長く、選択的に腫瘍組織に蓄積して血管新生を阻害する。特筆すべきは肝臓に毒性なく蓄積して転移を防ぎ、生存期間を延長したことである。「私が最も驚いたことである。投与マウスでは肝臓は全くきれいな状態であったのに対し、投与しなかった群は腫瘍であふれ、肝臓であるかの認識さえできなかった」

TNP-470はフマギリンという強力な抗血管新生能力を持つカビから偶然発見されたものであった。Ingbur氏が内皮細胞を探している時にカビに覆われたディッシュでは細胞が変形していた。彼はフォークマンと共に日本の武田薬品(株)から支援を受けて合成のTNP-470を開発した。(Nature誌 December 1990)

「この薬は、私が想像していた以上の強力な薬剤であり、極めて広範囲に効力を有する薬剤である。これは薬剤の進化である」とベニー医師は述べる。
フマギリン(カビ)TNP-470カプロスタチンロダミン
原文記事


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