がんの情報Tips

海外のがん情報を紹介。『海外癌医療情報リファレンス』https://www.cancerit.jp/関連ブログ。

抗凝血剤 低分子ヘパリンは癌患者の生存に寄与する

2007-06-15 | 癌全般
癌の生存率における低分子ヘパリンの効果
ランダム化試験のメタ分析と体系的レビュー
J Thromb Haemost. 2007 Apr;5(4):729-37.
【背景】低分子ヘパリン(LMWH)はin vitroおよび動物での悪性腫瘍の研究で、抗腫瘍作用が認められている。後ろ向きデータでは、癌患者の生存を改善させることも示唆されている。
【目的】LMWHをプラセボまたは抗凝血剤を使用しない治療と比較して、癌患者の生存への効果を評価する。
【方法】われわれは、特に癌患者の生存におけるLMWHの効果を評価したランダム化試験の体系的なレビューを行った。データソースは、MEDLINE, EMBASE, HealthSTAR, Cochrane library, gray literature and cross-referencing from reference listsである。査読者1名によってデータ抽出がなされ、その正確性の検証が別の査読者によって独立して行われた。メタ分析には以下が用いられた:(1)オッズ比(OR)と相対危険度(RR)(2)censored endpoints(3)ハザード比(HR)
【結果】全患者のpooled HRは0.83 (95% CI 0.70-0.99; P = 0.03)、進行癌患者では0.86 (95% CI 0.74-0.99; P = 0.04)であり、両方ともLMWH群が良好という結果となった。OR、RRと生存メタ分析も一貫してLMWHが優位であった。腫瘍タイプによる感受性分析は、情報がないため行われなかった。
【結論】LMWHは癌患者、および進行癌患者の全生存率を向上させる。どの腫瘍タイプや病期、投与スケジュールが最も大きな生存ベネフィットを生むかを検討する追加試験が必要である。
PMID: 17408406 [PubMed - in process]
******
Tips内記事:癌患者の血栓(DVT)に低分子ヘパリン
癌患者の血栓症リスク


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
血小板機能も重要ですね (Setochan)
2007-06-16 15:27:50
 面白いデータですね。
 以前,血栓塞栓症と生存期間というタイトルで論文を紹介したことがあります。
 TBしてみたのですが・・・・

 この研究は,オッズ比,相対リスク,追跡中のデータを加味した生存データやハザード比を用いたメタ分析を行って,低分子ヘパリンを投与している群に予後が良好という結果ですね。ハザード比は0.8前後ですので,それほど大きな差ではないと思いますが,血小板機能が重要であるということを示唆する重要な所見と思います。
返信する
血栓は怖いです ()
2007-06-16 20:19:53
癌治療ばかりに目が行きがちですが、血栓という恐ろしいハプニングがいつ起こるか知れません。癌の患者さんがたは気をつけないといけないと思います。痛み止めやら、低分子ヘパリンやら、抗癌効果があるとなれば精神的にも積極的に受けられますね。

家族も直接の死因は血栓だったと思われます。DCIだったかもしれません。
サリドマイドをご使用の場合は特に気をつけていただきたいです。
返信する

コメントを投稿