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アントラサイクリン乳癌治療は廃棄されるべき

2007-12-26 | 乳癌
 主にドキソルビシン(アドレアマイシン)アントラサイクリン系薬剤は、長く乳癌治療の主流であったが、前向き、後ろ向き両データでHER2受容体およびポイソメラーゼIIa遺伝子(Topo IIa)陽性患者にのみ有効であると、今回サンアントニオ乳癌学会でUCLAのSlamon医師が発表した。しかも、アントラサイクリン系術後療法は、HER2受容体を標的にした治療を受けていない患者に対する治療であるべきであるとした。
アントラサイクリンは、生存率を5%上げるとされるが、重篤な心毒性の副作用がある。
ドキソルビシン+サイクロホスファミド治療を受けた正常な、および欠損したTopo IIa遺伝子をもったHER2陽性女性では、生存期間中央値は18.2ヶ月、Topo IIa過剰の女性では、38.5ヶ月であった。ハーセプチンが治療に加えられると、この差異はなくなった。同様の結果が他に8つの試験で認められた。

ダナファーバーのWiner氏は、まだ廃棄すべきだと言い渡すには時期尚早かもしれないと語った。「心毒性のある同薬剤を投与しなくてよくなれば喜ばしいことだが、私はまだこの薬が無意味だと言う心構えができていない。」「この議論は乳癌コミュニティーに亀裂を生むものではないだろう。」「タイミングの問題だろう。アントラサイクリン療法の使用は何年か先には相当減少するだろうと多くの人々が考えているし、そこに向かって結論を急ぐ者もある。『多くの後ろ向き試験と1つの前向き試験』以上の結果を待っている者たちもいる。」

原文記事「A call to scrap Anthracyclines for Breast Cancer」


7 コメント

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Unknown (N)
2007-12-28 11:55:17
事情を知らない人は誤解を招くので、できれば正確に翻訳紹介してほしいと思います。タイトルは過激であればあるほどアピールできるとは思いますが、事実と反しています。

原文はDana farberのWinerが最後にコメントしています。このコメントに100%同意です。時期尚早に過ぎます。
反論も翻訳掲載したほうがよいと思います。
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記事タイトルそのままと思います ()
2007-12-28 13:45:26
時間的にも余裕がなかったのと全部訳すのは著作権上避けたいので、反論部分は省きました。発表自体を紹介することが目的でした。
反論、全部追加してみました。
が、私にはそれほど強い反論ではないように読めました・・・
「正確でない翻訳」部分があれば、修正します。

Nさんのご意見も大変参考になります。
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Unknown (N)
2007-12-28 16:12:41
すぐに対応してもらってすみません。しかし、アンスラサイクリンがゴミ箱行きという、早すぎる意見は到底容認できません。以前乳癌のKey drugです。確かにACはTCに負けていますが、たった一本の1000例の小さな臨床試験があるにすぎません。TCはリンパ節陽性で通常使われるAC followed by Tに勝ってません。ハーセプチンとの併用でもアンスラサイクリンなしのTCHはACTHとほぼ同様の結果をもたらすかもしれませんが、まだ中間報告があるにすぎません。日本ではカルボは使えませんし。再発ではごみとなるような薬はありえません。call to scrap Aなんてとんでもない。
この時期尚早な議論はアンスラサイクリン大嫌い二大巨頭のUCLAのDenis SlamonとUS oncologyのSteven JonesによるPropagandaのため大きくなりすぎてます。冷静に対応する必要があります。
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ありがとうございます ()
2007-12-28 19:16:59
そのような貴重なご意見がいただけるのが醍醐味です。
いろんな裏事情もあるのですね。
ただ、心臓への副作用は高そうです。

KRAS変異にしても、そのことを知らずに治療を受ける患者さんがあることを考えると(実際に、KRAS変異ありの患者さんでそれを知っていればよかった、という声もあった)大事なことだと思いました。
効果がでる人を予測する分子テストも有用になってきているようですし、さらに今後より良くなりますね。
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患者の独り言 (bre)
2008-01-01 03:31:20
こういう発表はできるだけ早く知りたい、と再発乳癌患者である私は思います。
後で知るショックは患者にとって計り知れないものでした。
特に、やってしまったことは取り返しがつかないという点で、いつまでも心にまとわりつき、次の一手への信頼性までそいでしまうんじゃないか、と、体験からそう思っています。
(やってもらえなかったことに関しても同じように感じるか、と言えば、それは大抵保険制度の壁で「使わなかった」ではなく、「使えなかった」薬なので、また全然感じることが違います。「使えません」と言われた時点で、あとどうするかは自分にかかってもきますので。)

抗癌剤に関しては、それで再発が治癒するということは殆どないのが現状のようですので、副作用の大きな薬で効果が少しでも疑われるものは絶対避けたい、と思っている患者も居ることを、多くの人に知ってもらいたいな、といつも思っています。
もちろん、色々な結果をふまえて、それでも投与を望むという事もあります。

それとも、患者も家族も何も知らなければ動揺することもない、のでしょうか?
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独り言へ返信 ()
2008-01-02 10:39:06
切実な思いが伝わってきます。

知りたい人、知りたくない人、いろんな人があると思い、画一的には考えませんが、わずかな知識でもあればその人の今後の選択が大きく変わるのは事実でしょう。

誤情報や操作された情報は論外ですね・・
そのような情報であれば、指摘いただけると幸いです。
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ひとりごと (匿名希望)
2008-01-03 19:16:44
最近、大規模臨床試験で有用とされたレジメでも特定のサブグループでは有用どころか、むしろ副作用のほうが有益性を上回るという論文も散見します。乳癌は比較的そのサブグループ分けがうまくいっているほうの疾患だと私は思っていますが、それでも分らないことはたくさんあると思います。

 現時点のエビデンスが紹介され、それをもとに最善を尽くそうとするのが現代医療だと思います。個々の患者さんにとって自ら受けた治療こそ世界最高の治療であると考えるべきであり、それらの結果を科学的に反省し、次の医療に生かすのが医療側の責務だと思います。情報を得ることは大切ですけれど、一旦受けた治療(ただしその時点で正当とされているもの)が間違いであったかどうかは、実はもっと後世で判断されるものなのかもしれません。breさん。これは、いつも実臨床で私が患者さんに最初に話していることそのものなのです。
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