内田百閒「ノラ未だ帰らず」ノラや所収

　ノラがいなくなってからとうとう一年がたってしまいました。
　老先生は、いまだに何かにつけては愛猫のノラを想い、涙を流しています。
　それにつけても、一年たっても、ノラに似た猫の情報を送ってくれたり、励ましの便りをくれる人がかなりいることに驚かされます。
　老先生が当時の有名人であったことを差し引いても、６０年前は現代よりも人情があったのでしょう。
　児童文学の世界でも、かつては人情話が出版されましたが、通俗的な面白さ最優先の現在では難しいでしょう。

　

	ノラや (中公文庫)
	クリエーター情報なし
	中央公論新社