他の記事にも書きましたが、「マンガ的リアリズム」という言葉があります。
現実をそのまま描写する「自然主義リアリズム」ではなく、今までに夥しく書かれてきたマンガの作品世界を作者と読者の共通認識として、その世界観に基づいて作品を描く方法のことです。
日本の児童文学において、「マンガ的リアリズム」で作品を描いて初めて大成功を収めたのは、おそらく那須正幹の「ズッコケ三人組」シリーズでしょう。
それと同様に、児童文学の世界には、「メルフェン的リアリズム」とでも呼べるような世界観に基づいて書かれた作品群があります。
グリムやアンデルセンを源流として、日本でも、小川未明、浜田広助、坪田譲治のいわゆる「三種の神器」を初めとして、宮澤賢治、新美南吉、安房直子など、面々と書き綴られてきた夥しいメルフェンの世界を、作者と読者の共通認識として、その世界観に基づいて作品が書かれています。
そのため、これらの作品の登場人物やエピソードには、どこか既視感があります。
もっとも、このような作品には、悪い点ばかりではなく利点もあります。
作品を読んで大きな驚きは得られないものの、読者と共有できる予定調和的な世界なので安心して読めます。
そのため、特に年少の読者には読みやすいでしょう。
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