現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

手塚治虫「火の鳥 黎明編」

2018-12-19 17:46:02 | コミックス
 永遠に死なず、その血を飲めば人間も不老不死になると言われている、火の鳥をめぐる人間たちを描いた、数多くの傑作を持つ不世出の漫画家である作者のライフワークにして代表作の一つです。
 1963年に雑誌「COM」に連載されたこの作品は、古今東西を問わずに多くの権力者が求めた不老不死をテーマに、作者の広範な分野に広がる膨大な知識をもとに、日本の神話、邪馬台国伝説、騎馬民族の存在などの当時の最新の歴史情報、作者の本来の専門である医学知識などを自在に操って、壮大なスケールで描いています。
 しかも、けっして堅苦しい物語にせずに、アクション、ユーモア、男女の恋愛など、エンターテインメント性満載で、読者を引きつけています。
 そして、何より、いつの時代も未来を切り開いていく担い手である子どもたちへの限りない愛情と、彼らを産み育てていく女性たちへの心からの尊敬がこめられていて、50年も前に描かれたとは思えない先見性を持っています。
 児童文学で言えばケストナーの諸作品とも共通するこれらのメッセージは、現代においても少年(少女)漫画や児童文学にとっても最も大事なものであると信じています。

火の鳥 1・黎明編
クリエーター情報なし
朝日新聞出版

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