現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

中野みち子「海辺のマーチ」

2020-02-26 08:35:09 | 作品論
 この作品は、労働組合のことを取り上げた児童文学の代表作の一つです。
 1971年初版なので、70年安保の挫折感がどのように出てくるのかと思ったのですが、時代設定が1966、67年ごろで、執筆されたのも1960年代末と思われますので、まだ社会主義リアリズムは破綻していなくて、組合運動の未来に作者は希望を持って書いています。
 主人公に作者の意見を代弁される部分があってかなりテーマ主義なにおいがするのですが、主人公を組合側でなく管理者側の娘にしたことが、一方的な組合賛美にならなくてすむことに成功しています。
 営林署や労働組合への取材もかなりきちんとされていますし、登場人物や風景もしっかりと書き込まれています。
 私の読んだ本は1980年8月で10刷なので、少なくとも1970年代にはかなり読まれたのだと思います。

海辺のマーチ (ジュニア・ライブラリー)
クリエーター情報なし
理論社

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