現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

最上一平・文 黒井健・絵「すずばあちゃんのおくりもの」

2022-06-11 10:57:57 | 作品論

 すずばあちゃんは、村のあちこちに花の種をまきます。

 そのおかげで、村のあちこちに花が咲きます。

 そんな花々を、村の人たちは「すずばあちゃんのおくりもの」と呼んでいます。

 すずばあちゃんが、種をまくのには訳があります。

 戦争が終わって満州から引き揚げてくるときに、幼い赤ん坊を亡くして野端に埋めてきたからです。

 そして、そこに野菊を供えてきたのです。

 すずばあちゃんにとって、村に咲く花たちはその時の花の子孫のように感じられたのです。

 すずばあちゃんのまく花の種には、戦争のない世界への祈りが込められていたのでした。

 最上一平の抑制された美しい文章に、黒井健の描く花たちが幻想的に描かれていて、この絵本自体が読者へのおくりもののように感じられます。

 

 

 

 

 


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