現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

マーケット・インとプロダクト・アウト

2021-09-05 09:48:02 | 考察

 マーケティング用語に、マーケット・インとプロダクト・アウトという言葉があります。
 前者は、市場のニーズ(需要)に合わせて製品を開発することです。
 後者は、先に製品のシーズ(種)があり、それに基づいて製品を開発することです。
 マーケティングの世界では、前者は肯定的な、後者は否定的な文脈で使われることが多いです。
 つまり後者は市場のニーズを無視して、独りよがりなものを作るという風にとらえられます。
 今、児童文学の世界でマーケット・インの作品を作るとしたら、小学校中学年以下の女の子を主人公にして肩の凝らないエンターテインメントを書くことでしょう。
 ラブコメや軽いミステリ、お手軽なファンタジー、シリアスでないスポーツ物などがむいています。
 形態は文庫あるいは新書で、値段はお小遣いで買えるように六百円以下にしなければなりません。
 会話と余白が多く、三十分で読み飛ばせるぐらいが適当です。
 こういった作品は売れるので、編集者たちが喜ぶでしょう。
 でも、私はへそ曲がりなので、貴重な時間を使ってそんな作品を書いて、どこが面白いのかなあと思ってしまいます。
 私は本業で、エンジニアのころは電子機器の新製品の企画を、マネージャーになってからはそれらを統合した事業部や会社全体のビジネス・プランの策定を、三十年近くやってきました。
 なんとかプロダクト・アウトな製品を作ろうとする技術部のエンジニアたちをコントロールして、より売れるマーケット・インな製品や分野を開拓してきました。
 もうマーケット・インの世界は飽き飽きです。
 せめて児童文学の世界では、プロダクト・アウトの斬新な作品に出会いたいし、自分でも創造していきたいと思っています。

三振をした日に読む本 (きょうはこの本読みたいな)
クリエーター情報なし
偕成社

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