現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

柏原兵三「蜂の挿話」柏原兵三作品集2所収

2017-03-10 11:41:52 | 参考文献
 バスに乗り合わせた人びとと、そこに紛れ込んだ蜂との関わりを描いた作品です。
 ほとんどストーリーらしいものはなく、徹頭徹尾細かな描写だけで形作られた短編です。
 かつて物語から出発した文学は、近代に入って描写(自然、場景、心理など)を獲得して、小説という形態が生み出されました。
 この短編は、そういった意味では小説の典型なのかもしれません。
 児童文学の世界でも、1970年代ごろから1990年代ごろまでは、描写を主体にした小説的な作品がたくさん出版されていました。
 しかし、現在ではそういった作品を読みこなせる子ども読者は激減し、そのためにほとんど出版されなくなりました。
 その頃活躍した作家の多くは、一般文学の方へ越境していったり、エンターテインメント的な作品へ傾斜していったり、幼年童話や絵本に活路を見出したりしています。
 高学年や中学生向けの小説的作品を書き続けている生き残り的な書き手たちは、少女小説(男の子たちよりはまだ読者が生き残っています)的性格を強めるか、自費出版の途を取るかしかないようです。

柏原兵三作品集〈第2巻〉 (1973年)
クリエーター情報なし
潮出版社

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