週刊朝日に連載後、1997年に出版された作者特異の自伝風実録ものです(解説の目黒考二によると、かなりフィクションが混じっているそうです)。
その目黒が友人たちに勝手に配布していた個人書評誌を、定期的に公に発行される雑誌に立上げていく様子が、手作り感満載で描かれています。
椎名銘柄の有名人たち(おなじみの木村晋介や沢野ひとしに加えて、目黒孝二や群ようこなど)が多数登場します。
時代としては、「銀座のカラス](その記事を参照してください)の直後なのですが、フィクション度はかなり下がり、最初の「哀愁の町に霧が降るのだ」と同程度の感じです。
文字通り手作りで新しい雑誌を立ち上げるあたりは非常に楽しいのですが、後半は有名人になっていく作者本人と著名人も執筆するようになる「本の雑誌」の成功譚(作者本人については、さらに中小企業とは言え、勤め先の社長就任を打診されるという二重の成功でもあります)を読まされているようで、読まされる方は他の記事にも書いたように「成功者の無惨」を感じてしまいます。
実際の作者は、社長就任の打診と有名人になっていく自分に引き裂かれるようして精神を病んでいったようなのですが、その部分は非常に簡単にしか書かれていない(本書の内容にそぐわないのかもしれませんが)ので、残念ながら作者に寄り添って読むことはできませんでした。