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現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

白土三平「カムイ外伝第一部」

2018-12-30 10:27:04 | コミックス
 1965年から1967年にかけて、週刊少年サンデーに不定期連載(全二十回)された忍者漫画です。
 私は小学生の時に、少年サンデーを毎週家でとってもらっていて(町の本屋さんが配達してくれました)、前半はリアルタイムに読んでいましたので、その部分は鮮明に記憶に残っています。
 後半が記憶にないのは、中学生になって少年サンデーをとってもらうのをやめたからでしょう(本屋で好きな漫画だけ立ち読みしていました)。
 今では考えられませんが、当時の少年漫画雑誌の主な読者は、小学生でした。
 私が読んでいたころの少年サンデーでは、横山光輝の「伊賀の影丸」が大人気で忍者漫画ブームでしたので、作者の「カムイ」にも白羽の矢が立ったのかもしれません。
 典型的な子ども漫画のタッチの「伊賀の影丸」に対して、劇画(そのころはまだこの言葉はありませんでしたが)タッチの「カムイ外伝」は、子ども読者の目にも圧倒的にリアルでした。
 また、「木の葉隠れ」などの影丸の技がいわゆる「忍術」だったのに対して、カムイの「変移抜刀霞切り(へんいばっとうかすみぎり)」や「飯綱落とし(いづなおとし)」は、修練を積んだアスリートの技っぽくて、男の子たちの憧れでした。
 竹製の三十センチものさしを、ズボンのベルトの後ろに差して、教室で「変移抜刀霞切り(へんいばっとうかすみぎり)」のまねをしたのを、今でも思い出すことができます(「飯綱落とし(いづなおとし)」は、まねをすると死ぬ恐れがあります)。
 この時期は、作者にとっては、代表作の一つである「カムイ伝」を大人向け(というよりはマニア向けといった方が正しいかもしれません)の漫画雑誌「月刊漫画ガロ」に連載していた時期(1964年から1971年にかけて)と重なります。
 「カムイ外伝第一部」では、そのカムイ伝(で抜け忍のカムイだけでなく、カムイの義兄(姉の夫)の下人(百姓の中でも下位の立場です)の正助、侍(ただし脱藩した浪人)の草加竜之進を中心とした群像を描いています)に登場するカムイを主人公にして、抜け忍とその追手の戦いを通じて、いろいろな忍者の技を紹介(発明)しています。
 安保闘争を中心にした当時の階級闘争を社会背景にして、江戸時代の身分制度や一揆などの階級闘争をマルクス・レーニン主義を思想背景にして壮大に描いた「カムイ伝」が純文学だとすると、「カムイ外伝第一部」は忍者の戦いにフォーカスした大衆文学(今の言葉で言えばエンターテインメント)に位置付けられます。
 その後、1982年から1987年にかけて「カムイ外伝第二部」が、ビッグコミックに不定期連載されますが、こちらもカムイが主人公ですが、発表誌からも分かるように、「カムイ伝」と「カムイ外伝第一部」を折衷したような内容になっていて、言うならば中間小説のような作品です。
 この期間(1970年代から1980年代にかけて)に、マルクス・レーニン主義への評価も大きく変わりましたし、純文学も大衆文学寄りにシフトしていますので、そのあたりの時代変化に作者なりに対応したものと思われます。


カムイ外伝 (1) (小学館文庫)
クリエーター情報なし
小学館


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