現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

後藤竜二「風にのる海賊たち」

2019-02-20 09:00:05 | 作品論
 炭鉱の閉山闘争に敗れて荒廃した北海道の町で、それぞれに苦しい状況を抱えた子どもたちが一年後に再会した二日間を、四人の子どもたちのそれぞれの視点で描いた作品です。
 1973年3月に出版された作品なので、70年安保の挫折を、作者がどう総括したかに興味があったのですが、かなり混乱している印象です。
 しいて言えば、学園民主化闘争や組合闘争とは距離を置いて、歌声運動や市民運動に活路を見出そうとしていることが読み取れます(巻末の解説によると、作者自身も、この作品を執筆している時には、それらの運動にのめりこんでいたようです)。
 明確な方向性は打ち出せずに問題点を投げ出しただけですが、それが作者の置かれていた正直な状況だったのでしょう。
 私はその年の四月に作者と同じ早稲田大学(彼は1966年卒業です)に入学したのですが、新左翼セクト間の内ゲバが過激化したきっかけの一つである川口くんリンチ殺人事件の後の、革マル対反革マルの闘争中の荒廃したキャンパス(入学式も中止になりました)で、同様に呆然とした気分だったことを思い出します。

風にのる海賊たち (児童文学創作シリーズ)
クリエーター情報なし
講談社

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