現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

E.L.カニグズバーグ「ジョゴンダ夫人の肖像」

2021-02-13 12:39:20 | 作品論

 現代の子どもたちが抱える様々な問題を、豊かなストーリーにのせて描く作者としては、異色の作品です。

 世界一有名な絵画といってもいいレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」誕生の秘密を、独自の解釈とストーリー展開で描いています。

 大枠では史実に基づいていますが、そこに作家としての大胆なストーリーを組み立てています。

 結論から言うと、「モナ・リザ」は、レオナルドと、その最年少の弟子であるサライ、それに早世したミラノ公妃ベアトリチェとの間に生まれた、友情とも愛情とも言える関係の賜物だとしています。

 泥棒で嘘つきだが何事にも捕われない美少年サライ、姉のような美貌に恵まれずに内面の美しさを磨いたベアトリチェが、宮廷や大金持ちのパトロンたちのための仕事に倦んでいたレオナルドに、荒々しい創造の力を蘇らせ、それが名もない商人の妻の肖像画に結実したと言うのが、自身画家でもある作者(自分の作品の挿絵も描いています)の結論のようです。

 そして、そのことが、現実に縛られている大人に対するアンチテーゼとしての子どもの存在の大切さを示すと同時に、子どもたちにいつまでもこうした現実に捕われない生き方をすることを指し示しているように思われます。

 

 

 


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