過食症を取り扱った小説ということで興味を持って読みましたが、実際には主人公である若い女性の、母親との葛藤や恋愛観(失恋など)を中心に描かれていて、過食症に対する実体験的な考察はあまりなくて、やや肩透かしを食った感じです。
タイトルが「過食症」ではなくて「巨食症」となっているように、全体に言葉に敏感な文学少女っぽいスタイリッシュな作品で、作者がテレビに出演している若い美人だったということもあって、すばる文学賞を受賞時には、けっこう話題になったようです。
おそらく過食症も彼女の実体験ではないのでしょうが、実際に摂食障害が1970年代の拒食症中心から過食症中心に移っていく1988年に出版されているので、題材としては非常にタイムリーで、その点では時代感覚に優れた人なのでしょう。
その後、過食症に関する知見はかなり進んでいるので、現時点で読んでみると障害と原因の因果関係があまりに単純化されすぎている感はありますが、こういった同時代性を前面に出した作品(最近では2010年の新就職氷河期を鮮やかに切り取って見せた朝井リョウの「何者」など、その記事を参照してください)も必要だと思っています。
児童文学の世界では、同時代の風俗を描くのはすぐ古くなるからと敬遠されがちなのですが、それを過度に恐れていては、同時代を生きる子どもたちと共有できるような世界は描けないと思います。
タイトルが「過食症」ではなくて「巨食症」となっているように、全体に言葉に敏感な文学少女っぽいスタイリッシュな作品で、作者がテレビに出演している若い美人だったということもあって、すばる文学賞を受賞時には、けっこう話題になったようです。
おそらく過食症も彼女の実体験ではないのでしょうが、実際に摂食障害が1970年代の拒食症中心から過食症中心に移っていく1988年に出版されているので、題材としては非常にタイムリーで、その点では時代感覚に優れた人なのでしょう。
その後、過食症に関する知見はかなり進んでいるので、現時点で読んでみると障害と原因の因果関係があまりに単純化されすぎている感はありますが、こういった同時代性を前面に出した作品(最近では2010年の新就職氷河期を鮮やかに切り取って見せた朝井リョウの「何者」など、その記事を参照してください)も必要だと思っています。
児童文学の世界では、同時代の風俗を描くのはすぐ古くなるからと敬遠されがちなのですが、それを過度に恐れていては、同時代を生きる子どもたちと共有できるような世界は描けないと思います。
巨食症の明けない夜明け (集英社文庫) | |
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