すずばあちゃんは、村のあちこちに花の種をまきます。
そのおかげで、村のあちこちに花が咲きます。
そんな花々を、村の人たちは「すずばあちゃんのおくりもの」と呼んでいます。
すずばあちゃんが、種をまくのには訳があります。
戦争が終わって満州から引き揚げてくるときに、幼い赤ん坊を亡くして野端に埋めてきたからです。
そして、そこに野菊を供えてきたのです。
すずばあちゃんにとって、村に咲く花たちはその時の花の子孫のように感じられたのです。
すずばあちゃんのまく花の種には、戦争のない世界への祈りが込められていたのでした。
最上一平の抑制された美しい文章に、黒井健の描く花たちが幻想的に描かれていて、この絵本自体が読者へのおくりもののように感じられます。