現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

男と女

2018-10-03 18:32:47 | 映画
 1966年のフランス映画で、カンヌ国際映画祭のパルム・ドールと、アカデミー賞の外国語映画賞を受賞しているメロドラマの傑作です。
 それぞれ幼い息子と娘を預けている寄宿学校で週末に出会った、おしゃれでかっこいい男(なにしろ人気カーレーサーです)とすごい美人の女(映画会社の重要な現場スタッフ(進行担当か?)が、それぞれの過去の傷(男の妻は、彼のレース中の事故をきっかけに精神を病んで自殺しています。女の夫はスタントマンで、撮影中の事故で死んでいます)を乗り越えて結ばれるまでを、監督のクロ-ド・ルルーシュ好みのスタイリッシュな映像(モノクロとカラー映像をうまく使い分けながら、寄宿学校のある有名な海辺のリゾート地のドーヴィルの美しい風景、二人がそれぞれ暮らしているパリのおしゃれな雰囲気、カーレース(有名なル・マン24時間耐久レースやモンテカルロ・ラリー(男が優勝して、それをきっかけに二人が結ばれます)などの実際の映像、彼女が働く映画の撮影現場などが、短いカットの連続で綴られています)とおしゃれなセリフ、そしてフランシス・レイの美しい音楽(有名なスキャットによる主題歌だけでなく、常にムーディな曲がバックに流れています。女の夫がブラジル人という設定なので、サンバやボサノバの有名な曲も効果的に使われています)で描いています。
 設定やストーリーは笑いたくなるような極端さとご都合主義なのですが、かわいい子役たちも含めてすべてがおしゃれで美しいので、まあこんなのも映画としてはありなのかと思わせる力があります。

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よしもとばなな「癒しのスープ」さきちゃんたちの夜所収

2018-10-03 17:04:40 | 参考文献
 亡くなった祖父母がやっていた、土日に大量の豆スープを立ち寄った近隣の人に無料であげるという作業(無料というので仕事ではありませんが、ボランティアというのも違うような気がします)を復活させようという母(祖父母から見れば嫁)を手助けするさきちゃんを描いています。
 一言でいうと、善人大行進(作者自身が作品の中でそう書いているのですから間違いありません)という感じのあざとい作品です。
 祖父母はもちろん、離婚した両親もいつの間にかいい人になっていますし、父の不倫相手も善人(おまけにおなかの中の子までいい子になるとさきちゃんに予言されています)、祖父母の善行を眺めていた謎の少女(神様か?)やさきちゃんの恋人、そしてもちろんさきちゃん自身も善人なのです。
 しかし、ここまで自分の読者である若い女の子に媚びなくてもいいんじゃないかという気がします。
 さきちゃんは、週四日のアルバイトしかしていないで、神様のような祖父母や意外にいい人の離婚した両親、それに恋人にまで恵まれています。
 これは、この作者の読者である若い女性たちにとっては、ある意味で理想形でしょう。
 そんな読者たちに、作者からは「頑張らなくてもいいんだよ」というありがたい癒しのメッセージが、これでもかと降り注がれます。
 しかし、ここに書かれていさきちゃんは、自立しない他人に依存した女性像(ジェンダー観の揺り戻しにより、最近の若い女性たちがあこがれています)でしかありません。
 新就職氷河期の手荒い洗礼を受けた若い女性たちがこのようなジェンダー観に陥っているので、最近の児童文学(現在の児童文学の大きなマーケットは若い女性です)でもこういった作品は人気があります。

さきちゃんたちの夜
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新潮社
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