現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

コロナ神父「ねずみとおうさま」

2018-10-16 16:29:47 | 作品論
 石井桃子訳の、1953年発行の「岩波子どもの本」シリーズの一冊です。
 乳歯が初めて抜けた幼い王様と、ペレスねずみの冒険を描いています。
 お話自体は単純な構成のメルヘンなのですが、子どもの乳歯が初めて抜けた時(成長の象徴でしょう)に、その子の幸せを願う風習(ペレスねずみに手紙を書いて、抜けた歯と一緒に枕の下に置いておくと、プレゼントと交換してくれます。日本では、上の歯は屋根の上に、下の歯は縁の下へ投げて、いい歯が生えますようにと願いますね。私も息子たちの時にやりました)は、洋の東西を問わないのだなあと感慨深いものがありました。
 かなり昔にスペインの王様のために牧師さんが書いたお話ですので、宗教くさい所や古臭い所もありますが、王様だけでなく貧しい子どもたちまで、等しく幸せを願う気持ちは、児童文学の本質を十分に備えています。
 この本は、大平健「やさしさの精神病理」(その記事を参照してください)で知って、初めて読みました。
 精神科医である彼は、ペルーの貧困地域での活動を若い時にしていますが、もしかするとこの本もその活動のきっかけになっていたのかもしれません。

ねずみとおうさま (岩波の子どもの本)
クリエーター情報なし
岩波書店
コメント

過酷な現代においてユートピア童話が持つ意味

2018-10-16 09:14:24 | 考察
 児童文学には、ユートピア童話という分野があります。
 人間関係が濃密で、地域全体で子どもたちを育んでいるような環境を、作品の舞台にするのです。
 多くは高度成長時代やそれ以前といった時代設定、あるいは農村や漁村といった舞台設定、時にはその両方を備えている場合もあります。
 そこにおいて、現代では失われがちな人間関係や豊かな人間性を持った登場人物を使って、物語を展開するのです。
 それ自体は、人間関係や人間性が失われがちな、現代の、特に都会の生活に対するアンチテーゼの働きをしているので、ユートピア童話のすべてを否定しようとは思いません。
 しかし、そういった作品が同じ作者によって繰り返し描かれることは、過酷なユートピアではない現実社会からの逃避になってしまう恐れがあります。
 また、設定自体が作品のリアリティを保証してしまうので、文学としての大きな飛躍がありません。
 現実社会の問題点も描きながらユートピア童話を書くことは、より困難なことかもしれませんが、そういった状況における人間関係や人間性の復活を描き出すことができれば、より価値のあることなのではないでしょうか。

ユートピア (岩波文庫 赤202-1)
クリエーター情報なし
岩波書店

コメント

10月15日(月)のつぶやき

2018-10-16 06:25:25 | ツイッター
コメント