現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

少女小説とキャラクター小説の関係

2018-10-06 08:49:11 | 考察
 吉屋信子の「花物語」以来、いつの時代も少女小説は児童文学において商業的には大きな位置を占めてきました。
 その存在は、児童文学の読者の大半が女性(本来の少女だけではなく、二十代の若い女性も、アラサーも、アラフォーも、アラフィフも、アラカンも含まれます)になった現在では、少女小説はますます大きくなっています。
 しかし、21世紀になったころから、この分野にも大きな変化が生まれています。
 従来の繊細な思春期の少女の感性をビビッドに描く作品やもっと手軽に読めるラブコメなどがかつてほどど売れなくなり、キャラクター小説(ストーリーや内容よりも、登場人物の個性が優先される小説です)の進出が目立ちます。
 これは、女性たちの世界でも、セーラームーンやプリキュアのようなコミックス、アニメ、ゲームなどの他のメディアが大きな影響力を持つようになり、従来型の少女小説ではなく、他のメディアと親和性の高いキャラクター小説のほうが売れるようになったのです。
 現に、メディアミックスで、他のメディアの作品が児童文学に移植されるケースもあります。
 こういった現象は、男の子たちの世界の方が先行していて、彼らがビデオゲーム、携帯ゲーム、アニメ、コミックスなどだけで物語消費をして、本を読まなくなってから久しいです。
 大人の世界でも女性のほうが男性よりも本を読むので、短期的には女の子たちが少女小説をまったく読まなくなるとは思えませんし、先ほど述べたように上には分厚い少女小説を読む習慣のある女性の年代層が健在なので、すぐに少女小説というジャンルはなくなりませんが、長期的には質的な変容と先細りは避けられないでしょう。

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