豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

山小屋の荷揚げでヘリが墜落 その2

2007年06月04日 | 山を飛ぶヘリコプター
前回の続きです。


読売新聞
東邦航空のヘリが墜落、機長けが…物資輸送を当面停止

パイロットのコメントによれば、「後方から風にあおられて、コントロールがきかなくなった」ことが墜落の原因とのことです。現場からの目撃情報でも、横からの突風を指摘しています。

ヘリコプターは基本的に向かい風のほうが安定していますので、山小屋付近でホバリングする時は大抵西よりに機首を向けています。稜線の風は西から吹くのが常だからです。そこへ横や後ろから強い風にあおられると、コントロールが利かなくなります。例えるなら、強い向かい風に向かって歩いている時に、急に風が止むと転びそうになる、という感じでしょうか。

稜線の風は時として複雑になります。例えば私が働いていた槍ヶ岳のヘリポートでは、上空と地上付近で正反対の風向きになる時があり、これを「風が巻いている」と言っていました。近くに大きなピークがある、また狭い鞍部などでは、特に気流が複雑になりやすいのです。

上空の風がわずかに方向を変えただけで、稜線上では劇的に風向きが変わることがあります。荷物を吊り上げようとしている時は高度がほとんどありませんから、リカバリーが難しくなるでしょう。また荷物を吊っている状態なので、コントロールが余計に難しくなります。この場合には荷物をカットして離脱するほどの時間も無かったのではないかと想像します。




2日前に恵那山で同じ東邦航空のヘリコプターが墜落したばかりであり、安全対策が決まるまでは山小屋の荷揚げは中止されるようです。

これからの1ヶ月は梅雨ですから、元々そんなにヘリコプターを飛ばせるわけではありません。早いうちに安全対策が決まれば夏山シーズンへの影響は少ないと思います。それに実際問題、槍穂高連峰の稜線にある山小屋の荷揚げは、他社では当てになりません。気象条件が厳しいので、少々の悪天候でも荷揚げができないとたちまち山小屋が物資不足に陥ります。

小屋番だった頃は東邦航空の荷揚げしか見ていなかったので「こんなもんか」と思っていましたが、北アルプス北部に来て色々な業者の荷揚げを見ているうちに、東邦航空のベテランパイロットのすごさがわかりました。

元小屋番として、一日も早い問題解決を祈っています。



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