先月、長野県の山岳遭難事故が過去最悪ペースということで東京新聞に記事が出ていて、それを元ネタにエントリーを書いたのですが、今度は産経から警察庁の事故統計を元にした報道が出ています。
統計が戒める安易な登山
産経新聞 2012.11.16 07:19
引用
警察庁がまとめた今年7~8月の山岳遭難は552件(前年同期比66件増)、遭難者は676人(同106人増)と統計開始の昭和43年以降最多増となった。
一方、死者は17人減の34人、行方不明者は8人減の2人と、遭難者の急増に反して減少した。
引用おわり
事故件数は増えたけど、死亡や行方不明など重大事故が減少しています。ということで、昔と比較して悲惨な事故が割合としては減っているということになります。そこから読み取れるのは・・・
引用
夏とはいえ、遭難者数の割に死者・不明者が少ないのはなぜか。統計からは、遭難者を迅速に救助できるヘリコプター出動の増加や救助隊の充実がみえる。もうひとつ深刻な理由が浮かび上がってきた。登山ブームに乗っかり、十分な下調べや準備をせずに、安易に入山する人が増えているからという理由だ。
引用おわり
救助態勢の充実によって命が助かる率が高くなったのはその通りだと思います。が、後半の「安易に入山する人が増えているから」というのはちょっとアレな感じです。
以前のエントリーで触れたように、これは安易な登山者が増えているというよりも、安易な救助要請が増えているということであり、その原因は携帯電話の普及とエリア拡大です。
携帯電話が普及していなかった頃は連絡手段が皆無に近く、助けを求めようにもどうにもならなかったわけです。だから必死になって自力下山するしかないのです。で、必死になって自力下山したとして、うまいこと生還できたらそれは遭難では無くなります。
それが現在ではどうなっているのか。困ったら、まずは電話をすればいいわけです。それに無線機と違って携帯電話は誰でも持っているものですからね。
安易に救助要請する登山者は、昔からいたのです。それが表面化していなかっただけです。
さて次。
引用
遭難原因の上位を分析すると、道迷いは地図やコンパスなど、山での基本装備を持たない場合が多い。転倒は危険度が低い一般登山道での発生が多い。疲労・病気は体力的な準備不足から起きる。死には至らないものの、遭難事故として迷惑の数を増やす。
引用おわり
なんかね、結論ありきであの事故統計を見ると、こういう風になってしまうんだなーって思いました。道迷いは地図やコンパスを持たないから起こるなんてことはないです。持っていても迷ってる人が大量にいます。GPSがあるのに迷って救助要請してくるケースでさえ、いくつもあるのです。疲労病気も体力不足で片付けていますけど、あまりにも単純過ぎです。山の事故というと「装備不足」と「体力不足」という言葉だけで結論づけてしまう意見とか報道が多いんですけど、なんか思考停止って感じでイヤですな。
統計が戒める安易な登山
産経新聞 2012.11.16 07:19
引用
警察庁がまとめた今年7~8月の山岳遭難は552件(前年同期比66件増)、遭難者は676人(同106人増)と統計開始の昭和43年以降最多増となった。
一方、死者は17人減の34人、行方不明者は8人減の2人と、遭難者の急増に反して減少した。
引用おわり
事故件数は増えたけど、死亡や行方不明など重大事故が減少しています。ということで、昔と比較して悲惨な事故が割合としては減っているということになります。そこから読み取れるのは・・・
引用
夏とはいえ、遭難者数の割に死者・不明者が少ないのはなぜか。統計からは、遭難者を迅速に救助できるヘリコプター出動の増加や救助隊の充実がみえる。もうひとつ深刻な理由が浮かび上がってきた。登山ブームに乗っかり、十分な下調べや準備をせずに、安易に入山する人が増えているからという理由だ。
引用おわり
救助態勢の充実によって命が助かる率が高くなったのはその通りだと思います。が、後半の「安易に入山する人が増えているから」というのはちょっとアレな感じです。
以前のエントリーで触れたように、これは安易な登山者が増えているというよりも、安易な救助要請が増えているということであり、その原因は携帯電話の普及とエリア拡大です。
携帯電話が普及していなかった頃は連絡手段が皆無に近く、助けを求めようにもどうにもならなかったわけです。だから必死になって自力下山するしかないのです。で、必死になって自力下山したとして、うまいこと生還できたらそれは遭難では無くなります。
それが現在ではどうなっているのか。困ったら、まずは電話をすればいいわけです。それに無線機と違って携帯電話は誰でも持っているものですからね。
安易に救助要請する登山者は、昔からいたのです。それが表面化していなかっただけです。
さて次。
引用
遭難原因の上位を分析すると、道迷いは地図やコンパスなど、山での基本装備を持たない場合が多い。転倒は危険度が低い一般登山道での発生が多い。疲労・病気は体力的な準備不足から起きる。死には至らないものの、遭難事故として迷惑の数を増やす。
引用おわり
なんかね、結論ありきであの事故統計を見ると、こういう風になってしまうんだなーって思いました。道迷いは地図やコンパスを持たないから起こるなんてことはないです。持っていても迷ってる人が大量にいます。GPSがあるのに迷って救助要請してくるケースでさえ、いくつもあるのです。疲労病気も体力不足で片付けていますけど、あまりにも単純過ぎです。山の事故というと「装備不足」と「体力不足」という言葉だけで結論づけてしまう意見とか報道が多いんですけど、なんか思考停止って感じでイヤですな。
ご指摘のとおり、遭難者数が多いけど死者・行方不明者が少ないのは、携帯電話による救助要請(安易かどうかはいろいろですが)がしやすくなったせいでしょう。
遭難原因の上位を分析云々というのも、実際に助かった人(や救助に携わった人)にリサーチをしたうえで、地図やコンパスを持っていなかったとか、一般登山道で転倒したとか言ってるのか?「そういうもんだろう」という書き手の思い込みで書かれているような気がしてなりませぬ。
山の遭難事故で現場検証まで行われるのは大きな事故がほとんどで、ちょっと特殊なんですよね。もっと普通の事故を学者が研究してくれれば、この分野は前進するのではないでしょうか。
怪我の有無はともかく無事に見つかり生きて帰って来た、新聞には全然でないような「遭難」の事例の研究こそ、遭難を減らす手段ではないかと思っています。
研究者ではありませんが、最近こういうことに興味があり、聞き取り調査をするにはどうしたらよいのか、考えているところです。
遭難者は何も覚えてないケースが多いですから、話を聞いてもあまり聞き取れないこともあります。