始まりに向かって

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「白い兄」の記憶の源・・ホピの予言研究(その4・終)

2010-08-31 | ホピの白い兄・石版など
ルドルフ・カイザー著「ホピ・宇宙からの予言」を読んでみました。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。続きです。

著者は「白い兄弟の帰還」というテーマをホピ族の神話体系の中で捉える必要性を述べています。

        *****

(引用ここから)



世界の周期的な死と再生というのは、先史時代の文化に広く見られるテーマである。

ホピにとっては、時のはじめから宇宙の運動の一部であった「種子」の成長に、このサイクルのすべてが関わっているのだ。

この意味で神話の過去と未来は一つであり、予言はまさに未来についての神話となる。

だからこそホピは過去から未来を読むことができるのだ。


たとえば長老は次のように語っている。

「わたしたちホピには、こうなることは以前から分かっていた。

なぜならこれは宇宙の計画だからだ。

大神霊と創造主によってつくられた計画。

だから生き残りたいと思うなら、そもそものはじめの生き方、平和な生き方に立ち戻らなければならない。

創造主の教えをすべて受け入れて、それに従わなければならない。」


伝統派のホピにとっては、時の始めに定められた世界の秩序を維持し回復することが何にも増して重要なのであり、それに比べたら進歩や発展によって新しいものを生みだすことは大した価値を持たない。



●聖書との類似

ホピの予言の基本的な構造は、聖書などの他の予言と明らかに似ている。

聖書に出てくる多くの予言でも、この世の終末のことを「終わりの日々」、「さばきの日々」とよんでいる。

これはホピの予言の表現と同じである。

「白い兄の帰還」という予言も、世界の終わりにイエスキリストが再臨するというマタイの福音書の予言に似ている。

同様の予言の例としては、ユダヤ人に伝わるメシア願望、ヒンズー教におけるビシュヌ神の化身クリシュナの帰還の予言、イロコイ族の予言者の輝く光となって東から帰ってくるという誓約、神からつかわされた予言者が夜の内に東から現れて人々の魂を清め彼らを教え導く、というエスキモーの伝承などがある。

そして忘れてならないのがアステカの、ケツァルコアトルが帰ってくるという神話である。

アステカのケツァルコアトルは有翼のヘビ神で、みずからに火をつけて生贄として死んだ。

しかし死ぬ前に「いずれ平和をもたらすために東の大海を越えて帰還する」と約束したという。


ユダヤ教のメシア、キリスト教のイエス・キリスト、ホピのバハナ、そしてアステカのケツァルコアトルはみな、平和をもたらす者として帰って来ると語られている。

彼らは、「世界が暗くなり終末が近づいて光をもたらす者が必要な時に帰ってくる」という神話上の救世主なのだ。


このような神話は、人類が太古から持ち続けている希望や贖罪、浄化、平和、救済への願望の現れなのだろう。


ここに上げたような類似の予言が生まれたのは、宗教上の相互交換作用の結果ではなく、普遍的な、全世界共通の宗教または神話的モチーフが、多くの宗教や神話に個別に現れたものと考えるべきだと思う。


●ところで、部族民の宗教はその部族の神話から切り離すことができないので、一般的には部族民はその予言を世界中に広めようとはしない。

ホピの予言も元々は彼らだけの世界、時間、未来についての解釈だったのだ。

しかし村の地下室で1947年と48年に下された決定により、部族の神話は世界の神話に変容することになった。

ホピの予言は世界に向けて発せられたものとみなされるようになったのだ。

第二次世界大戦が世界に及ぼした影響、技術の進歩、とりわけ原子爆弾に対する世界的な反動も追い風になったのかもしれない。

いずれにしても第二次世界大戦後まもなく、一部のホピの宗教的指導者たちは彼らの予言に世界的な価値があると認識しはじめ、それまで多かれ少なかれ秘密にされてきた先人の教えを世界に広めようと提唱した。


ホピは存亡の危機に立たされている。

そしてこの世界の未来と後の世代の幸福を心にかける人なら、理由こそ全く異なるものの、ヨーロッパ・アメリカ型の西欧文明もやはり危機的な状況にあることを進んで認めるだろう。

つまり根本的に異なる二つの生き方がいずれも等しく未来の不安にさらされているわけだ。

そしてそのことがこの二つの道に融合をもたらし、正反対の方向から発しているにも関わらず、互いに互いを大きく強化することにつながったのだ。

(引用ここまで・終わり)


*****


著者の考えはごくまっとうで、ホピ族の予言は本来部族のためのものであったということです。

おそらく、それはそうなのだと思います。

その部族の祈りが、人々や地球全体への配慮に満ち満ちているということが、敬意にあたいする価値のあることなのではないでしょうか。


しかし、それだけではまだ問題はほとんど解けたとは言えないでしょう。

彼らの待つ「白い兄」とは誰なのか?
兄と弟は、何を約束したのか?

それらへの答えはまだ何一つないからです。

ケツァルコアトル神とホピ族の関連が不鮮明なのは、なにかが故意に隠されているようで、気になりますが、ホピ族の祭祀に見られる驚くような伝承は、本当に「失われた第3の世界」の記憶であるのではないかとも思います。

神と人が共に暮らしたはるか太古の神代の記憶なのではないか?
あるいは、宇宙からの指導者の帰還を待ちのぞんでいるのではないか?

そういう可能性はあるのではないかと思っています。





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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ノアの洪水再び (アルト)
2010-09-05 00:50:47
はじめまして。
私は、ノアの洪水が再来すると確信しています。シュメール神話の惑星二ビルまたはマルドぅークが地球に再接近して、地球の地軸大移動を引き起こすと考えています。後四半世紀でしょう。もうじき終わりが訪れます。でも救いもいくらか残されていると思います。聖書は凄いですよ。
返信する
ノアの洪水 (veera)
2010-09-05 22:08:41
アルト様

はじめまして。
コメント、どうもありがとうございます。

ノアの洪水の再来。。
ありそうな気がしますね。

人間の意識は、地球外生命によって発生したものかもしれませんね。

人間の意識は、人間に本来的なものではないのかもしれません。

なにかが、地球外から意図的に起こされているのかもしれない、という気はします。

もっとも何も起こらなくとも、あと四半世紀もすれば、わたしは骨と皮になるでしょうけれども。。
返信する
Unknown (通りすがり)
2010-12-15 22:05:52
もし白い兄がセガリア・シッチンの言うシュメール神話に出てくる宇宙人だとしたら
もの凄く長い旅の繋がりですね。
返信する
白い兄 (veera)
2010-12-16 07:56:37

通りすがり様

コメントありがとうございます。

憶測ですが、宇宙人は地球に来ているのではないでしょうか。

そして、アメリカ・インディアンは人類の中でそれなりの役割を担っているのではないかという気がします。

シンプル イズ ベストと言いますが、シンプルで在るには神の御加護が必要なのではないかと思っています。
返信する
Unknown (にゃにゃにゃ)
2016-07-19 23:02:04
白い兄意外にもマヤ、アステカのケツァルコアトル、ビラコチャ、等の神様が文明をつくりが私はかえってくると言い残して去る、我が日本にも海の向こうからスクナヒコナという神様がオオクニヌシの国作りを手伝いどこかに消えて言ったらしいです。これもどこかのサイトにで出ていた話しなのですが、スクナヒコナはマオリ語で大男という意味らしいです、あと黄泉比良坂はマオリ語で坂の上の墓らしいです、実際写真で見ると黄泉比良坂は坂になっていてその上のほうに墓があります。黄泉の国は洞窟を下って行くというのはたしかどこかに黄泉の国の洞窟だと言われている洞窟がありそちらのことを黄泉比泉坂の入り口だと思ったとか?日本神話とマオリ神話は似ていてイザナキ、イザナミの神話はマオリ神話でタネ、ヒネの話がモデルになったのでは?スクナヒコナがマオリ人であっちこっち旅して技術を伝えたのではないでしょうか、アステカやマヤ、インカではビラコチャやケツァルコアトルとして呼ばれて人々を導いていたのでは。
返信する
マルテンサイト千年ものづくりイノベーション (サムライグローバル鉄の道)
2024-08-21 05:05:05
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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