それは、今思い出しても
悲しいような切ないような
それでいて懐かしいような事件だ…
僕が小学5年生の頃だ
普段は給食なのだが
その日は給食センターがお休みとかで
弁当を持ってくるように言われていた
なんでも、給食センターの使い古した釜を
新しく入れ替えるためとのことだった
我が家は父子家庭だったため
料理を作るのは父の役目だった
僕は何日も前から
「この日はお弁当の日」と
何度も父に伝えておいた
父は、その度に「任しとけ」と笑顔を見せた
僕は父の自信たっぷりな笑顔を見て
当日の弁当の献立に期待し
嬉しくてピョンピョン飛び跳ねたのだった
当日、僕は寝坊をした
いつもは僕を起こしてくれるはずの
父が寝坊をしたからだった
父は昨夜、随分と深酒をしたようだった
二日酔いで空ろな目の父は
酒臭い息を吐きながら僕を起こした
寝坊を知った瞬間、僕はお弁当のことを思い出した
「お弁当は?」
心配する僕に父は
ちゃぶ台の上にある
新聞紙で包んだ弁当を指した
ランドセルに入れるため弁当を持った時
なんだか頼りない感触が手に伝わり
少し不安な気持ちになったが
遅刻しそうだった僕は
そんな気持ちを打ち消し
急いで家を出た
昼休み
各自がお弁当を机の上に出す
普段とは違う食事風景に興奮してか
皆がキャッキャッと笑っている
だが僕は、素直に喜べない
何か不安を抱えながらお弁当を出した
それは新聞紙に包まれている
父が昨夜、泥酔しながら作った弁当だ
僕は恐る恐る包みを開けた
すると…
硬くなったおにぎりがふたつ
ゴロッとむき出しのまま現れた
海苔の巻かれていない白いおにぎりだった
いや白ではない
新聞紙の記事がおにぎりに写り
灰色になってしまっていた
おにぎりに転写された記事と
写真は、今でもハッキリと憶えている
“畳の上に投げ捨てられた
血染めのオノ” の写真に
「一家5人惨殺」
「おぞましい殺人事件」
「凶器はオノ 猟奇犯の犯人は何処へ!?」
級友にその「おにぎり」を見られるのが嫌で
僕は新聞紙を立てて壁を作り
急いで、無理やり飯を口に詰め込んだ
途中で息が苦しくなり、涙がポロポロ流れてきた
その時の涙が、貧困の恥ずかしさ、悲しさと悔しさ
そして父への憎しみのための涙のように思えたのは
その時に感じたのか
振り返ってそう思うのかは判然としない
そんな幼児体験があったためか
おにぎりは海苔を幾重にも巻いた
真っ黒なものでないと食べる気がしない
すべては、あの「おにぎり殺人事件」のせいだが
今はそれを思い出し、フフフと微笑む自分がいる
←フフフ…
不祥事を起こした企業・団体のトップが
カメラの前で頭を下げる
相も変らぬ日本の風景
「腐敗を許す国」として
世界的に有名なだけありますね…
トップにしてみれば
「俺のせいではないのに…」と思っているかも
しかしね、皆さん…
城主がシッカリしていれば城は崩れず
将軍が有能なら戦は負けないように
全てはトップで決まるのです
「無能」な人がトップに立つと
企業は倒産し、団体は解散し
国は消える…ことになるかも
能力がないなら、せめて
日夜眠れないほどの
体力・精神力ギリギリの「責任感」と
「責任感」からくる「行動」があれば
なんとか少しは組織はもつけれど
それさえもないのなら
「どうぞ お引取りください」ね
皆様…
←さらば、無能の人…