今から20万年前、ミトコンドリアDNAが
突然変異し、それまで世界を牛耳っていた
ネアンデルタール人が持ち得なかった、
全く理解出来なかった様々なこと
(認知する能力や論理的思考、イメージ能力、
季節サイクルの予想や壁画等に見る芸術・文化
的思考)を備えた新人類ホモ・サピエンスが、
アフリカの大地に出現する。彼らは集落をつくり、
狩りなどの道具や技術を共有し、更に能力を
高めていく。
それから10数万年の時を経て、粘土で像を造る
ことを始め、その技術が発展し土器が生まれる
それは、粘土で作った像を故意か偶然か、
火で焼くと土器になることを知る。
その情報は急速に広がる
土器の器は、火に掛けても燃えない。
そこに水を入れると湯が沸く。
料理の幅は格段に広がる。
寒冷期、暖かい食事で体を温めた。
そうして新人類は、何万年もお湯を
沸かし続けてきた。だが、水が沸騰し
立ち上がる湯気に力があると気づい
たのは、今から約500年前のことだ。
それまで何十億人、何百億人
もしかしたら何千億人が、湯気を
見つめていたのに、誰も気づかなかったのだ。
承知の通り、その湯気から蒸気機関が生まれ
産業革命が起こるキッカケを作った。
今の世界があるのは、蒸気力を発見
したおかげだが、この例は現代でも
起こりうるかも知れない。
誰もが知っている常識の中に
人類の未来をガラッと変えるような
凄い神秘が隠されている…。
それは科学かも知れないし、自然かも
知れないし、思想的なことかもしれない。
だがそれは、我々ホモ・サピエンスには
到底理解出来ないことかもしれない。
新人類が生まれて20万年。またDNA
の突然変異が起こり、新ホモ・サピエ
ンスが出現し、その神秘を解き明かす
のかも知れない。その時我々は、
ネアンデルタール人のように、
ただ不思議そうに彼らを遠巻きに
見ているだけなのだ。
ヤカンから勢いよく吹き出す蒸気を
見て、そんなことをおもったのだ。