シュレッダー部長

『ガガッ・ガッ・・』

会社のシュレッダーが突然止まった。思わず舌打ちしてしまった俺。
定格時間をオーバーして動かしていたから止まっただけだ。

こんな風にシュレッダーが止まると想い出す事がある。嫌な想い出だ。

最初に入った会社は銀行系のシステム会社だ。そこで数年後、銀行から出向してきた奴等がいた。
会社も親会社の銀行も、やたらとコスト意識を喚起させていたが、やる事はくだらん口減らしをしてきただけだった。
その中に、シュレッダー部長がいた。銀行では昔は仕事はソコソコ出来たのだろう。
下っ端だった頃は頑張ったんだろう、恐らく（笑）。

だが、その50代のオヤジのここ数年間は、部下の仕事の実績で飯を食ってきた奴らのパターン。
何をしていたか？って聞かれれば、『管理職をしてました！』って応える感じの奴だったよ（笑）。

ハスカシイなぁ・・、全く・・。

今風に言えば、管理職してた・・と言うのは、部下の手柄で生き延びてましたって事じゃん。

例に漏れず、このシュレッダー部長も高給取りらしかった。10年以上前で1200万くらいの年収。
俺の課が給与計算していたから、課内が騒然になったのは、少し後の話（汗）。

こいつは毎日、仕事と言う仕事はしていなかった。
まあ、出向して来て、部長の椅子に座ったものも、勝手が分からんらしかった。
周りの目は氷のように冷たい。

当たりまえだった。

しばらくして、奴はシュレッダーの所に来るようになった。

『ガァ～、ガァ～ ∞ ∞ ∞』延々とシュレッダーをかけ続けているだけ。そして、シュレッダーを詰まらせた。

コピー機の紙詰まりさえ対応できないのに、シュレッダー詰まりを直せる訳がない。
周辺の無視がしばらく続いたが、通りかかった奴が捕まった。

運の悪い、その社員は、30分位、詰まった用紙を引き出す作業をしていた。シュレッダー部長は横に立っているだけだ。

その社員もそうだが、フロアーに居る社員達でシュレッダー部長より、暇な奴は居なかった。

みんな大変だったんよ。

　数日間、シュレッダー部長は定位置（笑）で作業を続け、相変わらず、シュレッダーを詰まらせて仕事の妨害をした。
いつしか、毒舌で、顔が真っ赤で怒っているように見える（笑）、Ｈ野氏がつぶやいた。


『あの部長、仕事ないんか？
それとも仕事は、シュレッダー部長かぁー！』

　俺が団塊の世代等に、かな～り手厳しいのはこんな奴らばかりを見てきたからだ。
中には立派な人も多いと思う。
でも、今のワーキングプアーとかを見ていると、『こんな奴等の奴隷かよぉ・・・』と当時俺が思っていた事が思い出される。

『逃げ勝ちは許せない・・！！』って感情が湧くのは罪なのか？

最近の新聞記事で、日雇い派遣の若者が言っていた。
『・・俺達、奴隷ですから・・。』
　
　数年後に転職した俺は、親会社の銀行の破綻を祈り続けた。
そして、あんな奴等ばかりだったので、しっかりと破綻した。

税金が3兆円も投入され、今年は黒字と息巻いているが、今や自民党の借金肩代わり（84億円）銀行に成り下がっている。


10何年か前に運悪く、シュレッダー部長を手助けしてしまった社員は俺だ。ちょっとお人好しなんだな・・今も昔も。

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