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たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

立木売買と巨木群保全 <トチノキ巨木群伐採計画をめぐる4年間の奮闘>などを読みながら

2018-09-20 | 農林業のあり方

180920 立木売買と巨木群保全 <トチノキ巨木群伐採計画をめぐる4年間の奮闘>などを読みながら

 

日本は森と水の豊かな国といてもよいと思います。国土の67%が森林でしたか。水と言えば、湖沼、河川はもちろんため池、さらに湿地というところまで広げると水田を含めたくなります。瑞穗の国と言われた原点は湿地帯が広範囲にあって、穂は稲穂に限定せず、日本書紀の神話の世界であるように五穀が生育していたからではないかと愚考するのです。

 

もともと雑穀で暮らしてきたから健康を維持できたのではとも思いますし、現在米離れが進んでいるのは原点回帰なり、健康志向からすれば雑穀というか、さまざまな種類の食を楽しむのが望ましいと思うのです。食の安全も保全されるでしょう。

 

その森はというと、法的にどのように取り扱われているかというと、<保安林の種類別面積(延べ面積)>によれば、保安林指定が全体の半分近くに及び、総面積は1293haとなっています。国土面積の32%ですね。大半が水源涵養保安林ですが、毎年増大してきて、最近は横ばいになっています。

 

保安林制度>では、原則伐採禁止となっていて、許可により限定的に伐採可能となりますが、植栽義務を課すこととなっています。ただ、開発目的によっては指定解除され、それが自然保護上過去何度も問題になりました。

 

今日、私がメンバーとなっている日本環境法律家連盟の機関誌「環境と正義」が届いたので、少しぱらぱらとみていたら、弁護士石田達也氏が書いた「びわ湖源流の森を守れ トチノキ巨木群伐採計画をめぐる4年間の奮闘」が掲載されていました。

 

その概要はつぎのようなものです。立木伐採計画が問題になったのは平成264月。伐採される対象がトチノキ巨木群で、琵琶湖水源に位置していて、希少性の高い群落で、その中で幹周り4m以上、樹齢数百年の巨木に伐採目印が記されいたのです。

 

保全の声が上がり運動体が伐採業者と交渉したのですが、業者はすべて買い付けたとして、伐採を止めるのであれば巨額の金銭の支払が必要としたのです。運動体が山林所有者に協力を求め、事情を聞くと、190万円で売却したが、合計25本だけとの話で、対象を特定していないというのです。

 

運動体と業者の交渉は決裂し、業者は保安林内の伐採許可を申請し、行政は運動体の要請で許可を下ろさなかったので、業者は申請を取り下げたというのです(なお、判例データベースで大津地裁判決を見たら、判示では平成264月に択伐の許可を行ったとなっていますが、それだと業者側が訴訟提起する理由が少し分かりませんが)。

 

石田氏の解説では業者が申請取下後、山林所有者を相手取り、立木所有権確認の訴えを提起したのですが、取り下げたのであればつながりますね。とはいえ、伐採許可を得ても、実際に現場に入るには、作業道をつくるなり、いろいろ大変で、山林所有者が売買を争っていると、伐採を実施するのは困難だったのでしょう。

 

で、地裁の審理では、業者は代金190万円で山林内のトチノキなどの立木はすべて同人が所有していると主張したのです。これに対し山林所有者は目的物の特定がなく未了で、売買契約は成立していないと反論した結果、判決は後者に軍配をあげたのです。

 

理由は、190万円の代金で山林全部を買ったというのは安すぎること、当該山林はすべて保安林で、すべての伐採は事実上困難である、売買対象について当事者双方が一致せず意思の合致がないこと、立木には樹木の種類、樹齢、形状、木目等でまた個々の性状にも差異がある、目的物の確定がないなどでした。

 

実際、判決文を見ると、山林所有者が県と個人で、前者は総面積約5.2 haの山林を100万円で、後者は同じく約2.4haの山林を90万円で売買しているのです。

 

保安林はおそらく水源涵養保安林だと思われますが(解説も判決文も特定していません)、むろん合計約7.6haにある山林全部とすると大変な材積となりますし、そもそもそのような伐採が許可されるはずもありませんので、業者の言うような売買が成立するはずがありませんね。

 

ところが業者が控訴して大阪高裁は、異なる見解を抱いたようです。「山林内のトチノキという種類物を目的とする売買契約であれば、一定の範囲で給付目的物の種類が限定される制限種類債権が成立すると解する余地がある」というのですね。

 

ただ、結果的には本年6月に和解解決になったようです。山林所有者の所有権を認める一方、業者に解決金を支払う、その金額は業者が求めていたものより大幅減額の金額だったようです。

 

この間、運動体は、業者による山林伐採を防ぐため、山林所有者から二重譲渡を受け、明認方法を施して対抗要件を備えて、訴訟の進行を背後で支えていたのです。なお、立木の売買と明認方法は、昔、ゴルフ場開発たけなわの頃、80年代後半でしょうか岐阜当たりで始まった対抗手段で、私もその後、関東でアドバイスして運動体の中で広がっていったと思います。その代わり、私は大好きだったゴルフから身を引きましたが・・・

 

余分な話をしましたが、私が取り上げたかったのは、この高裁の見解に疑問を抱いたからです。解説ではトチノキと特定していますが、地裁判決文では領収証にはトチノキのほか、ケヤキやヤマナシが含まれています。その点だけ取ってみても、高裁の証拠判断に疑問を感じます。

 

より重要なのは、はたしてこういった山林売買で、高裁の見解のように、選択債権とか制限種類債権といったものが成り立つのか疑問と感じるのです。地裁判決のように、樹木の個性は極めて一本、一本、違います。これがスギ・ヒノキやカラマツなどの造林針葉樹の場合には、何年生とか、径の大きさなどで、そういった見解も有効と思いますが、広葉樹林ではそんな見解は、到底伐採実務なり取引実態を反映しない、符合しないと思うのです。

 

それがいいたかったのと、弁護団に仲間というか、連盟の代表の名前を見つけ、いい裁判をやっているなと感心した次第です。もう一つ、伐採業者としての倫理性というものを考えてみたいと思ったのです。

 

今日は一時間を超えてしまいました。途中でいろいろ電話や訪問者があったりして中断したせいもありますが、ま、いいいでしょう。

 

最後に、解説でトラスト基金の寄付の案内がありましたので、私も少しだけでもと思っていますが、ブログをごらんの皆さんも、よかったらどうぞ。

 

730日付け毎日記事ですが<長浜・杉野川トチノキ巨木群源流の森、守る支援を 嘉田前知事ら、寄付呼び掛け>に寄付先が書かれています。

 

また明日。