180918 司法とセクハラ・性差別 <米最高裁判事候補の性的暴力疑惑>と<女性検事増加>などを読みながら
アメリカは女性の地位が確立している、尊重されているとなんとなく思っている人は多いと思います。日本と比較すると多少ともオーバー気味に感じるかもしれません。たしかに目立ったところではレディーファーストとかは一応、いろんな含みがあるとしても社交的にはそのとおりなんでしょうね。LGBTといった分野でも早い段階で容認の動きがありましたからね。
でも実態はさほど大きな違いがないかもしれません。見えないところでは。
今朝の毎日記事<米国連邦最高裁判事候補が性的暴力か 女性が実名で告発>は、少し驚きました。まるで30年前のリメイクのように思ってしまったからです。そのときは黒人候補者でしたが、こんどは白人候補者ですね。
記事では<米紙ワシントン・ポスト電子版は16日、トランプ米大統領が連邦最高裁判事に指名したブレット・カバノー氏(53)に1980年代、性的暴力の被害を受けたとする女性(51)の告発を実名で掲載した。>と一大事件の前触れのようです。
さてその内容は<被害を告発したのはカリフォルニア州の大学の女性教授。10代だった82年ごろのパーティーで、泥酔した当時高校生のカバノー氏に体を押さえ付けられ、服を脱がされそうになったとしている。女性は叫び声が漏れないよう口を手でふさがれたとして「誤って殺されたかもしれない」と語った。82年というと36年前ですか。この経過時間も、告発者の地位が大学教授という点も、30年前の舞台と類似しますね。
その告発にあたっての条件として提示したという点も、<女性は最高裁判事候補としてカバノー氏の名前が挙がった7月ごろ、公表しない条件で被害を民主党の議員に伝えていた。>ということで、ほぼ過去の事件と一致しますね。で、名前を公表した経緯については<複数の米メディアが内容を報じるなどして、不正確な情報が出回るようになったため名乗り出ることを決めたという。>ことで、少し異なるように思いますが、さほど大きな違いではないかと思います。
すごいですね、<女性はポリグラフ(うそ発見器)検査も済ませており、同紙は告発が正確だとの検査結果を確認した。>とまるで容疑者のような立場を吹っ切る形で登場するのは、過去の事例を他山の石にしているのでしょうか。
むろん、告発された候補者は完全否定ですね。<カバノー氏は17日、声明で告発内容を全否定し、議会で反論する考えを示した。>これはアメリカでは普通の対応でしょうね。
毎日報道では、今後の行方について予断を許さない感じでしたが、朝日記事<米最高裁判事候補の性的暴力疑惑、女性が公聴会で証言へ>では、<トランプ米大統領が連邦最高裁判事に指名したブレット・カバノー氏(53)の承認について審議する上院司法委員会は17日、三十数年前にカバノー氏から性的暴力を受けたとする女性とカバノー氏を招き、24日に公聴会を開くことを決めた。>と公聴会で両者の対立が披露されることになります。
こうなると約30年前の事件のほんとにリメイク版がどのように推移するのか、楽しみ?です。
しかし、このケースは、候補者が当時17歳(53-36)の高校生で、被害者の女性も2つ下の15歳で、高校生が主催していたパーティでの出来事で、告発者も候補者が泥酔しての犯行と述べていますね。他方で、約30年前の候補者・クレアランス・トーマス黒人判事の場合は、同人がたしか司法実務か研究者かで、告発者はその助手とかの、まさに上下間があったときの話で、その告発の内容はとても下劣な程度の低い言動でした。それも繰り返し相当の期間リアルに迫っていたというのが告発内容でしたので、アメリカ社会、それは人種を問わず見られた典型的なセクハラと思いました。
どちらが評価が低いかは人によって取り方が違うと思いますし、その証言の信憑性も公聴会での発言を聞かないとまだなんともいえませんが、私は過去の事例の方がひどいと思っています。
いずれにしても、公聴会でどのような事実が露呈されるか、それぞれの証言を見守りたいと思います。ただ、アメリカの司法は、弁護士にはいろんな批判はあっても、判事や、まして連邦最高裁判事になるような人は、優れた人格だという評価をもちづらくなっているのが現実かもしれません。
ところで、最近のブログで、日本の検事像について、外から見た印象みたいな感じで、私が若い頃、女性で検事になる人をほとんど見かけなかった趣旨を述べましたが、どうやら最近は違っているようです。
昨日の毎日記事<週刊サラダぼうる・それホント?女性検事増加、全体の4分の1に 先輩の姿、修習生後押し>では、たしかに以前は私が指摘したとおり、80年代初頭は1%を割っていたようですが、最近は20%台というのですから、すごく増えていますね。
この記事の中には上記の数値は出ていませんが、紙面上はグラフで示されていました(昨日の記憶ですが)。
私と同期がもう検事総長となる時代で、検察組織も昔のような男女差別?的な仕事環境では成り立たないことを感じて、組織変革を続けてきたのでしょうか。そういえば、昔は女性検事の姿をほとんど見たことがなかったですが、最近は結構見かけるようになり、なにか新鮮な刑事法廷に見えます。
だいたい被疑者に対して男性の強圧的な姿勢で取り調べないと、捜査がすすまないといった偏見がもしあったとすれば、それ自体が自白強要の温床となっていたと思います。むろん女性検事も正義感にまかせて強圧的な姿勢で臨む人もいるかもしれません。
いずれにしても、いま求められるのは、客観的な証拠とその関連性を積み上げて、説得的な心証を得ることでしょうから、男女に関係なく、捜査検事も公判検事も、有能な方が求められるのでしょう。
セクハラとかパワハラの関係では、検察組織は、そういう印象を外から受けがちですが、たしか村木さん事件では大阪地検特捜部を含めそういう環境を醸成したように映りました。それが女性が増えることにより、セクハラはもちろんパワハラもよりなくなることを期待したいです。
いずれにしても、検事の仕事はどんどん多様化していますので、女性の力は必須でしょう。女性検事の活躍を期待したいと思います。そしてこの記事にもあるように、いま小学生や中学生、あるいは高校生といった若い方も、女性の働き場として選んでもらいたいと思います。
女性弁護士は、私の感覚だと、割合向いている仕事ですし、男女差も少なく、昔から相当選ばれてきたように思うので、あえて宣伝するまでもないかなと思うのです。
女性裁判官も結構頑張られているようで、これまた男女差が少ない印象ですね。気楽に話せる女性裁判官をいまでは知らないので、ほんとはどうでしょうかと聞きたいものですが。
ちょうど一時間が過ぎました。時間となりました。また明日。