180919 死と被災の心構え <住民主体で「防災マップ」>などを読みながら
稀勢の里関の危うそうで踏みとどまる我慢強い闘いに、多くの相撲ファンは心響くものがあるのでしょうか。私も帰った後NHKニュースでわずか流れるその場面を楽しみにしています。
日本人の国民性というと言い過ぎかもしれませんが、古代以来、火山噴火から地震、雷、台風、豪雨、火事などあらゆる風雪に耐え、忍耐強い生き方をしてきたのではないかと思うのです。
江戸時代末期まで、家の中にはたいした家財道具もなく、家は簡易な掘っ立て小屋のような建て方で、おおらかに暮らしてきたのは大半の庶民ではなかったのでしょうか。このような暮らしのあり方は、火災も含め、どのような自然の脅威が襲ってきても、それをやり過ごし、すぐに立ち直る生き方だったのかもしれません。それを幕末にやってきた西欧人は、貧相な清潔だけど、世界で一番幸せな国民と思ったほど、底抜けに明るかったのかもしれません。
その後西欧文化を取り入れ、戦後はさらにいっそう文明の利器を一番手で導入し、家にも家財道具にも多額の金をつぎ込み、一生懸命働く一方、家庭や生活のおおらかさや穏やかさは失いつつあるのかもしれません。
その多額の金を投じた家や家財道具などは、実のところ、自然災害の猛威の前では極めて脆弱な位置にあったり、軟弱地盤などであったりして、実のところは危うい状況にあるかもしれません。
最近の北海道地震では谷地を埋めた造成地で液状化が起こり、多くの家屋が全壊ないし半壊という被害を受けています。過去の造成地の被災でも、谷地の盛土地形が同様の被害を受けていたりして、以前から警鐘が鳴らされていたのですが、不動産取引ではあまり重視されないできました。土壌汚染も首都圏各地で時限爆弾のように潜在していますが、これまた見過ごされているように見えるのです。
地震や火山は一定の予測は可能と一定も、いつ発生するか分かりませんし、とくに前者どこで起こってもおかしくないのが日本の特質ですので、南海トラフなど超大規模なものだけ注意を払っているわけではすみませんね。
その点、豪雨や暴風は、局地的な異常気象でも次第に予測する報告に進んでいますし、まして台風は、今回の21号台風も相当早い段階で予想されていたのですから、本気で対応していたところは、相当被害を回避ないし減殺できたのではないかと思います。
と前置きが長くなりましたが、今日は45分程度で仕上げる予定ですので、本論は簡単にします。
今朝の毎日記事<+2℃の世界適応の現場から/5 住民主体で「防災マップ」>では、地元といえるかつらぎ町笠田が取り上げられています。
記事では<和歌山県北東部、町の中心部を東西に紀の川が貫くかつらぎ町。紀の川の北側に位置し、2本の支流に挟まれた場所に、140世帯が暮らす町営笠田(かせだ)団地はある。>という紀ノ川北岸で、河岸段丘の下に位置する地域ですね。私が大畑才蔵に関係して、なんどか取り上げた舞台でもあります。
そこでは<今年の西日本豪雨や台風21号で大きな被害はなかったものの、昨年10月の台風21号で支流があふれ、住民は近くの中学校などで一夜を過ごした。人的被害はなかったが、団地には高齢者が多くて移動に時間がかかるため、避難が大きな課題として浮かび上がった。>と氾濫被害を課題とし、防災マップづくりに自主的に取り組んでいるのです。
<同団地自治会長の中沢浩二さん(56)が中心となり、地区の防災マップを作るため住民参加のワークショップを今年3月に開催した。地区内と周辺地域を詳細に調べ、壊れやすそうな空き家がある場所や昨年10月の台風で浸水した範囲、浸水が早く始まる標高が低いところなどをマップに書き込んだ。仮に避難所まで遠回りになったとしても浸水しやすいところを避ける避難経路を決めた。まだ浸水していない時に高齢者が移動を始めても、浸水が始まったら立ち往生して被害に遭うことも考えられるためだ。>
むろん行政もすでにハザードマップをつくっていますが、それには限界があることは以前、このブログ?で書いた記憶があります。
で、この自治会では<支流が氾濫するケースは用意していない。>として、<中沢会長は「紀の川があふれる前に、まずは支流が氾濫する。それに対応した避難経路を想定しておかなければ安全に逃げられない。ワークショップは住民の意識向上にもつながったが、避難を敬遠する高齢者もいて課題となっている」と説明する。>
そうなんです。ハザードマップはため池とか、紀ノ川ないし支流の重要な河川くらいしか想定していませんし、その氾濫のシミュレーションも、氾濫源を中心に地形・標高だけで机上の推計で氾濫量や方向を決めていますから、実態に必ずしも合いません。複合的な要因とか地域の特徴に合わして考える必要がありますし、避難場所と、要避難者の避難ルートを実際にシミュレートしないと、現実の被災の時に対応できないおそれがあります。
だいたい、この笠田付近は、江戸時代くらいまでは氾濫源でしたから、紀ノ川が氾濫することを想定して土地利用が図られていたと思います。私が関心をもっている小田井の間が用水路も、記事で対象となっている地域よりもずっと標高の高い位置に築造されています。さらにその用水路の上に当たる位置に、昔の船着き場跡さえ残っています。
堤防によって紀ノ川の氾濫を抑えてきたわけですが、万が一決壊なり越流なりすれば、大変な惨事となりますね。支流の場合は、多くは樋門によって紀ノ川への流入が止められるので、堤防内の支流付近が氾濫するリスクがありますね。以前は田畑でしたから、それほど大きな被害がなかったと思いますが、いまは住宅や工場、商業地となっているので、氾濫して浸水したりすると、大変な被害となりますね。
その意味で支流の氾濫という問題に焦点を当てるのは合理的でしょう。支流は規模が小さいので、仮に流木などが出て、一旦どこかで塞がれると、すぐに氾濫してしまいます。そういった支流の維持・管理は日頃の注意が必要でしょうね。
なにか感想的な話になってしまいました。
最後に、今回の台風21号では暴風被害が当地で相当発生しており、その暴風対策を今後検討してもらいたいと思いつつ、参考までに、接近した9月4日の当地・気象データを引用します。<かつらぎ 2018年9月4日(1時間ごとの値)><かつらぎ 2018年9月4日(10分ごとの値)>
雨量も相当なものでしたが、最大瞬間風速が20mを超える時間帯が結構ありましたね。
時間となりました。今日はこれでおしまい。また明日。