以下の二つの記事をご覧ください。
① 防衛白書
「【東京】領土問題で日中間の緊張が高まるなか、日本政府は31日、中国政府の海上における拡大志向を批判し、領土問題の焦点となっている離島周辺の監視体制と防衛力を強化する方針を示した。482ページにのぼる防衛白書で表明した。
Associated Press
尖閣諸島(中国名:釣魚島)の周辺海域でにらみ合う日本の海上保安庁の巡視船(左)と中国の漁業監視船(7月11日、中国・新華社提供)
同白書は、今回初めて、中国共産党指導部と人民解放軍との関係が複雑化しているとの見方や、同国の対外政策決定における軍の影響力が変化しているとの見方を紹介、このことは日本の危機管理上の課題としても注目されると指摘した。
日中間では数週間前に、日本で「尖閣諸島」、中国では「釣魚島」と呼ばる東シナ海の島々の周辺海域で日本の海上保安庁の巡視船と中国の漁業監視船がにらみあう事件が起きている。
日本の野田佳彦首相と森本敏防衛相は先週それぞれに、海上での緊張が海上保安庁の手に負えないほどに高まった場合には自衛隊を出動させる考えを表明した。
防衛省の報道担当の石塚泰久審議官は記者団に対し、「いろいろな形でほぼ毎年、沖縄、宮古島、日本海側の色々な島嶼部(とうしょぶ)を越えて太平洋に進出して来ており、わが国の尖閣諸島のまわりの領海に侵入する事案も発生している」と指摘した。その上で、緊急時を想定した監視の必要性を強調した。
一方、中国国防省の耿雁生報道官は、釣魚島についての日本政府の最近の「無責任」な発言に注目していると語った。
同報道官は、「このような誤った発言に対し中国人民は断固として抗議する」と8月1日の陸軍記念日を前にした記者会見で述べた。また、中国軍は同国の主権や海洋上の権益などについて各管轄省庁と連携すると述べたが具体策には言及しなかった。
防衛白書では、対中国の監視と防衛強化に加え、「信頼醸成措置として海事連絡メカニズムなどで対処することが必要」とし、緊張緩和に向けて日中間に冷戦時代のような「ホットライン」を設けることを提案した。
北朝鮮については、朝鮮半島で「挑発的な軍事行動」を繰り返しているとし、今後も軍事力の増強を継続するとの見方を示した。
また、核実験や化学兵器の開発、ミサイル攻撃能力の増強も相まって、日本や周辺地域に安全保障上の問題を引き起こしているとの見方を改めて示し、「わが国の安全に対する重大な脅威であり、北東アジアおよび国際社会の平和と安定を著しく害するものとして断じて容認できない」と非難した。
白書では中国に対しても、「活動領域の拡大と活動の常態化を図って行くものと考えられる。このため、わが国周辺における海軍艦艇の活動や各種の監視活動のほか、活動拠点となる施設の整備状況、自国の排他的経済水域などの法的地位に関する独自の解釈の展開などを含め、その動向に注目していく必要がある」と、警戒している。
防衛省幹部は、中国共産党と人民解放軍の指導部の関係の変化は、軍の対外政策への影響について交錯するシグナルを与えているとみている。軍部が米国やその同盟国の防衛政策に対し以前よりも強気のコメントを行っていることは、最近、軍部の影響力が強化していることを示唆している。一方、政府の主要な地位に就く人民解放軍の 将軍が減っており、このことは軍の影響力の後退を示唆している可能性もあるという。
「日本側の危機管理上の課題として、中国側のいろいろな行動の意図や目的がわかりにくくなっている」と石塚審議官は語った。
防衛白書はまた、中国が軍事的な存在感を増している兆候として、過去1年に日本周辺で起きた中国との衝突の例をいくつか挙げた。昨年3月の東日本大震災と原子力災害の後は少し鎮まっていたが、6月には12隻という例のない規模の艦隊が沖縄本島と宮古島の間を通過。また中国の漁業監視船が昨年8月以降、繰り返し尖閣諸島の周辺の日本の領海に侵入し、今月初めの海上保安庁と中国漁業監視船とのにらみあいに発展したことなどを指摘した。
記者: Yuka Hayashi 」
② 外交文書公開-日本が軍事的に非協力なら米軍撤退
「外務省は31日、沖縄返還交渉を含む外交記録文書ファイル76冊を、都内の外交史料館で公開した。沖縄返還をめぐっては、日米交渉が具体化する前の1967年3月、マクナマラ米国防長官が訪米中の岸信介元首相に対し、日本がアジアの安全保障に協力する場合、米軍は沖縄に駐留するものの、協力しない場合は「引き揚げる」と言及。また、「日本は将来アジアで、米国に比べ、はるかに大きな役割を果たすべきだ」と述べていたことも明らかになった。
同長官の発言は、沖縄から米軍撤退の可能性を示しながらも、実際は沖縄の基地使用など、日本の協力を求めるとともに、将来的には地域の安定のため日本の軍事的貢献に期待を示したものだ。
在米日本大使館の極秘公電によると、67年3月23日、マクナマラ長官は岸氏との会談で「純然たる私見」と断った上で、当時懸案となっていた沖縄返還問題に言及。「日本が米国の基地保有を欲しなくなった日から一日も長くいるべきではない。米国はサンフランシスコやハワイの防衛のためだけなら沖縄にいる必要はない。日本と東南アジアの前進防衛のために沖縄にいる」と説明した。
その上で、「米国と政治的関係で共同しつつ、軍事面にもこれを及ぼすことに日本が賛成ならば(米軍は)沖縄にとどまるだろうが、そうでなければ引き揚げる」と述べた。
[時事通信社]」
二つを合わせ読めば、明らかに中国を標的に軍事力の強化を図ることが必要であり、そのためには沖縄の基地は維持すべきだということを言いたいために流したニュースだとわかる。
外交文書公開には明確なルールがなく、かなり意図的な選択がなされる。
防衛白書の執筆はその時々の軍事官僚の認識を反映する。
しかし日本は単独で中国と戦争できる力はない。
そもそも先方は核保有国である。
したがってこれらのニュースは、無力な日本はアメリカのしもべとなって、沖縄を人身御供に差し出し続けなさいということである。
しかし沖縄や基地所在地域の人間も日本の市民であり、恒常的な人権侵害や生活破壊が許されていいはずがない。
そもそも国を守るとは、このような一人一人の日本人の人権を守ることではないのか。それとも沖縄の人間や基地所在地域の市民は日本人ではないというのだろうか。
日本は単独では、力技で中国に対峙することは不可能であることを自覚し、さらに沖縄や基地所在地域で日本人の人権や命が奪われている事実を直視し、この二つを同時に克服する道筋を見出していかなければならないのではないだろうか。
① 防衛白書
「【東京】領土問題で日中間の緊張が高まるなか、日本政府は31日、中国政府の海上における拡大志向を批判し、領土問題の焦点となっている離島周辺の監視体制と防衛力を強化する方針を示した。482ページにのぼる防衛白書で表明した。
Associated Press
尖閣諸島(中国名:釣魚島)の周辺海域でにらみ合う日本の海上保安庁の巡視船(左)と中国の漁業監視船(7月11日、中国・新華社提供)
同白書は、今回初めて、中国共産党指導部と人民解放軍との関係が複雑化しているとの見方や、同国の対外政策決定における軍の影響力が変化しているとの見方を紹介、このことは日本の危機管理上の課題としても注目されると指摘した。
日中間では数週間前に、日本で「尖閣諸島」、中国では「釣魚島」と呼ばる東シナ海の島々の周辺海域で日本の海上保安庁の巡視船と中国の漁業監視船がにらみあう事件が起きている。
日本の野田佳彦首相と森本敏防衛相は先週それぞれに、海上での緊張が海上保安庁の手に負えないほどに高まった場合には自衛隊を出動させる考えを表明した。
防衛省の報道担当の石塚泰久審議官は記者団に対し、「いろいろな形でほぼ毎年、沖縄、宮古島、日本海側の色々な島嶼部(とうしょぶ)を越えて太平洋に進出して来ており、わが国の尖閣諸島のまわりの領海に侵入する事案も発生している」と指摘した。その上で、緊急時を想定した監視の必要性を強調した。
一方、中国国防省の耿雁生報道官は、釣魚島についての日本政府の最近の「無責任」な発言に注目していると語った。
同報道官は、「このような誤った発言に対し中国人民は断固として抗議する」と8月1日の陸軍記念日を前にした記者会見で述べた。また、中国軍は同国の主権や海洋上の権益などについて各管轄省庁と連携すると述べたが具体策には言及しなかった。
防衛白書では、対中国の監視と防衛強化に加え、「信頼醸成措置として海事連絡メカニズムなどで対処することが必要」とし、緊張緩和に向けて日中間に冷戦時代のような「ホットライン」を設けることを提案した。
北朝鮮については、朝鮮半島で「挑発的な軍事行動」を繰り返しているとし、今後も軍事力の増強を継続するとの見方を示した。
また、核実験や化学兵器の開発、ミサイル攻撃能力の増強も相まって、日本や周辺地域に安全保障上の問題を引き起こしているとの見方を改めて示し、「わが国の安全に対する重大な脅威であり、北東アジアおよび国際社会の平和と安定を著しく害するものとして断じて容認できない」と非難した。
白書では中国に対しても、「活動領域の拡大と活動の常態化を図って行くものと考えられる。このため、わが国周辺における海軍艦艇の活動や各種の監視活動のほか、活動拠点となる施設の整備状況、自国の排他的経済水域などの法的地位に関する独自の解釈の展開などを含め、その動向に注目していく必要がある」と、警戒している。
防衛省幹部は、中国共産党と人民解放軍の指導部の関係の変化は、軍の対外政策への影響について交錯するシグナルを与えているとみている。軍部が米国やその同盟国の防衛政策に対し以前よりも強気のコメントを行っていることは、最近、軍部の影響力が強化していることを示唆している。一方、政府の主要な地位に就く人民解放軍の 将軍が減っており、このことは軍の影響力の後退を示唆している可能性もあるという。
「日本側の危機管理上の課題として、中国側のいろいろな行動の意図や目的がわかりにくくなっている」と石塚審議官は語った。
防衛白書はまた、中国が軍事的な存在感を増している兆候として、過去1年に日本周辺で起きた中国との衝突の例をいくつか挙げた。昨年3月の東日本大震災と原子力災害の後は少し鎮まっていたが、6月には12隻という例のない規模の艦隊が沖縄本島と宮古島の間を通過。また中国の漁業監視船が昨年8月以降、繰り返し尖閣諸島の周辺の日本の領海に侵入し、今月初めの海上保安庁と中国漁業監視船とのにらみあいに発展したことなどを指摘した。
記者: Yuka Hayashi 」
② 外交文書公開-日本が軍事的に非協力なら米軍撤退
「外務省は31日、沖縄返還交渉を含む外交記録文書ファイル76冊を、都内の外交史料館で公開した。沖縄返還をめぐっては、日米交渉が具体化する前の1967年3月、マクナマラ米国防長官が訪米中の岸信介元首相に対し、日本がアジアの安全保障に協力する場合、米軍は沖縄に駐留するものの、協力しない場合は「引き揚げる」と言及。また、「日本は将来アジアで、米国に比べ、はるかに大きな役割を果たすべきだ」と述べていたことも明らかになった。
同長官の発言は、沖縄から米軍撤退の可能性を示しながらも、実際は沖縄の基地使用など、日本の協力を求めるとともに、将来的には地域の安定のため日本の軍事的貢献に期待を示したものだ。
在米日本大使館の極秘公電によると、67年3月23日、マクナマラ長官は岸氏との会談で「純然たる私見」と断った上で、当時懸案となっていた沖縄返還問題に言及。「日本が米国の基地保有を欲しなくなった日から一日も長くいるべきではない。米国はサンフランシスコやハワイの防衛のためだけなら沖縄にいる必要はない。日本と東南アジアの前進防衛のために沖縄にいる」と説明した。
その上で、「米国と政治的関係で共同しつつ、軍事面にもこれを及ぼすことに日本が賛成ならば(米軍は)沖縄にとどまるだろうが、そうでなければ引き揚げる」と述べた。
[時事通信社]」
二つを合わせ読めば、明らかに中国を標的に軍事力の強化を図ることが必要であり、そのためには沖縄の基地は維持すべきだということを言いたいために流したニュースだとわかる。
外交文書公開には明確なルールがなく、かなり意図的な選択がなされる。
防衛白書の執筆はその時々の軍事官僚の認識を反映する。
しかし日本は単独で中国と戦争できる力はない。
そもそも先方は核保有国である。
したがってこれらのニュースは、無力な日本はアメリカのしもべとなって、沖縄を人身御供に差し出し続けなさいということである。
しかし沖縄や基地所在地域の人間も日本の市民であり、恒常的な人権侵害や生活破壊が許されていいはずがない。
そもそも国を守るとは、このような一人一人の日本人の人権を守ることではないのか。それとも沖縄の人間や基地所在地域の市民は日本人ではないというのだろうか。
日本は単独では、力技で中国に対峙することは不可能であることを自覚し、さらに沖縄や基地所在地域で日本人の人権や命が奪われている事実を直視し、この二つを同時に克服する道筋を見出していかなければならないのではないだろうか。