白夜の炎

原発の問題・世界の出来事・本・映画

ワインの価値とは?

2012-07-01 16:13:15 | 文化
 ワインの「価値」なるものが、値段と、おそらくワインを取り巻く社会的・政治的環境の所産によるものだということが以下の記事の趣旨。

 のせられてワインに就いて云々するのは愚の骨頂です。


「オーストラリアのワイナリーPenfolds社は6月29日(現地時間)、世界で最も高価なワインを直接販売すると発表した。

「2004 Kalimna Block 42 Cabernet Sauvignon」という立派な名前が付けられ、168,000豪ドル(1ドル=79.5円換算で約1,335万円)の値札が付けられたこのワインは、ワイン用のブドウであるカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培を世界で最も早くから続けているという、1カ所のブドウ園のみで製造されたものだ。

2004 Block 42は、現時点で12個しかないというガラス製容器(上の写真)に入れられて販売される。この容器は吸血鬼を殺すために使う武器のような形をしているが、容器ひとつにつき標準的なワインボトル1瓶分のワインを詰めることができる。

 魅力的な装飾は別にして、このワインの味はその値段にふさわしいものだろうか。おそらくはそうだろう。ワインの味はその価格によって影響されるという研究があるからだ。

この研究を行ったのは、カリフォルニア工科大学の神経経済学者アントニオ・ランゲル准教授だ。同氏によれば、「同じワインを飲んでも、それが高価なワインだと信じている時には、快感の認識に関わる脳の領域の活動がより活発になっていた」という。

ランゲル氏らは、実際の販売価格より高い値段を付けたカベルネ・ソーヴィニヨン種のワインと、低い値段を付けた同じワインを被験者に飲んでもらい、その被験者をfMRI(機能的磁気共鳴画像)でスキャンした。

すると、このふたつがまったく同じワインであるにもかかわらず、被験者らは、値段が高いと信じたときの方が、低い値段を知らされたときよりも、そのワインをおいしいと報告し、彼らの脳も同じような動きを見せた。すなわち、快楽性の経験に関与する脳の領域である眼窩前頭皮質が、ワインの値段を低いと信じたときよりも高いと信じたときの方が活発になっていたのだ。

口にするワインの味は、その人の味覚受容体に影響を与えるだけでなく、社会的な文脈にも影響されるという説がある。「ある種の人たちにとっては、歴史上最も高価なワインを飲んでいるということで自分が特別な存在だと思えて、それ自体が喜びを生み出す可能性がある」とランゲル氏はいう。

もうひとつの説としては、脳はワインの値段に基づいて、そのワインがおいしいかどうかを予想するのだというものがある。人は、ワインが自分の好みであるかどうかをなかなか判断できないため、値段の助けを借りて判断するのかもしれない。脳が値段と味を結びつけて学習していくというわけだ。

面白いことに、研究チームがワインの鑑定家ではない人たちに対して(値段を知らせずに)ブラインド・テイスティングを行った際、彼らは最も値段の安いワインを最もおいしいと報告したという(日本語版記事)。また、スタンフォード・ワインクラブの人たちに対してこの実験を行ったときも、結果は同じだった。「非常に訓練された味覚を持つソムリエの所を対象にしても、幻想は打ち砕かれる可能性があると考えている」とランゲル氏は語っている。

今回の世界記録的なワインについては、「社会的な側面に完全に支配されると推測できる」とのことだ。

TEXT BY TANYA LEWI
PHOTO BY PENFOLDS
TRANSLATION BY ガリレオ -佐藤 卓/合原弘子」

(http://wired.jp/2012/06/29/most-expensive-wine/1/)