今回ご紹介する機体は、オーストラリアにかつてあったエンタープライズウイングスというメーカーが作った「FOIL」という機体です。
今となってはマイナーな機体ですが、実はこの機体、今に通じるテクノロジーを二つも取り入れていたグライダーで、ハングの進化を語る上では外せない機体と思いますので、今回ご紹介いたします。
パッと見た感じ、当時でもアスペクトレシオはそれほどでもなく、何の変哲もない機体なのですが、実は「コンペンセーター」が取り付けられ、翼の中にはメインバテンとアンダーバテンをつなぐベルクロがつけられた機体だったのです。(ちなみに補足ですが、順番的にはマジックキッスがコンペンセーターは最初だったかも知れません‥)
この技術は、ほとんどの現在のコンペ機には常識的に使われているものです。
コンペンセーターとベルクロが、なぜそんなに大事か?それについてご説明します。
まずコンペンセーター。
以前の回で、VGがONとなった時にラフラインが張るように長さが調整されているとご説明しましたね!
VGがONの時が、一番ピッチ安定が無くなってしまうため、ハンググライダーのラフラインの長さは、VGがフルONとなった時の安定性を最重視して、その寸法が設定されています。
しかし、そのような巧みな長さに調整されたラフラインの長さも、場合によっては困ったことが生じるようになりました。
それはVGがOFFの時の長さなのです。
基本的にVGがOFFの時は、ラフラインは弛んでいれば、コントロール上は問題ないのですが、しかし、VGを戻すとラフラインが弛み過ぎてしまうのです!
弛み過ぎたラフラインは、通常は問題ないんですが、しかし、サーマルを外したとき等「落し」を食らうと、ラフラインが効き始めるまでタイムラグがあるため、余計に落ちてしまう、言いかえれば「ピッチ安定」が悪くなってしまうのです。
つまり、ラフラインの長さのベストは、VGをOFFにしたときに、ラフラインが張らない程度に少しばかり縮んでくれるのが理想的なのです。
そのために開発されたのが「コンペンセーター」だったのです。
コンペンセーターは、VGがOFFのとき、キングポストを前に倒すか、あるいは、ラフラインそのものの長さを滑車で引っ張り上げるなどの方法により、いつでも理想的なラフラインの長さに設定してくれているものなのです。
この機構を取り付けると、VGがOFFの時のピッチ安定が増し、乱気流等に強くなるのです。
上でも少し述べましたが、このコンペンセーターをつけると飛びがより安定してくるので、現在のキングポストレスでも同じ効果を狙って、スプログやダイブスティックの角度が変わるようになっているのです。
ちょっと長くなったので、翼の中で成型バテンとアンダーバテンをつなぐベルクロの説明は、次回に回させていただきます。