昨日のつづき。
まずは、ほぼ同年齢(約27歳)の2匹のアカゲザルの
カラー写真をごらんいただきましょう。
昨日は、白黒写真でしたが、
どちらがカロリー制限 (CR) を行なった方かは
一目瞭然ですよね?
顔面のアップと側面からの全身像も、どうぞ。
CR餌 通常餌
サルの種類が違うのかと思うほど
まったく毛並みが違うではありませんか!?
とても、同じ年齢とは思えません。
これが、アカゲザルで示された「腹七分目」の効果です。
さて、では、2009年7月10日付けの『Science』誌に掲載された
「Caloric restriction delays disease onset and mortality in rhesus monkeys.」
「アカゲザルでのカロリー制限は、疾患発症と死亡を遅らせる。」
という論文の要点を、紹介しましょう。
(注・・・)は、筆者による追加説明です。
栄養不足とならないカロリー制限(Calorie Restriction:CR)は、
多くの生物種で加齢の進行を遅らせ、寿命を延長させることが知られている。
(注:最初の研究発表は1935年、コーネル大学のマッケイらが
ラットを低カロリーの餌で飼育することによって、
寿命を33%延長することに成功したというもの。
それ以後、CRを行なうと、原生動物、ミジンコ、サラグモ、
グッピー、マウスと、幅広く、いろいろな種類の動物で
平均寿命、最大寿命ともに大幅に延びることが確かめられた。)
しかしこれまで、霊長類でのCRが、疾患発症を抑え、
死亡率を改善するかどうかは、明らかにされていなかった。
この研究では、霊長類のアカゲザルに対してCRを行い、
その効果を検討した。
1989年に、オスのアカゲザル30匹を15匹づつ、
CR餌群(CR群)と通常餌群(コントロール群)とに振り分け、実験を開始。
1994年には、メスのアカゲザル30匹、
オスのアカゲザル16匹を同じく2群に振り分け、実験を継続。
CR群・コントロール群ともに38匹づつのアカゲザルを
平均20年間飼育し、経過を観察している。
CR群では、30%カロリー制限した餌を投与している。
その結果、CR群においては加齢に伴う死亡率の低下が認められた。
すなわち、本研究発表の時点で、
生存率
コントロール群 50%
CR群 80%
と、いう結果が得られた。
また、死亡例においては、その死亡原因について、
糖尿病・癌・心血管疾患など、
加齢による病理変化による死亡なのか、
それ以外の急性の病理変化による死亡なのかを
病理解剖で判定したところ、
加齢による病理的変化による死亡
コントロール群 37% (38匹中14匹)
CR餌群 13% (38匹中 5匹)
という結果となった。
(注:コントロール群での加齢による病気での死亡は、CR群の3倍である。)
結論として、
CRはアカゲザルにおいて、年齢に伴う病理学的変化を遅延させた。
すなわち、
CRは、糖尿病・癌・心血管疾患・脳萎縮の発症率を低下させた。
A:縦のラインは死亡を示す
B:コントロール群(通常餌)とCR群の加齢に伴う死亡の比較
C:コントロール群(通常餌)とCR群のあらゆる理由による死亡の比較
カラーでBとCのグラフを再掲しました。
アンチエイジング・ミニ講座 1 ヒトは血管とともに老いる
アンチエイジング・ミニ講座 2 AGEsは血管平滑筋細胞に石灰化を誘導する
アンチエイジング・ミニ講座 3 寿命決定は環境因子が75%
創立2周年記念、AGE Readerによる皮膚AGEs測定の実際は こちらから
当ブログの重要点『抗糖化』等に関してはこちらにまとめてあります。
なお、図表および内容の引用は固くお断りいたします。