昨年の夏以来、左膝の痛みで受診される男性。
一目で変形性膝関節症と判るのは、O脚になっているから。
ヒアルロン酸の関節内注射と内服の鎮痛薬で対応することに。
内服は2週間分の処方だが、痛みが増悪しないと受診されない。
家人に言わせると、相当な頑固者らしい。
「七草粥は美味しかったが、膝は痛む。」
と、そこそこ雪の降った本日の受診は2ヶ月ぶりである。
今日は、いつもより多弁な様子だ。
「右の肘にも痛みが出る。」
「左の肩は、痛みはないが挙がらない。」
関節注射の準備をしながら見ていると、確かに変だ。
左腕は30度ほどしか挙がらず、右手を添えて押し上げるのだが、
左の肩をすくめる動作が伴っている。
そこで、患者の左肩を上から押さえて肩をすくめられないようにし、
左腕を下から支えて水平まで持ち上げてみる。
こうしてみても、痛みはまったく訴えない。
ところが、支えの力を抜くと、患者の左腕は重力に抗えない。
ということで、陳旧性の腱板断裂を疑って、訊ねてみた。
「ずっと前から、挙がらへんのかな?」
「そうや、もう、ながい。 若い時、悪くしたんが効いてる。」
「腱板断裂やないかなぁと思うんやけど・・・」
「ああ、そない言われたことあるわ、腱板断裂。」
ずいぶんと長い間、挙がらなかった左腕のことを、
今日は話題にしてみたということがわかった。
曰く、
「永いこと使ってきたら、具合の悪いとこがアチコチ出てくるわ。」
そうですよ、膝もシッカリと変形性膝関節症ですから。
「痛み止め、出しとくからね。」
さぁ、今度は、いつ受診されるのだろうか?
診療所の玄関を出て行く後姿を見送りながら、
小さな声でナースが言ったのでした。
「娘さんは、もう運転せんといて欲しいと言ってるんやけどなぁ。」
!
雪の積もった駐車場を、ユックリとO脚で進む先には、
フロントに雪を載せた軽トラックが停められていた。
この患者さん、御歳 95 歳 !。
たしかに、アチコチにガタは来ているが、
認知症などの心配は、まったく要らない。
サクセスフル・エイジングの一例だなぁ、と思える御仁なのでした。
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