外科医 アンチエイジングに目覚める!?

目指そう サクセスフル・エイジング !

抗糖化 で 減らせAGEs 

炭水化物も要注意    

骨密度が高くても骨折が起きる?!

2015-06-14 18:17:16 | 骨粗鬆症と糖化
以下の内容は、骨粗鬆症に対する薬剤ビビアント

を販売するPfizer社のHPからの引用で構成されています。









    クリックで詳細が別ウィンドウで開きます。




唐橋 
 近年,糖尿病の患者さんが増えているそうです.

 糖尿病というと,血液中の糖分が増加したり,

 尿に糖がまざって出てくる病気だと認識しています.

 一見,骨とはまったく無関係に思えるこの糖尿病が,

 実は骨粗鬆症によって起きる骨折に関係があるということが

 わかってきました.

 本日は,このあたりを詳しく教えていただきたいと思います.

 稲葉先生,まず,糖尿病の病態についてお話しいただけますか.


稲葉
 糖尿病は,発症機序によって1型と2型に大別されます.

 1型糖尿病は自己免疫性といわれ,若年者に多く発症します.

 免疫細胞は,通常は外敵のウイルスや細菌などを攻撃し

 自分の体を傷つけることはありません.

 しかし,1型糖尿病は糖分を調節するインスリンを分泌している

 膵臓のβ細胞を攻撃してしまうために発症すると考えられています.

 一方,2型糖尿病は中年以降の肥満者に多く発症します.

 インスリンの分泌が正常でもその働きが弱くなる「インスリン抵抗性」

 が2型糖尿病発生の機序として大きく注目されています.

 しかし,日本人ではインスリン分泌の低下が起きやすく,

 これも重要な要因と考えられています.

 近年は飽食,運動不足,飲酒,生活の24時間化や

 ひとりあたりの仕事量の増加に伴う睡眠障害など,

 身体的・精神的にストレスを抱える時代にあります.

 これらの生活習慣の悪化に伴い,生活習慣病のひとつである

 糖尿病の患者数は増え続けています.

 境界型も含めると,患者数は2,000万人以上といわれています.

 また,糖尿病は心血管系イベントの主要な危険因子であることは

 広く知られていますが,

 実は骨粗鬆症も発症しやすいということがわかってきています.


唐橋
 2型糖尿病は血管や内臓と関係が深い疾患という認識は

 もっていましたが,骨にも関係しているのですね.

 稲葉先生,どのようなことがきっかけで

 糖尿病が骨粗鬆症に関係があることがわかってきたのですか.


稲葉
 糖尿病と骨の関係は1948年にオルブライトによって

 「糖尿病性骨減少症」として報告されていました.

 その後,1型糖尿病では骨折率が上昇することが

 明らかになりましたが,2型糖尿病と骨の関係については

 結論が出ていませんでした.

 2型糖尿病には骨量の多い肥満者が多く,骨折のリスクには

 ならないということで研究はいったん下火になりました.

 しかし,臨床の場で糖尿病の患者さんをみていると,

 歯が痩せてきて歯と歯のあいだに隙間が出てくるような

 患者さんが多数いることがわかってきました.

 歯そのものの組織も硬組織であり骨と同類と考えることが

 できますし,また歯を支えている歯槽骨が劣化することで

 歯の安定性が損なわれます.

 そして,

 最近になり骨密度は増加しているにもかかわらず

 骨折率が高くなることが複数の研究で報告され,

 骨質の劣化が糖尿病で骨が脆くなる原因であること

 がわかってきました


 これによって,この分野での研究が活気を帯びてきました.



唐橋
 糖尿病患者さんでは「骨質」の劣化が

 骨粗鬆症をまねいているということですが,

 骨質と骨密度とはどう違うのでしょうか.


山本
 骨密度は骨の強度を表す重要な指標であり,

 骨密度が低いと骨折しやすいことが知られています.

 しかし,ある種類の骨吸収抑制薬は,

 骨密度があまり増えていないにもかかわらず,

 骨折予防の効果がもたらされていることや,

 逆に薬の副作用で発症するステロイド性骨粗鬆症では,

 骨密度が低下していなくても骨折リスクが高いことが

 わかってきました.

 これらの骨密度と骨強度との関連は

 骨密度では説明ができないことから,

 骨密度とは独立した骨強度因子として

 「骨質」という概念が導入され,

 骨強度は骨密度と骨質で規定されると定義されました(図1).

 骨質は定義が難しいのですが,

 構造特性と材質特性に大別され,おのおのは

 骨形態,微細構造,骨基質,骨代謝回転,石灰化などから

 成り立つといわれています.


唐橋
 稲葉先生は骨密度と骨質の関係をどのように捉えていますか.


稲葉
 われわれが研究を始めた当時は,

 骨強度は約9割が骨密度で説明できるといわれていて,

 骨質という概念はほとんどありませんでした.

 最近では,骨密度と骨質の割合は7:3程度で

 骨強度が規定されています.

 約3割を占める骨質の重要性は

 今後ますます増してくると思われます.









唐橋
 骨密度が高くても骨折が起こるケースがあり,

 そこには骨質が関係している可能性があると

 いうことがわかりました.

 次に,閉経後女性の2型糖尿病と骨粗鬆症の関係について

 詳しくお話をうかがっていきたいと思います.

 山本先生,2型糖尿病を発症した閉経後女性の骨は

 どのような状態になっているのでしょうか. 


山本
 糖尿病患者さんの骨の状態については,

 生後10カ月から高血糖が生じる自然発症糖尿病ラットの

 実験が参考になると思います.

 糖尿病では,糖と蛋白質が反応して

 advanced glycation end-products(AGEs)と呼ばれる

 終末糖化産物が生成されます.
 
 このラットでは,糖尿病発症直前から

 AGEsのひとつであるペントシジンが

 骨コラーゲン内に増加することが観察され,

 非糖尿病ラットの骨密度と有意差がないにもかかわらず,

 糖尿病発症直後より骨強度が低下していることが観察されました.

 この骨強度の低下は骨密度低下を伴わないことから,

 骨質低下によると考えられます.

 骨コラーゲンは骨基質の主要な構成物質です.

 すなわち,骨コラーゲンにペントシジンができることが

 コラーゲンの材質特性を劣化させ,骨強度が低下したと考えられます.

 その機序として,ペントシジンができることにより

 コラーゲン繊維が過剰に束ねられ,

 チョークのような骨に性質が変化し,

 骨強度が低下すると考えられています.

 この骨コラーゲン内のペントシジン量は

 血液中のペントシジン濃度と正相関することが報告されました.

 また,われわれや海外の研究者により,

 閉経後2型糖尿病女性において,

 血液および尿中のペントシジン濃度が増加すると,

 椎体骨折の相対危険度が高くなることが明らかになりました.

 すなわち閉経後2型糖尿病女性では,

 骨コラーゲンの糖化が進み,材質特性の劣化により,

 骨密度非依存的な骨強度の低下が生じていると考えられます.


唐橋
 ペントシジンのようなAGEsが増えると骨が脆くなるということですが,

 そのほかに2型糖尿病に特徴的なことがありますか.


山本
 実験結果からAGEsの特異的な受容体として

 receptor for AGEs(RAGE)が骨密度や骨石灰化と

 かかわりがあることが知られています.

 このRAGEにはいくつかの亜型があり,そのうちのひとつである

 内在性分泌型RAGE(endogenous secretory RAGE;esRAGE)は

 細胞外に分泌され,細胞間隙でRAGEと結合し,

 膜表面のRAGEへAGEsが結合することを

 阻害する作用を有しています(図2).

 われわれの検討では,このesRAGE絶対量が多い,

 またはペントシジンとの濃度比が高いほど,

 2型糖尿病患者さんにおいて椎体骨折の

 相対危険度が低下することがわかっています.







以上、Pfizer社のHPからの引用でした。



さてもさても、

ようやくこのような話が出回ることとなったようですねぇ。

要するに、以前から申し上げているとおり

ペントシジンの生成抑制作用を有するものは

骨質劣化による骨粗鬆症の予防になる

ということではないでしょうか。



AGEsによる悪性架橋が骨質を劣化させる

2015-04-11 15:57:26 | 骨粗鬆症と糖化
これまで何度か扱ってきたテーマですが

骨粗鬆症に対する薬剤(ビビアント・Pfizer社)の説明ビデオでも

取り上げられているのを見つけましたので

以下に貼り付けておきます。


なお、ビデオ内容は

慈恵医科大学整形外科の斉藤充先生の論文に基づくものです。


当ブログの関連既出記事は以下のとおりです。

 2010-12-24
 糖化による疾患と抗糖化食品・素材 まもなく
 http://blog.goo.ne.jp/avin-hmp/e/a6678ca07ff5c051311f2a63b8f30c45


 2010-09-09
 AGEs(ペントシジン)と骨折リスク
 http://blog.goo.ne.jp/avin-hmp/e/b7524ebc1b45cb2935ce11aaacee7b88


 2010-06-08
 あなたの知らない血糖値の罠! にペントシジン登場!
 http://blog.goo.ne.jp/avin-hmp/e/973964fabb1affe1d3209287cb45c839


 2010-06-06 
 あなたの知らない血糖値の罠!
 http://blog.goo.ne.jp/avin-hmp/e/e08305d26dfbbd82bf6e72825645d00a



では、どうぞご覧になってください。


AGEsと骨質の劣化


AGEs(ペントシジン)と骨折リスク

2010-09-09 22:58:09 | 骨粗鬆症と糖化
糖尿病と骨粗鬆症の間には、

NHKのためしてガッテン や
 新型骨粗鬆症 ためしてガッテン についにAGEs登場!

たけしの家庭の医学で取り上げられたように、
  あなたの知らない血糖値の罠!
 あなたの知らない血糖値の罠! にペントシジン登場!

見過ごしにできない関係があります。



骨粗鬆症治療の座談会をまとめた最近のパンフレットでも

糖尿病との関係が重要と書いてあったので紹介します。



海外のデータから示される1型糖尿病と2型糖尿病での

骨密度・骨折危険度は、次の図のようになります。







まず骨密度ですが、

脊椎骨と大腿骨近位部(頚部・転子間部など)において

1型糖尿病では減少し、

2型糖尿病では増加しています。


骨折の危険度は、

1型糖尿病では大腿骨近位部骨折の危険度は大幅に増加し、

2型糖尿病でも1.38倍に増加と報告されています。



骨密度の低下する1型糖尿病で

骨折の危険度が増加するのは分りやすいのですが、


骨密度が増加している2型糖尿病でも

骨折の危険性が増加するというのがクセモノです。




次に、2型糖尿病と骨折危険度に関する大規模試験である

Rotterdam Study(2005年)の結果の図を示します。







この大規模試験によると、2型糖尿病患者では

腰椎あるいは大腿骨近位部の骨密度が高いにもかかわらず、

近位部骨折の危険度が1.33倍高い
と報告されています。



これより前の研究ですと、

2型糖尿病患者657例を含む9654例のコホート解析で、

2型糖尿病では大腿骨近位部骨折の危険度が

1.82倍高くなるという報告
(2001年)もあります。



骨密度が高くても、骨折の危険度は高いとは困ったことです。


わが国においても島根大学医学部のYamamotoらが、

閉経後女性で2型糖尿病の有無によって

椎体骨折の危険度と骨密度との関係を外来患者で検討したところ、

2型糖尿病患者の椎体骨折は骨密度では予測困難である

と報告しています(2009年)。

       ↓





その一方でYamamotoらは、

血清中もしくは尿中ペントシジン増加が、

閉経後2型糖尿病女性の椎体骨折の危険因子であることが

示唆される
と報告しています(2008年)。

        ↓









ペントシジンがAGEsのひとつであることは、

ここを読まれている皆さんにはすでにお馴染みのことですね。



関連する以前の記事は以下のとおり。


 骨密度が高くても骨折しやすい理由
         ↓
 AGEsと骨質劣化について


 ペントシジンの生成抑制について
         ↓
 糖尿病合併症治療薬における抗糖化について



 「腎と骨代謝(2008)」に慈恵医大整形外科の斎藤 充先生が

 ペントシジンに関する記述をされています。
           ↓
骨の材質を反映するマーカーの骨折危険性評価への応用と課題



 島根大学医学部の山内 美香先生が書かれた2ページ目には

 一番最初に掲載した図の解説があります。
           ↓
全身性代謝疾患(含メタボリックシンドローム)における骨折危険性評価の重要性」  





あなたの知らない血糖値の罠! にペントシジン登場!

2010-06-08 20:51:25 | 骨粗鬆症と糖化

ただいま放送中の

たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学

で、紹介された物質は


ペントシジン でしたねぇ。


ペントシジンAGEsのひとつですね。


どうしてAGEsとして、紹介されないのかな?!


実は、抗糖化ドクターズ・サプリメントの成分には

このペントシジンの生成を抑制する作用が知られています。



下の図の、CMLとペントシジンがAGEs。

3DGというのは、AGEsになる中間活性物質です。

アミノグアニジンというのは、AGEs生成抑制薬として期待されながら、

その副作用によってポシャッタ有名な物質です。

 そのあたりの話は、

新刊書「老化を止める7つの科学―エンド・エイジング宣言」に記載しています。


この図でみると、アミノグアニジンには

ペントシジンの生成抑制効果のないことがわかりますね。

しかし AGハーブMIX ™55.3%の生成抑制 を示しています。


 
                          アークレイ株式会社HPより引用


このAGハーブMIX ™ を1日量 600mg 含有しているのが、

抗糖化ドクターズ・サプリメントです。


なぜ、メーカー推奨1日量の最高値に設定しているかといえば、

文字通り 筆者自身のための処方だからです。


そのあたりのいきさつは、

 抗糖化ドクターズ・サプリメント誕生の由来に詳しく書いています。 → こちら


ペントシジンの説明は、こちら → 老化原因としての糖化(グリケーション)

高血糖での骨折に関しては、こちら → AGEsと骨質劣化について


こちらはおまけ → AGEs・・・まだ知ってる人少ないよね




番組で紹介されている食事法

 1.一口30回噛みましょう!

 2.サラダから先に食べましょう!


いずれも、ここでもすでに紹介済みのものですね。


 糖尿病を予防するアンチエイジングな食べ方 その5

 会員記事要約 : 糖尿病を予防するアンチエイジングな食べ方 その3


もう一度、ご確認くださいませ。



 

あなたの知らない血糖値の罠!

2010-06-06 21:27:36 | 骨粗鬆症と糖化
関連記事 → あなたの知らない血糖値の罠! にペントシジン登場!
         新型骨粗鬆症 ためしてガッテン についにAGEs登場!
         超悪玉コレステロールが登場 たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学
       
  


TV番組の宣伝です。

8日火曜日の たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学


 あなたの知らない血糖値の罠!徹底予防スペシャル

  血糖値が高い状態が続くと、足先の壊疽、失明、脳梗塞を引き起こすことも…。
  しかし、これだけではありません。あなたは知っていますか?
  高血糖がさらに恐ろしい【謎の合併症】を招いてしまうことを。


 日本人の6人に1人が高血糖

  高血糖が招く【謎の合併症】果たしてその病の正体は?



という、内容だと番組HPに書かれています。


で、そこにある予告動画では、


 高血糖を放っておいた女性

  なんと、背骨が曲がってしまったのです!



といわれています。


高血糖で背骨が曲がるとは、圧迫骨折でしょう?


これは ためしてガッテンで、やってたとおりです。
          ↓
 新型骨粗鬆症 ためしてガッテン についにAGEs登場!


ただし、ガッテンでは AGEsは紹介されませんでした。


さぁ、今度はどうかな?!


紹介されたのはペントシジンでした → あなたの知らない血糖値の罠! にペントシジン登場!



当ブログでもお勧めした食事法の紹介もあるようです。
           ↓
 会員記事要約 : 糖尿病を予防するアンチエイジングな食べ方 その3
  


たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学

あなたの知らない血糖値の罠!徹底予防スペシャル
            ↑
  番組HPは、 クリックを!



関連記事 → あなたの知らない血糖値の罠! にペントシジン登場!
         新型骨粗鬆症 ためしてガッテン についにAGEs登場!
         超悪玉コレステロールが登場 たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学


新型骨粗鬆症 ためしてガッテン についにAGEs登場! 

2010-05-19 20:49:10 | 骨粗鬆症と糖化

たったいま放送された、ためしてガッテンは、

新型の骨粗鬆症についての話題でした。


骨密度が充分でも、

コラーゲンが充分でも、

しなやかさがないと 弾力がないと


圧迫骨折になります

と、説明されています。



骨を糖液に漬けておくと、

コラーゲンに ある物質が付着して

コラーゲン同士に 悪い架橋 が出来てしまうと、

説明されています。


その 物質とは  悪い架橋 とは 何ですか?


その具合を調べる検査法は、ないのですか?



ここ2~3年で判ってきた話で、まだ、検査法はない


と説明されたのは解説に登場された


国立長寿医療研究センターの細井孝之先生





えっ! ほんまかい??




不思議なことなのですが、


とうとう、番組では、その物質が何というものなのかは


明かされずじまいでした。


それこそが、AGEsなのですが


番組では、まったく触れられませんでした。


いったい、なぜなのでしょうか?


ガッテン が いきません!



恐らく、検査法が一般的でないから、

 「 シ ラ シ ム ベ カ ラ ズ 」

ということになったのでしょうかねぇ・・・?



しかし、番組内で

専門の研究者として紹介されていた先生が、

もうおひとり、いらっしゃいました。


東京慈恵会医科大学整形外科の斎藤充先生。



この先生の発表については、

以前、このブログでも、昨年8月に紹介済みです。


AGEsと骨質劣化について
http://blog.goo.ne.jp/avin-hmp/e/6a9c89ada31ff5d855b1c2b4c83f07dd

ぜひ、上記記事をご覧下さい。



NHKのためしてガッテンHPへは以下からどうぞ

死亡率8倍!? あなたを襲う新型骨粗しょう症

http://cgi4.nhk.or.jp/gatten/archive/program.cgi?p_id=P20100519





AGEsと骨質劣化について

2009-08-12 02:31:52 | 骨粗鬆症と糖化
                 
                      YOMIURI ONLINEより転載


以前の記事「継続は力なり・・・もっと骨粗鬆症に注意を」も覗いてみて下さい。
http://blog.goo.ne.jp/avin-hmp/e/6e96e7e25c488252c7fbcec034aeacf6



加齢によって発生してくる厄介な状態に骨粗鬆症があります。

特に女性にとっては、閉経後の大きな問題として存在しています。

その指標としては「骨密度」=「骨量」を測定することが主流です。


しかし、2型糖尿病の患者では「骨密度」が増加しても骨折率が高いことが報告されています。

その原因として、「骨密度」以外の骨強度因子である「骨質」の劣化が指摘されています。


骨質研究会のメンバーで、コラーゲンの解析を専門とする東京慈恵会医科大学整形外科の

斎藤充講師によると、「骨質」劣化の起こる機序は次のようなものです。


まず、素材として骨の半分を占めているのはコラーゲンです。

これは鉄筋コンクリートの鉄筋に相当します。上の図を参照して下さい。

ここで「骨質」が良好であるか劣化しているかを規定する因子は、

コラーゲン自体の状態とコラーゲンの分子間に形成される架橋結合の状態なのです。


コラーゲンの分子間に形成される架橋は、

酵素反応を介して形成される善玉の生理的架橋と、

糖化や酸化により形成されるAGEsによる悪玉の架橋の2タイプに分類されます。


善玉の架橋は、健康な身体本来のものですから、

適度な弾力性を保ちながら骨を強くしています。

しかしAGEsによって形成された悪玉の架橋は、

弾力性に乏しく骨を陶器のように脆くしてしまいます。


糖尿病特有の環境は、健康な善玉の架橋を悪玉の架橋へと変化させ

「骨質」を劣化してしまいます。


「骨密度」が低下していなくても「骨質」が劣化していると、

骨が脆弱化してしまうということが明らかになってきたのです。

」だけではなく「」がより一層重要だというわけです。



AGEsの生成を低減させることが「転ばぬ先の杖」として重要であることは、

このテーマに関連する次の2つのサマリーからも理解されると思います。



▲糖尿病と骨疾患:Seminar
糖尿病での骨折率上昇
 ~その骨密度非依存性~
 近年の大規模臨床研究により1型および2型糖尿病のいずれにおいても骨折危険度が増加することが明らかとなった。1型糖尿病では骨密度の低下を背景にした骨折率増加と考えられるが,2型糖尿病では骨密度の低下を伴わない骨折率の増加,すなわち骨密度非依存性の骨折率増加が示され,糖尿病の病型により骨折を生じる病態が異なることが示唆される。2型糖尿病における骨密度非依存性骨折の増加には,転倒等の骨外因子に加え,骨質の劣化が寄与している可能性が考えられ,今後骨質に着目した研究の進歩が望まれる。
(山本昌弘・山口 徹・杉本利嗣 島根大学医学部内科学第一 1)(やまもと・まさひろ) 2)助教授(やまぐち・とおる) *3)教授(すぎもと・としつぐ))

▲糖尿病と骨疾患:Seminar
糖尿病での骨基質AGE化と骨減少症
 1型糖尿病で認められる骨減少症の病因における糖化最終産物(AGEs)の役割について,ヒト由来の初代培養骨芽細胞,破骨細胞様細胞および副甲状腺細胞を用いた知見を示した。AGEsは骨芽細胞の骨形成能を抑制するのみならず,低カルシウム(Ca)刺激に対する副甲状腺細胞からの副甲状腺ホルモン(PTH)分泌を抑制し,この機序には,AGEsによる時間依存性の細胞内Ca濃度上昇効果が関与した。また,AGEsはヒト骨芽細胞からのインターロイキン-6(IL-6)産生を促進し,ヒト破骨細胞様細胞形成を促進した。以上の知見から,AGEsは,糖尿病における骨減少症の病因の一つであると考えられる。
(山本威久 箕面市立病院小児科・部長(やまもと・たけひさ))



当ブログの重要点『抗糖化』等に関してはこちらにまとめてあります。
なお、図表および内容の引用は固くお断りいたします。