脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

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リファイン、紫紺の軍団 -関西大 VS 京園大-

2011年04月19日 | 脚で語る大学サッカー
 17日、高槻・萩谷総合公園サッカー場で行われた関西学生リーグ1部前期第2節の第2試合は、昨年度2位の関西大と入替戦を制して今年度から1部に昇格してきた京園大(京都学園大)が対戦。試合は京園大が先制する意外な展開だったが、関西大が交代出場選手の活躍もあり、3-1と逆転勝利。昨年度のインカレ王者が新たに関西のタイトルを見せて好発進している。

 

 昨年度は全日本大学選手権(通称インカレ)を制した関西大。しかし、関西ではリーグが準優勝、関西選手権は2回戦敗退という結果に終わり、総理大臣杯と天皇杯に出場すらならなかった。今年度より本来赤だった1stユニフォームを紫紺(2ndユニフォームが赤になる模様)にチェンジ。各年代の代表クラス、大学選抜を多く揃え、この錚々たる豪華メンバーに恥じない「全カテゴリー日本一」を目指して再発進。注目選手を挙げればキリがないが、リーグ開幕戦は大体大を1-0と振り切って白星スタートを果たしている。軒並み各年代代表の経歴を持つ多彩な選手が今年もその門を叩いたが、開幕戦に続き、神戸ユースからやってきた和田篤紀(U-17日本代表)が1年生では唯一先発出場を果たしている。
 一方の京園大は、昨年度2部リーグBブロック2位となり、大院大との入替戦に競り勝って念願の1部昇格を果たした新進気鋭のチーム。選手層の厚みや注目選手という点で他の強豪校に見劣りするが、開幕戦では昨年のリーグ王者・阪南大に2-2のドローを演じるなど早くも話題を提供してくれている。早くも1節、2節で強豪2チームを相手にすることになった。ちなみに西政治(元福岡)、手島和希(元京都)という東福岡高出身の元Jリーガーが2人コーチを務めているというのも驚きだ。

 
 阪南大と引き分けスタートの京園大。
 前線で清水ユース出身の杉山(3年)がボールを運ぶ。

 
 今年こそ関西王者を目指す関西大
 ユニフォームを紫紺にチェンジ。守備の要は寺岡(2年)。

 試合は立ち上がりから予想外の展開。関西大以上にアグレッシブに攻撃を仕掛けてきた京園大。13分に早速MF城内(3年)の鮮やかなシュートで先制。会場がどよめいた。体躯的に大柄な選手が多い京園大は序盤から守備意識をしっかりと持ち、関西大に形を作らせない。攻撃面ではMF村上(3年)を中心に再三攻め込み、29分、自陣エリア内でファウルからのPKを献上するが、これをGK芹沢(2年)が見事に止めてチームを盛り上げた。前半の京園大は物怖じせずハードワークで関西大を追い込み攻撃に転じていった。

 
 思いがけない先制弾は京園大・MF城内のシュートから。

 
 DF朝比奈(3年)を中心に関西大をブロックし続ける前半。
 京園大はこれを90分間続けられるか。

 一方の関西大は、良い形でボールが繋がらず前半は予想以上に苦戦した。最終ラインには2年連続の全日本大学選抜でチーム主将・櫻内(4年)、U-19日本代表を含めたありとあらゆる選抜メンバーに名を連ねる寺岡(2年)らが顔を揃えるものの、その彼らがボールを持つ時間が多い。まだ余裕こそ見えたもののチャンスは少なかった。前述のように京園大のファウルでPKのチャンスを得たが、これを司令塔・岡崎(3年)が失敗。前半は及第点以下のスローな印象で0-1とビハインドを背負って後半へ折り返す。

 
 意外な岡崎のPK失敗の場面。
 ここで一気に試合を振り出しに戻したかったが…

 
 1年生唯一の開幕戦から2試合連続出場を果たした和田。
 お父さんは神戸の和田昌裕監督だ。

 今季の関西大、やはり注目が集まるのはその豪華なDFラインだけではなく、昨季までエースだった金園(現磐田)の抜けた穴を誰が埋めるのかという点だろう。全体的にタレントというタレントが揃っている関西大、他校からすれば贅沢な悩みなのかもしれないが、各ポジションの中でFWのレギュラー争いが最も熾烈、個人的にはそこに注目していた。今年で4年生になる瀬里(G大阪Y出身)は意外にもベンチにすら入っておらず、先発を務めたFWは千葉U-18出身の奥田(2年)と青森山田高出身の中島(2年)という若いコンビ。開幕戦も同じコンビで臨んでおり、奥田の得点で1-0と勝利している。前半は沈黙していたFW陣が後半魅せてくれるのか、それとも中盤のタレント力で押し切るのか。スコアでリードを許す分、そこが大いに楽しみだった。

 
 関西大の主将を務めるDF櫻内。
 タレント軍団をまとめる数少ない主力の4年生。

 
 昨季の優秀選手でもある岡崎は欠かせない選手。
 G大阪ユース出身。

 後半、前半のハードワークが影を潜める京園大を尻目に関西大が一気にギアを上げる。前半以上に右の櫻内、左の都並(2年)のオーバーラップも機能し、サイドから中央にボールが放り込まれるようになってきた。前半は厳しいチェックに苦しんでいた岡崎、田中(3年)の元G大阪ユースコンビが余裕を持ってゲームを作る。
 55分、サイドから入ったボールに田中、奥田の2人が重なるようにして反応したが、最初に合わせた田中の打ち損じを背後にいた奥田が詰めて関西大が1-1の同点に追いついた。その直後に関西大は中島を下げ、代わりにFW安藤(3年)を投入。これが功を奏し、更に攻撃が活性化。68分には櫻内の右からの折り返しを安藤が逆サイドで受け、コントロールして逆転弾となるシュートを決める。試合は2-1、戦制したはずの京園大は防戦一方の展開となってきた。

 
 
 まずは奥田が2試合連続となる得点を決めて1-1に。

 
 安藤が逆転ゴールをゲット。前線をかき回した。

 関西大は完全に自分たちのペースを取り戻した印象だったが、このメンバーではまだスコア的に物足りないというのが本音。何せまだベンチには今年G大阪ユースから新たに加入した水野(U-16日本代表)、原口(U-15、U-16、U-17日本代表)が控えている。開幕戦では出番が無かったようなので、是非見てみたいところだった。
 すると、84分に原口が奥田に代わって遂にピッチへ送られる。原口はいきなり魅せてくれた。田中のロングパスに反応。一気に京園大の守備ラインの裏へ抜け出すと、そのまま左アウトサイドでゴールへ流し込む。リーグ戦初出場ファーストタッチでの得点に会場は沸き上がった。

 
 出場時間わずか5分強で結果を残した原口。
 年代別代表でも常連、日本を背負う選手になれるはず。

 結局、試合は3-1で関西大が選手層の厚さを見せてしっかり逆転勝利。リードを許して前半を終えた時にはどう巻き返してくるだろうと思ったが、このタレント力を思う存分見せつけられた印象だ。昨季からの主力も多くが健在で優勝候補なのは間違いない。交代選手が次々と結果を出したFW陣は定位置争いが熾烈そのもの。原口というビッグルーキーの加入で今後も関西大の前線からは目が離せない。ユニフォームと共にリファインされた紫紺の軍団が日本一へ着実に走り出した。24日(日)には関学大との関関戦が早くも控えている。
 一方の京園大は前半の戦いが引き続き継続できれば、1部でも勝ち星は拾えるはず。何人かの選手のユニフォームの背番号が手書きの貼り付けで微笑ましい光景だったが、プログラムにも載っていない1年生の選手が出番を多く掴んでいるだけに、そのフレッシュさで初めての1部での戦いを突っ走って欲しいところだ。