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脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

三度目の正直 -相模原 VS Y.S.C.C.-

2010年11月22日 | 脚で語る地域リーグ
 ひたちなかの第2試合は、1日目に共に勝利を収めたJFA優遇枠のS.C.相模原と関東リーグ王者のY.S.C.C.の一戦。何を隠そうこの両者、カテゴリーは違えど、同じ神奈川県内のチーム。天皇杯予選も含めて、今季2戦2勝と対戦成績ではY.S.C.C.がリード。そして、遂にJFL昇格を懸けたこのステージで両者の直接対決が実現した。

 

 1日目の試合を観る限りでは、山口を相手に3-0と快勝したY.S.C.C.の方が総合的に熟成度が高く、良いサッカーを見せていた。しかし、この試合では昨日の試合で好連携を見せていた前線のカルテットの姿が無い。なんと昨日と7名も先発メンバーを入れ替えてきたのだ。山口戦で先制点を奪ったFW福井(彼は昨日負傷交代。負傷欠場が十分考えられる)、2点目を決めた小笹はベンチにも入らず。10番を背負うMF石川はベンチスタート。辻だけがピッチに立っていた。それだけでなく、主将で守備の要となる鈴木、中盤の底で体を張っていた土屋もメンバーに入っていなかった(結果的に試合後に数人の姿を見たが、なぜ試合に出ていなかったのかは定かではない)。ここは社会人サッカーのカテゴリー。平日ということもあり、仕事の影響は十分に考えられる。しかし、対する相模原は昨日負傷した井上に代わり、鷲田がセンターバックに、そして奥山をサブにして鈴木隼を起用してきただけでほぼ現状のベスト布陣。Y.S.C.C.が苦戦するのは必至だったといえよう。

 
 メンバーが大幅に変わったY.S.C.C.。
 最終日への温存か、仕事の影響か…

 
 相模原は、かつてJクラブを転々とした鷲田が先発。
 まだまだ最低でもJFLではやれそうだ。

 しかし、この考えは杞憂だったのかと思うほど、前半からY.S.C.C.がハイペースで攻撃を仕掛ける。開始3分にDF服部がシュートしたところを相模原GK佐藤がファインセーブで逃れると、直後にはFW松田が左からシュート。23分には辻の折り返しを平間がシュートするがわずかに右に外れていく。もしかすると、これは計算的にメンバーを変えたのでは?と勘繰ってしまうほどY.S.C.C.は快調だった。
 対する相模原は、26分にようやく最初のチャンスを迎えた。FW森谷が落としたところにMF鈴木健がミドルを狙う。防戦を強いられる相模原にはなかなかチャンスが巡ってこない序盤から中盤だった。

 
 Y.S.C.C.は昨日出場機会の無かったMF中村が奮起。
 スペースの空いた相模原陣内へ果敢に攻め込んだ。

 
 群を抜いた存在感であるFW辻が徹底マークに遭う。
 先手を取られたくない相模原は集中していた。

 
 水野はこの試合でも先発フル出場。
 なんと鈴木啓太(浦和)は従兄にあたるらしい。

 状況は一瞬で変わった。Y.S.C.C.の攻勢をかわし続けていた相模原は、31分に自陣で相手のミスから水野がボールを奪うと、一気に前線へロングパス。これに走り込んだFW齋藤が相手DFのマークをかわしてゴールへ突進。GKとの1対1を冷静に流し込んだ。

 
 先制点のきっかけはこの水野のロングパス。

 
 
 
 
 
 まさに“ゴールハンター”齋藤将基。
 チャンスを逃さない決定力は突出している。

 矢継ぎ早に相模原は追加点を奪取。これもまた相手のミスからボールを奪うと、坂井がドリブルして森谷へ。森谷は頭で豪快に決め、これまでの劣勢が嘘のように、瞬時に2点のリードを得たのだった。

 
 瞬時に森谷が加点した相模原。
 一瞬の爆発力は凄まじい。
 
 こうなると、続けて追加点を…という訳にはいかない相模原。それもそのはず、昨日はHOYOに2点のリードを振り出しに戻されてPK戦へ。実質勝点を1ポイント損失してしまった。その辛酸を舐めたこともあってか、この試合での相模原の徹底した守備実践はその90分勝利への執念を感じさせるものだった。その証が公式記録にも見られる後半のシュート1本という数字。これは終了間際の金澤の3点目を決めたシュート1本のみ。総合力で相模原が熟成していることを感じさせた。

 
 相模原はリードしてから必至の守備。
 GK佐藤を中心に守り続ける。

 後半もY.S.C.C.は攻め続けるが、相模原の深い守備の前に最後まで沈黙。最後まで良い形で相手エリア付近でボールを回せなかった。特に辻だけしか安定したチャンスメイカーがいなかったように思える。ベンチの石川、そして昨日途中出場で良い動きを見せていた青田は出番なし。この試合でカードを1枚しか切らなかった点も非常に不可思議な点ではあったが、何よりもスタートから昨日のメンバーが並ばなかったことが悔やまれるだろう。結果的に終了間際の90+4分に相模原・金澤が加点して3-0で試合は終わった。

 
 ジエゴ・カンポスはわずか7分で交代される羽目に。
 さすがに交代直後は監督に叱咤されて、しょんぼりしていた。

 “三度目の正直”をこの大事な舞台で達成し、Y.S.C.C.を倒した相模原。しかし、1次ラウンドを1位突破できる可能性のあるチームはこれで山口以外の3チームに。勝点5ポイントの相模原から1ポイント差順で、HOYO、Y.S.C.C.という順番となった。

 運命の最終日、1次ラウンドを突破するのはどのチームになるだろうか。 

レノファ、痛恨の敗戦 -HOYO VS 山口-

2010年11月22日 | 脚で語る地域リーグ
 第34回全国地域リーグ決勝大会は2日目に突入。Aグループのひたちなか市総合運動公園陸上競技場では、第1試合に九州リーグ王者のHOYO Atletico ELANと中国リーグ王者のレノファ山口が対戦。昨日、90分負けを喫した山口は、1次ラウンド突破のために何としてでも勝利したいところだったが、終了間際にHOYOに決勝点を許し、0-1で敗戦。これで山口は1次ラウンド敗退が決定。JFL昇格のチャンス獲得は来季以降へと持ち越された。対するHOYOは貴重な90分勝利。第2試合の結果によって、1次ラウンド突破も狙える結果に。昨季まで大分県リーグに位置したチームが全国の舞台で旋風を巻き起こしている。

 

 昨日、共に敗戦を喫した両チームだが、その意味合いは違う。HOYOはPK戦負けということもあり、勝点1ポイントを獲得しており、対して山口は0ポイント。一昨年のこの大会で決勝ラウンドまで進出した彼らがこの試合でなりふり構わず点を取りに来るのは当然のこと。試合開始から山口は果敢にHOYOゴールを目指した。14分にはゴール前で鈴木が落としたボールを福原がシュート。15分には戸高がエリア手前からミドルを狙う。

 
 山口は田村(左)や戸高(右)が中盤でボールを繋ぐ。
 HOYOの高い守備意識の前にゴールへ迫るのは至難。

 
 最終ラインで気を吐いたプレーを見せた伊藤。
 かつて安田理や平井らとG大阪のトップ昇格したユース組。

 
 HOYOはゲームキャプテンの生口が積極的にボールに絡む。
 小柄だが技術は確か。

 20分過ぎからHOYOも徐々にリズムが出てくる。チャンスの起点は昨日も2得点と大活躍だったFW堀。21分には鮮やかなスルーパスで、昨日2アシストの渡邊のシュートをお膳立て。24分には相手のクリアのこぼれ球をMF中島がシュートするものの惜しくもサイドネット。前半、わずかながらに掴む攻撃のチャンスには昨日の2得点を演出した堀と渡邊の連携が効いている様子だった。
 しかしながら、1点を目指して山口はHOYOを交わしながら攻め続ける。26分には中川のパスに左から走り込んだ田村がクロス気味のシュートを放つがわずかにバーの上。33分に放った鈴木のボレーシュートは相手GKにセーブされ、42分には碇野、44分には中川が決定的な場面を決められない。結局、山口は前半のうちに先手を取れず、スコアレスで後半へ折り返す。

 
 山口のチャンスをHOYOの守護神・野寺が阻む。

 
 右サイドバックとして攻撃参加でチャンスを作る碇野。

 
 前がかりになる山口の前線にはDF田中の壁が。
 空中戦に強く、体を張ったインターセプトも冴えた。

 山口はサポーターが決死の応援。平日にも関わらずひたちなかに残留した20名程のサポーターがハーフタイム中も絶えず応援チャントを歌い続けたのだった。この光景はこの大会に懸けるチームとサポーターの思いを投影していた。しかし、後半に入ると、前半我慢の時間を強いられたHOYOが盛り返す。山口は前半と打って変って劣勢を強いられた。

 
 田中だけではなく、清永の存在もHOYOには大きかった。
 センターバックとして最後尾でチームを統率。

 
 献身的なプレスに機を見たドリブル突破。
 HOYOは本田から攻守の切り替えが始まる。

 立て続けに決定機を量産するHOYO。62分に堀の直接FKが相手GKにかろうじて防がれると、その3分後には堀自身が突破してシュート。これも相手GKに防がれたが、HOYOの攻勢はいつ先制点を奪ってもおかしくないものだった。

 
 HOYOは65分に堀が定機的な場面を迎える。
 相手を背後に背負いながらでも易々とドリブルで突破する。

 
 我慢の時間帯…
 前線にボールを運ぶべく福原がロングパス。

 
 少しのミスも許されない緊迫したムードがピッチに張り詰める。
 まさにナイスゲーム。

 攻勢に転じながらも山口GK西川の活躍もあって1点が遠いHOYO。効果的に交代選手で新陳代謝を図りながら、ボールを回し続ける。次第に切り替えが速くなってきた試合。72分にHOYOが華麗にダイレクトパスで山口守備陣を突破、最後は中島がわずかにシュートを左に外してしまったが、この場面で既に山口の集中が切れかかっていたようにも思えた。そして、85分、原がドリブルで相手陣内へ持ち込むと、右サイドに走り込んだ古賀へパス。古賀は相手DF2人に囲まれてコースが切られたかと思ったが、素早くシュートを放った。これがHOYOの決勝点となる。この試合、最初で最後のゴールだった。

 
 
 
 
 
 原のパスを受けた古賀が右45度の角度から決める。
 喉から手が出るほど欲しかった得点はHOYOヘ。

 結局、この古賀の得点が決勝点となってHOYOが90分勝利。ポイントを4に増やした。第2試合の結果、そして最終日の結果次第では1次ラウンド突破も見えてきた。
 対する山口は2試合連続無得点でまさかの1次ラウンド敗退が決定。前半の勢いが後半へ続かず、後手に回ってしまったといえる。ハーフタイムを返上で歌い続けたサポーターの願いは叶わなかった。

 
 残酷ながらもこれが“地域決勝”の怖さ。
 石垣島の借りを今季返すことはできなかった。

 山口はあとわずかゴールに届かなかった。そして、結果を引き寄せられなかった。しかし、2日間声援を送り続けたサポーターの応援は圧巻されるものがあり、忘れ難い光景だった。まだ最終日がある。きっと最終日もサポーターは彼らに声援を送り続けるだろう。彼らが走り続ける限り。

関東覇者強し -山口 VS Y.S.C.C.-

2010年11月21日 | 脚で語る地域リーグ
 ひたちなか1日目の第2試合は、中国リーグを制したレノファ山口FCと関東リーグを制したY.S.C.C.(横浜スポーツ&カルチャークラブ)の対戦。終始試合をリードしたY.S.C.C.が3-0で勝利し、昨季決勝ラウンド進出の強さを改めて誇示した。

 

 この大会への出場5度目となる山口は、50名ほどのサポーターがひたちなかへ応援に駆けつけた。試合前から「絶対昇格」とコールを送る。一方のY.S.C.C.も子供たちを中心に50名を超えるかという大応援団がエールを送った。

 試合は序盤からY.S.C.C.が果敢に仕掛ける展開。福井、辻と昨季から不動の強力2トップに、サイドMFの石川、小笹がこれに波状的に絡む。20分までにこの2トップは5本のシュートを放って山口ゴールに迫った。対する山口もゴールへと向かうが、良い形でボックスにボールが収束しない。19分には田村のCKからDF伊藤がヘディングシュートを放つがゴールならず。Y.S.C.C.の主将・鈴木を中心とした守備を崩せない。

 
 MF福原を軸に先制点が欲しい山口。
 しかし、最後の局面でボールが繋がらない。

 
 昨季のアルウィンでもインパクトを残したFW辻。
 この試合、シュートを1人で5本放って気を吐いた。

 37分、カウンター気味に鮮やかな展開で先制点を奪ったのはY.S.C.C.だった。右MFの小笹が辻に繋ぐと更に逆サイドは張っていた福井へ。福井が右足でシュートを決める。

 
 
 
 
 
 気合いの咆哮で喜びを爆発させるFW福井。
 JFL昇格を目指し、昨季の悔しさを晴らす第一歩。

 1-0とY.S.C.C.リードで折り返した試合は後半へ。ここからしばらく試合は拮抗する。ビハインドを被っている山口としては何としてでも1点を返したいところだったが、シュートまで辿り着けない。リードしたY.S.C.C.はしっかり中盤から守備を固めていった。

 
 黒子役としてサイドからチャンスを作るMF石川。
 長身ながら足下の技術は高い。

 
 最後尾にはDF鈴木という柱がそびえ立つY.S.C.C.。
 山口はここを突破できない。

 1点のリードでは何が起きてもおかしくないことは1試合目を見ても明らか。しかし、山口を完全に抑えたY.S.C.C.は山口の運動量低下を狙って、追加点を狙ってきた。65分に小笹が決定的なチャンスを逸すると、70分には辻のパスを受けたDF寺田がエリア内へ切り込んでシュート。79分には石川が頭で落としたところに辻がシュートするなど、後半の20分を過ぎてからY.S.C.C.が再び攻勢に。すると、80分に小笹が65分の汚名返上ともいえるシュートを決めて2点差に。試合終了間際のアディショナルタイムには交代出場の小澤、青田というコンビから3点目を加えて試合を終えた。

 
 機を見てシュートも狙うMF土屋。
 最後まで攻め続けたY.S.C.C.の攻守の核。

 
 
 
 80分、辻のアシストから小笹がゴール。
 スペースを見つけるのが上手い選手だ。

 好調な滑り出しで改めてその強さを見せつけたY.S.C.C.。昨季は決勝ラウンド進出を果たしながらも、結果的には唯一JFLの切符を手にすることができなかった。1年を経て、今季の関東リーグでは2位・さいたまSCに10ポイント差をつけて優勝を果たした。更に完成度を増したチームでこの大会に臨んでいることが良く分かる試合だった。明日は相模原との神奈川勢対決。ここまでの直接対決では2戦2勝と相性は抜群の様子。このグループの行方を占う好試合になりそうだ。ひとう不安点を挙げるならば、先制点を挙げたFW福井が足を痛めており、交代後もひきずっている様子が痛々しかった。また、平日のということで多少のメンバー編成に影響が出るのかという点も見逃せない。
 対して厳しいスタートになった山口。現実的には唯一初日を終えて勝点を得られなかったということになるが、その意味では明日は必勝。攻撃陣に元気が無いのが気がかりながら、しっかり90分でHOYOから勝利を得たいところだ。

勝点1ポイントの重み -HOYO VS 相模原-

2010年11月21日 | 脚で語る地域リーグ
 第34回全国地域リーグ決勝大会が全国3会場にて開幕。Aグループのひたちなか会場では、第1試合で九州リーグの今季の王者であるHOYO Atletico ELANと神奈川県リーグからJFA優遇枠で一気にJFLへステップアップを目指すS.C.相模原が対戦。いきなり見応えのある乱打戦を見せてくれた両チーム。試合は2-2のまま、90分間で決着がつかず、PK戦へ突入すると、相模原が6-5でなんとかHOYOを振り切った。

 

 快晴のひたちなか市総合運動公園陸上競技場。10月の全社を遥かに超えるサポーターが集まり、JFL昇格を一気に狙う相模原陣営は気合い十分。HOYOも負けじと数人のサポーターが遥々ひたちなかまで駆けつけた。しかしながら、どうそれ意外の観客の多さとその盛り上がりを助長する要素がありそうだった。それもそのはず、ひたちなかと目と鼻の先、水戸市を本拠地とする水戸ホーリーホックにかつて所属していた選手(相模原 DF金澤、HOYO FW堀)がこの両チームの選手にいたのである。そのスタンドの声援は試合の展開に火を着けたのではないだろうか。試合はそう言わんばかりの白熱の展開を迎えた。

 
 相模原MFの水野は柏でプレーする水野晃樹の兄。
 サイドからチャンスを作った。

 
 HOYOの左サイドバック長谷川。
 Jでもプレー経験のあるそのプレーでチームを牽引。

 前半から相模原が堅実に繋いでHOYOを地力でリードする試合展開。しかし、押されるHOYOも徐々に盛り返していく。MF本田、MF堤の守備的MF2枚を中心にしっかり相模原のパスに対してチェックを仕掛ける。27分に相模原はDF井上が接触プレーで負傷交代を余儀なくされ、アップも程々に鈴木隼を投入する相模原だった。

 
 
 35分、途中出場の相模原MF鈴木隼がシュート。
 これは惜しくもバーの上に外れる。

 試合が動いたのは前半終了間際の45+1分、相模原が先制点を挙げる。富井のクロスを相手GKが弾いたところに坂井が詰めており、巧くコントロールしてゴールに流し込む。前半のうちに欲しかった先制点を得て相模原優位で前半を折り返した。

 
 
 
 落ち着いて先制点を決めた相模原MF坂井。
 相手GKのミスを逃さなかった。

 後半に入ると、試合が落ち着く前にFW齋藤が追加点を挙げて相模原がリードを広げる。この試合、駆けつけた水戸サポーターの熱視線を受ける金澤が、まずはその齋藤の得点をお膳立てするアシストで仕事をしてみせた。

 
 
 
 後半開始直後、相模原のエース齋藤が追加点。
 完全に相模原が試合の展開を掴んだに見えたが。

 リードされたHOYOだったが、ここでしっかりとチームが動いた。62分に生口に代わって渡邊、そして68分には堤に代えて岩本を投入。サイドから渡邊がチャンスを作るようになると、70分にその渡邊のクロスからFW堀が1点を返すことに成功。スタンドから大きな声援が巻き起こる。ここまで相模原の守備の前にほとんど前線を封じられていたHOYOが一気に活力を帯びた瞬間だった。

 
 
 
 ほとんどシュートを打てていなかったHOYO。
 気迫の1点はこちらもチームのエースである堀。

 しかし、スコアはまだ2-1で相模原がリード。一気に相模原が試合を決しようと、猛烈な攻勢を仕掛けた。ジエゴ・カンポスを途中投入した相模原は71分、72分と立て続けに決定機を作り出す。その度にHOYOの味方になったのはゴールバーとポスト。相模原のリードが広がってもおかしくない試合展開だったが、運をも味方につけてなんとかHOYOは我慢の時間帯を凌いだ。

 83分には古賀に代えてかつて名古屋で活躍した鴨川を投入するHOYO。対して相模原もクローザーとして終了間際に今季チームの監督(今大会では望月重良代表が監督を兼任)を務めていた秋葉がピッチへ送り込まれる。しかし、試合が動いたのは自陣エリア左サイドでのこのベテランのボール処理ミスからだった。アディショナルタイムに入ってすぐ、人数をかけて攻め込むHOYOの選手たちから秋葉がボールをカットするものの、それを拾ったのはHOYOの1点目を演出したレフトサイダーの渡邊。渡邊はボールを拾うと、少しドリブルを仕掛けてエリア内へ折り返した。そこに待っていたのは再び堀。彼が頭で決めてHOYOが劇的な同点劇を演じたのだった。

 
 
 
 2点目は頭で決めたHOYOのエース堀。
 これで試合を振り出しに。

 90分で決着がつかずに即座に試合はPK戦へ。スタンドには金澤VS堀のマッチアップを観に来た水戸サポーターがHOYOへ大きな声援を送る光景。6人目まで突入したPK戦では、HOYOの本田が外したのに対して、相模原は全員が決めて6-5で勝利を手にした。

 
 HOYO6人目の本田が痛恨の失敗。
 試合では中盤の底で良いプレーを見せていたのだが。

 
 何とかPK勝利で勝点2ポイントを掴んだ相模原。
 ラスト数分で逃した1ポイントが明日以降どう響くか。

 これで相模原は勝点2ポイント、敗色濃厚だったHOYOは1ポイントを得ることに。このPK戦の勝敗で分かれた勝点1ポイントが2日目以降にどう影響するだろうか。しかしながら、2点を追い上げたHOYOの実力はこの大会に出るチームとして立派に証明されただろう。昨季まで県リーグのチームだったとは思えない。このグループのキーとなりそうだ。

死闘の3日間第1ラウンド開幕

2010年11月20日 | 脚で語る地域リーグ
 いよいよ今季もこの季節がやってきた。アマチュア全国リーグJFLを目指して、各地域リーグの王者、そして全社(全国社会人選手権)において出場権利を勝ち取った計12チームが明日からの全国地域リーグ決勝大会に臨む。これまでの16チームから一気に12チームに削減され、この大会に集うのはどれも強豪チームばかり。例年以上に非常に混戦の予想される大会になりそうだ。

 今年で34回を迎える全国地域リーグ決勝大会。1次ラウンドは茨城・ひたちなか、静岡・藤枝、高知・春野の全国3会場で行われる。それぞれのグループリーグの顔ぶれ及び組み合わせは下記の通り。大会独自のルールなどはこちらの素晴らしいプレビューを参考に。

<Aグループ>(茨城・ひたちなか)
・HOYO Atletico ELAN (九州1位)
・S.C.相模原 (JFA優遇枠)
・レノファ山口FC (中国1位)
・Y.S.C.C. (関東1位)

11/21(日)
HOYO Atletico ELAN - S.C.相模原 (10:45)
レノファ山口FC - Y.S.C.C. (13:30)

11/22(月)
HOYO Atletico ELAN - レノファ山口FC (10:45)
S.C.相模原 - Y.S.C.C. (13:30)

11/23(火)
HOYO Atletico ELAN - Y.S.C.C. (10:45)
S.C.相模原 - レノファ山口FC (13:30)

 Aグループは10月に山口で行われた全社で旋風を巻き起こしたS.C.相模原を中心に熱戦が繰り広げられそう。ここに同地域ながら、直接対決で相模原に負けていないY.S.C.C.と一昨年のこの大会でセンセーショナルな戦いを披露したレノファ山口が対抗馬として立ちはだかる。九州リーグ昇格1年目で優勝をかっさらったHOYOも侮れない。

<Bグループ>(静岡・藤枝)
・shizuoka.藤枝MYFC (東海1位)
・グルージャ盛岡 (東北1位)
・三洋電機洲本 (関西1位)
・札大GP (北海道1位)

11/21(日)
shizuoka.藤枝MYFC - グルージャ盛岡 (10:45)
三洋電機洲本 - 札大GP (13:30)

11/22(月)
shizuoka.藤枝MYFC - 三洋電機洲本 (10:45)
グルージャ盛岡 - 札大GP (13:30)

11/23(火)
shizuoka.藤枝MYFC - 札大GP (10:45)
グルージャ盛岡 - 三洋電機洲本 (13:30)

 Bグループも東海王者のshizuoka.藤枝MYFCと東北王者のグルージャ盛岡が凌ぎを削る展開になりそう。関西王者として参戦する三洋電機洲本はなかなか優勝を決められなかったリーグ終盤の不調ぶりが尾を引いていないか心配。昨季のツエーゲン金沢(現:JFL)と演じたような激戦を今季も演じて大いに盛り上げてもらいたいところだ。学生主体の札大GPは厳しい組み分けか。

<Cグループ>(高知・春野)
・福島ユナイテッドFC (全社枠)
・カマタマーレ讃岐 (四国1位)
・AC長野パルセイロ (北信越1位)
・さいたまSC (関東2位)

11/21(日)
福島ユナイテッドFC - カマタマーレ讃岐 (10:45)
AC長野パルセイロ - さいたまSC (13:30)

11/22(月)
福島ユナイテッドFC - AC長野パルセイロ (10:45)
カマタマーレ讃岐 - さいたまSC (13:30)

11/23(火)
福島ユナイテッドFC - さいたまSC (10:45)
カマタマーレ讃岐 - AC長野パルセイロ (13:30)

 将来のJリーグ入りを目指す各地域リーグ屈指の強豪が顔を揃えた死のグループとなったC。全社を無失点で優勝したカマタマーレ讃岐とこの大会を知り尽くしているAC長野パルセイロとのデッドヒートになりそう。しかし、この2チームに加えて全社で準決勝まで勝ち進んでいる福島ユナイテッドFCも本命から外し難い魅惑の顔ぶれ。関東リーグ2位のさいたまSCは思いがけない形で繰り上げ出場を掴んだが、是非決勝ラウンドを目指すつもりで、このグループを掻き回して欲しいところ。

 大会は各グループ1位の3チームと全グループの2位チーム中の最上位の1チーム、計4チームが12/3(金)から始まる3日間の決勝ラウンドでJFL昇格を懸けて改めて戦うことになる。

飛び級は無用、これが相模原 -トヨタ蹴球団VS相模原-

2010年10月19日 | 脚で語る地域リーグ
 おのだサッカー交流公園サッカー場の第2試合は、注目を集めるS.C.相模原(神奈川県1部)がトヨタ蹴球団(東海2部)と対戦。J準加盟を承認された神奈川県リーグのチームながらその実力をいかんなく発揮。3-0でトヨタを圧倒してベスト4に進出を果たした。

 

 序盤こそトヨタが若さを生かして攻勢に出たが、シュートを2本ほど放つと徐々に相模原のペースに。経験を積んだ元Jリーガーも多数揃える相模原はパスワークで揺さぶりをかけてトヨタのスタミナを奪っていった。

 
 中盤で時に鋭いドリブルを見せるMF吉岡。
 22分には見事なスルーパスで齋藤の先制点をお膳立て。

 
 トヨタも若干18歳のMF田村直を起点に積極的に攻めようとする。

 
 トヨタの司令塔・鈴木と相模原のDF金澤が競り合う。
 鈴木は惜しいFKが1本あったがバーに嫌われた。

 トヨタを凌駕する相模原のペース。22分には吉岡のスルーパスにFW齋藤が先制ゴール。3試合連続となるエースの得点で勢いを増した相模原は後半の開始早々にも森谷のパスに抜け出した齋藤がシュートを決める。1対1は確実に決める経験豊富な点取り屋の大会通算4得点目でほぼ勝負は決した。

 
 この大会初の先発出場となったFW森谷。
 このプレーで鮮やかに齋藤の得点場面を作った。

 
 
 
 「俺は決めるだけ」と言わんばかりの得点力。
 マーティンこと齋藤将基、このカテゴリーでは規格外。

 終了間際のアディショナルタイムには坂井が見事なシュートを決めてダメ押しの3点目。相模原が攻守ともに安定した快勝劇でベスト4を決めることとなった。

 
 坂井はかつて横浜FCでプレー。
 終了間際に名刺代わりの鮮やかな1発。

 
 勝利へのクローザーは俺だ。
 秋葉監督自身が64分に登場。坂井の得点も呼び込んだ。

 
 
 S.C.相模原恐るべし。
 ベスト4進出でその力を十分アピール。

 平日にも関わらず、この試合を応援して見守ったサポーターの数は相模原が最も多かった。サッカー場のフェンスを彼らの応援横断幕が埋め尽くした。それはもちろん彼らがJリーグ参入することへの期待の現れだろう。それに呼応するように、ここまで3試合で10得点0失点とその力を余すところなく発揮している。既に優遇措置で地域決勝への切符は取得済みだったが、改めて実力でこの全社枠扱いをもぎ取れる位置まで勝ち進んできた。準決勝の相手は福島ユナイテッドFC。この3日間で対峙してきたどのチームより手強い。どんな戦いぶりを見せるのだろうか。もはや優勝を狙っているであろうことは言うまでもなさそうだ。

 また、この準々決勝の結果、カマタマーレ讃岐、S.C.相模原、福島ユナイテッドFC、AC長野パルセイロというベスト4のうち3チームが地域決勝進出の権利を持っているために、その権利を持っていなかった福島ユナイテッドFCの地域決勝進出が決定。合わせて追加で関東1部リーグで2位のさいたまSCに地域決勝進出の枠が与えられることになる。しかし、この大会の優勝を狙って引き続きベスト4の全チームにはファイトしてもらいたい。
 昨年に続く現地観戦3日間で非常に刺激的な7試合を観ることができた。そのレベルはどのチームもやはりこの大会に出場するだけのことはある。仮に奈良クラブが出場していたとして…どこまで勝ち進めただろうか。来年の全社は岐阜開催。必ずそこで戦っていることを夢想しながら、残りの2日間の結果をこちらで引き続き受け取りたい。

前橋、讃岐の壁崩せず -前橋VS讃岐-

2010年10月19日 | 脚で語る地域リーグ
 第46回全国社会人サッカー選手権大会は3日目の準々決勝に突入。会場の一つであるおのだサッカー交流公園サッカー場では、第1試合でtonan前橋とカマタマーレ讃岐の試合が行われ、2-0でカマタマーレ讃岐が勝利。19日に行われる準決勝への進出を決めた。

 

 前橋は1回戦、2回戦共に延長戦を戦い抜き、前日のデッツォーラ島根戦は辛くもPK戦を制しての勝利。2日で200分を戦い抜いた疲労が彼らを襲う。しかし、3日連続で試合の臨んでいるのは讃岐も同じ。しっかり守りから固める讃岐は前橋の攻撃を寄せつけず、焦ることなく自分たちのチャンスを狙い続けた。

 
 前橋はMFマルキーニョが先発出場。
 彼からのボール配給で前線は相手の裏を狙いたかったが…

 
 マルキーニョが負傷のアクシデント。
 代わりに22分に渋谷が投入される。

 
 
 身長差は24cmというマッチアップ。
 讃岐DF波夛野の前に前橋FW小川が仕事できず。

 
 讃岐は相原が左サイドバックで先発出場。
 堅実なプレーで勝利に貢献。

 両チームなかなか決定機を迎えることができずにスコアレスで前半を折り返すことになった。ほとんどシュートの打てない前橋。前線では小川がひたすら讃岐DF陣にブロックされて突破のチャンスを与えられない。疲れが散見される前橋の攻撃に讃岐の守備はほぼパーフェクトの出来を見せる。

 
 DF山本が攻撃参加。
 前橋は前半でシュート1本、後半は1本もシュートを打てなかった…

 
 FW小川の突破を讃岐DF神崎が阻む。
 屈強な讃岐の守備の前に前橋は苦しい時間帯が続いた。

 流れは次第に讃岐へ。51分綱田がフワリとクロスを入れると前線で張っていた岡本が頭で合わせて先制点を挙げる。良い時間帯に先制点を得た讃岐がほぼ打開策の見出せない前橋をあとはどう抑え込むかという展開になりつつあった。

 
 
 綱田の折り返しに岡本が頭で決めて讃岐が先制。

 
 前橋は最終ラインから主将・氏家がチームを叱咤し続ける。
 ロングフィードをとにかく入れて前線にボールを送ろうとした。

 
 中盤では山田が讃岐のカウンターに手を焼いた。

 75分には前橋の渋谷が退場処分になり、シュートの打てない前橋にとっては弱り目に祟り目。終了間際のアディショナルタイムには吉澤が3試合連続となるゴールを鮮やかなミドルで決めて試合を決めた。前橋は万事休す、ベスト4の道のりは途絶えることとなった。

 
 75分、渋谷が2枚目の警告で退場処分。
 ドリブラーを欠くことに。

 
 吉澤は3試合連続ゴールと好調。
 守備にも汗をかいてチームを引っ張った。

 前橋の疲労が著しく垣間見えた試合。讃岐にとってはスコア以上の完勝となった。この大会まだ失点を許していない守備陣の屈強さは目を光る。果たしてこの堅守をベースにこの大会を制することができるだろうか。四国リーグの雄が本当の意味で全国レベルかということを試されるのはこれからだ。
 

讃岐、スコア以上の完勝 -讃岐VSアイン-

2010年10月18日 | 脚で語る地域リーグ
 続いて乃木浜A会場では四国リーグを制したカマタマーレ讃岐が関西リーグ2位のアイン食品と対戦。既に地域決勝進出の権利を有する讃岐だが、しっかりと相手を完封して1-0の完勝。追加点こそ遠かったが吉澤が挙げた1点を守り切って準々決勝進出を果たした。

 

 前日の1回戦では九州リーグのヴォルカ鹿児島を5-0と一蹴した讃岐。先日の四国リーグで優勝を果たした讃岐は地域決勝へのデモンストレーションも兼ねてこの大会を戦っているだろう。四国リーグだけではなかなか全国レベル相応のチームと対戦ができない。権利に関係なくこの大会ではベストを尽くしてくるというような試合だった。
 対してアインは、今季リーグで2位という戦績を収めたがやはり全国レベルは厳しいかと予想される中で讃岐との戦いは改めて自分たちの立ち位置を再確認できたのではないだろうか。試合前には社員による30名ほどの応援団がスタンドに駆けつけ、讃岐サポーターに負けじと個性的なセルフスタメン紹介やチャントを歌ってスタンドを盛り上げていた。

 
 23分に見事なミドルシュートでネットを揺らした吉澤。
 2試合連続得点でサポーターを沸かした。

 
 讃岐において効いていた飯塚の存在。
 町田から期限付きで加入している。

 讃岐が試合のペースを握るが、アインの攻撃を封じる上で効いていたのはDF波夛野の存在。前半からアインのハイボールを187cmの長身を生かしてことごとく阻んでいく。180cm以上の選手が最終ラインにいない讃岐にとって三菱水島から今季加入したハイタワーはかなりプラスになっていることが実感できた。

 
 まずは守りが固い讃岐の戦いぶり。
 DF波夛野がエアバトルを制圧。

 
 かつての関西リーグMVP神崎も健在。
 簡単に相手には負けない。

 MF鈴木を中心としたカウンターを軸に讃岐に迫りたいアインだったが、なかなかシュートチャンスを与えてもらえない。なんと前半はノーチャンス、シュート0本に終わってしまう。

 
 かつては松本山雅でもプレーしたアインMF鈴木。
 讃岐の堅守をこじ開けようと奮闘するが…

 
 ドリブルで攻め込むMF吉居。
 今季のリーグでは全試合出場、08年にはベストイレブンも。

 23分に吉澤がエリア手前でボールを受けると狙い澄ましたミドルシュート。これが右隅に決まって讃岐がリードを奪った。しかしながらその後は追加点が欲しいところだったにも関わらず拙攻が響いたか無得点。アインがほとんどシュートに持ち込めなかったこともあって苦しい展開ではなく、「省エネ」とも捉えられるかもしれない。もう少しレベルの高いチームと戦うとどうなるか注目。その意味では準々決勝で前橋と当たるのは適当かもしれない。

 
 前半のうちから途中出場で加わった朝比奈。
 何度か決定機があったが2試合連続得点とはいかず。

 
 機を見た攻撃参加をするDF下松は代えが効かない。
 余計な警告をもらったこともあり途中交代。

 
 讃岐は中島が中盤の底をケア。
 横河武蔵野から今季加入した守備的MF。

 アインが攻めあぐねる姿を見ていると、昨日福島Uの前に惨敗を喫した三洋洲本の姿も浮かぶ。なかなか全国大会で結果の残せない関西勢。この試合の裏では山口市会場でラランジャ京都がJFL昇格候補のパルセイロ長野に延長戦まで持ち込む健闘ぶりを見せたが惜敗。2回戦を終えて残っているのはこの日SC鳥取ドリームスに快勝した班阪南大クラブのみとなってしまった。準々決勝はその三洋洲本が0-6で敗れた福島U。かなり苦しい戦いを強いられそうだ。まだこの舞台で結果を出すことは奈良クラブにも厳しい壁だということだ。

 この試合を制した讃岐を含めて準々決勝に進出の8チームが決定。準々決勝の組み合わせは下記のとおりとなる。
 tonan前橋 - カマタマーレ讃岐
 トヨタ蹴球団 - S.C.相模原
 福島ユナイテッドFC - 阪南大クラブ
 新日鐵大分サッカー部 - AC長野パルセイロ

 地域決勝出場権を既に持っているのは讃岐と相模原、そして長野の3チーム。つまりこの3チームがベスト4に勝ち残れば、必然的に決勝戦は地域決勝出場権を持つチーム同士の対戦となり、全社枠の1つが関東リーグ2位のさいたまSCに地域決勝出場権として回されるということになりそうだ。あと3日。果たしてどんな展開になっていくのだろうか。 

100分間待ったなし -前橋VS松江-

2010年10月18日 | 脚で語る地域リーグ
 第46回全国社会人サッカー選手権大会は2日目を迎えて2回戦へ突入。下関市乃木浜総合公園多目的グラウンドA会場では11時キックオフにてtonan前橋(関東1部)とヴォラドール松江(中国)の試合が行われた。

 

 前半から優勢に試合を進める前橋が14分にCKから主将・氏家のヘッドで先制すると、28分には松江DF吉岡がFKから頭で合わせて同点弾を呼び込む展開。1-1になってからの試合はまさに待ったなしのハイトランジションゲーム。結局80分間では決着がつかず延長戦までもつれ込み、1点ずつを取り合った後PK戦へ突入した試合は5-4で前橋が制することとなった。

 
 14分に先制点、97分にはPKで追加点。
 氏家の存在は名実共にチームの核だった。

 
 前橋に氏家あれば松江にはこの男あり。
 MF樋口は松江の攻撃を牽引した。

 前橋が攻め込んだかと思えば次の場面では松江が前橋陣内へ攻め込む。そんな場面の連続だった一瞬も目を離せない非常に面白い展開。息をもつかせぬ攻防戦は前橋の執念が実った試合だった。そのチームの執念をピッチで体現していたのが、かつてのU-20日本代表選手としてワールドユース準優勝を果たした前橋の主将・氏家だっただろう。
 昨季、この大会で決勝を戦った松本山雅と金沢が地域決勝進出を掴んだ陰で、前橋は3位という好成績を残している。Jリーグ入りを公言していることもあり、今季関東リーグで優勝できなかった前橋にとってはJFLに挑戦する権利を是非ともこの大会で獲得したいのだろう。その証拠に2得点もさることながら、ボールキープの際に味方に対して「フォローに来いよ!」と激しく叱咤する彼の姿はチームの今大会にかける意気込みを十分表現してくれていた。

 
 今季FC琉球から加入したDF林田。
 サイドからチームの攻撃をサポート。

 
 
 
 FKから松江が同点に追いついた28分の場面。
 樋口から吉岡というホットラインが光った。

 氏家に導かれる前橋の推進力もそうだが、もうひとつ試合を面白くしてくれたのは松江の善戦を最後尾で盛り立てたGK伊藤の存在。前半からファインセーブを連発する彼は、前橋に100分間で19本打たれたシュートの枠内分を抜群の反応でことごとく弾き出す。彼の好守で前橋は3点ないし4点は損をしたはずだ。

 
 樋口と共に攻守の切り替え役だったMF松本。
 69分には強烈なミドルでゴールバー強襲。

 
 前橋のドリブラー渋谷が疾走。
 60分にはシュートがポスト直撃の不運も。

 
 氏家と共に前橋の中盤を支えるMF山田。
 果敢にシュートも狙っていった。

 後半は双方ともにスコアレス、1-1で迎えた延長戦だったが、前日も100分の延長戦を戦った前橋にとっては運動量の減退が明らかだった。しかし松江もDF錦織を退場処分で欠く苦しい展開。本当によくPK戦まで粘ったといえる。

 
 松江はサイドバックの錦織が76分に退場処分。
 カウンター時に効いていただけにこれは痛かった。

 
 前日のFC鹿児島戦で決勝点を決めたFW関根。
 この試合では決勝点ならずもPK戦の1人目を務めた。

 
 
 延長前半、前橋のこのチャンスをGK伊藤がセーブ。
 会場から歓声が沸き返った。

 
 接戦を盛り上げた松江GK伊藤。
 安定したセービング力で堂々としたプレー。

 
 PK戦を制した前橋がなんとか準々決勝進出を決める。

 
 敗れた松江、立てないGK伊藤の姿が印象的。
 しかし、この経験を活かして更に飛躍しそう。

 
 スタンドには前日1回戦を戦ったサテライトの選手も。
 準々決勝はいよいよ強敵・讃岐が相手だ。

 前日の島根の奮闘、そしてこの日の松江の戦いぶり。島根県の2チームは初見ながら非常に心に残る印象深いチームとなった。濃厚な100分間待ったなしの戦い。少しこの2チームがここでマッチアップしたのがもったいなかったとも思ってしまった。

本命の前に洲本散る -福島UVS三洋洲本-

2010年10月17日 | 脚で語る地域リーグ
 矢崎VS盛岡が延長後半を迎える頃に、隣のコートではその盛岡に東北リーグで苦汁を舐めさせられた福島ユナイテッドFC(以下=福島U)と関西リーグ王者・三洋電機洲本の試合がスタート。試合は福島Uが終始試合を圧倒。6-0の大差をつけて2回戦進出を決めた。

 

 福島Uは、この大会に臨んでいるJリーグ参入を目指した地域リーグカテゴリーのクラブの中で地域決勝に進む権利を持っていないチームの一つ。同じカテゴリーではヴォルカ鹿児島がカマタマーレ讃岐に不甲斐なく破れ(0-5)、上を目指すクラブの「敗者復活戦」「地域決勝進出権利奪還」ともいえるこの大会の醍醐味が薄れるのではという心配をよそに1回戦から徹底的に本気を垣間見せた。何としてでもこの全社で2位以内を確保し、地域決勝に出場するという思いが感じられた。

 
 前半から三洋洲本を圧倒する福島U。
 MFキム・コンチョンを中心にボールを回しまくる。

 
 昨季の関西リーグDiv1でMVPに輝いた成瀬。
 シュートすら打てない厳しい戦いを強いられる。

 前半のうちにキム・コンチョンのPKによる先制点と時崎の2得点で3-0とリードする福島U。リードに関わらず常にボールを回し続けて三洋洲本を疲弊に追い込んだ。

 
 J2岡山から期限付き移籍中のMF小野。
 安定感抜群で福島Uの中盤の底をケア。

 
 成瀬と共に司令塔を務める三洋洲本MF村上。
 30分には相手のGKと1対1のチャンスを決められず。

 
 こちらも岡山から期限付き加入の金光。
 手塚監督のコネクションが生きている。

 後半に入って、運動量の落ちてきた三洋洲本相手にまだ攻撃の手を緩めない福島U。46分には交代直後のDF森戸が豪快に右足でシュートを決めると、58分にはMF伊藤が金光の折り返しに合わせて5点目。69分にはMF久野がダメ押しの6点目を加えて圧倒的大差で試合を決めた。

 
 関西リーグ屈指のクラッキ・沈も大苦戦。
 思うように攻撃を作ることができない。

 
 前半2得点のFW時崎塁。
 彼の突破に三洋洲本はついていけず。

 
 左MFの稲垣の攻撃参加で好機を狙う三洋洲本。
 しかしほとんど相手エリアで仕事ができず。

 
 決定的な場面を完全にシャットアウトしたGK清野。
 抜群の安定感が印象に残った。

 まさか関西王者の三洋洲本がここまでやられるとは。ショックな点差とその試合内容だった。仮に「負け抜け」を三洋洲本が考えたとしても、ここまでの試合をしてしまうだろうか。ましてや昨季の地域決勝1次ラウンドで金沢とあれだけの戦いぶりを披露したチームだったのだが。今季のリーグ戦で後半戦に失速著しかった三洋洲本の不調ぶりがこの全国の舞台でも露呈されてしまった形だ。一体どうしたのだろうか。

 
 福島Uの守備の前にボールをなかなか持ち込めない。
 攻守にありとあらゆる差が見えた試合。

 
 DFながら後半登場してすぐに1得点。
 森戸は負傷の清水の穴を十分すぎるほどカバー。

 
 来週からKSLカップが始まる前に厳しい現実…
 地域決勝までの再調整は図れるか。

 「地決進出権利なし」の福島Uが十分すぎる実力を披露して2回戦のヴェルフェたかはら那須との試合に駒を進めた。果たしてこの実力は本物なのか。疲労と緊迫感漂う2回戦以降に注目だ。「権利あり」の強豪クラブがひしめき合う中で、「本命は俺たちだ」と言わんばかりの勢いを感じさせてくれた福島Uだった。