脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

真冬の西日本一決定戦は雪との戦い

2011年02月11日 | 脚で語る地域リーグ
 この週末はかなり天気が下り坂。関西でもかなり雪が降るという天気予報だった。その証拠に非常に冷える3連休前の夜となり、翌日の積雪が心配された。Jリーグの開幕まではまだ1ヶ月あり、各クラブは国内外の温暖な場所でキャンプに余念がない。しかし、どのカテゴリーもおとなしいこの真冬の時期に、地域リーグのカテゴリーでは公式のコンペティションが開催される。西日本社会人サッカー大会だ。

 今年はJ-GREEN堺(堺NTC)で行われるこの大会。関西、中国、四国、九州の上位2チームの計8チームが2つのグループに分かれてノックアウト方式で対峙していく。勝者と敗者同士が最終的に優勝をはじめ各順位を決めていくという単純明快な大会。
 関西リーグからは三洋洲本、アイン食品、中国リーグからはレノファ山口、デッツォーラ島根、四国リーグからは今季よりJFLに挑戦するカマタマーレ讃岐、南国高知FC、九州リーグからはKyuリーグ昇格初年度からいきなり九州制覇を果たしたHOYO Atletico ELANとヴォルカ鹿児島という顔ぶれ。三洋洲本、山口、讃岐、HOYOは地域決勝を戦ったチームでもあり、その激闘の余韻と今年の新たな戦いへの試金石としても注目を集めて当然。しかも今年は会場が昨年完成したばかりの堺NTCともあってTwitterを見ている限りでも期待していた方々は多かったはずだ。

 ところが、1日目となるはずの11日は早朝から予報通りの雪。午前7時30分の段階で大阪府内の阪神高速が全線通行止めになるなど、関西のど真ん中では1年に1度あるかないかという積雪ぶり。躊躇しながらも開催を信じて会場に向かうと、到着早々Twitterで関西リーグのアカウントから中止の速報ツイートが流れてきた。下記の写真をご覧頂ければ中止となった会場の様子が良く分かるだろう。しかし、残念。

 
 本日2試合が行われる予定だったS1グラウンド。
 完全に雪化粧。中止措置には芝を守るための意向も。

 
 S2グラウンドでは雪の中、選手たちがボールを蹴る。
 試合が無くなって、トレーニングを始めるチームも。

 
 関西リーグ勢、三洋洲本はトレーニング開始。
 明日から入替戦の鬱憤を晴らしたい。

 選手の怪我やピッチコンディションを考慮した中止措置だったが、大会としては2008年以来の雪による中止で、明日以降の日程が変更を余儀なくされた。各日程がそのままスライドし、結局最終順位を決められぬままに大会は2日間で行われることに。明日以降第1試合は11:00キックオフ、第2試合は13:00キックオフに。S1グラウンドの試合はS3グラウンドへ変更となった。

 今季からJFLを戦う讃岐をはじめ、虎視眈々とその舞台を狙う山口や鹿児島、HOYOといったチーム陣に、今季再び奈良クラブがリーグで挑戦することになる三洋洲本、アインの戦いぶりもチェックしたいところ。何にせよ、地域リーグ勢の新たなシーズンが幕を開けようとしている。

和歌山、関西参戦へ -OKFC VS 和歌山-

2011年01月16日 | 脚で語る地域リーグ
 来季の関西リーグ昇格を懸けた関西府県リーグ決勝大会は15日に遂に決勝戦を迎え、大阪府1部リーグ2位のOKFCと和歌山県1部リーグ1位のアルテリーヴォ和歌山が対戦。和歌山が先制するものの、試合は後半終盤にOKFCが追いつき、1-1のままPK戦へ突入。4本目まで全員が決める展開で迎えた5本目。和歌山はGK宮本がOKFCの5人目のキックをセーブし、来季の関西1部リーグ自動昇格を決めた。

 

 寒空の長居第2陸上競技場。週末は非常に寒く天候も荒れるという予報だったが、何とか雨雪を堪えしのぐといった曇天の中で試合は行われた。1次ラウンドを1点差の厳しい試合ながら2連勝で準決勝まで進出したOKFC。昨年の暮れに行われた準決勝ではヤンマー尼崎に2-0で勝利。いよいよ関西リーグ昇格へあと1勝と迫った。一方、1次ラウンドの初戦をPK戦の末、ポルベニルカシハラに勝利した和歌山は、続く伏見蹴球会戦を4-2で勝利。順当に対峙することになったFC大阪との準決勝では、先制しながらも終了間際に追いつかれる展開でPK戦へ。しかし、このPK戦を4-1と制してしぶとく決勝戦まで駒を進めた。大阪在日コリアンで構成される大阪府社会人リーグきっての強豪チームか。将来のJリーグ参入を目指し、2007年の創設以来、地道に県3部リーグから毎年昇格を果たしてきた和歌山か。試合はおよそ400人はあろうかという観衆が見守る中で始まった。

 
 和歌山のDF森が相手選手に執拗な守備。
 負けられない、必勝態勢でぶつかり合う2チーム。

 試合は、前半から一進一退を譲らぬ攻防。しかし、前半の中盤あたりからOKFCから中央とサイドを効果的に使い分けながら攻勢に。24分には左の呉からの折り返しにFW中谷が体を反転させてシュート。これは惜しくも和歌山GK宮本のセーブに遭う。そして、26分にはDF金裕士がエリア手前から思い切りの良いシュートで和歌山を追い詰める。得点にこそ至らなかったが、OKFCの攻撃的なサッカーが目立った。

  
 OKFCの決定機。
 26分、DF金裕士が果敢にシュートを狙っていく。

 準決勝からFW芝崎とGK金丸を欠く布陣ながらも、代役であるGK宮本が好守を披露。加えて、負傷から帰還し、先発に名を連ねたFW上赤坂佳がチームを前線から牽引する和歌山。36分には大きな決定機を得る。右サイドを崩した重松の折り返しを船津がフリーでシュートに持ち込める場面。しかし、シュートをミートできず、戻ってきたDF池端のブロックにも阻まれGKの前に。これが決まっていれば和歌山はもう少し楽な展開に持っていけたという場面だった。

 
 
 和歌山の決定機。
 36分、船津がこの場面を決められず。

 
 ドリブルと的確なパスが印象的だったMF趙栄基。
 OKFCの攻撃を支える中心選手。

 0-0で折り返した後半、先制点は和歌山が奪取した。49分に上赤坂佳がゴール前で冷静さを発揮して巧みにシュートを流し込む。準決勝でも負傷を押しての途中出場し、チームの勝利を導くPK戦最後のキッカーを務めた。今季はリーグで全試合得点をマークしたエースが見せた大仕事。この1点は和歌山の勝利をグッと近づけたかに思えた。

 
 
 県3部時代からチームを支える大黒柱。
 今季リーグ17得点の上赤坂佳が先制点を決める。

 ビハインドを背負ったOKFCは攻撃的な選手を投入して前がかりにシフト。和歌山もこのままでは勝ち切るに不安があるのは否めない。準決勝でも1点差を守り切れず終了間際に追いつかれた。何とか自分たちの支配率を落とさず、追加点を狙っていきたいところだった。
 ところが、OKFCは粘りの攻撃で同点に追いつく。75分に和歌山のミスから相手エリア内までボールを運ぶと、ゴール前の混戦から途中出場の金元気がシュートを決めて同点に追いついた。和歌山はまたしても勝利を直前に試合を振り出しに引き戻される。

 
 金元気が同点弾を決めて沸き立つOKFCイレブン。
 
 そのまま80分間を終える両チーム。延長戦の無いこの大会、試合終了後に即PK戦という酷なレギュレーションだ。そして先攻の和歌山5人全員が決めて迎えたOKFCの5人目、趙尚熙のキックを和歌山GK宮本が見事セーブ。この瞬間、試合は決し、和歌山の関西リーグ自動昇格が決定した。

 
 3試合のPK戦を制して昇格を手にした和歌山。
 足掛け4年。いよいよ関西の舞台に。

 和歌山県勢の関西リーグ参戦は、2007年シーズンに紀北蹴球団が関西2部から和歌山県リーグへ降格して以来となる。しかも本格的に将来のJ参入を狙うチームだ。彼らの昇格で今季の関西リーグはかなり新鮮な風が吹きそう。その戦いぶりは注目。また、1部と2部の隔たりはあるとはいえ、毎年何度も練習試合でスパーリングする奈良クラブにとっても(練習試合での対戦成績はすこぶる悪い…)また大きなライバルチームが関西の舞台に登場したともいえるだろう。和歌山の皆さん、本当におめでとうございます。
 一方、OKFCは23日に西京極で13:00から行われる三菱重工神戸(関西2部7位)との入替戦に臨むこととなった。

三洋洲本、入替戦へ -三洋洲本 VS 讃岐-

2010年12月07日 | 脚で語る地域リーグ
 決勝ラウンド3日目の第2試合は、1日目にY.S.C.C.に勝利して勝点3ポイントを掴んでいる三洋電機洲本と、長野、Y.S.C.C.を撃破して勝点では5ポイントのカマタマーレ讃岐との対戦。1点を争う熾烈な展開となった試合は、後半にDF神崎のヘッドで1点をもぎ取った讃岐が1-0で勝利。見事にJFL昇格を決定させた。敗れた三洋洲本は自動昇格ならず。今季JFL17位のアルテ高崎との入替戦に回ることとなった。

 
 四国3番目のJクラブを目指して讃岐が最後の一戦に。
 サポーターもバックスタンドから声援を送る。

 本命・讃岐にどこまで立ち向かえるか。会場に訪れたほとんど観衆が三洋洲本の健闘に注目していたに違いない。1次ラウンドでは強豪と目されていたsizuoka.藤枝MYFCに0-2から5-2へと逆転勝利。決勝ラウンドに進んでからも初戦のY.S.C.C.戦で90分勝利を収めてしっかりと3ポイントを獲得している。2日目には長野に大敗を喫したが、この試合で90分勝利すれば、三洋洲本のJFL自動昇格が決まるのだ。その謎めいた調子の波は読めないところもあり、「もしかしたら彼らが」という部分はあったかもしれない。実際、試合はその三洋洲本が積極的に攻撃を仕掛けていった。

 前半から三洋洲本は飛ばしていった。4分にこの決勝ラウンドではいつも途中出場だったMF沈がシュートを放ってリズムを作る。23分にはCKからのこぼれ球をDF友定が豪快にミドルシュート。試合開始からほとんど前に出られなかった前日の長野戦とは打って変わって積極的。39分には森田のクロスに梅川が打点の高いヘッドで讃岐ゴール脅かすなど、あと少しという場面を幾度も作る。

 
 決勝ラウンドでは初先発となったMF沈。
 三洋洲本の攻撃をサイドから支えた。

 
 三洋洲本はエース梅川に良い形でボールが入る。
 関西リーグ得点王の意地を見せたい。

 
 中盤でゲームを作るのはMF村上。

 しかし、堅守が売りの讃岐を崩すのは至難。それどころか徐々に讃岐がペースを盛り返す。35分にゴール前まで攻め入ったDF相原の横パスにMF飯塚がシュートを狙えば、40分には攻撃的サイドバック下松の折り返しに大西がボレーシュートを放つなど、技術の高さと連携で三洋洲本ゴールに迫った。また、前日のY.S.C.C.戦がそうであったように、流れの中で崩せなくてもセットプレーで点を奪えるのが讃岐の特徴。前半からFKで下松がその巧みなキックでチャンスを作っていく。

 
 CKからチャンスを作る讃岐MF綱田。
 崩せずともセットプレーが讃岐にはある。

 
 守ってはDF太田を中心に讃岐を止める。

 
 下松のFKは讃岐の大きな武器。
 再三、これでゴールを脅かされる三洋洲本。

 梅川の奮起もあったが、積極的な攻撃が実らず、無得点で折り返した三洋洲本。44分には廣瀬のシュートがクロスバーを直撃しており、得点チャンスは存分にあった。できれば前半のうちに先制点を取っておきたかったところだが、ここであと一歩運が寄って来ないもどかしさ。しかしながら、メインスタンドを中心に讃岐サポーターに負けない応援エールが彼らには送られる。

 
 
 讃岐の守備の前にゴールをこじ開けられない。
 残すところは45分。

 後半に入っても序盤は、50分に成瀬のパスを受けた梅川のシュートがサイドネットを強襲するなど、三洋洲本が攻め入るかと思われた。しかし、ここから讃岐が反撃を開始。56分に飯塚の強烈なシュートがバーを直撃し、直後のCKから長身DF波夛野が得意のヘッドでゴールに迫る。瞬時に劣勢を強いられる三洋洲本。すると、遂に讃岐が58分、ペナルティエリア前左手からのFKをDF神崎が頭で合わせて先制点を奪取した。

 
 
 
 先制点を奪ったのは讃岐・DF神崎。
 かつて三洋洲本と同じ関西リーグで戦っていた選手。

 先制された三洋洲本は、直後に沈、廣瀬に代えて、稲垣、徳井を投入。76分にはボールキープに長けた井上を入れてリフレッシュさせるが、最後まで讃岐のゴールは割れない。讃岐もこの1点を何としてでも守り抜くといった気合いに溢れたプレー。アディショナルタイムを迎えたあたりで三洋洲本・GK浅野がCKになったボールを自分でコーナーポストに置きに走った場面は印象的だった。まさに1分1秒が惜しい状況。しかし、最後まで三洋洲本はゴールを割れなかった。

 
 三洋洲本・梅川の突破を神崎と下松が阻む。
 この2人はかつて加古川で共にプレー。

 
 GK家木も再三ハイボールに強さを見せた。

 
 神崎にとっては、加古川時代に何度も挑戦した舞台。
 夢破れたと思ったJFLの舞台まであと少し。

 
 激しさを増す試合は佳境に。

 
 常に相手には厄介な存在。
 無得点だったものの、吉澤は存在感があった。

 
 主将としてチームを支えた下松。
 J経験者ではないが、その経験は大きい。

 結果、1-0という最小得点差で讃岐が逃げ切って、この大会の優勝と共に来季のJFL昇格を決めた。これで讃岐は、四国リーグだけでなく、全社、地域決勝と三冠を達成。名実共に地域リーグカテゴリーを制覇してアマ最高峰のJFLでJリーグ参入を目指す。おそらく、すぐにでもJリーグ準加盟の段取りが進められるのではないだろうか。果たしてその「堅守」はどこまでJFLで通用するのか今から非常に楽しみ。また、ユーモラス溢れる広報のツイッターもこの大会では好評で、今後もチームの取り組みに何かと話題は尽きなさそうだ。
 一方で、入替戦へ回ることとなった三洋洲本。非常に悔しい敗戦となったが、初戦のポイントで掴んだ入替戦は決死の覚悟で臨みたい。相手はJFL17位のアルテ高崎。厳しい戦いになると思うが、チャンスはあるはず。この大会での戦い方が引き続きできれば、必ず昇格の切符を掴めるはずだ。是非、関西リーグの代表として、王者として、立ち向かって欲しい。
 注目の入替戦は、第1戦が12月11日(土)の13:00からアスパ五色で、そして第2戦が12月19日(日)13:00から高崎市浜川競技場で行われる予定。

 
 
 試合終了の瞬間。
 讃岐の選手は万感の思いで笛を聞く。

 
 入替戦は今週末。
 切り替えて、是非ともJFLへの切符を!

 
 カマタマーレ讃岐、JFL昇格おめでとう!

 
 
 

Y.S.C.C.の終着、そしてスタート -Y.S.C.C. VS 長野-

2010年12月06日 | 脚で語る地域リーグ
 市原で行われた第34回全国地域リーグ決勝大会は、いよいよ3日目の最終日を迎え、第1試合ではJFL昇格に王手をかけているAC長野パルセイロがY.S.C.C.と対戦。両者の意地と意地がぶつかった好ゲームは0-0で90分では決着がつかず、PK戦へと突入。その時点で長野が自動昇格の条件を満たす2位以内を決定させ、JFL昇格を決めたが、試合はY.S.C.C.がPK戦に3-1で勝利した。

 
 
 遂に迎えた最終日。
 長野から、そして横浜からサポーターが数多く駆けつけた。

 
 ここまで2連敗のY.S.C.C.
 関東王者の誇りを胸に、1勝を目指して望みをかける。

 
 90分を凌ぎきれば、悲願のJFL昇格。
 サポーターの思いを一身に背負って試合へ。

 前日の三洋洲本戦では、圧巻の攻撃力を見せて前半で試合を決めてしまった長野。しかし、この試合では違った。後がないY.S.C.C.は、最終ラインに主将・鈴木が、そして1次ラウンドの山口戦以来となる福井の戦列復帰。また、鈴鹿、須原、小澤、平間など前日の讃岐戦に出場していないメンバーが名を揃え、試合開始から長野を追い込む戦いを見せる。試合開始3分には小澤がゴール前に果敢に飛び出し、また7分には負傷のエース辻に代わって先発に名を連ねた青田が渾身のヘッドで長野ゴールを脅かす。長野が前がかりになっていなかったこともあったが、それを差し引いても完全にY.S.C.C.が試合のペースを握っているといって良かった。

 
 負傷のためか戦列を離れていた鈴木。
 決勝ラウンド初出場で気迫の守備を披露。

 
 長野DF籾谷と競り合うY.S.C.C.FW福井。
 1次ラウンドでは1得点。辻の穴を埋めたい。

 Y.S.C.C.は前日の讃岐戦で1次ラウンドからここまで4得点の絶対的なエース辻が負傷交代。この試合ではメンバー外になっており、攻撃面で懸念された。しかし、それが杞憂だったかのように中村、須原、小澤の3人が中盤でボールを動かしてゲームメイク。彼らからボールを受けた青田は前半だけで6本のシュートを打つ機会に恵まれた。
 一方の長野もこの大会屈指の攻撃陣、宇野沢と藤田の2トップは依然脅威だった。彼らをマークしていても2列目から佐藤、栗原、大橋といったドリブラーがチャンスを突いてくる。10分にはDFのクリアミスを佐藤が、そして12分には麻生がFKでゴールを脅かす。90分間で負けなければ自動昇格が決まる長野。1点を奪えばかなり試合は楽になったところだろう。

 
 ボールキープに優れる選手の多い長野。
 MF栗原もその一人。

 
 前半から猛烈にシュートを打ちまくった青田。
 籾谷という壁が立ちはだかる。

 20分、Y.S.C.C.はチャンスを掴んだ。ゴール前左手からFKのチャンス。これを蹴るのは、ここまでチームを引っ張ってきた中村。彼が蹴り放ったボールはクロスバーを直撃し、わずかにゴールは割れなかった。だが、どこかワンチャンスがあるならY.S.C.C.という前半だった。前半のアディショナルタイムには、青田のシュートがわずかに右に逸れていく。「あとは決めるだけ」といった形が続いたY.S.C.C.とそれを粘って守り続けた長野。試合はスコアレスで折り返す。

 
 選手層の厚いY.S.C.C.。
 須原は体を張って攻守の軸になっていた。

 後半に入ると、前半の40分にベンチスタートだった土橋が途中出場していたこともあって長野の攻撃が牙を剥いた。53分に長野FW藤田の強烈なシュート。あわやゴールかと思われたこのシュートをY.S.C.C.のDF松田が頭でブロック。これまでFW(登録もFW)で試合に出場していた男の渾身のクリアに会場は沸き立つ。不思議なことにまるでボールが吸い寄せられるかのように長野のチャンスはこの松田のクリアに遭って幾度も阻まれる。

 
 後半に入って攻勢に出た長野。
 宇野沢、藤田を中心にY.S.C.C.ゴールに迫る。

 
 長野MF佐藤が囲まれる。
 彼のアーリークロスは大きな武器。

 1点を奪いたいY.S.C.C.、逃げ切りたい、そのためにも1点あれば安心できる長野。両者の逸るその思いが試合のトランジションを促す。76分には長野FW宇野沢のシュートをY.S.C.C.GK浜村がファインセーブ。試合終了間際のCKのチャンスにはその浜村もゴール前まで上がって得点を狙った。しかし、最後まで先取点を奪えなかったY.S.C.C.。90分の終わりを告げるホイッスルが鳴ったその瞬間、彼らのJFL昇格への道は断たれた。そして、同時に長野のJFL昇格が決まる。PK戦を控えていたこともあり、勝敗の決していない状況での昇格決定。それは何とも静寂に包まれた昇格の瞬間だった。

 
 長野はベテラン要田を投入して、とどめを狙う。

 
 終盤のGK浜村の気迫あるプレー。
 Y.S.C.C.を応援する子供たちに伝わったに違いない。

 
 90+2分、長野はPK戦に備えてGK海野を投入。
 もちろん、昇格を決めても負ける気はない。

 
 
 後半終了の笛が鳴ったと同時にコーチと握手する薩川監督。
 チームの悲願を成し遂げ、安堵の表情。

 
 ところがPK戦では長野が1-3と敗戦。
 何とも、微妙な終戦となってしまった。

 
 試合には勝ったが、昨年同様それは終戦と同じく。
 しかし、この6試合で最もファイト溢れる試合だった。

 
 
 サポーターと歓喜を分つ長野の選手・スタッフら。
 薩川監督が宙に舞う。
 松本山雅にこれで追いついた。
 本当におめでとう。

 讃岐と並んで大本命の長野はやはり強かった。1日目の讃岐との試合では惜しくもPKで敗戦となったが、前日の三洋洲本でその攻撃力をいかんなく発揮。決勝ラウンドでの展開を楽にした。先日、同じ長野県内でライバルでもある松本山雅がJFL1年目の戦いを終えたばかり。来季からは同じリーグで次なる目標、Jリーグ参入を狙うこととなる。
 そして、ひたちなかの1次ラウンドからその戦いを見届けることになったY.S.C.C.。S.C.相模原がレノファ山口に負けたこともあって、1次ラウンドの1位突破をモノにした。最後までメンバーを入れ替えながら臨んだ6試合だったが、最後までそこまでサッカーの質は落ちてなかったと思う。この長野戦も例に漏れず、休養が中1日以上の選手を多数使い、選手層の厚さを改めて見せつけた。例えほとんどJリーグ経験者がおらず、Jリーグ志向ではないチームでも、ここまで戦えるということを示した。スタンドにたくさん駆けつけた、子供たちを中心としたサポーターの姿は本当に印象的だった。この地域決勝の6試合は、その彼らからも賛辞を送られるに相応しい戦いだっただろう。そして、この笑顔なきPK戦勝利で迎えたY.S.C.C.の終戦は、次のスタートでもあるのだ。来季以降、JFL昇格の最有力候補であるのは間違いない。
 

関西王者、苦難の90分 -三洋洲本 VS 長野-

2010年12月05日 | 脚で語る地域リーグ
 市原で行われている決勝ラウンド2日目の第2試合は、1日目に見事な勝利で順調な滑り出しを見せた三洋電機洲本が、北信越王者のAC長野パルセイロと対戦。しかし、念願のJFL昇格へ向けてなり振り構わず攻め込んだ長野の前に0-4と悔しい完敗。これで勝点で長野が4ポイントと三洋洲本を抜いて自動昇格へ弾みをつけた。一方の三洋洲本はまだ入替戦以上の望みは十分にあり、3日目に自力で結果を掴みたい。

 

 この日も大勢の長野サポーターがバックスタンドに詰めかけ、悲願のJFL昇格への軌跡を見届けようと、試合前から大声援を送る。対照的に、三洋洲本側のバックスタンドにはサポーターらしい人影は見えず、少しの横断幕と幟が設置されたのみ。しかしながら、メインスタンドには赤いチームTシャツに身を包み、「頑張れー」と声を送り続けるフォロワーの方々の姿があった。Jを目指すクラブではないにしろ、1日目に見事な勝利で決勝ラウンドでの戦いに弾みをつけた三洋洲本、この大会の主役になる可能性はある。関西リーグを代表してなんとか自動昇格を果たして欲しいところだ。

 
 この日も長野サポーターは試合前に大円陣で気合い注入。

 
 選手入場の際に長野の選手たちは手を繋いで入場する。

 ところが、試合では「これが現実」といわんばかりに長野が序盤から怒濤の攻撃。3分に宇野沢がシュートを決めて早々に先制すると、8分にはその宇野沢のパスを受けた藤田が追加点となるシュートを決めて一気に試合を2-0とした。

 
 
 
 
 あっという間に長野が先制。
 宇野沢はこの試合2得点1アシスト。

 
 
 
 
 8分にも守備を引き裂かれて失点を喫した三洋洲本。
 藤田が冷静に決めて、長野が追加点。

 圧巻だった長野の勢い。それもそのはず、1日目のPK敗戦で失った勝点を奪い返すには90分勝利以外考えられないというところだろう。そして、彼らに立ち向かう三洋洲本も1次ラウンドでは藤枝MYFCを相手に0-2という状況から5-2まで試合をひっくり返した過去がある。まだ試合の行方は分からないと考えたかった。10分には三洋洲本・村上のシュートを長野GK諏訪がかろうじてセーブ。まずは1点を追いかけたいところ。しかし、徐々に長野の力にねじ伏せられていく関西王者。実力の差を見せつけられる。

 
 籾谷を中心に固い長野の守備陣。
 三洋洲本はボックス内で形が作れない。

 26分には再び藤田が折り返しをダイビングヘッドで決めて長野が3点目を奪取。一層厳しい戦いを三洋洲本は強いられる。

 
 
 
 
 藤田のダイビングヘッドが決まって長野が3-0に。
 GK浅野、あと少し、という悔しさからか立ち上がれない。

 宇野沢、藤田の2トップはまさに脅威だった。29分には佐藤のクロスに宇野沢がヘディングシュート。これはわずかに決まらない。31分には左サイドからここまで2得点の藤田が強引にドリブルで持ち込んでシュートするなど、三洋洲本はこの2人を捕まえるだけでも大変だった。

 
 1日目にようやくゴールの生まれた梅川。
 彼を起爆剤に三洋洲本もビハインドを縮めたいところだったが。

 前半終了間際の43分には再び宇野沢が決めて、長野がリードを4点に広げた。前半を終えて0-4というスコア。これを覆すのは至難だが、まずは1点を取り返したい三洋洲本。後半開始から廣瀬に代えて沈をピッチに送り込む。

 
 中盤のスペースを使うのが上手い長野・大橋。
 かつてNECトーキンで長野と対戦したことも。

 後半も長野のペースは変わらず。藤田が元気にゴールを狙う。一体彼だけで何本シュートを放っただろう。55分にはエリア左からシュートを狙えば、57分には決定的なシュートを放つが、三洋洲本GK浅野がこれ以上取らせてなるものかとファインセーブ。最後尾で守護神が体を張ってシュートの嵐を耐え抜く中で一矢報いたい三洋洲本だった。

 
 長野・野澤は惜しいシュートを放つなど攻撃面で存在感あり。

 
 長野の勢いに押される一方の三洋洲本。
 関西王者がこの展開、チーム力の差を感じる。

 結局、試合は4-0で長野が勝利し、JFL昇格へ大きく前進。3日目のY.S.C.C.戦で90分勝利を果たせば自動昇格可能となった。一方の三洋洲本はまだ望みはある。明日、長野がY.S.C.C.に勝利すれば、自分たちの結果を問わず入替戦に回ることはできる。また長野が敗れて、自力で90分勝利を得れば自動昇格も見えてくる。まだまだ分からない。最終日、自動昇格を掴むのはどのチームになるのか。また、入替戦へ回るのはどのチームか。かなりの観客で賑わいそうな最終日の市原臨海競技場。どんな試合が繰り広げられるか楽しみだ。

 
 悲願のJFL昇格へ大きく前進。
 大勢のサポーターと共に3試合を乗り切る長野、その結末はいかに。

 
 完敗したが、まだ望みは十分ある三洋洲本。
 切り替えて最終日の試合に期待。


 

讃岐が昇格へ大きく前進 -Y.S.C.C. VS 讃岐-

2010年12月04日 | 脚で語る地域リーグ
 第34回全国地域リーグ決勝大会は決勝ラウンド2日目を迎え、前日PK戦の末にAC長野パルセイロを下したカマタマーレ讃岐がY.S.C.C.と対戦。試合は先行される展開ながらも3-2と讃岐が逆転勝利を果たし、JFL昇格へ大きく前進。これで入替戦以上の成績を手中にした。一方のY.S.C.C.は先手を取りながらも2連敗。苦しい状況となった。

 

 土曜日ともあって先日を遥かに上回る大応援団が市原に駆けつけたY.S.C.C.。ひたちなかでの1次ラウンド山口戦以来、中盤に土屋、石川、小笹が顔を揃え、攻撃陣に関しては負傷離脱の福井を除いて、ベストではないかという布陣。一方の讃岐はDFラインに前日警告を受けた神崎が出場停止という事態で代わりに齋藤を起用する。
 試合はY.S.C.C.が開始5分で先制点を生み出した。相手の守備ラインの裏に飛び出した辻がこの大会4点目となるゴールを挙げる。

 
 
 
 Y.S.C.C.の得点源となる辻が開始早々の先制点。
 讃岐の出端を挫く会心の一撃。

 先手を取られた讃岐だったが、その直後に相手陣内エリア左手前からのFKのチャンス。これを相手のクリアミスからのオウンゴールですぐに追いついた。

 
 岡本の得点かと思われたが判定はオウンゴール。
 讃岐が試合をすぐに振り出しに。
 
 序盤からよく動く試合は、11分にY.S.C.C.が相手エリア内で笹野が倒されてPKを獲得。これを石川が決めて再び突き放す。

 
 この笹野が倒された場面。
 序盤、明らかに讃岐の守備陣は落ち着いていなかった。

 
 このPKを石川が決めてY.S.C.C.が2-1と勝ち越し。

 おそらく、讃岐にとってここまで四国リーグも含めて「追いかける展開」というのはほとんど無かったのではないだろうか。10月の全社では優勝まで5試合連続無失点。1次ラウンドの長野戦でもすぐに追いつく対応の速さを見せていただけに、追いついた直後にPKを与えてしまったことは少しプランが狂ってしまっただろう。その直後、CKから下松がシュートを放ち、相手GKが弾いたところを岡本が決め損ねる。讃岐はしばらく追いかける時間帯を強いられた。

 
 ゴール前でチャンスは得るものの、同点には及ばない。

 Y.S.C.C.も土屋、中村、小笹が中盤で軸となって縦へとボールを繋ぐ。24分には中村のドリブルから辻へパスを通して、辻が惜しいシュートを放つ場面もあった。Y.S.C.C.も早めに讃岐を突き放す3点目を取りたかったところだったろう。
 しかし、前半のアディショナルタイムに讃岐はエリア内でドリブルで侵入した飯塚が倒されてPKを奪取。これを吉澤が決めて2-2の同点にして前半を終えた。

 
 なんとか前半のうちに追いついた讃岐。
 ここで追いつけたことは本当に大きかった。

 
 神崎の出場停止もあって、最終ラインをまとめた波夛野。
 なかなか序盤は苦戦しているようだった。

 Y.S.C.C.の攻撃をしっかり守っても、なかなか崩し切れない讃岐。50分には右サイドからのクロスをGKが処理し切れず、フリーになっていた岡本まで届くものの、ヘディングシュートはわずかに左に逸れる。しかし、流れの中で決定機を作りながら、得点が遠かった讃岐はセットプレーが功を奏した。後半に入って、讃岐の吉澤や飯塚らの突破をファウルでしか止められなくなってきたY.S.C.C.に対して、讃岐は56分にエリア手前約35mほどの位置でFKのチャンスを得ると、これを蹴った下松のキックにDF齋藤が左足で合わせてゴールネットを揺らす。

 
 決定的だった讃岐・岡本のヘディングシュート。
 流れの中で決め切れない。

 
 
 
 讃岐は全得点がセットプレーから。
 この場面、一瞬にして齋藤が合わせた。

 追いつかれたY.S.C.C.はすぐさま追い上げたいところだったが、前半のうちに足を負傷していた小笹がどうやら限界だったらしく、失点直後に金子との交代を余儀なくされる。しかし、運動量が落ち始めてなかなか決定機にまで至らない。序盤のバタバタぶりが嘘のように安定した讃岐の守備網をY.S.C.C.は崩せず、ほとんど相手エリア内でボールが繋がらなかった。80分には辻が相手のチェックに足を痛めていたこともあり、松田と交代することになったが、既に試合を先行していた際の推進力は彼らには無かった。

 
 DF寺田はY.S.C.C.の右サイドで1対1に強さを発揮していた。

 
 途中出場のY.S.C.C.伊吹と讃岐・波夛野が激しく競り合う。

 
 讃岐の飯塚はドリブルにパスに、相手にとって嫌な存在。

 結果、逆転してからのリードを最後まで守り通した讃岐が3-2で勝利し、PK勝利に続き2連勝で勝点を5ポイントに。これで入替戦以上が確実となり、讃岐のJFL昇格が見えてきた。もちろん3日目も勝利して自動昇格を狙いたいところだろう。
 一方のY.S.C.C.は連敗で厳しい展開となった。1次ラウンドで負傷した福井に続き、小笹、辻と主力に負傷が相次いでいる点は不安材料。3日目は長野という強敵が相手だが、過密日程はこれが最後。まずは1勝を目指したい。

 
 JFLが見えてきた讃岐。
 地元の支援も取り付けており、準加盟も近いか。

 
 僅差で競り負けたY.S.C.C.。
 子供たちも多数応援に駆けつけた前でこの結果は悔しい。
 

本命同士、PKでの決着 -讃岐 VS 長野-

2010年12月04日 | 脚で語る地域リーグ
 1日目の第2試合は、共にJリーグ参入を目指す四国リーグ王者のカマタマーレ讃岐と、北信越リーグ王者で長野エルザ時代を含むと、これが4度目の地域決勝チャレンジとなるAC長野パルセイロの対決。試合は両者互いに譲らず、90分では勝敗つかず0-0。PK戦では7-6で讃岐が辛勝し、勝点2ポイントを獲得。敗れた長野は1ポイントの勝点からのスタートとなった。

 

 両者共に13:30のキックオフを控えて、サポーターがそれぞれバックスタンドで準備を始める。両サポーター共に大きな横断幕を掲げ、約50名近いそれぞれのサポーターは意気揚々と応援チャントを歌い始めた。

 
 平日にも関わらず四国から駆けつけた讃岐サポーター。
 バックスタンドの2階から選手を後押し。

 
 長野は試合前に選手より先にサポーターが円陣。
 チーム、サポ一致団結でJFLを目指す。

 数年のうちにJリーグ参入を目指す両者はまさにこの決勝ラウンドの本命2チーム。10月に行われた全社の決勝、そして高知・春野での1次ラウンドでも対峙し、まさに今季のこのカテゴリーでは屈指のライバルとも形容できる2チームだ。ここまで全社では讃岐が2-0で勝利、地域決勝1次ラウンドでは、1-1からPK戦3-2でこれまた讃岐が勝利している。しかし、本当の意味での真剣勝負はこの決勝ラウンド。試合は1試合目と変わらぬ強風との戦いでもあった。

 前半、風上に立った讃岐が猛然と長野ゴールを襲う。5分に森田がシュートを見舞うと、9分には吉澤のパスを受けた飯塚がゴールを狙う。10分には中島が豪快なミドルシュート、15分には下松が強烈なミドルシュートをお見舞いする。このように讃岐は前半である程度試合を決定づけたかったのだろう。それもそのはず、第1試合より幾分か勢いを増した気もするその強風は、最早GKのゴールキックすらろくに飛ばさないほどの強烈なものだった。
 30分に飯塚の直接FKが風に乗ってゴールバーを直撃した場面は決定的で惜しい場面だった。しかし、ここまでほとんど讃岐の決定機。長野が苦戦していたのは確かだった。

 
 強風を活かして果敢にシュート攻勢の讃岐。
 15分には下松が強烈なミドル。

 長野は防戦一方という状況。しかし、籾谷を中心に守備は集中しており、ある程度ボールを持てる時間も作ることはできていた。野澤、大橋、栗原らのボールキープから前線の宇野沢にボールを集めたいところだったが、ここはさすがに波夛野を中心とした堅固な讃岐守備陣がそれを許さなかった。

 
 再三、ゴール前でチャンスを作る讃岐。
 ここに長野DF籾谷が立ちはだかった。

 
 長野の攻撃を引っ張るのは宇野沢。
 ところが、相手のプレスの厳しさにシュートを打てず。

 0-0で前半を折り返したこの試合。讃岐は是が非でも風上に立った前半に得点を挙げておきたかったところ。後半は間違いなく長野が攻勢に立つのではと思われた。
 しかし、風下に立とうとも攻め立てたのは讃岐。49分に右サイドからのアーリークロスをGKが弾いたところに岡本がダイビングヘッド。わずかにゴールはならなかったが、前半と変わらず、讃岐がペースを握った。

 
 長野・栗原のドリブルに讃岐・森田が対応。
 ボールは持たせてもラストパスの出所を讃岐は許さない。

 
 右サイドから再三ドリブルで仕掛けた野澤。

 1点を奪えず、ぐずぐずしている讃岐の運動量が落ちてきたところに長野は反撃。72分に佐藤のクロスに大島が頭で合わせるが、わずかにゴールならず。そして、75分には讃岐ゴール前約25mの位置で得た大橋の直接FKがゴールバーに当たってしまう。試合を決定づける1点がこのように両者ともなかなか遠かった。

 
 選手たちを惑わす強烈な突風。
 「あわやゴール」という場面が。

 
 讃岐・下松の強烈なチェックを受ける長野・藤田。
 長野のFW陣は結局1本もシュートが打てなかった。

 
 拮抗する試合は、90分で決着つかず・・・

 両者譲らず、結局1次ラウンドに続きPK戦となったこの試合。お互いに6人目が決めて、迎えた7人目。成功した讃岐に対して、長野は失敗。PK戦突入寸前にPK要員のGK海野を投入した甲斐もなく長野は悔しいPK敗戦となってしまった。

 
 PK戦を長野サポーターは全員が肩を組んで見守る。

 
 長野・7人目麻生のキックはポストに弾かれ・・・

 
 讃岐の初戦勝利が決定。
 勝点2ポイントをゲット。

 
 これだけ多くのサポーターが駆けつけた長野。
 まだまだ戦いはこれから。

 この試合を終えて、90分勝利の三洋洲本が勝点3ポイントで一歩リード。明日の長野戦で90分勝利を果たせば、07年の第31回大会でFC Mi-O びわこ Kusatsu(現:MIOびわこ草津)がJFL昇格を果たして以来、3年ぶりに関西リーグ勢のJFL昇格が決定する。
 しかし、まだ展開はどうなるか分からない。この試合のPK決着が2日目以降、どう響いてくるだろうか。

三洋洲本、大きな1勝 -Y.S.C.C. VS 三洋洲本-

2010年12月03日 | 脚で語る地域リーグ
 第34回全国地域リーグ決勝大会はいよいよ決勝ラウンドが開幕。市原緑地公園臨海競技場では、1次ラウンドでそれぞれのグループを勝ち抜いたカマタマーレ讃岐、三洋電機洲本、Y.S.C.C.と2位最上位で決勝ラウンド進出を決めたAC長野パルセイロの計4チームでの総当たり戦が始まった。

 1日目の第1試合では、関東リーグ王者のY.S.C.C.と関西リーグ王者の三洋電機洲本が対戦。試合は2-1で三洋洲本が90分勝利を果たし、JFL自動昇格へ大きな勝点3ポイントを獲得した。

 

 全国的に「初冬の嵐」ともいうべき、大雨と強風に見舞われた12月3日。市原もその例外ではなく、昨晩からの土砂降りの雨と、強風が吹き荒れる。雨こそ第1試合のキックオフ前には止み、晴れ間が覗く天気になったものの、強烈な風はその勢いを衰えない。
 Y.S.C.C.は前半風上に立って、一気に先制点を奪った。4分に中村の右CKからDF寺田が頭で合わせてゴールネットを揺らす。短期決戦での先制点奪取は大きい。この先制劇で試合はY.S.C.C.が優勢に試合を進めるものかと思われた。

 
 
 
 
 開始4分でY.S.C.C.が先制。
 DF寺田がヘッドで決める。

 しかし、風下で攻めあぐねる三洋洲本もすぐに反撃。序盤こそ動きに重さが感じられたものの、19分に森川が放ったミドルシュートを相手GKが弾いたところをエリア右手から梅川が詰めてシュートを決め、同点に追いついた。

 
 
 

 昨季から地域決勝では無得点だった梅川がようやく覚醒。
 関西リーグ2年連続得点王が同点弾を決める。

 追いつかれはしたが、風上のY.S.C.C.は強風を味方に勝ち越し弾を狙い続ける。32分には須原、33分には服部がシュート。しかし、その前には1次ラウンドの札大GP戦で3本続けてPKをストップした三洋洲本GK浅野が立ちはだかった。ボール支配では優位に立ち、決定機を量産するY.S.C.C.だったが、追加点は遠い。

 
 
 38分にはY.S.C.C.須原がこのFKでゴールを狙う。
 わずかにゴール右へ。風を味方につけられず。

 前半を1-1の同点で折り返すと、後半の開始から三洋洲本はMF沈を中尾に代えて投入し、劣勢の逆転を狙う。しかし、風上に立ったとはいえ、Y.S.C.C.の基本技術の高さと組織力の前に劣勢逆転ならぬ三洋洲本だった。なかなかシュートが打てない。押し気味に試合を進めるY.S.C.C.は、51分に松田が惜しいシュートを放ち、55分には大饗が三洋洲本ゴールに迫った。65分には最終ラインの裏のスペースに抜け出した辻がゴールを狙うが、GK浅野がこれをセーブして追加点を許さない。

 
 65分のY.S.C.C.の大きなチャンス。
 1対1となった辻のシュートはGK浅野が見切っていた。

 三洋洲本の粘りの守備は効いていた。特に堅守というイメージは無いが、昨年の地域決勝1次ラウンド金沢戦におけるハードワークのしぶとさを思い出した。66分にはカウンターから沈がシュートを見舞う。これが後半最初のシュートだった三洋洲本。少ないチャンスを生かしたかった。
 Y.S.C.C.はベンチスタートの石川を大饗に代えてピッチに送り込み、運動量の落ちてきた中盤をケアしようとするが、集中力では三洋洲本が一歩上だったか。77分にこの試合3度目にゴールネットを揺らしたのは、これがわずか2本目のシュートとなった三洋洲本だった。

 
 
 
 
 梅川の右からの折り返しを森川が決める。
 ワンチャンスをモノにした三洋洲本。

 後半ほとんど決定機を作れなかった三洋洲本の逆転劇にY.S.C.C.は焦りを隠せない。すぐさまFW伊吹、青田をピッチに送り込み、1点を狙いに行った。Y.S.C.C.は得点源の辻が負傷交代を強いられたことも大きかった。試合をひっくり返した三洋洲本は無理をする必要もない。貴重な勝点3ポイントへ向かって、あとは全員でとにかく守るのみだった。

 
 石川らを途中投入してチャンスを狙ったY.S.C.C.
 しかし、決定機を再三決められなかったのが響く。

 結果、愚直に守り続けた三洋洲本が逆転勝利で、見事に勝点3ポイントを獲得。上位2チームがJFL自動昇格、3位チームがJFL17位との入替戦に回るこの大会において、入替戦以上の結果に大きく近づいた。昨季はあと一歩で決勝ラウンドへ進めなかった「淡路島の雄」が決勝ラウンドの主役になり得るための大きな1勝を上げた。

 2日目は、三洋洲本が長野と(13:30キックオフ)、そして負けを喫したY.S.C.C.は讃岐との試合(10:45キックオフ)で1勝を狙う。

ひたちなか、劇的な幕切れ -相模原 VS 山口-

2010年11月24日 | 脚で語る地域リーグ
 ひたちなか3日目の第2試合は、ここまでの戦績で勝点はトップ、グループ突破の最有力と見られていたS.C.相模原と連敗を喫して2日目に1次ラウンド敗退が決まってしまったレノファ山口との対戦。早々に2点を先行した相模原が試合をそのまま決めてしまうかと思われたが…
 Aグループ最大のドラマはこの試合で起こった。

 
 
 両チーム共に多くのサポーターが声援を送る。
 スタンドでも選手を後押しする戦いが始まっていた。
 
 JFA優遇枠とはいえ、この大会に出場する相模原の強さは全社の戦いぶりからしてもある程度見えていた。キックオフ1分、正確には1分経っていない時点で相模原は山口から先制点を奪い取った。右サイドの金澤からのクロスを森谷が頭で決める。続いて、7分には富井のスルーパスに抜け出した森谷が山口DFを振り切ってGKとの1対1を落ち着いて決めた。開始7分間で2点をリードした相模原。この後はひたすらマイボールをロストせずに繋ぎに徹する。山口の運動量を落としにかかったのか、無理なロングパスを控えて前がかりにならずに試合を進めた。機を見て確実なチャンスに決定的な3点目を狙っていたのだろう。そのパス回しの前に山口の選手たちはほとんどボールを奪えない。まるで“鳥カゴの中の鳥”のようだった。なんと前半の山口のシュートは「0」本だった。

 
 
 
 開始1分経たぬうちに森谷が頭で決めて相模原先制。

 
 
 
 
 7分には再び森谷が決める。
 これで勝負の大勢は決まったかに思えた…

 後半に入って、その鳥はカゴの綻びを見つけ出す。相模原に疲れとミスが目立つようになってきたこともあってか、山口は徐々にリズムを掴めるようになっていった。主将・福原を中心に前半以上のプレスで相模原のボールを奪いにかかった。

 
 前半、相模原はDF工藤を中心に山口を封じ続ける。

 
 “あきらめない”という言葉がにじみ出る。
 福原を中心に山口は前を向き続けた。
 
 試合を決める追加点を焦り出す相模原を尻目に、68分に山口は右サイドを駆け上がった碇野のクロスから柏原がヘディングシュートを決める。山口はなんとこれが68分間で初めてのシュートだった。前半からスペースさえあれば、攻め上がっていた碇野の献身的な攻撃参加がここで効いた。76分にはFW吉田を投入して、更にもう1点を狙いにかかる山口。1点を返して、勢いが出た。選手たちが見違えるように動くようになっていた。試合の流れは完全に山口だった。相模原にとっては1日目のHOYOに2点のリードを追いつかれた光景が浮かび上がる。

 78分、また碇野のクロスからだった。相模原はこのクロスボールに金澤と鷲田が対応したが、重なってしまいクリアボールが中途半端な方向へ。味方である工藤に当たって跳ね返ったボールはなんと山口MF田村の元へ。とっさに反応したのだろう。田村のヘディングシュートはゴールに吸い込まれた。

 
 
 
 
 田村が決めた山口の同点場面。
 奇跡的に彼の頭にボールは飛んできた。

 2-2の同点になって、相模原の動揺は明らかだった。それまで決定機を全くといって良いほど許していなかったチームが瞬時に崩壊したのだ。83分に秋葉とジエゴ・カンポスを同時投入して一瞬のチャンスを狙う。だが、山口の集中力はぶれなかった。

 一旦山口に傾いた流れは傾くことはない。不思議なほどこれまで決定機が全く無かった山口に得点の予感を感じてしまう。ラスト10分は本当にそんな展開だった。
 そして87分、山口は中盤にできたスペースに左サイドバックの安田がドリブルで持ち込む。田村へ送るとすぐに田村はエリア内へロビングボールを蹴り込む。マーカーの相模原MF坂井を越えてそのボールは柏原の頭にぴったりと合った。次の瞬間、メインスタンドはこの3日間一番の独特な雰囲気を放った。1点を返したあたりから一層チャントのペースが増していた山口のサポーターは狂喜、涙している人もいた気がする。そして、山口の勝利を確信したかのように「レノファ山口」コールを送るY.S.C.C.のサポーター、対極的に逆サイドでは、「まだ終わっていない」という逸る気持ちを抑えるかのように声量が増す相模原サポーターの姿があった。

 
 
 逆転弾のきっかけはこの安田のドリブルから…

 
 
 
 
 田村の浮き球のパスに柏原が再び頭で決めた。
 レノファ山口、逆転。

 試合は3-2と山口の勝利で終了。これでY.S.C.C.のグループ1位突破が決定。12月5日より市原で3日間行われる決勝ラウンドに進出する。S.C.相模原はワイルドカードにすら手が届かず来季のJFL昇格のチャンスは潰えた。

 

 本当に前半だけを観ていれば、非常に歴然とした差があった試合で、相模原で決まりだなと途中で帰った人もおられるかもしれない。それだけ山口の逆転劇は凄まじいものだった。それが証拠に公式記録を確認すると、山口の放ったシュートはゴールネットを揺らした3本のみ。結果的に2チーム共、来季JFL昇格のチャンスは消えたが、この試合は後々語り草となり、2チームが上を目指していく上でかけがえのない経験になるだろう。

 
 山口のサポーターは連敗してもチームを応援・鼓舞し続けた。
 最後に勝利をサポーターに届けて選手たちも安堵の表情。

本命Y.S.C.C.執念の逆転劇 -HOYO VS Y.S.C.C.-

2010年11月23日 | 脚で語る地域リーグ
 全国3会場で行われている全国地域リーグ決勝大会はいよいよ1次ラウンドが最終日を迎えた。各グループの1位チームと2位同士の最上位チームが2週間後に市原で行われる決勝ラウンドへ駒を進める。ひたちなかでの第1試合は、両者共に他力本願ながら、1位突破の可能性を残す2チーム、HOYOとY.S.C.C.が対戦。HOYOが試合を先行しながらも、昨季決勝ラウンドまで進んだY.S.C.C.がその底力を発揮。3-2で逆転勝利を果たして、第2試合へとその命運を委ねることになった。

 

 朝から雨が降るひたちなか。風があって気温も低く、コンディションは3日間の中で最も厳しい1日だった。HOYOは昨日先発だった渡邊を温存、対するY.S.C.C.は守備の要である鈴木、ボランチの土屋、サイドハーフの小笹が先発メンバーにカムバック。しかしながら、チームの得点源である辻をベンチ要員にしてキックオフとなった。

 試合はいきなり動いた。HOYOが開始わずか2分で先制する。右サイドを抜け出した原のクロスを古賀がダイビングヘッドで決めた。この試合を90分勝利で乗り切れば、1位突破は見えてくる。チームのムードは上昇したに違いない。しかし、この大会と対峙するY.S.C.C.は甘くはなかった。
 21分に中村の右CKにDF寺田が頭で合わせて同点に追いつく。徐々にパスが回り出したY.S.C.C.が反撃の狼煙を上げた。

 
 
 
 まずはHOYOが古賀のヘッドで先制点をもぎ取る。
 開始2分、決勝ラウンドへ向けて先手を奪った。

 
 Y.S.C.C.は土屋が守備的MFの位置にカムバック。
 全体に安定感が出たこともあり、ここから反撃。

 
 追いついたY.S.C.C.は更に追加点を狙う。
 次第に試合のペースは彼らのものに…

 HOYOには1人突出したキープレイヤーがいる。FW堀健人だ。彼がボールに触ると必ず何か起こる気がしてならない。1日目の2得点とここまでの彼のプレーはそれほどのイメージを抱かせてくれるのに十分だった。案の定、このチーム屈指のクラッキは、30分に生口の直接FKがゴール前にこぼれたところを詰めて押し込んだ。HOYOが再び試合を先行する。

 
 
 HOYOの代えがきかないエース・堀。
 これで3試合で3得点とチームを牽引。
 
 2-1とHOYOリードで折り返した後半、Y.S.C.C.は10分でベンチが動いた。FWの青田に代えてエースの辻、そして小笹に代えて10番を背負う石川を投入。1点を追いかけるだけではなく、逆転することを明確にピッチへメッセージとして送った。この采配は試合をすぐに動かすことになる。
 58分、右の笹野からボールを受けた土屋が更にエリア左に詰めていた辻にパス。辻は相手DFをかわしてシュート。見事にこれが決まってY.S.C.C.が同点に追いつく。鮮やかなパスワークもさることながら、フィニッシャー辻の本領発揮ともいえる場面。投入後、2タッチほどでゴールネットを揺らす。関東リーグ得点ランキング3位の実力はこの大会でも如実に現れていた。

 
 HOYOはサイドバックの長谷川が攻守に活躍。

 
 主将・鈴木が最後尾にいるだけでチームが引き締まる。
 精神的にもチームの柱ではないだろうか。

 しかし、このまま試合はすんなりといかない。Y.S.C.C.は66分にDF渡邊がこの日2枚目の警告で退場処分に。すると、直後にHOYOはDF三浦を生口に代えて投入し、守備的な戦いを目指すようになった。Y.S.C.C.も鈴鹿の投入でバランスを図り、均衡を保とうとした。この時、両者の脳裏には“PK戦もやむなし”という考えがよぎったのかもしれない。

 
 Y.S.C.C.の石川とHOYOの田中がマッチアップ。

 
 “最も危険な男”堀健人をY.S.C.C.も警戒。

 ひたちなかで起きた最初のドラマはこの試合、82分に起きた。同点弾を決めた辻が逆転弾となるチーム3点目を決める。1日目、2日目と上昇傾向にあったHOYO、対して下降傾向にあったY.S.C.C.。この流れを壊した1発。チームを支える全ての人たちへの思いがこみ上げたのか、歓喜に沸くメインスタンド、チームベンチへと走る辻の両手は、ハートのマークを模していた。

 
 
 
 
 スタンドが沸き上がった辻の逆転ゴール。
 ハートのマークで喜びをスタンドへ。

 結果、3-2でY.S.C.C.が逆転勝利。第2試合の相模原が90分負けすれば、1位突破、また相模原が勝利した場合でも、勝点6ポイントでワイルドカード(2位最上位)での決勝ラウンド進出が可能性として浮上した。
 対するHOYOは1次ラウンド敗退となってしまったが、この大会に臨むに相応しい実力を持ったチームだった。昨季まで大分県リーグのチームだったことがにわかに信じ難い。来季以降、九州リーグ覇者として、きっとまたこの大会にリベンジしてくるだろう。この大会にて初見だったが、非常に良いチームに出会った気がした。

 
 試合後にチーム全員でスタンドへ挨拶するY.S.C.C.のメンバー。
 これで相模原の結果を待つことに。

 
 敗退ながらHOYOは素晴らしい戦いぶりを披露。
 手応えがあってこその悔し涙。