第91回天皇杯全日本サッカー選手権大会が3日から開幕。3年連続で奈良県代表としてこの大会に臨んだ奈良クラブ。4日に橿原で同じ関西リーグの三洋電機洲本との1回戦を迎えたが、1-3で敗戦。2年連続1回戦で姿を消すこととなった。
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台風の影響で天候は実に不安定な1日。それでも2年ぶりに奈良の地で迎える天皇杯という特別感と「奈良クラブ祭り」と題されたフードコートの展開で徐々に賑わう橿原公苑陸上競技場。しかし、試合が始まるとその90分間は、奈良クラブが戦った直近の試合において最も辛い現実を受け止めることを強要しているかのような試合だった。
奈良クラブは、1週間前の県選手権決勝戦と同じメンバー。層が薄いことは承知。陣容の変更点も予想できる範囲といえば、右サイドバックに入った谷山とベンチに控える黒田、そして、この日もボランチで出場した矢部とベンチに控える辻村隆の2組が先発で入れ替わるかどうかという程度だ。しかしながら、リーグ戦の前期の対戦ではこの日戦う三洋洲本には2-0と勝利しており、先日のミニ国体でもPK戦までもつれ込んでの勝利だったが、2点差を追いつくという試合内容。昨季は1勝も挙げられなかった彼らを相手に苦手意識は払拭できたかに思えた。
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DF太田を中心とする三洋洲本の厚い壁が立ちはだかる。
しかし、それは違った。兵庫県予選の決勝から正守護神の浅野が帰還し、中盤にもリーグ2年連続MVPの成瀬が帰ってきたことで、この日の三洋洲本は5月に五色で対戦したそのチームとは違った。守備でブロックを固めて、素早いプレスでボールを奪いに来る。攻められても決して焦らず、守備から自分たちのペースに持ち込むそのサッカーは昨季の地域決勝で快進撃を見せ、JFL入替戦まで到達した最盛期のチームのそれだった。
開始8分で先制点を献上する。得点を許したのはミニ国体から右サイドで快活なプレーを見せていた稲垣だった。先制されることで目が覚めた奈良クラブが攻勢に転じるが、檜山が相手GKと1対1の局面を作りながらも決められず、また、三本菅のヘッドがバーを叩くなど、あと一歩でゴールは割れず。前半を0-1で折り返した。
後半に入ると、奈良クラブが再びまくし立てる。左の吉田、李、矢部の展開、そして檜山、牧のキープから前線でチャンスを作るが、守備面で集中力の高い三洋洲本のゴールを割ることができない。前がかりになり、時間も少なって焦ってきたところで右サイドを崩され、83分に太田に決められる。それでも終盤には三洋洲本に与えてしまったPKをGK日野がストップして見せ、89分には橋垣戸が押し込んで1点差とし、アディショナルタイムの反撃に望みを繋いだが、終了直前に途中出場の三洋洲本・井上に加点を許して万事休す。2回戦進出はならなかった。
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最後まで試合をひっくり返すことはできず。
90分間、三洋洲本の著しい復調をまじまじと見せつけられることになった。強い。本当に強い三洋洲本が戻ってきたという感じだった。こちらポゼッションで優位に立っていても、そのファーストアプローチで守備の陣形をきっちり整える。そして、数的優位を作らせずにきっちり中央をブロックする守備の集中力はさすがだった。その上、相手の隙を逃さず得点に繋げてくる決定力。そういえば、6月下旬に太陽が丘でアミティエに惨敗する彼らを見たが、その印象は吹き飛んだ。浅野と成瀬が帰還したこのチームがこれだけ息を吹き返すとは。
その三洋洲本の復調に加え、奈良クラブの経験不足も大きく露呈した試合ではなかったかと思う。今季はリーグ戦こそ11節を終えて未だ無敗という独走ぶりだが、トーナメントのような一発勝負になるとなぜか安定した力が発揮できない。パスは繋がるものの攻守のバランスが乱れることが多く、先取点を与えてしまうと、なかなか建て直すまでに時間を要する。目の前の90分で全てが決まってしまうという焦りが出てしまうのか。全社関西予選のセントラル戦しかり、この三洋洲本戦もそうだ。この点は同じような経験を積み上げていくしかないものかもしれないが、リーグ戦との戦績にギャップを感じざるを得ないリーグ中断期間の戦いぶりだった。しかしながら、昨季の王者の強さを取り戻した三洋洲本に肉薄する実力は垣間見せてくれた。その証拠に15本(スポニチ報道による)という数字がこの試合のシュート数で、相手を凌駕していたはず。3度ほどバーやポストに嫌われる場面があったが、ここを決め切れる力が加われば、G大阪のように撃ち合いに強いチームにはなれると思うのだが。ここを光明として見出したい。加えて、追いかける展開に失点を重ねてしまう面は是非とも克服したいところ。前がかりになった時にカウンターなどで失点を重ねる奈良クラブの悪癖は今に始まった話ではないが、元来守備陣の層が薄く、各ポジションにスペシャリストが少ないというウィークポイントも相まって、この攻守のバランスを試合の中でいかにコントロールできるかは、今後全国の舞台で数ある強豪チームと戦う際に鍵となってくるはずだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/3f/cdedc4d6378380d667965e873f11a5b8.jpg)
意地の1点を返した橋垣戸。
守備だけでなく攻撃面での貢献度も高い。
いやはや何とも素早く過ぎ去った天皇杯ウィークだった。県選手権決勝からわずか1週間での本番。実感もそこそこに迎えてしまう天皇杯の味気無さと、奈良で2年ぶりに戦えたにも関わらず勝てなかった無念の想いが巡る。奇しくも奈良では台風の被害が著しく、この試合も後半から大雨となった。この悪天候にも関わらず、初めて奈良クラブの試合に足を運んだ方々に彼らの戦いはどう映っただろうか。何より、今週の日曜には再び三洋洲本との試合が待っている。3試合を残した関西リーグの再開初戦。ここで勝てば初の1部優勝を決められる。JFL昇格という最大目標への挑戦もあるが、来年、できれば橿原でもう一度リーグ王者として、奈良県代表として、天皇杯を戦うためのリスタートポイントでもある。二の舞は絶対に“なし”にしたい。
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台風の影響で天候は実に不安定な1日。それでも2年ぶりに奈良の地で迎える天皇杯という特別感と「奈良クラブ祭り」と題されたフードコートの展開で徐々に賑わう橿原公苑陸上競技場。しかし、試合が始まるとその90分間は、奈良クラブが戦った直近の試合において最も辛い現実を受け止めることを強要しているかのような試合だった。
奈良クラブは、1週間前の県選手権決勝戦と同じメンバー。層が薄いことは承知。陣容の変更点も予想できる範囲といえば、右サイドバックに入った谷山とベンチに控える黒田、そして、この日もボランチで出場した矢部とベンチに控える辻村隆の2組が先発で入れ替わるかどうかという程度だ。しかしながら、リーグ戦の前期の対戦ではこの日戦う三洋洲本には2-0と勝利しており、先日のミニ国体でもPK戦までもつれ込んでの勝利だったが、2点差を追いつくという試合内容。昨季は1勝も挙げられなかった彼らを相手に苦手意識は払拭できたかに思えた。
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DF太田を中心とする三洋洲本の厚い壁が立ちはだかる。
しかし、それは違った。兵庫県予選の決勝から正守護神の浅野が帰還し、中盤にもリーグ2年連続MVPの成瀬が帰ってきたことで、この日の三洋洲本は5月に五色で対戦したそのチームとは違った。守備でブロックを固めて、素早いプレスでボールを奪いに来る。攻められても決して焦らず、守備から自分たちのペースに持ち込むそのサッカーは昨季の地域決勝で快進撃を見せ、JFL入替戦まで到達した最盛期のチームのそれだった。
開始8分で先制点を献上する。得点を許したのはミニ国体から右サイドで快活なプレーを見せていた稲垣だった。先制されることで目が覚めた奈良クラブが攻勢に転じるが、檜山が相手GKと1対1の局面を作りながらも決められず、また、三本菅のヘッドがバーを叩くなど、あと一歩でゴールは割れず。前半を0-1で折り返した。
後半に入ると、奈良クラブが再びまくし立てる。左の吉田、李、矢部の展開、そして檜山、牧のキープから前線でチャンスを作るが、守備面で集中力の高い三洋洲本のゴールを割ることができない。前がかりになり、時間も少なって焦ってきたところで右サイドを崩され、83分に太田に決められる。それでも終盤には三洋洲本に与えてしまったPKをGK日野がストップして見せ、89分には橋垣戸が押し込んで1点差とし、アディショナルタイムの反撃に望みを繋いだが、終了直前に途中出場の三洋洲本・井上に加点を許して万事休す。2回戦進出はならなかった。
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最後まで試合をひっくり返すことはできず。
90分間、三洋洲本の著しい復調をまじまじと見せつけられることになった。強い。本当に強い三洋洲本が戻ってきたという感じだった。こちらポゼッションで優位に立っていても、そのファーストアプローチで守備の陣形をきっちり整える。そして、数的優位を作らせずにきっちり中央をブロックする守備の集中力はさすがだった。その上、相手の隙を逃さず得点に繋げてくる決定力。そういえば、6月下旬に太陽が丘でアミティエに惨敗する彼らを見たが、その印象は吹き飛んだ。浅野と成瀬が帰還したこのチームがこれだけ息を吹き返すとは。
その三洋洲本の復調に加え、奈良クラブの経験不足も大きく露呈した試合ではなかったかと思う。今季はリーグ戦こそ11節を終えて未だ無敗という独走ぶりだが、トーナメントのような一発勝負になるとなぜか安定した力が発揮できない。パスは繋がるものの攻守のバランスが乱れることが多く、先取点を与えてしまうと、なかなか建て直すまでに時間を要する。目の前の90分で全てが決まってしまうという焦りが出てしまうのか。全社関西予選のセントラル戦しかり、この三洋洲本戦もそうだ。この点は同じような経験を積み上げていくしかないものかもしれないが、リーグ戦との戦績にギャップを感じざるを得ないリーグ中断期間の戦いぶりだった。しかしながら、昨季の王者の強さを取り戻した三洋洲本に肉薄する実力は垣間見せてくれた。その証拠に15本(スポニチ報道による)という数字がこの試合のシュート数で、相手を凌駕していたはず。3度ほどバーやポストに嫌われる場面があったが、ここを決め切れる力が加われば、G大阪のように撃ち合いに強いチームにはなれると思うのだが。ここを光明として見出したい。加えて、追いかける展開に失点を重ねてしまう面は是非とも克服したいところ。前がかりになった時にカウンターなどで失点を重ねる奈良クラブの悪癖は今に始まった話ではないが、元来守備陣の層が薄く、各ポジションにスペシャリストが少ないというウィークポイントも相まって、この攻守のバランスを試合の中でいかにコントロールできるかは、今後全国の舞台で数ある強豪チームと戦う際に鍵となってくるはずだ。
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意地の1点を返した橋垣戸。
守備だけでなく攻撃面での貢献度も高い。
いやはや何とも素早く過ぎ去った天皇杯ウィークだった。県選手権決勝からわずか1週間での本番。実感もそこそこに迎えてしまう天皇杯の味気無さと、奈良で2年ぶりに戦えたにも関わらず勝てなかった無念の想いが巡る。奇しくも奈良では台風の被害が著しく、この試合も後半から大雨となった。この悪天候にも関わらず、初めて奈良クラブの試合に足を運んだ方々に彼らの戦いはどう映っただろうか。何より、今週の日曜には再び三洋洲本との試合が待っている。3試合を残した関西リーグの再開初戦。ここで勝てば初の1部優勝を決められる。JFL昇格という最大目標への挑戦もあるが、来年、できれば橿原でもう一度リーグ王者として、奈良県代表として、天皇杯を戦うためのリスタートポイントでもある。二の舞は絶対に“なし”にしたい。