脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

無念の1回戦敗退 -EC1回戦vs三洋洲本-

2011年09月05日 | 脚で語る奈良クラブ
 第91回天皇杯全日本サッカー選手権大会が3日から開幕。3年連続で奈良県代表としてこの大会に臨んだ奈良クラブ。4日に橿原で同じ関西リーグの三洋電機洲本との1回戦を迎えたが、1-3で敗戦。2年連続1回戦で姿を消すこととなった。

 

 台風の影響で天候は実に不安定な1日。それでも2年ぶりに奈良の地で迎える天皇杯という特別感と「奈良クラブ祭り」と題されたフードコートの展開で徐々に賑わう橿原公苑陸上競技場。しかし、試合が始まるとその90分間は、奈良クラブが戦った直近の試合において最も辛い現実を受け止めることを強要しているかのような試合だった。
 奈良クラブは、1週間前の県選手権決勝戦と同じメンバー。層が薄いことは承知。陣容の変更点も予想できる範囲といえば、右サイドバックに入った谷山とベンチに控える黒田、そして、この日もボランチで出場した矢部とベンチに控える辻村隆の2組が先発で入れ替わるかどうかという程度だ。しかしながら、リーグ戦の前期の対戦ではこの日戦う三洋洲本には2-0と勝利しており、先日のミニ国体でもPK戦までもつれ込んでの勝利だったが、2点差を追いつくという試合内容。昨季は1勝も挙げられなかった彼らを相手に苦手意識は払拭できたかに思えた。

 
 DF太田を中心とする三洋洲本の厚い壁が立ちはだかる。 

 しかし、それは違った。兵庫県予選の決勝から正守護神の浅野が帰還し、中盤にもリーグ2年連続MVPの成瀬が帰ってきたことで、この日の三洋洲本は5月に五色で対戦したそのチームとは違った。守備でブロックを固めて、素早いプレスでボールを奪いに来る。攻められても決して焦らず、守備から自分たちのペースに持ち込むそのサッカーは昨季の地域決勝で快進撃を見せ、JFL入替戦まで到達した最盛期のチームのそれだった。
 開始8分で先制点を献上する。得点を許したのはミニ国体から右サイドで快活なプレーを見せていた稲垣だった。先制されることで目が覚めた奈良クラブが攻勢に転じるが、檜山が相手GKと1対1の局面を作りながらも決められず、また、三本菅のヘッドがバーを叩くなど、あと一歩でゴールは割れず。前半を0-1で折り返した。
 後半に入ると、奈良クラブが再びまくし立てる。左の吉田、李、矢部の展開、そして檜山、牧のキープから前線でチャンスを作るが、守備面で集中力の高い三洋洲本のゴールを割ることができない。前がかりになり、時間も少なって焦ってきたところで右サイドを崩され、83分に太田に決められる。それでも終盤には三洋洲本に与えてしまったPKをGK日野がストップして見せ、89分には橋垣戸が押し込んで1点差とし、アディショナルタイムの反撃に望みを繋いだが、終了直前に途中出場の三洋洲本・井上に加点を許して万事休す。2回戦進出はならなかった。

 
 最後まで試合をひっくり返すことはできず。

 90分間、三洋洲本の著しい復調をまじまじと見せつけられることになった。強い。本当に強い三洋洲本が戻ってきたという感じだった。こちらポゼッションで優位に立っていても、そのファーストアプローチで守備の陣形をきっちり整える。そして、数的優位を作らせずにきっちり中央をブロックする守備の集中力はさすがだった。その上、相手の隙を逃さず得点に繋げてくる決定力。そういえば、6月下旬に太陽が丘でアミティエに惨敗する彼らを見たが、その印象は吹き飛んだ。浅野と成瀬が帰還したこのチームがこれだけ息を吹き返すとは。  
 その三洋洲本の復調に加え、奈良クラブの経験不足も大きく露呈した試合ではなかったかと思う。今季はリーグ戦こそ11節を終えて未だ無敗という独走ぶりだが、トーナメントのような一発勝負になるとなぜか安定した力が発揮できない。パスは繋がるものの攻守のバランスが乱れることが多く、先取点を与えてしまうと、なかなか建て直すまでに時間を要する。目の前の90分で全てが決まってしまうという焦りが出てしまうのか。全社関西予選のセントラル戦しかり、この三洋洲本戦もそうだ。この点は同じような経験を積み上げていくしかないものかもしれないが、リーグ戦との戦績にギャップを感じざるを得ないリーグ中断期間の戦いぶりだった。しかしながら、昨季の王者の強さを取り戻した三洋洲本に肉薄する実力は垣間見せてくれた。その証拠に15本(スポニチ報道による)という数字がこの試合のシュート数で、相手を凌駕していたはず。3度ほどバーやポストに嫌われる場面があったが、ここを決め切れる力が加われば、G大阪のように撃ち合いに強いチームにはなれると思うのだが。ここを光明として見出したい。加えて、追いかける展開に失点を重ねてしまう面は是非とも克服したいところ。前がかりになった時にカウンターなどで失点を重ねる奈良クラブの悪癖は今に始まった話ではないが、元来守備陣の層が薄く、各ポジションにスペシャリストが少ないというウィークポイントも相まって、この攻守のバランスを試合の中でいかにコントロールできるかは、今後全国の舞台で数ある強豪チームと戦う際に鍵となってくるはずだ。

 
 意地の1点を返した橋垣戸。
 守備だけでなく攻撃面での貢献度も高い。

 いやはや何とも素早く過ぎ去った天皇杯ウィークだった。県選手権決勝からわずか1週間での本番。実感もそこそこに迎えてしまう天皇杯の味気無さと、奈良で2年ぶりに戦えたにも関わらず勝てなかった無念の想いが巡る。奇しくも奈良では台風の被害が著しく、この試合も後半から大雨となった。この悪天候にも関わらず、初めて奈良クラブの試合に足を運んだ方々に彼らの戦いはどう映っただろうか。何より、今週の日曜には再び三洋洲本との試合が待っている。3試合を残した関西リーグの再開初戦。ここで勝てば初の1部優勝を決められる。JFL昇格という最大目標への挑戦もあるが、来年、できれば橿原でもう一度リーグ王者として、奈良県代表として、天皇杯を戦うためのリスタートポイントでもある。二の舞は絶対に“なし”にしたい。

3年連続県王者、天皇杯へ -vs奈産大-

2011年08月29日 | 脚で語る奈良クラブ
 今季の天皇杯出場を懸けた奈良県選手権の決勝が28日に橿原公苑陸上競技場で行われ、奈良クラブは奈産大と対戦。県選手権最多記録となる7得点を奪い、7-2と快勝で3年連続奈良県代表としての天皇杯出場を決めた。

 

 カンカン照りの陽射し、雨でも降って欲しいと思わせてくれるような酷暑の中で迎えた県内王座決定戦の大一番。この試合が終わればあっという間に天皇杯が始まり、優勝に王手をかけたリーグ戦も再開される。先週のミニ国体の敗戦からチームが再び上昇気流に乗るためにも重要な試合だった。相手は関西学生リーグ2部の奈産大。準決勝ではディアブロッサ高田(関西Div2)を3-1で下して決勝に進出。この前日に静岡県大会ではJFLのHondaを下して静産大が天皇杯の切符を掴み、東京都予選では、JFLの町田を相手に専大がPK戦まで持ち込む健闘を見せるなど大学勢の奮闘も目立っていた。油断はできない相手だった。
 奈良クラブは、準決勝の天理大戦から陣容をチェンジ。ゴールを守る日野は変わらず、ミニ国体前の練習試合からサイドバックに挑戦している谷山が右サイドバックに入り、橋垣戸、眞野のセンターコンビに、左は吉田。中盤に矢部が起用され、三本菅とセンターラインを組む。辻村剛が左に、そして李が右に入る形となった。好調を維持するFWコンビの牧と檜山は変わらず先発。

 準決勝の天理大戦でもそうだったが、リーグ戦でもなかなか立ち上がりから先制点を取るという場面は少なかったが、この試合では開始早々から格の違いを披露。特に中盤の矢部から相手DFラインの裏へ何度もパスが通った。開始5分の檜山の得点、そして21分にも辻村剛の得点を彼のラストパスから演出。38分には相手GKのミスも手伝って辻村剛が加点し、前半から3-0という展開を見せた。

 
 決定機演出で3アシストの矢部。
 先発起用に応える。

 後半も変わらず、加点していく奈良クラブ。檜山が後半開始早々に矢部のラストパスからシュートを決めると、その直後には左サイドを駆け上がった橋垣戸の折り返しを牧が決めて5-0とする。5分後にはCKから相手のオウンゴールを誘発して6点差に。勝負の行方は完全に決まった。
 しかし、暑さも手伝って運動量が落ちてくると、73分に奈産大のFW井上皓に1点を返される。スピードのある彼にぽっかりと空いた最終ラインのスペースを持ち込まれた。こういう試合で完封こそできれば格別の圧倒感なのだが、これでゼロでは終われなくなる。

 
 ミニ国体では規約上出番の無かった辻村剛。
 2得点と勝利に貢献。

 84分には辻村剛のパスを受けた李が正確なシュートを決めて7点目を奪う。攻撃面ではまだまだ追加点が期待できた。ところが途中出場の辻村隆、浜岡、嶋が何度もチャンスを作るがこの日はこれにて打ち止め。アディショナルタイムに入る直前に奈産大にカウンターから失点を食らう。最後に決められたのはMF橋田。相手陣内のエリア手前まで持ち込んでいながらのカウンターの食らい方は頂けなかった。7-2とスコアだけ見れば圧倒的勝利、内容でも圧倒していたとは思うが、リーグ戦で失点が少ないこともあってか、先週のミニ国体から続く失点場面についつい敏感になってしまう。試合後にNHKのインタビューで吉田監督が快勝にも関わらず、「7点だけという結果だけ見れば…前半から通してちゃんとサッカーしなさいという内容。」と敢えて苦言を呈したのは明らかにこの2失点の後味の悪さも大いにあっただろうと思う。

 
 檜山は大会2試合3得点で調子を上げている。

 これで、天皇杯1回戦は同じく橿原で兵庫県代表と対戦することになった。試合後に分かったその相手はなんと三洋洲本。十中八九、兵庫県の決勝は関学大(関西学生1部)が勝利するだろうと思っていただけにビックリ。リーグ戦で手の内を知るライバルと天皇杯という舞台で対峙することになった。天皇杯特有の“非日常”感この1回戦は薄いが、これに勝利すれば2回戦ではJ1の神戸と対戦することになる。もちろん2年ぶりのJクラブとの真剣勝負の場を目指す意味では絶対に負けられない試合だ。兵庫県の決勝戦のメンバーを見ていると、三洋洲本は先週のミニ国体にもその姿がなく、おそらく負傷の影響だろうか、リーグ戦でも出番がほとんどなかったGK浅野、MF成瀬(関西リーグ2年連続MVP)の2人が出場している。ここに中盤の村上、稲垣、沈、前線で主砲となる梅川(関西リーグで2年連続得点王)という陣容はリーグ屈指で、昨季の地域決勝で奮闘を見せ、JFL入替戦まで進んだ強い三洋洲本のまさにそのもの。5月に五色で2-0と勝利を収めた三洋洲本、先週ミニ国体でPK戦の末に退けた兵庫県選抜という名の三洋洲本(正確には姫獨大の河野が加わっていたが)とは違うと思わなければいけない。なんと偶然にも天皇杯1回戦の翌週には、同じく彼らと優勝に王手のかかったリーグ戦で対峙するのだ(9/11@三木防災)。この2週は彼らも相当な覇気で挑んでくるはず。昨季の王者に挑む“挑戦者”の心意気で臨みたい。

 とにかくこの決勝戦では、これまで以上に県内における奈良クラブの存在感を見せつける試合で、観客には大いにインパクトは与えられたはず。この日は思っていた以上にスタンドには観客が訪れたが、天皇杯は有料試合。同じように1回戦でも有料試合に見合う試合ができるかしっかりその点をアピールしたい。来季昇格を目指すJFLは基本的に有料試合、この日の試合より一歩進化したサッカーを見せて欲しい。天皇杯はもうすぐ今週末の日曜日だ。

いざ、目指せ山口国体

2011年08月18日 | 脚で語る奈良クラブ
 今季、関西リーグDiv1を首位で独走する奈良クラブ。彼らが目指すべきコンペティションはこのリーグ戦、そして全社、天皇杯、リーグカップと大きく4つに分けられるが、奈良クラブにとってもう一つ重要なミッションがこの週末に近づいている。
 それは、奈良クラブが単体で奈良県選抜の成年チームとして出場する第66回国民体育大会近畿ブロック大会、つまり国体予選だ。

 
 国体へ向け、今週は2試合の練習試合を敢行。
 16日には中央学院大と対戦した(4-1で勝利)。

 今年の国体は、昨年の全社が行われた山口(全社は国体のリハーサル大会として催行されている)で行われる。昨年も今年と同じように全社予選の初戦で敗退した奈良クラブにとっては、もう一度山口を目指す戦いが待っているという訳だ。近畿2府4県による2チームの代表を決める近畿ブロック大会(通称:ミニ国体)でその挑戦権は決められる。

 
 ベテラン勢の経験は大きなチームの原動力。
 三本菅の存在は大きい。

 全社出場という貴重な全国大会における腕試しの機会を2年連続で逸している奈良クラブにとっては、このチャンスを大事にしたい。何せ今年はこのままリーグ優勝すれば、全国地域リーグ決勝大会が待っている。是が非でも全社に出ておきたかったことを考えれば、国体をその地域決勝へのデモンストレーションにしたいところ。もちろん、各都道府県の選抜チーム構成はまちまち。奈良県や京都府(佐川印刷が例年単体で挑む)などクラブチーム、企業チームが単体で臨むところもあれば、各社会人、大学チームなどから選抜してチームを送り出すところもある。レベルは全社に劣る部分もあるだろう。しかし、この全国大会の機会に挑んでいきたい。

 
 今季、関西リーグでは得点ランク単独トップの牧。
 いざ、全国の舞台へ。

 しかし、奈良県選抜成年チームに関しては、1985年のわかとり国体(鳥取県開催)以来、国体への出場を果たせていない。代表2チームを選出するこの近畿ブロック予選が非常に難関でもある。今年も初戦は兵庫県(20日11:00キックオフ@三木防災)、そしてその1回戦を突破すれば次戦はシードの京都府との対戦(21日11:00キックオフ@三木防災)が待っている。京都府は2008年の第63回大会でも優勝し、これまでの成年の部で5度の優勝を数える全国屈指の強豪で、言わずもがな優勝候補の最右翼だ。ここで京都府と対戦できることになれば、昨年の天皇杯1回戦で敗北した佐川印刷へのリベンジということにもなる。21日の代表決定戦へ何とか駒を進み、金星を狙うしかない。

 
 若きチームの司令塔は辻村隆。
 出れない兄の分まで頑張って欲しい。

 そんな今大会には登録上の規約で、2年以内に他都道府県で国体にエントリーしていた吉田(福島)、辻村剛(大阪)がこの奈良県選抜の一員として出場できない。リーグ戦で戦っているベストメンバーが組めないのは痛いところだが、なんとか乗り切りたい。初戦で対戦する兵庫県選抜は、三洋電機洲本のメンバーを主体にバンディオンセ加古川の選手が3人ほど加わるという構成だ。京都府への挑戦権をもぎ取るためにも負けられない。昨年は大阪府を相手に1回戦負けを喫してしまった。今年は是非とも国体出場を叶えたい。

 
 奈良県を代表して選抜チームとして国体へ。
 日頃以上の心意気で臨みたい。

3年連続の天皇杯へ王手 -vs天理大‐

2011年08月15日 | 脚で語る奈良クラブ
 天皇杯全日本サッカー選手権大会の奈良県代表としての出場権をかけた天皇杯奈良県予選は準決勝を迎え、社会人代表の奈良クラブ(関西1部)が天理大(関西学生2部)を3-0で下して決勝戦進出を決めた。決勝戦は28日に奈産大を相手に橿原公苑陸上競技場で行われる。

 

 全社関西大会の初戦敗退から3週間ぶりとなる公式戦。この間奈良クラブは1試合も練習試合すら組まずにやってきた。シーズン開幕前から隙間なく続く練習試合とリーグ戦の数々、毎週末にコンスタントに試合があったことを考えれば少し休暇にはなったかもしれない。しかしながら、この過密日程だからこそプレッシャーが上手く作用し、チームの団結力や集中力が持続できているのでは、ということも頭の片隅にあり、久々の試合に選手たちの試合勘が心配になっていたりもした。このインターバルのトレーニングでチームが更にリファインされているのか、それとも苦戦を強いられるのか。どうしても直近の全社関西大会での敗戦が脳裏を過る。

 試合に臨んだのは現状でのベストメンバー。守護神・日野を最後尾に左右のサイドバックに吉田、黒田が入り、中央を眞野と橋垣戸が固め、中盤では三本菅と李のセントラル2人に、左の辻村剛と右の辻村隆、そして絶好調の牧と檜山の2トップ。試合は運動量で勢いのあるであろう天理大が序盤からアグレッシブに来るかと思われたが、前半から奈良クラブのペース。ミスこそ多かったが、パスを繋いで再三天理大陣内へ攻め込む。なかなかフィニッシュが枠内にいかないが故に先制点が取れないのはジリジリさせられたが、42分に檜山が李からの浮き球のパスをヒールで流し込んで先制すると、後半からはリズムが生まれた。
 後半に入って、天理大も一層中盤のプレスに今一度注力してくるが、今季ここまでの戦いぶりを見ていると、奈良クラブは完全に「後半から」のチーム。徐々にパスワークが噛み合い、左サイドの吉田、辻村剛、右サイドの辻村隆の突破を有効活用して押し続けた。何度も決定機を潰し続けて追加点の遠い後半戦だったのは誰の目にも明らかだったが、橋垣戸が治療のためピッチを離れていた69分、天理大に食らったカウンターからの決定機(これは一番ヒヤリとした…)を何とか凌ぐと、82分に辻村剛とのワンツーで突破した辻村隆のパスを受けた牧が流し込んで追加点。87分には、途中出場の嶋がエリア右付近からシュートを決めて3-0と試合を決めた。

 この3点目の嶋の今季初得点は感慨深い。チームスタート時から在籍するきっての古参選手になってしまった彼だが、仕事柄、平日午前のトレーニングになかなか参加できないながらもチームに尽力してくれている。昨季はリーグ戦で5得点を記録して得点ランキングでも5位タイに名を連ねた。かつてはJクラブの練習生経験もある実力派。吉田監督下の今季はラスト10分程度での途中投入が多いが、その持ち前のスピードとシュート力は間違いなくチームの大きな力。その嶋が今季初得点を決めてくれたのは嬉しかった。

 これで、3年連続の県代表獲得まであと1勝となった。久々の90分間の試合ともあって、守備面では不安定なところもあったが、無失点で切り抜けてほっと一息といったところ。ある程度理想のサッカーを体現できていたのではないだろうか。ここからは再び連戦の日々が訪れる。昨年に続き、奈良県国体選抜の成年チームとして20日から行われるミニ国体(国体近畿ブロック予選)に臨まなければならない。今週は2度の練習試合が組まれており、どこまでチームが仕上がって結果が残せるか。国体出場を決めて、天皇杯県予選の決勝へと繋げたい。
 決勝戦の相手はこの日の第1試合で高田を破った奈産大。毎年のように天皇杯予選では顔を合わせるが、決勝戦では2年ぶりの対峙となる。2年前は1-0で彼らを何とか退けて初の天皇杯出場を決めることができた。これまで何度も奈良県代表として天皇杯出場を果たしてきた県内の強豪サッカー部。3連敗だけは避けるべく必死で戦ってくるに違いない。激しい決勝戦になりそうだが、8月最後の日曜、この夏最も充実した一戦になるかもしれない。3年連続で天皇杯出場を勝ち取ろう。

重い1敗 -全社予選vsセントラルSC-

2011年07月26日 | 脚で語る奈良クラブ
 23日、24日に今季の第47回全国社会人サッカー選手権大会関西大会が開幕。1回戦、代表決定戦を勝ち抜けば10月に岐阜で行われる本大会に出場できる。全国レベルを窺い知るには絶好の大会で、優勝及び準優勝チームには全国地域リーグ決勝大会に進出できる権利が与えられる大きな大会だ。奈良クラブは、兵庫県1部リーグのセントラルSCと対戦。相手は2つも下のカテゴリーにも関わらず、奈良クラブは覇気なく1-2と敗戦。2季連続で1回戦で姿を消すことになった。

 

 試合終了後に、1人のサッカー関係者と思われる年配の方がこう言い残して競技場を去って行った。
 「甘く見とったな。」

 今季、公式戦と練習試合を含めて奈良クラブが敗戦を喫したチームは4月に練習試合を行ったJ1のガンバ大阪のみ。リーグ戦では11試合を無敗で突き進み、11節終了時点でリーグ最多得点、最少失点。これほど隙のないシーズンを過ごしていても負ける時は負けるのがサッカーの怖いところ。そんなサッカーという競技特有の不確定要素の落とし穴をこれでもかと実感させてくれた試合だった。「油断」「慢心」「怠慢」・・・冒頭の言葉に凝縮されたいくつものキーワードがその落とし穴への誘いとしては十分なもの。この1敗のなんと重いことか。1週間前の同じ時間にはアインを5-1と完膚なきまでに叩きのめす強者のサッカーを誇示しておきながら、この試合ではなんとも覇気の感じられぬ内容だった。しかしながら、1日置いて冷静に考えれば、今季間違いなく最もワーストゲームであり、かつ価値のあった試合なのかもしれない。その「価値」というのはもちろん奈良クラブにだけ見出したものではない。「敵ながらあっぱれ」と形容するしかないセントラルSCの戦いぶりも見せてもらったことも含めてである。ここから更に一皮剥けるためにも彼らの戦いぶりは多くの指標を示してくれたのではないだろうか。

 奈良クラブは、6月に加入した星野がGKとして入団後初先発。また右サイドにも黒田ではなく浜岡が今季初先発、加えて谷山が久々の先発と、多少のメンバー変更はありながらもほぼ不動の布陣。個人的にはもっとメンバーを変えてくるかとも思ったが、今後を考えても星野の経験値を積ませるためには絶好の機会だっただろう。ある程度ベターな顔ぶれではあったと思う。
 しかし、これが蓋を開けると、なんともミスが多く怠慢な内容。パスミス、球際の粘り弱さ、大事なところでの軽いプレー、枠を捉えぬシュートと、どうにもこうにも入り方としては明らかに悪く、元気もない。ただそれでも今季ここまでの戦いぶりを見ていると「負ける」という予感にまでは到達せず、苦戦は必至という前半を終えての感触だった。
 ただ、今季ここまでリーグで11得点と攻撃を牽引してくれている牧が前半でベンチに退く。ここで蜂須賀が投入されるが、こうしたシチュエーション自体が初めてで多少なりとも違和感はあった。リーグでは基本的にはスコアが動いてから選手交代の一手を投じるのがここまでの公式戦の流れ。牧がコンディションに不調を訴えたのであれば納得がいくが、ここでの交代策は未知数で幾分かの不安はあったと回顧できる。それでも「後半に強い」というチームのスタイルがその不安感を相殺してくれていた。

 

 ところがである。後半、押せども押せどもゴールに辿り着けない。それどころか人数をかけてまずはしっかり守り切り、前線に残った1人に確実にボールを送って一気にラインを上げて攻勢に転じるというセントラルSCの形を時折出されるようになってきた。52分(40分ハーフ)、まさにそんな展開で先制点を献上してしまう。1点のビハインドであればまだしも、63分にも同じような形で2点目をやられてしまった。チームが前がかりになっている際にいとも簡単にDFラインの裏のスペースを突かれるというのは関西リーグ昇格初年度を思い出させてくれる。0-2というビハインドが今季の公式戦では初めてだった。
 その後、途中出場の矢部の捌きで幾分かボールがスペースに出せるようになり、辻村剛の得点で1点を返すが、矢部のFKがポストを叩くなど運をも味方に呼び込むことはできず、試合終了まではセントラルSCの決死の守備の前にいよいよ同点にすることはできなかった。
 非常に印象的な場面があった。試合終了直前にGK星野が相手FWとの1対1をラフプレー(これは1発退場でもおかしくなかった)で止めた際に、両チームの選手がこじれる場面があったが、セントラルSCのGKが「そんなに勝ちたかったら、お前ら最初からやれよ!」と叫んだ。まさにその通りである。試合終了間際になっての1点を追いかけるバタバタぶりは、今季ここまで見せてきたどの試合よりも情けない混乱であり、そう考えると、相手GKの言葉通り、前半を0-0で折り返したことに尽きるのではないだろうか。前半からしっかりいつも通りのサッカーができていれば…

 セントラルSCは現在、兵庫県リーグ10試合(7/24現在)を終えて6勝1分3敗で4位という戦績であるが、かつてから関西府県リーグ決勝大会でも常連の強豪チーム。初見だったが、しっかり一発勝負の戦い方を完遂していたという戦いぶりだった。無理をせず、人数をかけて守り、ほとんど数的不利な場面を作らなかった。それに加えて、おそらく前半40分間はしっかり体力温存に務めていた感がある。おそらくチャンスはそれほど作れないと考えていたか、前線の選手は非常に集中していた。また、GKもコーチングの声を絶やさず、守備陣は人柱の如くシュートを体で弾き続けた。歯を食いしばってボールを追いかけたのは間違いなく彼らセントラルSCだった。スピリットに富み、忘れられないチームになった。是非とも全国の舞台へと勝ち進んで、貴重な経験を得て欲しい。

 この敗戦は謙虚に真っ直ぐ受け止めるべきだ。まるで頭を土突かれたような衝撃こそあったが、昨季と同じ轍を踏んだと比較するよりも、一発勝負と慢心が招くサッカーの怖さを改めて反芻すべきだ。正直、地域リーグ決勝大会出場に王手をかけているだけに、是が非でも全国レベルの舞台を経験しておきたかった。その意味では、今季初のこの敗戦はチームの行方を左右する重い重い1敗だ。次の公式戦は来月14日の天皇杯奈良県予選まで待たなければいけない。昨季は天皇杯こそ奈良県代表として出場できたものの、明らかに夏を境にチームは下降した。今季は練習環境も格段に良くなり、指導を仰ぐ監督の存在もある。ここからはエクスキューズは効かない。前を、上を目指していくしかない。この敗戦に価値を見出すか否か、これからの戦いが全てだ。

天運在我 -vsアイン食品-

2011年07月17日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは第11節に突入。ここまで無敗で首位を走る奈良クラブにとっては、いよいよ優勝実現の可能性がある。まず目の前の試合に勝つという最低条件は必要だったが、前期唯一勝てなかった(2-2)5位・アイン食品と対戦。関西リーグ昇格以降、ここまで公式戦で未勝利だったそのアインを相手に5-1で勝利を収め、明日の残り試合の結果に今節での優勝決定を託すことになった。ちなみに明日の7位・TOJITSU滋賀FCと2位・バンディオンセ加古川の試合で加古川が引き分け以下で奈良クラブの関西リーグDiv1初優勝及び、全国地域リーグ決勝大会進出が決まる。

 

 今節の試合会場は、長居第2陸上競技場。このスタジアムといえば、3年前に奈良クラブが奈良県リーグから関西リーグに昇格を決めた場所。もちろん、輝かしい過去ばかり見えてくる場所でもない。昨年は2つもカテゴリーが下のFC大阪(大阪府1部)に全社関西予選で悔しい敗戦を喫した場所でもある。そんな悲喜こもごも詰まったこの場所で、優勝に繋がる1勝を追いかけた。

 奈良クラブは、今季ほぼ不動のメンバーと布陣を貫く。お世辞にも選手層は厚いといえないチーム事情があるものの、この完全に固定した布陣の連携度はリーグを戦うごとにブラッシュアップされている。この日もここまで5試合連続得点中と絶好調の牧を前線の頂点に、コンビを組むのは檜山。中盤ではセントラルMFを李と三本菅が組み、両サイドを小柄な辻村兄弟が隙あらば前線に飛び込まんという形で編成される。

 アインには前期の対戦時も奈良としてはかなりボールを回せた試合だった。数少ないシュート総数で相手を上回ったデータがそれを物語っている。ところが、あの試合では最後の最後に逆転したと思ったら、そのまた最後、本当にラストワンプレーで相手の2点目を献上してしまいやられてしまった。今季は出だしがかなり良かったが、やはり勝負事は甘くないということをサッカーの恐怖と共に教えてくれた試合だった。
 今日の試合は、前半序盤から陣形を崩さず、きっちり守備から落ち着いて入れた。相手FWがボールを持っても決して数的不利に持ち込まれることはなく、マイボールにできる時間が増えた。18分、吉田の左からのクロスに牧がジャンプしながら右足のアウトサイドに「チョン」と当ててループ気味にゴールネットを揺らす。これで今季10得点目。6試合連続得点と本当に止まらない。そこまでハードワークしていないが、何よりポジショニングの良さは抜群。効率的にゴールを陥れることができる選手だ。

 

 28分にはそれに負けじと、檜山がエリア内まで一人で持ち込んで得意の右足でシュートを決める。自分なりのリズムで突破を図る彼の「らしさ」が出た場面だった。

 

 ところが、32分に三本菅のファウルで取られたPKを坂本に決められて2-1とされる(ここはさすがに日野は止められなかった)。前半を1点リードで折り返す。

 PKとはいえ、相手に1点返されたことで、これでアインを乗せてしまうのは嫌だなと感じた。ところが後半が始まると、49分に辻村隆が右サイドを突破してシュートを決める。この大卒ルーキーも今季これで5得点目。本来ならばこのあたりで相手の息の根を止めたといった感じだが、今季の奈良クラブは完全なる「後半型」。前半以上にパスがぐいぐい繋がり、ポゼッションを作っていける。この試合もその例に漏れなかった。
 交代選手も含めて、吉田監督は徹底して同パターンを貫く。だいたい投入のタイミングも同じだったりするが、この日はなんと3-1というスコアで眞野に代えて谷山を投入する。CBとCBの交代。後から聞いた話では、前期のアイン戦で最後の同点弾を許したのは谷山のミスだったこともあり、吉田監督にリベンジのチャンスが託されたのだという。寡黙ながらも人情味にも溢れた采配も見られた試合。この後、矢部が投入されて更に試合は動く。

 81分、その矢部が辻村隆から左サイドのエリア手前でボールを受けると右足を一閃。「ゴラッソ」と呼ぶべき渾身のシュートがネットを大きく揺らして4点目。終了間際には牧の折り返しを相手DFがオウンゴールしてしまい、今季初の5得点快勝劇となった。

 リーグ戦は次節まで約2ヶ月間のインターバル。その前に優勝を決められるかもしれない。やれることは全てやった。11試合負けなかった。天運は明らかに我にあり。そう思わせてくれるここまでの快進撃。果たして明日これが早めの結実に繋がるだろうか。楽しみだ。

覇権まであと一歩 -10試合を終えて-

2011年07月15日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは後期へ折り返して既に10節を消化。奈良クラブは未だ負けることなくDiv1の首位を独走しており、条件次第では、この週末に行われる11節で優勝が決まる可能性が出てきた。関西リーグ昇格からわずか3年目での快挙へあと一歩だ。10試合を終えたチームを数字の面などで簡単に振り返る。

 折り返し1戦目のAS.ラランジャ京都戦は、猛暑とその熱をたっぷり吸収した人工芝のゴムチップの放射熱にかなりチームのパフォーマンスが落ち、苦戦した(これは牧の試合後の話やUstream番組でも語られており、選手にとっては本当にパフォーマンスを左右するようだ。)。しかしながら2-1で何とか相手を振り切ると、続くアミティエ戦(7/2キンチョウスタジアム)では前期苦戦した相手に3-0と快勝。後期序盤戦では最も注意したい相手だっただけに予想外の完勝劇で少々拍子抜けしたが、確実にチームの結束やコンディションは試合数を負うごとに深まってきている。

 5/22以来の県内開催となった10節の阪南大クラブ戦も4-1で快勝。特に後半はほとんど相手を寄せ付けないペースで、あと1点、2点も十分奪えた内容だった。得点パターンもセットプレーから、崩しからと精度を高めてきている。立ち上がりの“受けの姿勢”は未だ健在で早い時間帯での失点もあるが、それを遥かに上回る攻撃で得点を奪っているから結果は万事オーライだ。試合に併せて行われた「奈良クラブ祭り」も店舗が増えて活況ぶりを見せた。何より採算度外視で協力してくれている店舗もあるのは本当にありがたい。
 
 今季はFW牧がここまでリーグ戦5試合連続得点中とまさに絶好調。ここまで9得点で10節終了時点で得点ランクトップを走っており、得点王も狙えるパフォーマンスを見せている。そして、それ以外にもスコアラーとして名を連ねた選手は9選手もおり、そのうち7選手が2得点以上という攻撃の充実ぶり。今季から加入した辻村隆も牧に続く4得点とアシストを量産しており、得点王とアシスト王の両方をチームから輩出できる可能性も低くない。総得点は27得点(1試合平均2.7得点)とリーグトップで、総失点数も未だ10失点を下回る8失点(1試合平均0.8失点)とバランスは良い。チーム別集計を紐解くと、実はシュート数はDiv1の8チーム中でも3番目の106本という数字(1位はアミティエの115本、2位は三洋洲本の113本)。対して被シュート数はワースト3番目の100本も打たれている。つまり、シュートの精度が高くなり、得点に結びついている。これは今季から練習環境が飛躍的に良くなり、フルサイズのゴールをようやく使えるようになった賜物か。また、被シュート数と失点数の相関関係は驚異的でもあり、GK日野の存在の大きさを際立てている。右サイドバックを務める黒田は開幕前にコンバートされており、層も含めて少し守備陣は手薄な感は否めないのは正直なところだ。

 開幕前、監督の就任が少し遅く、退団選手の多さにその穴が埋まるのかと心配したのはいつの話やら。早くこの力が全国の舞台でどれぐらい通用するか見てみたいというところまで来た。週末対峙するアインは今季唯一勝てていない相手だが、チームは遥かその先、全社、地域決勝を見据えている。確実に乗り越えていっていくれるだろう。

更に負けられない夏 -vsラランジャ京都-

2011年06月26日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは後期日程がスタート。首位を走る奈良クラブはリーグ戦では1ヶ月ぶりとなる県内でのホームゲームをAS.ラランジャ京都と対戦。開始早々に守備陣を崩されて失点を食らうものの、後半一気に逆転。辻村隆、牧の得点で2-1と勝利した。3試合連続無失点記録こそ止まったが、リーグ戦連勝記録は「4」に加速。今節では2位・バンディオンセ加古川は最下位・阪南大クラブに快勝。そして3位・アイン食品は5位・TOJITSU滋賀FCに引き分け、4位・アミティエSCが6位・三洋電機洲本に圧勝して3位に浮上した。

 

 まだ暑いとはいえ、どこか爽やかな暑さだった今月4日の淡路佐野での加古川戦に比べると、一気に暑さが増し、日差しも厳しく35度は超えていようかいう天気となった土曜日。皮肉にも五條上野公園多目的グラウンドの背景に見える吉野の山々と空に流れる雲のコントラストが映えに映えていた。
 陽炎の見えるグラウンドに選手が並ぶ。奈良クラブは、先発メンバーに辻村隆と李が復帰。特に辻村隆は先々週の天皇杯県予選社会人代表決定戦でも途中出場で得点を決めており、調子は良さげ。そしてベンチには新加入のGK星野が入り、選手層の面で安定したスタートとなった。

 ところが、開始早々の2分にL京都に守備陣を崩されると、左からの折り返しを決められて失点。リーグ戦では4試合ぶりに食らう先制点、再開初戦としては悪い入り方となってしまった。逆にどういうプランで試合運びができるか気になったが、この試合では相手の高いライン設定にFW陣がオフサイドを連発。なかなかシュートを打たせてもらえない。
 しかし、相手の得点機を日野を中心とした守りで凌ぐと、0-1で前半を終了する。

 

 ピッチ上はおそらく40度を超える熱気だろう。運動量勝負というのは言うまでもないが、やはりここまでチームの勝利を手繰り寄せてきたのはベテラン勢の献身的かつ先を読んだプレー。この試合も後半の10分を過ぎてから矢部がピッチに入ると、ワイドにボールが動くようになり、前半以上にスペースが生まれるようになった。三本菅、李もボールに噛みつくように奪いに行く。特に李は今季は前線に顔を出す場面も多く、決定機にも良く絡む。そして、相手の足が止まり始めた頃に辻村隆、牧のシュートで2点を加えて逆転に成功した。

 試合後、牧がこんなことを話してくれた。「夏場の人工芝のグラウンドはゴムチップが熱を吸収、拡散してパフォーマンスが落ちる」とのこと。どうもやはり、選手たちにとって天然芝と人工芝ではパフォーマンスに大きな影響を及ぼすようだ。特にこの試合はきつかったはず。夜間の練習がメインのL京都の選手たちは後半みるみるその暑さに運動量を落としていった。今季から奈良は人工芝グラウンドで充実したトレーニングができているが、だからこそ選手たちには敏感に感じられるのかもしれない。ただ、逆を言えば、実はこの先人工芝の会場は13節・TOJITSU滋賀戦の1試合のみ。「天然芝ならパフォーマンスは間違いなく上がる」という牧の言葉に期待したい。もちろんあとい数試合、この無敗ペースを続けば確実に優勝は近づく。その言葉に間違いなく優勝できる確信を持って選手たちもやってくれていることを感じた。

 チームは夏の連戦に挑まなければならない。リーグは17日(日)の11節・アイン食品戦まで毎週続く。それが終われば全社関西予選、そして天皇杯奈良県予選が間髪入れずに始まってくる。いくらリーグで無敗を続けていても、この両大会は一度でも負けると、優勝という目標を失う大会。更に負けられない夏のプレッシャーも暑さと同時に加速していく。

社会人代表枠獲得 -vsAtletico-

2011年06月17日 | 脚で語る奈良クラブ
 6月も中旬に入り、各都道府県では天皇杯出場を懸けた都道府県予選が始まっている。奈良県も例外ではなく、12日に社会人代表の2枠を決める代表決定戦が行われ、奈良クラブが3-1でAtletico(奈良県1部)を下して社会人代表としての奈良県予選進出を決めた。もう一方の枠はディアブロッサ高田(関西Div2)がアスペガスFC(奈良県1部)を延長戦の末に3-2と下して獲得している。

 

 本来ならば5月29日にボスコヴィラで行われる予定だったが、台風のために2週間の順延。奈良産業大学信貴山グラウンドに会場を移して行われたが、奇しくも2年前の天皇杯予選、同じ会場で行われた一条高戦を思い出す“格下に苦戦”といえる内容だったかもしれない。

 思えば、奈良クラブの今季の戦いはここまで基本的には苦戦の連続。リーグの前期日程はいずれの試合もシュート数で相手を上回った試合は皆無である。そこを「GK日野優」という屈強な守護神と、前線から中盤の選手たちの「高い決定力」で乗り越えて来ている。それを考えればこの試合も通常運転だったのかもしれないが、やはり2つもカテゴリーが下の相手であったことを考えれば、少し不満は残る。何より日頃見られないミスが多かった。自分たちのミスで相手ボールの機会を増やしてしまっていた。元京都紫光クラブの三重野、元奈良クラブの上西を中心にAtleticoがボールを持つ時間も前半は多かった。それでもなんとか三本菅の先制点で前半を1-0で折り返した。

 後半開始から李が出場。4日の加古川戦は出場停止だったため、鴻ノ池以来、実に2週間のインターバルを挟んでの出場。昨季まで奈良クラブでプレーしていた松野正(残念ながらこの日は県リーグでの退場で出場停止だった)は「ソンホが最初から出ていたらヤバかったかも」と試合後話していたが、その通り、かなりテンポが上がり、チーム全体にエンジンがかかってくる。檜山が後半開始直後に追加点を彼には珍しいヘッドで奪って2-0とするが、なかなかゲームのテンポアップに比例して得点は付いてこない。ほとんど10人ないし11人で守りに徹するAtleticoの分厚い壁をなかなか陥落できない。

 合わせて負傷離脱していた辻村隆も李と同じく3週間ぶりに出場。同じ時間に途中出場の浜岡のパスを受けてシュートを決め、久々となる得点で3点目を追加。しかし、このまま3-0で終われず、追加点を奪うどころか、完全に守備陣を左サイドから崩されて失点を喫してしまった。ここまでリーグでは3試合連続無失点だったチームだったが、少し油断が出てしまったようだ。

 

 結局、3-1で試合は勝利。さすがに午前練習にシフトして、プロの監督による統一されたトレーニングが導入されただけに、内容的にも簡単にここで負けるチームではなくなった。しかし、7月は全社関西予選、8月に天皇杯県予選と一発勝負の戦いは続く。2つカテゴリー下の相手にこの点差では、もう少し取れるところで得点をとっておかないと・・・という思いが巡ったのは正直なところだ。勝てば問題ないのが、内容にはもう少し拘っていきたい。

 目を見張ったのは、Atleticoの出来だった。奈良クラブが奈良県リーグ時代からポルベニルカシハラやJSTと肩を並べる強豪チームだったが、前述の三重野を中心に良いサッカーをしている。なにしろ奈良県リーグではここまで3試合で18得点をいう暴れっぷりで、この日は出場停止だったが、エースの松野(7得点)と三重野(4得点)の2人で11得点も叩き出しているのだ。確実に優勝候補といえるだろう。関西リーグのDiv2でもそこそこ戦える気がする。この日の試合でも「奈良クラブに一泡吹かせてやろう」という気概が伝わって来た。松野正によれば「奈良クラブ戦を一つのモチベーションにしてリーグもやってきた」とのこと。春先のTMの際には「奈良クラブの一番バテている時が俺たちのトップペースの状態ぐらい」と言って、なかなか練習ができないことを嘆いていたが、このペースで行けば、冬前には関西府県決勝大会に進んでいるだろう。それまでに何度か試合を覗きに行ければと思った。

 そして、奈良クラブは昨季まで徳島セカンドでプレーしていたGK星野が新たに加入。少しずつ選手層を厚くして、リーグ制覇に向けて25日(土)に再開される後期日程に向けて準備だ。

首位ターン、無敗の7試合 -vsバンディオンセ加古川-

2011年06月05日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグはいよいよ前期日程の折り返しを迎え、14試合中の7試合が終わる。ここまで5勝1分と首位を走る奈良クラブは、淡路佐野運動公園でバンディオンセ加古川と対戦。勝点3ポイント差でピッタリ2位につける加古川を4-0と粉砕し、無敗のまま前期の7試合を終えることに成功した。

 

 奈良は、警告累積で李が出場停止、そしてリーグアシストランクでトップに立つ辻村隆が負傷でベンチスタートと、今季初めて中盤の主力を2枚欠く状況。代わりに矢部がボランチに、そして蜂須賀がサイドハーフに共に今季初先発で試合に挑んだ。
 一方の加古川も得点、アシストランクで上位につける池田(昨季までJFL秋田に所属)、J経験を持つ小山を軸に、この試合は全力で挑んでくることが予想された。負傷明けながらクラブのバンディエラである吉田が開幕戦以来ベンチにカムバック。2トップは若い寺本とルーキーの前田。チーム後援会が加古川市長のバックアップの下立ち上がった直後だけにモチベーションは高かったはずだ。

 
 蜂須賀が今季初先発。昨季は出番が少なかっただけに期待。
 いつの間にか県リーグ時代から在籍する古参選手に。

 
 中央に入った矢部。
 今季は途中出場でチームの流れを変えてきた。
 初先発で改めてベテランの持ち味を発揮。

 淡路佐野運動公園は完全に夏のコンディション。海際であるが故にジメジメした湿気がまとわりつく。先週の天皇杯予選が台風の影響で流れたことで、しばしの休養になったのは救いだったのかもしれない。前半はじっくり加古川の出だしを伺いながら無理に攻め込まない。左サイドハーフの池田にボールを集めてくるところを泳がせて、橋垣戸を中心に折り返しをしっかり中央でブロックすることに徹した。GK日野の守備範囲の広さもあって、ほとんどチャンスを事前に潰していく。牧と檜山の2トップに良い形でボールが入るまで少し時間を要したが、良い入り方だった。

 
 三本菅が良く動いてくれている。
 まさにその年齢とは裏腹に攻守両面で“チームのダイナモ”。

 先制点は、奈良。檜山の狙い澄ましたシュートで奪い取る。エリア手前でもつれたところ、加古川DFがセルフジャッジで動きを止めたところを逃さなかった。2試合連続の得点。序盤スロースタートだった昨季のチーム得点王である彼がしっかり点を取れることは大きい。今季は牧とのコンビが熟成されつつある。前半終了間際、アディショナルタイムに入ったところで左サイドを突破した吉田の折り返しをその牧が合わせて追加点。2-0と理想的な展開で前半を折り返した。

 
 檜山にコンスタントに得点が生まれてきたのは大きい。

 後半、加古川が開始時から動いてくる。岩切に代えてルーキーの鳥濱、そして前線の寺本を諦めて吉田を出してきた。負傷の状況は分からなかったが、昨季の対戦時(橿原)にもきっちり仕事をされている選手。チームのムード自体すら変えてくる選手だけに要注意だった。
 しかし、先に足が止まり出したのは加古川。後半すぐに辻村剛が豪快なシュートをゴールに沈めて3点目を奪うと、奈良としてはここまで十八番でもある後半になってどんどんエンジンがかかる例に漏れない流れ。パスが前半以上に繋がり出し、スペースにもどんどん飛び出せるようになった。間違いなく前半以上にたたみかけることができる展開だった。

 
 90分間、再三サイドを切り裂いた吉田。
 エリアへ切り込んでもらってのシュートももっと見たい。
 
 74分には辻村剛がドリブル突破。エリア内で加古川DFがたまらずファウルで止めると、これで獲得したPKを自身で決めて4-0。勝負は決した。しかしながら、まだまだ物足りないという形で5点目を狙う姿勢はまだチームから感じられたのは大きい。きっちり守備で集中して余裕をチーム内に引き込むと、一気にチャンスを作って点を奪う。だから終盤でもスタミナが切れない。「攻撃こそ最大の守備」という言葉があるが、さながら「守備こそ攻撃への道標」を体現するサッカー。相手を“いなす”ことに関しては1試合1試合本当に強かになっていることを感じさせてくれた。

 
 “疲れ知らず”の辻村剛がいよいよ覚醒。
 この試合の2得点で波に乗りたい。

 これで6勝1分という内容で前期7試合を終了。まさにシーズン前には三洋洲本、アイン、加古川との四つ巴を予想していただけに独走態勢に入れたのは「出来すぎ」ともいえる結果。しかし、まだ折り返し地点。ここからは天皇杯予選、全社関西予選と一発勝負の戦いも始まる。少しの油断とそれが呼び込む敗戦でチームのムードがいくらでも浮沈する。今こそしっかり気を引き締めてさらにステップアップして欲しいと思う。
 今節の結果、首位・奈良クラブを含め、加古川、アイン、アミティエの4チームが全社関西予選への出場が決定。残る1枠が三洋洲本とTOJITSU滋賀が同成績、直接対決でも引き分けという珍しい完全互角な状況。プレーオフかはたまたそれ以外の決定方法か、注目を集めそうだ。