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脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

2011.5.24.ダービー -G大阪vsC大阪-

2011年05月28日 | 脚で語るガンバ大阪
 AFCチャンピオンズリーグは、一発勝負のラウンド16に突入。なんと今季はここでG大阪とC大阪の大阪ダービーが実現。意地と意地がぶつかる試合は、終了間際に高橋の得点でC大阪が1-0でG大阪を下し、ベスト8に進出。翌日に行われた試合では名古屋、鹿島の日本勢も揃って破れ、C大阪が日本勢で唯一ベスト8に勝ち進んだ形となった。

 

 日本のクラブがアジアのベスト8を懸けて直接戦うということは鹿島、名古屋を含めた日本勢4チームがラウンド16に進んでいることを考えれば珍しくはないが、ここで大阪の2チームがマッチアップするという希有なケースになった今季のAFCチャンピオンズリーグ。試合会場はG大阪のホーム・万博。2008年にアジア王者に輝いているG大阪にとっては、絶対に負けられない大阪ダービーとなった。

 平日にも関わらず、16,463人の観客が集まった万博記念競技場。G大阪は負傷の山口に代わって、新潟戦で途中出場でJリーグデビューを飾った内田が初先発。頭部を負傷した二川は幸いにも5針を縫うだけに留まり、絆創膏を額に貼って先発出場を果たす。武井が2試合連続で左サイドバックに入り、その他は同様の陣容でこの一戦に臨んだ。対するC大阪は守備の要である茂庭が出場停止。しかしながらそれ以外はほぼ今季おなじみのメンバー。開幕戦は2-1でG大阪が勝利を奪っている。

 C大阪ペースで始まった前半の序盤。乾、キム・ボギョンのシュートやピンパォンに合わせようとするマルチネスのクロスなど、前半早々からC大阪は得点を狙ってきた。対するG大阪も宇佐美のドリブル突破から徐々に反撃。エリア内でシュートコースを切られながらも果敢にシュートを狙い、そして彼のクロスに二川がケガの影響を感じさせないヘッドで決定機を演出するなど、チャンスを作る。しかし、アドリアーノがほとんど良い形でボールをもらえず孤立するなど、相手のブロックを破れないまま前半をスコアレスで折り返した。

 
 倉田のドリブルを初先発の内田が追う。

 
 イ・グノがボールを繋ぐ。前半はうまく機能せず。

 0-0で迎えた後半、C大阪はいち早くカードを切る。倉田、乾を下げて、中後と小松を投入。これでパスの起点とその当てどころができ、C大阪はリズムを掴んだ。上背がありながら明らかに足元でのプレーも上手い小松のプレーに、G大阪は容易に崩される場面も出てくる。序盤は小松、ピンパォンの連携にかなり手を焼いているように見えた。なんとかマイボールを取り返しても、53分のような速攻カウンターの場面では宇佐美のシュートコースが切られてまともに打たせてもらえない。チャンスが到来したかと思えば、すぐにピンチも訪れる。

 
 加地が清武の行く手を阻む。

 55分にはロングパスに抜け出したキム・ボギョンにGK藤ヶ谷が対応。しかし、不用意な飛び出しをさらりとかわされて折り返されると、ピンパォンがシュート。これはかろうじて加地のブロックに助けられたが、この辺りから明らかに攻守の歯車は狂い出した。C大阪のプレスも高い位置で効いており、ずるずるG大阪のラインは後退。なかなか高い位置でボールが回せない。
 63分には、マルチネスのロングパスを受けた小松が右から持ち込んでシュート。これは藤ヶ谷がかろうじてセーブ。武井が対応に苦しそうだったが、この直後の67分にG大阪は佐々木を投入してもう一度攻撃に転じようとする。

 
 正確なロングパスは脅威、C大阪・マルチネス。

 
 アドリアーノはなかなか良い形でボールがもらえず孤立。

 
 佐々木を投入してもう一勝負。

 しかし、藤ヶ谷はこの時間から不安定だった。68分には内田が対応しきれないと思ったか、ピンパォンの突破を必要以上の飛び出しでファウル。あとわずかでエリアだったことを考えると、ここでPKを取られてもおかしくなかった。72分には佐々木からのライナー性の好クロスをアドリアーノがミートし切れず、決定的なチャンスを逃してしまい、焦りが徐々にG大阪には募っていった。

 
 86分にはアドリアーノがこのチャンスを決められない。

 武井が本職でないポジションで悪戦苦闘しているところを突いてきたか、後半の中盤を過ぎるとC大阪は高橋の攻撃参加が目立つようになる。ただでさえ、ピンパォン、小松、清武、キム・ボギョンが織り成す攻撃を何とかしのぎ続けるG大阪だったが、遂に守備はミスによって決壊した。
 88分、清武のクロスをキャッチした藤ヶ谷がすかさずエリア手前にいた二川にスローイングでパス。二川は2タッチで遠藤にはたくものの、遠藤のワントラップ目が大きくなったところをかっさらわれそうになる。中澤がヘッドでクリアしようとするが、拾ったのはC大阪。右に展開されたボールは走り込んだ高橋によってニアに射抜かれた。

 対応に行った武井は高橋との間を詰めることができず、シュートを含めてコースを切れなかった。しかし、それ以上にニアががら空きの藤ヶ谷のポジショニングも拙かった。ここが見えていた高橋のシュート精度はお見事。ほぼ成す術なしといった場面だった。
 終了直前にアドリアーノの強引なドリブル突破からの折り返しを宇佐美が決めきれず、万事休す。試合終了のホイッスルで試合は決した。

 

 

 ここまでの大阪ダービーをデータで見ると、G大阪の18勝1分8敗と通算対戦成績は圧倒的にG大阪だが、そのほとんどはリーグ戦での結果。1発勝負の試合になると、C大阪が過去の天皇杯2試合で2試合共勝っているというデータがあった。最も直近では、2005年の長居での天皇杯準々決勝(2-3でG大阪が敗戦)が記憶に新しいところだが、6年ぶりとなる1発勝負、この決着は偶然かはたまた必然か。とりわけG大阪にとっては、その経験が大きな自負でもあるアジア王者となった2008年の翌年から3年連続でラウンド16での敗戦。二つの意味で“最も負けたくない試合”を勝つことができなかった。驚くほど静まり返った万博の北半分の静寂ぶりがこの敗戦のショックの大きさを感じさせた。

 
 この悔しさはリーグを含めた残りタイトルの奪取に繋がるか。
 

“脇の甘さ”は健在 -G大阪vs新潟-

2011年05月26日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1は第12節、G大阪はACLのため2試合未消化ながら4勝1敗の9位。万博で対するのはその一つ上にいる新潟。試合はアドリアーノの試合終了間際の得点でG大阪が2-1で逃げ切った。

 

 G大阪は下平が負傷で離脱後、懸念されている左サイドバックにはなんと武井が務めることになった。対する新潟はブルーノ・ロペスが出場停止から復帰。G大阪は11日のACLグループリーグ最終節を白星で飾り、リーグでも前節・福岡戦に3-2と逆転勝利を収めた。3日後に迫っているACLのラウンド16に備えて。勝って繋げたいところだった。

 先制点は8分、G大阪がアドリアーノのシュートで試合を動かす。最終ラインの加地からボールを受けた遠藤が中央からイ・グノへロングパス。イ・グノがそのままドリブルで左からエリア内へ切れ込んで折り返すと、アドリアーノが左足で体勢を崩しながら決めた。

 
 
 リーグ戦のホームゲームでは3試合連続。
 アドリアーノの先制点。

 先制点のすぐ後、10分には宇佐美が左サイドからドリブルで際どいシュートを狙うが、これはわずかに新潟GK東口のセーブに遭う。序盤から流れは完全にG大阪だった。
 しかし、この直後にアクシデントが。CKのこぼれ球を競り合ったG大阪・二川と新潟・ブルーノ・ロペスが激しく衝突。頭部を切って流血が止まらない二川がプレー続行を不可能と判断され、佐々木が投入された。

 
 まさかのアクシデント。二川がおびただしい流血。

 
 その直後のG大阪の直接FK。
 遠藤のキックは東口の正面に。

 二川のポジションをそのまま引き継いだ佐々木を加え、さらにたたみかけたいG大阪だったが、新潟もミシェウを軸に、この試合で今季初先発の大島にボールを集めようとする。その新潟にほとんどセカンドボールを与えないG大阪。前半は新潟にシュートを1本を打たさずに1-0で折り返した。

 
 この日も明神のハードワークは健在。

 
 加地は攻撃でなく守備で持ち味を披露。

 後半が始まり、10分しないうちに新潟は中盤の小林に代わって小暮、62分に川又と若手を次々と起用。徐々にショートカウンターをメインに反撃を仕掛けていく。
 70分にはG大阪も宇佐美の突破からの折り返しをあとわずかというところでアドリアーノに合わせられず、追加点が奪えない歯がゆい時間帯が続く。
 すると、追加点が奪えない流れは守備面に影響。77分には勢いを盛り返していた新潟がミシェウの得点で同点に。G大阪は中澤のヘディングミスをそのまま詰めていたミシェウにかっさわれた。
 
 
 遠藤とミシェウがマッチアップ。

 
 左サイドバックに入った武井。
 守備だけでなく果敢に攻め上がって得意のミドルも披露。

 この後、G大阪は負傷した山口に代わって、2年目でユース出身の内田を途中起用。ここでチーム屈指の経験を誇る山口の離脱は痛かったが、今季は金正也が開幕スタメンを掴んでいたこともあり、ルーキーを中心に機会があれば積極的に守備面の新陳代謝を意識していることが分かった。
 本音を言えば、西野監督はこの同点に追いつかれたところで佐々木を使いたかったところだが、二川に前半あのアクシデントがあったことで多少プランは狂っただろう。しかし、1-1で迎えた試合終了間際の88分、カウンターで地力の差を見せたのはG大阪だった。交代出場の内田がブルーノ・ロペスからボールを奪うと、一度中澤に繋いだ後で自身で一気に遠藤までパス。新潟が守備陣形に切り替える前に左サイドでフリーになっていた武井がこの遠藤からボールを受け取ると、一気にそのままドリブル。イ・グノと前線で溜めを作ってラインを押し上げた。ここでまた手数をかけてしまうのかと思いきや、中央でボールを受けた宇佐美が強烈なシュートを見舞うと、思わず新潟GK東口が弾いてしまう。眼前にこぼれたそのボールをアドリアーノが押し込んでG大阪が土壇場で勝ち越した。

 
 キック力がハンパない東口。
 しかし、最後はセーブのこぼれ球を押し込まれた。

 
 佐々木も二川の代役を前半早々から務めた。
 十分、その代わりとしてアピール。

 
 アドリアーノが決勝弾。ゴール裏へまっしぐら。

 試合は2-1で決した。G大阪としてはもう少し楽に勝負を決めたかった試合だっただろう。今季はまだここまでリーグ戦5試合で無失点試合はゼロ。ACLの6試合においても最後の天津戦しか無失点に抑えた試合はない。この「脇の甘さ」はどうしても気にかかる。“取られたら取り返す”を地でいくG大阪だが、失点を抑えることはこの日もできずにACLラウンド16を迎えることになった。とりあえず歓喜に沸く万博が、この3日後に劇的なドラマの舞台になるとはこの試合を現地で観ていた誰もが予想しなかっただろう。

 
 この試合内容を西野監督はどう消化するか。
 結果に直結するのは3日後のC大阪戦。

 
 いつでも冷静さを失わない遠藤。
 その脳裏にはいかなるイメージが・・・

悩ましい「左」 -G大阪 VS 山形-

2011年05月01日 | 脚で語るガンバ大阪
 前節・広島戦(1-4)の大敗を経て、ホーム万博に帰還したG大阪。山形との対戦となった第8節は3-2と辛くも勝利。2-0から2-2に追いつかれる急転直下の失点劇からイ・グノの決勝点で劇的な勝利を手にした。

 

 10年ぶりに広島戦で敗戦となった前節の大敗から1週間、ACLのGL勝ち抜けにも重要な一戦となるメルボルン戦(アウェイ)をこのGW中に控えて、少しでも上昇気流に乗っておきたいG大阪。加地が先発に復帰し、宇佐美も先発へ。残念ながら前節、ルーキーながら初出場初得点を達成した川西が風邪のためにベンチ入りすらならない状況ではあったが、現状のベストな布陣はようやくここに来て揃うようになった。

 

 対する山形は、開幕戦の川崎戦(0-2)、前節のC大阪戦(0-0)と未だここまで無得点。今季から大久保という大型FWが加入し、これまでの長谷川と共に長身センターFWが2人揃うことになった。特筆すべき外国人選手も在籍していないが、昨季はホームでG大阪に逆転勝利を果たすなど、苦手意識はそれほど抱いていないはず。山形から2台の大型バスによるアウェイバスツアーで駆けつけたサポーターのためにも今季初勝利をという思いは強かったはずだ。

 

 

 8分、下平は相手のパスミスを直接シュート。わずかにゴール右に逸れたが、どこか早い段階で得点の匂いを感じる出だしではあった。しかし、船山、秋葉のセントラルMF2人が高い位置でボールを動かし、積極的にボールを縦へ進める山形のペースが目立つ。9分に山形・船山のシュートはGK藤ヶ谷のセーブで何とか逃れるが、その後も12分にも強烈なシュートを船山は狙ってくる。序盤から素早いプレスも怠らない山形の前にしばらくG大阪は防戦ペースだった。

 
 山形、大久保の長身を活かしたプレーは脅威。

 15分を過ぎると、スロースタートが最近では珍しくなくなったG大阪に次第にリズムが。22分、藤ヶ谷のゴールキックをDFを背負いながらイ・グノが二川に落とすと、アドリアーノへ渡ったボールは前のスペースを見つけて走り込むイ・グノのもとへ。華麗なステップで相手DF2人を手玉に取って中央へ折り返すと、ファーサイドでアドリアーノがミスキックになりながらもゴールへ。先制点は見事な連携とイ・グノの個人技から生まれた。

 
 
 
 イ・グノの突破から最後はアドリアーノが決めて1-0。

 ところが24分にアクシデントが。山形・FW大久保と競り合った下平がピッチへ倒れ込む。翌日判明したのは左大腿骨外顆微小骨折。しばらく動くこともできず、結局担架で運び出され、キム・スンヨンの投入という事態になった。

 
 起き上がれない下平。G大阪は左の重要なキーマンを欠くことに。

 ここで、キム・スンヨンの投入はひとまず功を奏す。37分に山口からのロングパスを二川が左サイドのキム・スンヨンに落とすと、キム・スンヨンは一気に前線のイ・グノへパス。イ・グノがDF2人を引き連れていたこともあり、後方でアドリアーノがフリーになっていたが、イ・グノは前を向きながらそのアドリアーノに見事にボールを落としてアドリアーノの2点目をお膳立て。右足でしっかりシュートを叩き込んだアドリアーノは開幕戦以来となるバック転パフォーマンスで喜びを表現した。

 

 2-0とリードしながら、後半へ折り返したG大阪だったが、後半は一転。既に前半の終盤からキム・スンヨンが入って足並みが揃っていない守備陣の綻びを山形に突かれ始めていた。ここで山形は長谷川、伊東、廣瀬と攻撃的な選手を立て続けに投入。明らかにこのウィークポイントを狙ってくる。そして、遂に69分に1点を返された。G大阪の左サイドからのスローインを山形・宮本に簡単に中央への折り返しを許してしまい、クリアミスも重なって最後はフリーでエリア内に走り込んだ佐藤のシュートを許してしまい2-1に。ここはキム・スンヨンとイ・グノの守備が軽かった。

 
 山形は船山が中盤で好プレー。

 
 最後まで効いていた秋葉。まさにダイナモ。

 74分には山形が宮本、船山のコンビネーションからサイドを突破。長谷川は山口に潰されながらも身を挺したポストプレーで走り込んだ宮本へボールを送ると、そのまま疾走した宮本はエリア内まで切れ込んでフィニッシュまで持ち込んだ。この場面でもハーフライン付近という高い位置までキム・スンヨンがアプローチに行ってしまい、カバーリングの山口が長谷川と交錯して潰れてしまったがために完全にG大阪の左サイドはがら空きになってしまった。

 
 
 
 試合を振り出しに戻した山形・宮本のこのシュート。

 残り15分というところで2-2と試合は同点に。全て失点は左サイドから食らっているだけに西野監督は悔やんだだろう。ただ、守備のリスクを考える前に「取られたら取り返せ」というスタンスがG大阪のスタンスとしては説明不要。そして、例のごとくG大阪は終盤に決勝点を奪い取る。最後に得点を生み出したのは、両チームを通しても最も経験値を積んだ2人の選手、加地と遠藤によるものだった。
 86分、山形陣内で相手選手からボールを奪った加地は、右サイドからアーリークロスをエリア内の遠藤へ。オフサイドギリギリでボールを胸トラップした遠藤は、相手DF3人囲まれながら、前を向く選択肢を捨て、フリーになっていたイ・グノへ落とす。おそらくイ・グノも遠藤がシュートを打つと思っていただろう。イ・グノは決して理想的なフォームでシュートを打てなかったものの、シュートは相手DFにも当たりながらコロコロとゴールへ吸い込まれていった。

 
 
 
 
 
 遠藤のこの落ち着きぶり。まさに神業・・・

 
 イ・グノは1得点2アシストで好調ぶりをアピール。

 勝ったものの、加地が復帰した代わりに今度は下平を失ったというような状況。この左サイドバックの枠は今後の重要なファクターになりそうだ。この試合では明らかに相手を深く追い込んでしまうキム・スンヨンの守備面での拙さは目立ってしまった。しかし、高い位置で攻撃参加した際のプレーにはイ・グノとの連携が活きるような場面もあり、得点には直結しやすい。彼ををこのまま使うか、それともルーキーの藤春をここに据えるか。前述のようにキム・スンヨンが得点に絡んだ事実もあり、ここは今後のG大阪の悩ましい問題になることは間違いない。個人的には藤春の起用も是非見たいところだが。次戦は重要なACL・メルボルン戦。果たして左には誰が起用されているのだろうか。

 
 次戦はキム・スンヨンが先発?

 
 加地は先発復帰で決勝点に繋がる仕事。
 J通算250試合出場を達成。

カウンター3発「まずは守備あり」 -ガンバ VS 済州-

2011年04月21日 | 脚で語るガンバ大阪
 Jリーグは震災の影響もあり、しばしの中断状態だが、AFCアジアチャンピオンズリーグのグループリーグは折り返して後半戦、第4節を迎えた。万博ではグループEのガンバ大阪と済州ユナイテッドが対戦。アウェイでは1-2と逆転負けを喫していたが、引き分け以下だとグループステージ突破が非常に厳しくなるこの一戦。見事にガンバが3-1と済州に勝利し、勝点を6ポイントに。済州とは同ポイントだが、この試合でガンバが得失点差で上回り、グループ単独2位を確保した。

 

 個人的にもJ1開幕戦以来、久々の万博。やはり皆スタジアムの熱狂に飢えているのか、水曜日にも関わらず結果的に1万人を超える観客が詰めかけた。この日はこの数日でも少し冷え込んだ日となったが、この状況では皆ビクともしない。キックオフ直前にどっと増えたスタジアムの観衆は、従来の風景を思い起こさせてくれた。
 注目はガンバのDFラインの先発メンバー。この日は中澤、山口のCBコンビにキム・スンヨンが右、下平が左に据わった。中盤以降はお馴染みのメンバー。イ・グノ、アドリアーノあたりの攻撃陣に得点が欲しいところだ。試合前には震災で亡くなった方々への黙祷が捧げられた。

 

 実際、試合が始まってみると、やはり中断によるイレギュラーなインターバルが影響しているのか、ポゼッションはガンバが上回る流れも、自分たちのミスでボールロストを繰り返し、あの遠藤さえもピリッとしないミスの目立つ展開。それでも左からの下平によるクロス、宇佐美の再三スピードを活かしたドリブルで突破を試みるが、ホン・ジョンホ、キム・イホを中心としたブロックの前に得点にまで至らない。少し今日のガンバ(いつも?)はエンジンのかかりが遅いと実感できる序盤だった。

 
 前半から宇佐美が果敢に前へ攻め上がる。

 
 下平のクロスは開幕戦でも先制点を呼び込んだ。

 しかし、「まずは守備から」とはよく言ったもので、ガンバは済州の緩慢なボールキープからチャンスに繋げた。26分、自陣で済州・FWサントスがボールキープしているところをイ・グノが猛然とチャージ。ボールを話したところを遠藤がワンタッチへ宇佐美に送ると、一気に宇佐美は加速。3タッチほどでアドリアーノまでパスを送ると、アドリアーノはDF3人に囲まれながらもドリブルで前進。エリアに差し掛かるところで左足を振り抜きシュートへ持ち込んだ。グラウンダーのシュートはギリギリゴールの右隅に決まって先制点となる。アドリアーノはフォローに走っていたイ・グノをチラリとも見なかったのではないだろうか。そう思わせるほどの素早いカウンター、個人突破。ガンバの守備から攻撃への切り替えの速さが功を奏した。

 
 
 
 
 アドリアーノがドリブルからシュートを決めて先制。
 3/5のJリーグ開幕戦以来となる得点。

 32分にも相手にブロックされるが、アドリアーノが良い形でシュートまで漕ぎ着ける。済州の守備が固く追加点こそならなかったが、アドリアーノのポジショニングとイ・グノの運動量は光っていた。西野監督はどうも済州が地上戦では敵わないと判断し、空中戦を仕掛けてくる(マッチデイプログラムより)と予測していたようだが、前半だけ見る限りでは済州も足元へ繋ぐサッカーという印象。ガンバにとってはそこまでの脅威はなかったはずだ。

 
 済州のブロックが宇佐美の突破を阻む。

 
 イ・グノは深い位置での守備でも貢献。

 1-0で折り返した後半、追加点は簡単に奪えた。48分に相手からボールを奪った遠藤が一気にアドリアーノへロングパス。遅れて背後からカバーに来たホン・ジョンホをワンフェイントでかわすと追加点となるシュートを決めた。前半同様の見事なカウンター。「まずは守備から」、いかに相手からボールを奪うか。あとは点取り屋が見事に仕事をこなしてくれる。アウェイで済州に負けたのが信じられないほどにリズム良くチームは回り出した。

 
 
 
 
 48分には遠藤からの1本をしっかりと決める。
 ツイッターも始めて心身共に絶好調か。

 済州も勝負は捨てていない。66分に長身のキム・ウンジュンを前線に入れると、早速ハイボールを活かした攻撃を実践。その直後の67分にホン・ジョンホのロングFKを入ったばかりのキム・ウンジュンがヘッドで落とし、これをシン・ヨンロクが決めて1点を返す。ホームでも逆転への狼煙を上げるきっかけの1発を決めたこの10番の1点。少し嫌な流れへ傾くのでは…と思った人もいたかもしれない。実際、済州はこの1点を返して以降流れを引き寄せた。

 ガンバは宇佐美に代えて武井、下平に代えて負傷から復帰した加地を投入、加地が右に据わってスンヨンを左に回し、武井をサイドハーフに据えてテスト。この時間帯は度重なる相手のセットプレーの応酬に我慢の時間が続く。75分に2点目同様、イ・グノにカウンターからチャンスが到来するも決められず、引き続き1点差の中、ロングボール主体に切り替えた済州相手にガンバにとって厳しい時間帯は続いた。82分にはロングパスを受けたシン・ヨンロクが胸トラップからガンバゴールを強襲するものの、わずかにバーの上。なんとか試合を決める3点目は必要だった。

 
 
 苦しい時間帯、中澤が好プレーで魅せる。

 
 藤ヶ谷が集中を切らさずゴールを守る。

 
 二川と競り合うマ・チョルジュン。
 ハイボールを再三放り込んできた。

 佐々木を途中投入する必勝パターンも、85分にアドリアーノが絶好機を決められずハットトリックを逃す。しかし、ここまでのガンバの得点の流れはカウンター。押し込まれた時にこそチャンスが巡ってくるもの。3点目もそのカウンターから生まれた。
 残り時間が3分ほどになり、ハイボールをエリア内に入れてくる済州。前がかりになっているところで相手のミスを突いた。加地が佐々木へ落とす。佐々木はサイドライン際ギリギリでかろうじて右足でロングパス。その先には全力で相手陣内へ走りこむイ・グノがいた。ボールキープするイ・グノがボールを落とすと、そこに走り込んできた武井が目の覚めるような強烈ミドルシュート。これが決まって安堵感溢れる3点目。久々の熱狂、万博は歓喜に沸いた。

 
 加地が負傷から復帰。3点目のきっかけを作った。

 
 1試合で両サイドバックを演じたキム・スンヨン。
 今後の起用法が興味深い。

 負けられない重要な一戦を勝利で乗り切ったガンバ。裏ではグループ首位の天津がメルボルンに敗れ、勝点1ポイント差でその天津を追走する2位に浮上。グループステージ突破が十分見えてきた。まもなくJリーグも再開する。ここで一気にリズムに乗ってタイトルへ突っ走るべく良いきっかけになった試合ではなかっただろうか。

2011開幕のダービー -G大阪 VS C大阪-

2011年03月05日 | 脚で語るガンバ大阪
 いよいよ2011年のJリーグが開幕。J1における目玉カードが万博で行われた大阪ダービー。G大阪、C大阪双方ともACLで今季のスタートを切っているが、昨季の2位、3位という対戦に万博は超満員の20,055人の観衆で溢れた。試合は先行したG大阪が遠藤の決勝点で2-1とC大阪を振り切った。

 

 攻撃力のG大阪、堅守のC大阪、年に数度も機会のない大阪ダービーがシーズン開幕戦にやってきた。4-4-2のG大阪はCBに山口とキム・ジョンヤのコンビ、左に下平、右サイドには負傷が心配された加地がなんとか先発出場。中盤には遠藤、武井、二川、宇佐美が顔を揃え、前線ではイ・グノと昨季までC大阪に在籍したアドリアーノがコンビを組む。
 対するC大阪もACLアレマ戦と同様の4-5-1の布陣。古巣を相手に2年ぶりに万博のピッチを踏む倉田と中盤の中後、キム・ボギョン、アレマ戦でも2得点の活躍を見せたピンパォンというメンバーで2日前には初のACLで結果を残した。

 
 
 試合前から熱気に包まれた両ゴール裏。
 今年も日本屈指のダービーでJリーグが始まる。

 立ち上がりはC大阪がきっちり守って、素早くボールを繋ぎG大阪ゴールを脅かす展開。前に攻め込むG大阪の隙を突いて前線のピンパォンを狙ってカウンター攻撃を仕掛ける。しかし、G大阪も昨季フル出場のGK藤ヶ谷を中心に得点を許さない。攻撃面では毎度の如くエンジンがかかるのが遅いG大阪。27分に二川のクロスのこぼれ球に宇佐美がシュートを狙ったが、かなり力んでしまいボールは高くバーの上へ。そして、この試合ではマエストロのPK失敗が更に前半の戦いにブレーキをかけた。37分にC大阪・上本のハンドの反則で得たPKを遠藤がC大阪GKキム・ジンヒョンの好セーブの前に失敗。その直後のCKもイ・グノがヘッドをミートできず、閉塞感漂う形で前半を0-0で折り返す。PK失敗の直後には乾のミドルシュートがバーを直撃するなど、一進一退の攻防だった。

 
 左足を負傷の加地が何とか右SBで先発出場に漕ぎ着けた。
 橋本を欠く現在、彼のバックアップは不安。

 
 C大阪の司令塔はマルチネス。
 前半のG大阪はなかなか彼を捕まえられない。

 
 冷静な藤ヶ谷は今季も健在。
 新たなCBが加わり、彼のコーチングは重要。

 
 37分、遠藤が絶好機にまさかのPK失敗。
 これには万博が揺れた。

 
 前半を終えてベンチに引き下がる西野監督。
 非常に渋い表情。

 後半に入って、立ち上がりの46分、いきなりイ・グノのポストプレーから宇佐美がシュート。これはキム・ジンヒョンが止めて得点ならずも、先取点を切望するG大阪は茂庭の密着マークに苦しむアドリアーノをなんとか活かしたいところ。マークの甘かったメルボルン戦に比べてもアドリアーノの苛立ちは伝わってくる。茂庭、上本の二枚看板が鎮座する堅守C大阪の守備は甘くなかった。加えて、宇佐美が再三仕掛けようとドリブルで持ち込むがこれでも突破口は開かず。この試合ここまでなかなか効果的なクロスが入ってなかったこともあり、G大阪の手詰まり感は顕著だった。

 
 開幕戦のCBコンビはキム・ジョンヤと山口。
 山口はかなりコンディションも良い様子。

 
 前線でくさびのパスを落とすイ・グノ。
 なかなか前を向ける場面は無かった。

 ペナルティエリア内に立ちはだかるC大阪のフラットな守備陣。そんな閉塞した状況を一気に変えたのは左サイドでフリーになることが多かった下平と2列目で衛星的に動き回る二川の2人だった。65分、下平が二川とのワンツーからエリア内へ柔らかいクロス。これにニアでアドリアーノがヘッドで合わせて待望の先制点を奪う。

 
 
 
 
 アドリアーノが遂に爆発。
 ゴール後には得意の宙返りパフォーマンス。

 先制したG大阪だったが、この日は良い形でミドルを打たれすぎていた。前半の乾のバーに当たったシュート、終了直前の中後のシュート、そして、この先制直後にもピンパォンにミドルを狙われている。73分にC大阪に左右に振られて守備陣がゴール前にベタづきの状態になると、交代出場の清武の左サイドからの折り返しに倉田にミドルシュートを決められて同点に追いつかれた。

 
 2季ぶりの万博で得点を決めた倉田。
 皮肉にも万博での初得点となった。

 1-1で迎えた76分、下平がC大阪からボールを奪うと宇佐美へ。宇佐美はゆるりと相手陣内へボールを運ぶと、中央で走り込んだ二川へスルーパス。ここでDF3枚を引き寄せた二川が左のイ・グノに出すと、イ・グノはすかさず中央左の遠藤へダイレクトパス。遠藤が落ち着いてツータッチからシュートを決めた。この遠藤の落ち着きぶりは凄かった。メインスタンドは「打て!打て!」と焦燥感に駆られるものの、そんな焦りの声援をはどこ吹く風。前半のPK失敗をマエストロは絶妙な狙いのシュートで帳消しにしたのだった。

 
 拮抗した試合での遠藤の冷静さは恐るべし。
 アジアカップを経て更にその賢者ぶりに磨きが。

 前日の会見だったか、西野監督は「殴り合うのではなく、殴り続けるチームに」とコメントしたという。それもあってか、この試合、勝負を決する3点目を求めて西野監督の苛立ちがよく伝わってきた。遠藤の得点直後に投入されたキム・スンヨンが再三裏を狙って得点の匂いを醸し出していたが、88分にアドリアーノのお膳立てから完全にフリーで得点機を逃す。西野監督が語気を強めてピッチのキム・スンヨンに指示を飛ばしていたのがスタンドからもよく見えた。この姿勢からも今季は相当攻撃陣への要求は高いだろう。

 
 キム・ジョンヤのフィードから・・・
 アドリアーノが相手のミスを突いてエリア内へ。

 
 最高のお膳立て、完全に1ゴールだったが・・・
 キム・スンヨン痛恨のシュートミス。

 試合は2-1でG大阪が勝利。相変わらずのダービーでの強さを発揮し、昨季の開幕5試合勝ち星なしという状況と好対照のスタートを切ったが、「殴り続ける」チームになれるかどうかはまだこれから。終盤に相手の勢いから押し込まれる展開よりも、3点目、4点目をしぶとく取れないとその理想郷は遠い。そうなれば相当な強さだが、アドリアーノ以外に安定して得点を量産できる選手が不可欠だろう。控えには昨季好調だった平井、ルーキーの川西もいる。今後が楽しみだ。

アジアの頂、始まった再挑戦 -ガンバ VS メルボルン-

2011年03月01日 | 脚で語るガンバ大阪
 あっという間に迎えた3月。いよいよAFCチャンピオンズリーグからJリーグ勢の2011年シーズンも開幕。万博ではメルボルン・ビクトリーを迎えた新生・ガンバ大阪がグループリーグの初戦を戦い、2008年のACLでも対峙したメルボルンを5-1で粉砕。好調なスタートを切った。

 

 まさかの光景。ギリギリでスタジアムに着くと、まるで平日とは思えないほどの観客がスタンドを埋めている。ほぼ自由席に余裕は無く、アジアカップ優勝の影響もあってかその誰もがタレントの宝庫であるガンバを楽しみにスタジアムに駆けつけていたのか、今季はこれまでとまた違った熱狂ぶりが見られそうだ。
 ガンバは、鹿児島で行った磐田戦からキム・スンヨンに代わって先発に名を連ねた遠藤が武井と中盤の底を形成、宇佐美と二川その前で仕事をする布陣。前線はイ・グノとアドリアーノ。GKは木村に代わって正守護神の藤ヶ谷が入り、CBには磐田戦に続いて大卒ルーキーの金正也が山口とコンビを組んだ。
 対するメルボルンも3年前の対戦時に主力だったマスカット、ケンプ、バルガス、オールソップらが健在。08-09シーズンはAリーグ優勝、09-10シーズンは準優勝というオーストラリアでの強さを引っ提げて3度目のAFCチャンピオンズリーグに挑んできた。一時期契約外となったオールソップは今季開始時に再契約。元オーストラリア代表DFのマスカットがこの大会を最後に現役引退を表明しているようで、今大会には並々ならぬ気合いで来るのだろうと思っていた。

 しかし、試合は前半早々に動く。4分、ガンバが得たCKからのこぼれ球を武井がしっかり捉えて先制点となるシュートを決める。明神のバックアッパーを脱して今季のスタメンを狙う意味でも会心の一撃。これでガンバはノッた。続く7分には藤ヶ谷のキックを受けたイ・グノが左サイドをドリブル突破。ペナルティエリアに切り返したところでマスカットに倒されてPKを獲得。これを新加入のアドリアーノが決めて、10分経たぬうちにガンバが2-0と試合をリードした。

 
 先制点を決めたのは武井。
 控えに甘んじるつもりはないと言わんばかりにファーストゴール。

 
 左サイドの先発は下平。
 安田理が抜けたが、藤春とのポジション争いは注目。

 今季のガンバが早々に連携をある程度仕上げていることは3点目で証明された。11分、宇佐美がハーフライン付近からドリブルで相手陣内へ持ち込むと、右サイドを走り込んだアドリアーノに絶妙なスルーパス。これをアドリアーノが中央に折り返すと、相手DFを背負いながらもイ・グノがこれに合わせてゴールを割った。昨季のブレイクを経て、宇佐美の存在感はもちろん、例年以上に新外国人選手がフィットしている様子を感じた。
 対するメルボルンは立ち上がりからほとんど見せ場を作れず防戦一方。15分にはフェレイラが早速交代を告げられるなど苦しい展開。

 
 体もキレている様子のアドリアーノ。
 早速3点に絡む活躍でエースの座は当確。

 
 3点目を決めたイ・グノ。
 アドリアーノとの連携も上々の様子。昨季の倍以上は取りたい。

 下平のファウルで与えたPKでマスカットに1点を返されるものの、足取りの重いメルボルンをよそにマイペースで連携を確認しながらサッカーを進めるガンバ。後半に入ると、更に各選手が躍動。62分には左サイドでボールを持ったアドリアーノが果敢にドリブルで勝負。相手DFを簡単にいなすとマイナスのクロスに二川が合わせて4点目を奪取。この直後に大阪体育大から加入のルーキー・藤春が下平に代わってピッチへ入ると、そのスピードをいかんなく発揮してさらにメルボルンの選手の運動量を削ぎ落とす。

 
 早速公式戦デビューをACLで飾った藤春。
 そのスピードは脅威。クロスも何本か入れた。

 71分には遠藤に代えてキム・スンヨンを投入。74分には盟友イ・グノのスルーパスにあと少しでゴールという場面を作りその存在をアピールすると、左サイドからの宇佐美のアーリークロスにヘッドでゴールを肉薄するなどゴールの予感をこれでもかと滲み出す。81分にはアドリアーノに代えて横谷をピッチへ送り込む余裕の展開。最後まで宇佐美を中心に崩れないガンバだった。
 4-1で快勝かと思われたアディショナルタイム、宇佐美から右サイドのイ・グノにボールが出されると、そのまま縦を突破したイ・グノが中央へクロスを送る。マーカーをさほど気にせずキム・スンヨンがヘッドで合わせると、二アサイドにこれが決まってダメ押しの5点目。ゴール裏のサポーターに敬礼でその忠誠を示し、万博の熱狂を見事に締め括った。

 
 再三チャンスに絡み、1得点のキム・スンヨン。
 イ・グノとの相性は抜群。

 
 宇佐美のその存在感たるや・・・
 末恐ろしい18歳はピッチを支配。

 
 相手にならなかった感すらあるメルボルン。
 ゲームキャプテン・レイヤーの胸中はいかに・・・

 
 キム・ジョンヤもミスはあったが無難にフル出場。
 高木の穴を埋めるだけでなく先発争いに参戦。

 なかなかの期待感。昨年の序盤を思い返せば、対照的なスタートダッシュが切れる予感は十分なほど、各選手が特性を活かしながら連動したサッカーで快勝。メルボルンがダメだったのか、ガンバが本当に好調のスタートを切ったのか、週末の大阪ダービーでその真価がまずは問われそうだ。

 試合後のスタジアムでは、応援チャントを歌いながら子供たちが楽しそうに家路に着く光景。3月を迎えて、本格的にサッカーのシーズンがJリーグを中心に2011年も始まる。そんな実感に溢れた万博での2時間だった。

【AOQLO企画】2010年MVP

2011年02月26日 | 脚で語るガンバ大阪
 毎度お世話になっているAOQLO PEOPLEのオフ企画エントリーを3連発。続いて、ガンバ大阪の2010年MVP。

 これはなかなか選出が難しい。2010年のガンバでは遠藤が前人未到の8年連続でベストイレブンに選出され、ベストヤングプレイヤー賞に宇佐美が選ばれた。序盤から平井が出色の得点力を発揮してヒーローとなったし、6試合連続で得点を量産し続けた橋本の活躍も欠かせない。チームで突出した貢献度を見せた選手を1人に絞るのは至難だ。
 だが、そこをなんとか1人選ぶとすればGK藤ヶ谷陽介を推したい。

 

 昨季限りで引退した松代の「1」を引き継いで臨んだガンバ在籍7年目のシーズンは、藤ヶ谷にとってもこれまでとは違ったシーズンだったと思う。実は意外なことに彼は12年のプロキャリアの中で、J2札幌時代の2004年シーズンと昨シーズンの2年間しか「1」を付けていない。そういう意味でも新生・藤ヶ谷誕生のシーズンとなった。在籍選手では年長の部類に入り、GKというポジションでも最年長。後進の木村や太、河田らに自らのプレーを教示して引っ張る立場になったはず。相乗して今季の藤ヶ谷にとってはそれらのことが刺激になっただろう。2010年シーズンの彼の活躍は、Jリーグが97年から固定背番号制になり、これまで岡中、松代しか付けたことのなかったガンバの「1」に相応しい活躍だったのではないだろうか。

 2010年のガンバはリーグ戦全34試合中15試合において自分たちよりも対戦チームに多くのシュートを許している。これまで「超攻撃」とも形容されたガンバとしてはこの数字は意外かもしれない。しかし、そのうち勝利もしくは引き分けという試合が11試合なのだ。つまり、シュート数で相手が上回っていてもそれがガンバの勝敗には直結しない。相手よりも少ないシュート数で勝負を決めているか、失点を最小限に抑えられているといえる。高木、山口、中澤が補完し合いながら最終ラインを引き締めたこともそうだが、何よりもそこには藤ヶ谷の好守があった。例えば、序盤の勝てないガンバにおいて彼の存在がひと際目を引いた試合は多かった。第6節大宮戦(○3-1)、第7節清水戦(△1-1)などはその最たる例だろう。
 また、脚光を浴びる選手が多いガンバの中で、あまり目立ったキャラではないものの、確実にこの7年でレベルアップしていることも2010年のシーズンでは改めて感じた。ハイボールに強い訳ではないが、両サイドの守備範囲とその反射神経は更に研ぎ澄まされている気さえする。前任のマルキーニョスに代わって新潟から加わったジェルソンGKコーチによる厳しい鍛錬の成果かもしれない。

 2010年シーズンはリーグ戦全34試合にフル出場。ミスが少ないのも藤ヶ谷のストロングポイントだ。今季も「フル出場」を掲げる円熟期の守護神。できることなら彼が忙しくない試合が増えればチームとしても最高なのだが。
 そんな訳で彼を2010年のMVPに。

【AOQLO企画】2010年ベストマッチ

2011年02月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 毎度お世話になっているAOQLO PEOPLEのオフ企画エントリーを3連発。続いて、ガンバ大阪の2010年ベストマッチ。

 昨年のガンバの試合観戦は天皇杯を含め13試合。しかし、なぜこの試合を生で観ていなかったのだろうと悔やまれる。おそらく現地でこの試合を目の当たりにしていれば、選手並みのアドレナリンが分泌されたのだろう。それはLIVE中継をテレビで観ていてもひしひしと伝わってくる熱戦だった。

 無冠に終わった2010年のガンバ、その試合の中で最もエキサイティングでベストな試合、そうれなれば、おそらく今回のこの企画でも圧倒的なポイントを積み重ねるであろう。そう、第13節浦和戦(万博)をベストマッチに推したい。

 

「ナショナルダービー」とかつては呼ばれ、現在のJリーグでもドル箱カードとなったガンバVS浦和。そのイメージに恥じぬ白熱のシーソーゲームだった。
 18分、エジミウソンに先制点を献上するも、徐々にガンバが試合を掌握。遠藤、ルーカスとゴールを肉薄するシュートを連発。すると、45+1分に遠藤からのスルーパスを宇佐美が決めて前半のうちに同点に追いつき後半へ。
 64分には、遠藤の絶妙なアウトサイドキックから相手DFのクリアミスによるオウンゴールを誘発。一気に勝利へといきたかったが、この後にルーカスが退場になるなど穏やかでない展開。90+3分にセットプレーからエジミウソンにまさかの同点弾を許すと、誰もが2-2でのゲームセットを考えたに違いない。何せほとんど時間は残っていなかった。
 しかし、それも束の間、早々とキックオフしてプレーを最後まで続けるガンバ。ノーミスでボールを繋ぐと、最後は武井の折り返しをイ・グノが落とす。するとそれを遠藤が一気にゴールめがけてシュート。これが決まって劇的な決勝点となった。試合は3-2とガンバの逆転勝利で決した。

 全得点を演出した遠藤は、自身も得点してベスト16進出に大きく貢献した南アフリカW杯を経た直後。まさに「神々しい」といっても良い存在感だった。2010年シーズンの遠藤は天皇杯も含めて3回対戦した浦和を相手に全ての試合で得点。屈指の人気カードでこれだけの勝負強さを持っていれば試合が盛り上がらない訳がない。クリスマスに万博で見せた天皇杯準々決勝浦和戦のFKも見事なものだった。
 また、この試合では遠藤にスポットライトが当たりがちだが、最後のプレーで殊勲の活躍を見せたのは武井。85分に宇佐美に代わって投入されたこともあり、本来はリードした場面でクローザー的な役割だったが、彼が疲弊する浦和守備陣を相手に走り回って最後の起点を作ったことは見逃せない。

 この試合が文句なしで2010年のガンバのベストマッチだ。

【AOQLO企画】2010年ベストゴール

2011年02月24日 | 脚で語るガンバ大阪
 毎度お世話になっているAOQLO PEOPLEのオフ企画エントリーを3連発。まずは、ガンバ大阪の2010年ベストゴール。

 2010年のガンバの戦いにおける得点場面といえば、遂に覚醒した5年目の秘蔵っ子平井と天性の才能をいかんなく発揮してベストヤングプレイヤー賞にも選ばれた宇佐美、6試合連続ゴールとストライカー並みの爆発力を見せてくれた橋本の3人がそのメインを占めるだろう。他にも浦和戦に無類の強さを発揮してホームでもアウェイでも貴重な得点を奪った遠藤、日本での最後のシーズンで大事な場面で得点を決めたルーカスなど主役に相応しい選手はいる。彼らの中から2010年のベストゴールを選ぶとするなら、個人的にはこのゴールになった。

 第15節ヴィッセル神戸戦(○3-1) 52分橋本英郎のゴール

 
 0:55あたりからゴールシーンのハイライト

 現在、シーズン前のキャンプでの負傷により長期の戦線離脱を余儀なくされている橋本だが、2010年の彼はリーグ戦だけで8得点もの記録を残した。そのハイライトとなるのが第15節神戸戦からの6試合連続ゴール。まさにこのゴールこそが彼のゴールラッシュの幕開けだった。

 イ・グノが左サイドのタッチライン際から折り返したクロスを、後方から走り込んだ橋本が左足ボレーで華麗にゴールに沈めたこのゴール。ライン際ギリギリで折り返したイ・グノの粘りも素晴らしいが、何よりフリーランでそのままイ・グノの後方からマークをかわしてコースに入った橋本の狙いも完全に得点を意識したもの。この時、イ・グノはまずボールに触る事が最優先で、ほとんど中央を見る余裕がなかったはず。「あわよくば」というクロスだっただろう。これに橋本はシュートをイメージして最適なコースでエリア内に進入。利き足ではない左足でのシュートでネットを揺らした。通常であれば、入ってくるクロスに対して対角線上に走り込み、ボールに近い方の足でシュートするのがよく目の当たりにするボレーシュートの光景なのだが、この橋本のゴールはボールのサイドから入ってきての左足ボレーと難易度がすこぶる高い。走り込むコースからシュートまでを完全にイメージできていないとできない芸当。橋本のサッカー資質の高さを改めて感じるナイスゴールだった。焦らず怪我を治して、再びこんなゴールを見せて欲しい。

 個人的に次点となるも、極めてベストゴールに近かったのが第26節・大宮戦、32分の宇佐美のゴール。ハーフライン付近から持ち込んだドリブルのスピード、シザーズフェイントで相手DFを手玉に取ってのシュート。その振り抜きの速さも圧巻。最後まで橋本のゴールと迷うこととなったが、来季はこれ以上のゴールシーンを見せてくれると期待しての次点扱いにしたい。

 
 3:22あたりから宇佐美圧巻のゴールシーン。
 平井の2点目もおもしろい。

トーナメント巧者の本領発揮

2010年12月18日 | 脚で語るガンバ大阪
 国内のサッカーシーンもトップカテゴリーではいよいよ天皇杯を残すのみ。天皇杯は前回、前々回と連覇中のG大阪。25日に行われる今大会の準々決勝・浦和戦(@万博)を1週間後に控えて大学勢と練習試合を敢行。来週末へ向けて仕上がりを確認した。

 
 トップチームは桃山学院大と練習試合(45分×2本)を。
 関西学生リーグ4位の相手に6-2と勝利。

 
 ほぼ定位置を掴みつつある武井。
 明神とのコンビが板に付いてきた。

 
 今季は「点取り屋」として出色の出来だった橋本。
 元旦へ向けてその大仕事をこなせるか。

 
 今季は遂にリーグ戦出場400試合の大台に。
 自己ベスト2位となるシーズン4得点の明神。

 
 中澤もリーグ通算100試合出場を達成。
 この日も高木との連携を確認。

 
 今季限りでG大阪を去り、帰国する予定のルーカス。
 落ち着いたプレーで2得点の活躍。

 
 前人未到のベストイレブン8回連続の選出。
 W杯でも大活躍の遠藤、元旦の国立で今季を締め括れるか。

 
 徐々に調子を上げてきたイ・グノもこの日2得点。
 来季は間違いなく前線の核となれるか。

 
 高木も後半戦から定位置をキープ。
 中澤とのコンビに磨きをかける。

 
 桃山学院大戦では右サイドに入った安田理。
 果たして加地の代役は安田理が務めるのだろうか。

 
 トップチームの後半から出場の宇佐美。
 サテライトのびわこ大戦では圧巻の飛び出しで1得点。

 
 今季はJ1で初ゴールを記録したドド。
 層の厚い攻撃陣で来季以降も出番を掴めるだろうか。

 
 サテライト組の先発に名を連ねた二川。
 彼と山口がトップ組でないことに時の流れを感じる。

 この2年間、天皇杯において無類の勝負強さを発揮するG大阪。その1発勝負での強さは今季も健在か。浦和を万博に迎えるクリスマスの大一番が楽しみだ。